命鯉に似ているゲーム(と謝辞)
みなさんこんにちは、命鯉ゲームデザイナーの表通(@roziomote)です。
ゲームマーケット2021春、お疲れさまでした。命鯉をお手に取っていただいた方も、そうでない方もみなさんありがとうございました。個人的にはブース前を通り過ぎざまに命鯉のタイトルを見て「あ〜そういうゲームね」とニヤリとしてくださった皆さんに一番親近感があります。多分僕もそういう反応すると思う。
さて、ということで件の命鯉ですが、販売時結構な頻度で『***みたいな感じ?』と聞かれたし、命鯉を買ってくれた人向けにこっちも面白いよ!と紹介もしたいので命鯉に似ているゲームとその違いみたいなものをお届けできればと思います。というか、ガッツリ参考にしたゲームもあるのでその謝辞も添えてになります。
命鯉がどんなゲームか、どういう制作経緯を経たかは以前のエントリで書いたので今日は省略します。
キャット & チョコレート
一番良く言われたのが『キャッチョコみたいなやつですね?』というご意見です。はい、キャッチョコみたいなやつです。
キャット & チョコレート(以下キャッチョコ)は、シチュエーションカードによって決まったお題に、手持ちのアイテムカードを使って上手い返しをして、ほか参加者の多数決でクリア可否が判定されるゲームです。
もちろん僕もプレイしたことがあり、当然めちゃくちゃ上手です……ということもなく下手です。というのも、ウケを取りに行ってしまって論理を破綻させがちなせいです。僕は……ただみんなに……笑ってほしくて……(笑ってもらえればいいというものではない)
原初の命鯉では『1人がする命乞いをその他プレイヤーが生かすか殺すか決める』という仕組みだったのもあり、フリートーク式から言語制限式に形を組み替える際、アイテムカードは非常に参考にさせていただきました。キャッチョコのアイテムカードって、絶妙に組み合わせで面白くなるように作られていて、これがゲームバランスか〜〜〜と圧倒され、ひっっじょーーに参考になった、命鯉のオリジンの一部と言っても過言でないゲームです。
命鯉には最終的に命乞いカードが50枚入っていますが、キャッチョコを参考に、10枚ほどは命乞いの役にたちそうもないカードが混ぜてあります。これは後述するゲームにも影響された部分ですが、制限された状況のなかでババ(悪い札)を引いた時こそ、アクシデントとしての笑いが起きやすくなる、というゲームバランスを考慮してです。
ただ、キャッチョコと命鯉の大きな違いに『判定役が周り全員か、ボス1人か』というのがあります。これはゲームデザイナーである僕の趣味が多いに反映された点ですが、大事なのは『全員の納得』より『1人の1ウケ』です。前述したとおり、僕はウケを取りたい。つまりまともに生き残る気はない。ので、正しく命乞いをするよりも、面白いやつが優勝というルールにすることで、キャッチョコが上手い奴に命鯉でマウントを取ろうという魂胆です。
命鯉が異常に上手いボスのご機嫌を取りまくりのサンシタにはキャッツ & チョコレートをやらせて合理性とストーリーテーリングの力で黙らせましょう。命鯉で勝った後であれば、普段は「大喜利ゲー苦手だから……」と及び腰の相手も乗ってくるはずです。
直接のお礼にならず申し訳ありませんが、幻冬舎エデュケーションさん、秋口ぎぐるさん、本当にお世話になりました。
萌札
命鯉のオリジンその2。萌札です。ちなみに、僕が初めて自分で買ったボードゲームでもあります。一生萌札の話してる。
こちらは特にお客さんから聞かれなかった奴ですが、僕が命鯉の参考にしたゲームの中で最も現在の命鯉に近いものなので紹介します。
萌札は「親」が決まり、残りの「子」が配られた手札を元に、親が最も気に入る架空のヒロインをでっちあげプレゼンし、親が最も気に入ったヒロインをプレゼンした子が勝者となりポイントを得ます。ヤバい、自分が書いてて不安になるくらい今の命鯉そのまんまで悲しくなってきた!萌札には観客という存在がおり、プレゼン前に子に賭けたりするので、ゲームとしては命鯉より萌札の方がもう少し複雑です。
また、萌札はあくまで自分の考えたヒロインのプレゼンなので、説明にある程度の合理性が求められます。かつ、萌札では明らかに役に立たないババが含まれており、キャッチョコのそれよりもより凶悪です。萌札の手札はヒロインたちの属性札、つまりはフェチのあつまりなのですが、「幼馴染」や「黒髪ロング」といった最高の手札に「ちょんまげ」が入っているのは悪意がありすぎて笑ってしまいました。ちょんまげつかって魅力的なヒロインは作れんよ!
ただこのゲーム、とにかく永遠に理想のヒロインの話をするゲームなので勝っても負けてもずっと楽しいんですよね。まぁ、酔ってやらない方がいいゲームです。友人の思わぬ性癖暴露を聞く羽目になり翌日気まずくなります。
この、勝っても負けても楽しい、という部分は命鯉製作時の指針として大いに参考にしました。生死がボスからの投票条件から除外されたのも、萌札の影響が大きく、元は『生き残れなかったらベスト命乞いに選定されない』というルールだったのを『だって面白く死んだらそれはもう優勝だろ』ということで生死不問のルールに変えるきっかけにもなりました。
また、萌札はあくまで『理想のヒロインのプレゼン』なので、ごっこ遊び要素がありません。僕がゲームを作るのに「ごっこ遊びがやりたい」というのは結構大きな理由なので、ごっこ遊び要素が一番の違いと言えばそうかもしれません。
他の違いだと、萌札でのババ札は本当に強力なババ札で、引いてしまった時それを使いながら勝つのは非常に難しいのですが、命鯉のババ札はむしろ使い方次第で逆転が狙えるレベルデザインにしています。萌札で何度かババ札に絶望した瞬間があったので(それはそれで楽しい)、あえてそれをなくすことで、命乞いさせられるというストレス以上のストレスを与えないようにレベルデザインを組み替えています。
哀愁旅館きたぐにさん、ゲムマ中ご挨拶に伺えず直接お礼をお伝えできればよかったのですが、こんな場所でのお礼になってしまってすみません。大変ありがとうございました。萌札最高です。
せめて言い訳くらいしろ
こちらは完全に僕の不勉強ながら、当日弊ブースにお越しいただいた時にサークルさんに直接教えていただきました。楽々華さんの「せめて言い訳くらいしろ」です。
親が持ち回りで、各プレイヤーには役職が与えられ、親がひいたお題に、各子プレイヤーがフリートークで言い訳をして、親の評価で可否が決まるゲームです。命鯉はお題が提供されず、言い訳の材料が制限されるので、ちょうど言い訳構造としては真逆のゲームです。
こちらは会社員としての権力構造になっていて命鯉は(さまざま意味での)ファミリーを演じるので、ごっこ遊びの形がちょっと違うのと、こちらの「せめて言い訳くらいしろ」はお題が割と現実の社会問題などに切り込んでいる感じで、命鯉より社会性が高いです。
ブースにて『ウチも似たようなゲーム作ってるんですよ……』と説明されて『やっべえマジで!?ドンかぶりしてたら土下座だ!』と思ってビビリちらかしたのですが、ちょうど逆ですね〜というゲームだと判明してほっとしました。いやまぁかぶってたらかぶってたでコラボしましょうとかいろいろ考えたんですが。
その後ゲームも買わせていただき・買っていただき(ウチの方が値段が高かったのでちょっと申し訳ない)大変ありがとうございました。次のゲーム試作の時はテストプレイなどぜひお手伝いさせてください!
TRPG・人狼・マーダーミステリーなど
具体的にこのゲーム、というのはないのですが、いわゆるロールプレイングゲームのクライマックスシーンを抽出する、というのが命鯉の重要目標です。あのヒリついた瞬間を一生味わいたい……!というのが命鯉、ひいてはごっこ遊びの醍醐味だと思っています。
現実に命乞いをするハメになると9割方死ぬので2回目の機会って大抵ないんですが、フィクションとしてのやられ役になりたいな、というのは意外と多くの人が思っていてくれたみたいで、僕と同じ人がたくさんいて安心しました。
命乞いゲーム(@GZGZMEME さん)
こちらも僕が不勉強ながら知らず、『このゲームが原案なのではないか?』というお問い合わせを頂いて知った次第です。
『命鯉』の方は『このダジャレ200人くらい思いついてそうだけど流石に商品名でかぶったら嫌だな……』と検索していたのですが、『命乞いするゲーム』は日本で500人くらいすでに思いついてそうだな……と思って検索が甘めでした。申し訳ありません。
投稿が1年近く前とのことで、こちらの Tweet を元に命鯉が作られたと思ったら、そうじゃないの?と思われてしまった方もいらしたようで、作者様には大変ご迷惑おかけして申し訳ございません。事前に知れていれば、それこそテストプレイの段階からご意見賜われたりしたのにな……と後悔しきりです。
命鯉との違いで言うと『フリートーク式』か『言語制限式』かがまず大きなところですが、1度の命乞いで死ぬ人数なども違います。「命乞いルール」はどんどん人が減っていきますが、命鯉は命乞いが一巡したらボスも変わってリセットです。
フリートーク式なのも相まって、命乞いルールは仲良しのメンツや演技力の高い人同士でやるとめちゃくちゃ楽しそうなルールです(ごめんなさい、さっき知ったのでまだ遊べてません)。反面命鯉はプレイヤーカードに色をつけることで初対面の人をボスが呼び捨てできるようにするなどで、どちらかといえばスナック的なパーティーゲームにデザインを寄せた、『命乞い』という出発点から別々の方向にかじを切ったデザインだと思います。
あと大事なのが悲鳴をあげるなどのリアクション!命鯉は生死判定を受けたあとのリアクションを規定していません(というか殺されるか生かされるかしたら終了なのでプレイヤーは黙るしか無い)。ここがなー、入れておけばよかった。そうだよなー殺された後の反応みたいよなー……とちょっと反省しました。
後追いの上不勉強で知りませんでしたというみっともない話になってしまい大変恐縮なのですが重ねて、みしさん、ご迷惑おかけして申し訳ありませんでした。
他にもまだまだたくさんあるけど
無意識に参考にしているゲーム、体験として参考にしたゲームはあるのですが(たとえば命乞いカードのレイアウトは MtG の構成を真似ています。フレーバーが下部にあるとか)、意識的に気になっているゲーム、気にしていたゲームのご紹介でした。
どのゲームも面白いので、ぜひぜひお手にとって遊んでみてください。ついでに命鯉も遊んでみて違いを比べてみたりしていただけると……いや、これは流石にマニアックな楽しみ方なので、もっと軽い気持ちで遊んで欲しいな、忘れてください。忘れた上で命鯉買ってください。ボス!なんでもしますから!
また、たくさんのメディアにも掲載していただけて嬉しい悲鳴をあげております。昨日まで毎日毎日命鯉でエゴサをしていたのに誰も書いてない……また増えてない……と泣き暮らして居た所にやたらいっぱい命鯉という投稿が増えて一瞬で追いきれなくなったので、インターネットすごいな、と思っています。メディアってすごい。
また、最後をごめんなさいで締めくくって申し訳ないのですが、命鯉は現在通販予約受付中、5月中旬頃からの順次発送になる予定です。ゲムマになんとか間に合わせろ!!で作ったせいでゲムマ以外のスケジュールがボロつきました。以下の URL からお買い求めいただけるので、ぜひお手にとってもらえると幸いです。
以上、表通でした。みなさま、よい命乞いを。
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> 命だけは勘弁してくれ! <
> https://tsumaya.booth.pm/items/2854793 <
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