【第一回ss杯】過去の文章を振り返る【call】
わーい。ありがとうございます。4月2日みたいですね。
匿名で応募していた(主催者は知ってたはず)ので、「時間が経ってから振り返り(いわゆる「解説」的な)を書こう」と思っていたのですが、ふと思い出したので書いていきます。普通、解説は筆者以外が書きますが、まあ筆者本人が書いてもいいじゃないか、ということで。
ss杯に応募した作品はこちらです↓↓↓
みゆ3×フィクション
あんまり書かないんですよね。エッセイは好きなんですけども。「ないもの」を生み出すのは苦手です。
けれど今回のルールは、「初めと終わりの1文は共通」でしたので、どうしても現実の話だけで文章を書くのは無理があり。
「続いてお送りします曲は、」 から始まり、「それでは、どうぞ。」で終わるとなると、まあ演奏会かなぁと思ったのですが。あんまりちゃんとした演奏会で「どうぞ」で終わるアナウンスってないよなとか思いながら。中学の吹奏楽は「どうぞ」だった気もするけれど。物語設定や登場人物を中学生に置きたくなかったので却下しました。
別に普段からラジオを聞くわけじゃないんですけどね。1文目で思い浮かぶもの、演奏会を却下するならラジオかなっていう安直発想。
一応フィクションなのですが、まあ日常を生きるみゆさんのエッセンスが含まれていることはさすがに否定できないですよねぇ。「暗すぎだろ」って感じですが。バッドエンド厨なんです、許してください。
使い回し
「ないもの」を生み出すのは無理なんですよね、やっぱり。
なので、本編にはけっこう文章の使い回しがあります。実はね。
文章を書くことは趣味に近いので色々あることないこと書くのですが、私は承認欲求が強いので、基本的に書けたら公開するんです。けど未完成だったり、さすがに公開できないな~みたいな文章も存在します。そんな公開できない文章にも、光って見える一節があったりするものです。
誰が読んでも一番意味が分からないであろう文章について喋りますね。
大丈夫です、私もまじで意味が分かりません。けどね~こういうの好きなんですよね。誰も分からん表現で自己満に走るの。趣味が悪い。
まあ逆にこういうときくらいしか、村上春樹の真似事はできませんからね。
何か分からんけど、村上春樹が好きなんでしょうね。明確に何が好きってないんですけど、本屋に行ったらつい目で村上春樹の本を探してしまうので、体感、村上春樹は元カレです。言ったことなかったけど。無茶苦茶かつ烏滸がましいので。
アデリーペンギン好きなんですよね。なんか。中学生のときにアデリーペンギンの説明文やったんですけどみなさん分かります?
あの時に初めて知ったんですけど、なんか、別に可愛くないんですけど、なんか好きなんですよね。
(『生物が記録する科学』 バイオロギングの可能性)
感謝と考察と解説
改めて、大賞に選んでいただきありがとうございました~。嬉しいものですよね。自分が好きだけど使えていなかった表現とかも入れながら、枠組みの中で普段はやらないような書き方をしながら、ある意味私らしくない中で楽しんで書いたものがちゃんとみんなに楽しんでもらえるって、こんな幸せなことないですよね。
何でなんですかね。何でっていうか、あのnoteのどの部分が読者に刺さって評価されたのでしょうか。
共感を呼んだのか、演奏会から離れるという意外性が良かったのか。分かりませんが、前者だったらなんか、嫌ですよね…… なんか嫌じゃないですか、私の身近にこんな未来のない片想いに覚えがある人がいると思うと。相談乗りますよ。
今回の文章は、「私」が「あなた」への苦しい片想いと決別しようとするまでの独白(?)という形式にしてみました。
筆者が解説しちゃうと模範解答みたいでどうなんだ?とも思うんですけどね。
実際、本編では「私」が考え事をしているだけで、まじで何も起こっていないお話なので想像の幅はまあまああったりするのかな~なんて思います。
この「私」は多分、依存体質ですよね。
「あなた」に恋人ができた時点で大人しく身を引けばいいのに。「自分なら告白せずに諦めるだろうな」って人も多いでしょう。
「想いを告げる→断られる」という一連のプロセスに意味を見いだしていて、「拒絶された」という事実がないと踏み出せないから欲している。そしてその一歩さえ、自力では出すことが出来ない弱い子。かといって誰かを頼ることへの後ろめたさもあるわけで、「通話しよう」のひと言も言えない。そこで「私」はラジオに頼ることにします。
「私」像はけっこうみゆ3そのもので、何でもかんでも「納得しないと動けない」「誰か/何かに背中を押されないと勇気が出ない」のです。まあそういう人は一定数いるよなぁとか。
他人を頼れる強さもない中で何とかもがいて抜け出そうと縋るラジオは、希望の一筋か、それとも絶望の入り口か。このあたりの判断は人によって分かれそうだなと思います。
もっと言えば、「私」は次に流れるラジオの音楽がラブソングなら「あなた」に通話をすると決めていますが、本当にラブソングだった場合、果たして彼女はそれを実行するのでしょうか。正直かなり怪しいと思います。
この先の展開を考えているわけではないので私にも何も分かりません。まあ、結末といった結末がないほうが、純文学っぽくて楽しいじゃないですか。
で、流れなかった場合も考えられますね。これは少し本編でも言及していますが、また同じ夜を繰り返すんだと思います。ラブソングが来るまで。
「私」が深夜にも関わらず「あなた」に通話をふっかけようとしていること自体について。
自暴自棄になって「あなた」の迷惑になるかもしれないとかを考えることに疲れたのかな。片想いって、勝手に想っているだけなのに理不尽に相手に腹を立ててしまったりすることってあるんじゃないかと思っていて。書いたときの意図も概ねそんな感じだったんですけど別の解釈もある気がした。
この「私」ちゃん、相当「あなた」のことが好きで視界が狭まっている感じがあるので、夜中に電話かけて出てもらえることを前提に考えていますが、実際にラブソングが流れたからかけたけど普通につながらなかったパターンも想像すると面白いですね。脈がないのも「そういうところ」が理由かもしれません。で、自己嫌悪に陥って床で寝ます(それはみゆ3)。
ラブソングについて。
正直この「ラブソング流れたら告白するぞ」と決意するという設定もどうなんだよ、という感じではあるのですが……(そんな馬鹿みたいなシチュエーションを思いついてしまう自分への羞恥はある)
要はあんま気に入ってない。だっせぇなあ。
実際、「私」は物語の中において、ラブソング自体には一ミリも意味を見いだしていないっていうのはちょっと新鮮なのかもしれないなと思います。「歌詞のメッセージ性によって心境変化があった」とか「聞くことで過去の出来事を思い出した」とかにしたらよく見る話っぽくなりますけどね。
そうならなかったのは、終わりの1文が「それでは、どうぞ。」だったからですよね。これがあるから文章の制限っておもしろい。
結局、普通に書こうと思ったら「曲紹介~曲が始まる直前」という、わずかな時間を書くしかなくなるんですよねぇ。このわずかな時間でどんな物語を生み出すのか?という、できる工夫がかなり限られている空間で物語を構築することの難しさはすごく感じたけれど、それでも他2作品はまた全然違う作品で。この企画の楽しさを味わうことができました。
他2作品について
せっかくなので喋らせてくださーい。
One more time,One more chance
これ実は作者知ってるんですよね。
というのも、「書いたけどボツにするわ」とか言われながら見せてもらったんですよ。めっちゃ良かったんで出すように言ったのは私です。
書き出しと書き終わりから着想される展開として、3つの中だといちばん無難かなぁとは思いますが、個人的には「この人こんなに戻れない青春みたいな文章書くのうまいんかい」っていうびっくり感情がまあまあありました。笑
物語冒頭では、「まだ余韻に浸っていたい」と過去に執着しそうになる心を持て余しているのに、それを振り切った先にはもう「今」と「未来」しかない。そういう、ある意味すごくあっさりとしているようにも思えるけれど、本当はそうじゃなくて、次の曲という未来に進むエネルギーがめちゃくちゃ大きくて、相対的に過去への比重が小さくなっているだけ……っていうのが詰まった文章が上記の引用だと思っています。
演奏中に悔いる余裕なんてなくて、やれることを精一杯やるだけだ。
そういう、音楽経験者なら誰でも感じたことのあるであろう思考の動きを、すごく軽やかに爽やかに綴られてるな〜というのを、全体通して感じました。知り合いが書く素直な文章でしか得られない栄養がある。
THE FINAL TAKE
これね~~~!
ほんまに天才やと思うんです。
この物語の舞台はまあ……言うまでもなく「大教吹部定期演奏会2023」がモデルになってますね……
極限までノンフィクションの成分でヒタヒタにしながらも、がっつりサイコSFみたいな内容で、震えました。どうやったら「タイムリープものを書こう」という思考と「GRのタンバリン」が結びつくんですか?発想力が鬼才のそれすぎる。
しかもその突飛な物語設定が、全く無理のない文体で綴られている。「私」が感じているであろううんざりとした気持ちが、なぜか重くない。そして、「私」の気づきを経て迎えるラスト。そんなに長い文章でもないのに何だ、この満足感は。
秀逸だな〜と感じた文がこれ。
安堵と恐怖という2つの感情が「背筋を伸ばす」という動作に繋がること。「襟を正す」に近い雰囲気ですよね。この言葉のチョイスに痺れましたね。
それからそれから、彼女が存在しない中でどうして演奏会が何事も無かったように始まってしまったのか?というところにも、描かれない物語性がまだ残されていて、想像をかき立てられます。こんなフィクション書けたら楽しいだろうな〜〜
さいごに
書くのも読むのも楽しかったss杯、ありがとうございました。
もし第二回あったらまた参加したい!と思いつつ、参加を表明すると作品のどれかはみゆ3のものだとバレてしまうから良くないのか……?
なんせこれからもエンターテイナークリエイター目指してnoteやってこ。
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