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郡上ロボットクラブで見た景色
郡上の小中学生向けロボットプログラミング教室『郡上ロボットクラブ』に関する特集記事が新聞に掲載された。
僕は郡上に通うようになっていろいろな“希望”を見出したのだけれど、その中でも郡上ロボットクラブとの出会いは郡上に通い始めていちばん最初期に触れた“希望”でもある。僕にとっても思い入れのある取り組みで、こうやって取り上げてもらえるのは喜ばしい。
郡上ロボットクラブに関わった経緯
「まぁ来てみてよ」でタテマチノイエのオープンハウスに向かった日、タテマチノイエで店番をしているときに冒頭の新聞記事にも登場している宮崎さんと知り合った。当時僕が名古屋で子供向けプログラミング教室の講師バイトをやっていたこともあって、「郡上に来るならロボット教室の秋季講座を手伝ってほしい」と誘いをもらい、お手伝いすることになった。
初めて教室を訪ねたとき、正直驚いた。これマジで自分たちで書いたのか?と思うほど凝ったプログラムを、教室の子供が組んでいたからだ。教室ではTJ3Bというロボットサッカーのキットを使っていて、手伝うにあたって僕も少し触ったけれど、彼らが操るマシンはその原型とは程遠い進化を遂げたモンスターマシンになっていた。
モンスターマシン
周りに人がいて、強くなれる
競い合う仲間がいて、先輩や後輩がいて、先生がいる。彼らの環境が心から羨ましいなと思った。僕も彼らと同じ年頃にプログラミングを独学で勉強していたけれど、周りにそんな人は誰もいなくて、たびたび壁にぶつかって挫折した経験があるからだ。
宮崎さんの郡上ロボットクラブにおける指導スタンスは基本的に放任で、最初に基礎の基礎だけ教え、あとは生徒たちの自主的な発想に任せている。生徒が詰まったときとか、大人のサポートが必要なときだけ、生徒自身の申し出に応じて手を差し伸べる。
プログラミング学習の場で、詰まったときに解決策を見出してくれる人が近くにいることは重要だ。特に学習の初期段階においては、たとえ些細なtypoが原因のエラーであっても、その原因を特定できないことがままある。僕が独りで学んでいた頃は誰も助けてくれる人がいなかった。あの頃先生や仲間が身近にいたら、今頃はもっと違うキャリアを歩んでいた気がする。
居場所としての役割
僕自身、郡上出身ではないので詳しくはわからないが、郡上市の学校は文化系の部活に乏しいと聞く。郡上ロボットクラブは、人口減少都市における文化系少年たちのコミュニティとしての役割もある。
文化系は世間的にはマイノリティだ。人口が減れば、文化系は母数の多い体育会系に強引に組み込まれざるを得ないこともあるだろう。自分自身が文化系だったのでよくわかるが、そんなの苦痛でしかない。
郡上ロボットクラブの子供たちがどんな学校生活を送っているのかは知らないが、少なくともロボット教室での彼らを見ていると存分に羽根を伸ばしているようにみえる。
彼らが力を活かせるフィールドがない
僕の目から見て彼らはプログラマーの卵(というか立派なプログラマーだ)として大変に優秀で、このまま技術を研ぎ澄ましていけば社会に出る頃には間違いなく凄腕のエンジニアになっていると感じられる。
だが、残念ながら郡上というフィールドには彼らのスキルが活きるようなエンジニア産業がほとんどないのが実情だ。そうなると当然、町を出て都会で働くことになる。若年人口の流出は加速するばかり。しかし郡上で暮らしていくなら、その優秀なスキルをあまり活かすことができない仕事に就くしかない。あるいは、自分で事業を……という道も当然あるだろうが、誰でもできることとはいえない。
なんとか彼らが地元を離れずにエンジニアとして働くことができる産業構造が作れたら、よいのだが……。
僕が郡上でプログラミング教育を手伝うわけ
余談になるけれど、彼らと同じロボットを同じく未経験の大人たちが挑戦すると、ことごとく子供より成長が遅いのが面白い。どこに差があるのかというと、明らかに試行回数に差がある。
子供はとにかく「プログラムができた!」と思ったらすぐ試す。それがうまく動くかどうかに関わらず。そしてダメだったらすぐ書き換えてまた試す。一方で大人は一発で完璧を求めて、なかなか試行に移さない。そして試行してもまず失敗するから、結局出遅れただけになってしまう。これはどの大人を見ても同じだった。
とはいえ、何度試してもゴールにたどり着けないことはままある。だからこそ、大人の手助けは必要だ。あの日挫けてしまった僕のような子供を一人でも減らせたらいいと思いながら、いつも手伝っている。
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