どちりなの祈り|參|元后あわれみの母
お久しぶりです、躓くロバです。先週は慌ただしくって更新を怠ってしまいました。
『どちりな』で紹介される5つの祈りのうち、前回はアヴェ・マリアの祈りをご紹介しました。今回は3つ目、元后あわれみの母をご紹介します。
1. 主の祈り(=パアテル ノステル, 『どちりな』第三章 )
2. アヴェ・マリアの祈り(=アべ マリヤ, 『どちりな』第四章)
3. 元后あわれみの母(=サルベ レジナ, 『どちりな』第五章)
4. ロザリオの祈り(=ロザイロ, 『どちりな』第四章第一節)
5. コロハの祈り(=コロハのオラショ, 『どちりな』第四章第五節)
この元后あわれみの母、プロテスタントの方には馴染みのないものだと思います。正直私もよくわかっていません。求道者の私はロザリオの最後に唱える(ことがごく稀にある)くらいですが、聖歌だったりもするようです。
新旧比較
それでは新旧比較から始めましょう。
元后あわれみの母は、Salve Regina(サルヴェ・レジーナ)とも呼ばれるのですが、これはラテン語版の冒頭部分に因んでのことです。主の祈りと同じですね!
まず紹介するのは、今日使われているものです。
【元后あわれみの母 Salve Regina】
元后、あわれみの母、われらのいのち、喜び、希望。
旅路からあなたに叫ぶエバの子、
なげきながら、泣きながらも、涙の谷にあなたを慕う。
われらのためにとりなすかた、
あわれみの目をわれらに注ぎ、
尊いあなたの子イエスを、旅路の果てに示してください。
おお、いつくしみ、恵みあふれる、喜びのおとめマリア。
(……現代版でさえちょっとよく分からないのはロバだけでしょうか?)
次に400年前の『どちりな』版を見れば何か分かるかもしれません!
【サルベ レジナ】
あはれみの御はゝ、
こうひにてまします
御身に御れいをなし奉る。
我等が一めい、
かんみたのみをかけ奉る
御身へ御れいをなし奉る。
るにんとなるエハの子ども
御身へさけびをなし奉る。
此なみだのたにゝてうめきなきて
御身にねがひをかけ奉る。
これによて我等が御とりなして
あはれみの御まなこをわれらに見むかはせ玉へ。
又此るらうののちは、
御たいないのたつときみにてまします
ゼズ丶をわれらに見せ玉へ。
ふかき御にうなん
ふかき御あいれん、
すぐれてあまくまします
ビルゼン マリヤかな。
Dのたつとき御はゝ。
Xの御やくそくを
うけ奉る身となるやうにたのみ玉へ。
アメン。
(この引用で「。」と表記したものは全て本文中「○」と記してある。ibid., p.7, p.41)
うん、もっとよく分からない。解説が欲しい!
でも一点興味深く感じたのは、400年前の方は五感に由来する表現が用いられている点です。具体的には「喜び」が「甘味」、「いつくしみ」が「柔軟」と表現されています。心に関する動きや働きかけを、甘かったり柔らかかったりと形容するのは非常にユニークだと思いました。
性格
このお祈りの位置付けと成立については、『どちりな』の中ではごくごく簡単に言及してあります。
弟 御はゝ、ビルゼン マリヤの御とりあはせを、たのみ奉るオラショ別にありや。
師 なか〻サンタ ヱケレジアよりもちい玉ふオラショはおほき中にも、とりはけサルベ レジナと申オラショこれ第一也。(ibid., p.41)
弟子 「マリア様に執り成しをお願いするためのお祈りって、"アヴェ・マリアの祈り"の他にあるの?」
師匠 「教会が使うお祈りって結構多いんだけど、"サルベ レジナ" がその代表だね」
下図の通り、サルベ レジナは『どちりな』の第五章として、独立した章になっているのですが、その性格について言及されているのはこの一箇所だけなんです。
第五章は『どちりな』の中で最も短い章です。それも、聖人への祈りとか、聖人を記念することの意味とか、章題からは推測が難しいテキストが加えられてなお、短いのです。(祈祷文はかなり長いのに!!!)
補足
気になったので少しネットで調べてみました。
アンティークショップの記事が詳しそうでしたのでご紹介します。
修道院において決まった時刻に行われる日々の祈りを「聖務日課」といいますが、日々の聖務日課を締めくくる「終課」の終わりには、マリアを称える四種類のアンティフォン(antiphon 交唱)のうちいずれかが唱えられます。……「サルウェー、レーギーナ」は、四種類のアンティフォンのなかで最も長期間に亙って唱えられます。
「最も長期間」ってどのくらいかというと、一年の半分くらいです。
復活節と待降節との間がSalve Reginaの期間みたいです。
同じブログに歴史についても記述がありました。
「サルウェー、レーギーナ」はクリュニー会で唱えられ始め、1218年にシトー会の聖務日課に採り入れられました。1221年、ドミニコ会はこの祈りを終課の終わりに唱えるようになり、中世の西ヨーロッパに広まりました。
個々の修道会についても気になりますし、いつからロザリオの結びとして唱えるようになったのかも気になりますね。
……え、このアンティークショップが一番気になる?
どこにあるの?とか、なんでこんなに詳しいの?とか。
私も気になります。
「アンティークアナスタシアは完全予約制で、詳しい所在地は非公開です。ご予約いただいた方には別途ご案内いたします」とか書いてあって、めっちゃ気になりますね。「神戸市中央区、異人館街の近く」とのことなので、近くに行く機会があれば寄ってみたいです。
ちょっと消化不良の感は否めませんが、今日のところはこの辺りで。
次回はロザリオの祈りをご紹介します。お楽しみに!またね!