デリバリー・ビジネスが花盛り
「デリバリー」がアツい。
「何をいまさら・・・」と思うほど、デリバリーはかなり長い間ずっとアツかった。しかしここにきて、いよいよ白熱している。
僕の住むロサンゼルスで昨年(2020年)の3月にパンデミックのロックダウンが始まってから、僕の買い物は全体の7割がたが「デリバリー」になった。
もともと20年来インターネット・ビジネスのリサーチをしてきた僕は、「リサーチ」がてら、新しいネットのサービスが立ち上がるとわりとすぐに使ってみるようにしている。趣味と実益を兼ねて、というやつだ。
だから、もちろん「アマゾン・プライム」はおそらくサービス開始当初くらいからずっと使っているし、「話題」のデリバリーやネット通販ビジネスがあれば必ず一度は使ってみるようにしている。
ここ数か月の僕のデリバリー・サービス・ユーザーとしての生活を整理すると、だいたい以下のようになる。
【ごく一般のネット通販サービス:一週間以内に配達されればOK】
〇アマゾン(Amazon.com):何か、「ネットでものを買う」必要があるときに使う。つまり、アマゾンを、「ショッピング用の検索エンジン代わり」に使っている。
〇ボクスト(Boxed.com):ネットのホールセール・クラブ。コストコのようなノリ。年会費はなく、誰でも利用できる。トイレットペーパーやペーパータオルなど、消耗品で一度に大量に買ったほうが便利でお得なものの買い物に使っている。最近は毎日オートミールを食べるので、オートミールの大型ボックスもここから買っている。重量1キロ800グラム、90食分でたしか10ドル前後)
〇スライブマーケット(thrivemarket.com):まあ巷の人に言わせると、「意識高い系」のホールセール・クラブ。年会費あり(59ドル95セント)。オーガニック、ヴィーガン、グルテンフリー、動物実験をしていない・・・などなど、健康やサステナビリティに配慮した商品がディスカウントで買える。そういうものに興味がある人なら確かにお得。年会費60ドルの価値はある。僕はここで主に抹茶パウダーや(なぜか)コリアンのスパイス、グルテンフリーのベーキングミックス、スキンケア用品などを購入している。
【翌日または翌々日配達/配達日指定可】
〇ウィー(sayweee.com):アジア系グローサリーのデリバリー・サービスで、今、これにはまっている。だいたい毎週か隔週でオーダーしている。中国系グローサリーを中心に、日本のもの、韓国のもの、いろいろ取り揃えている。目玉は野菜や果物が安いこと!おそらく契約農場からの供給なのだろう。年会費なし。35ドル以上買えば送料が無料になるので、毎回、35ドル~40ドルくらい買うようにしている。配達員へのチップは任意。
【オンデマンド】
〇インスタカート(Instacart.com):オンデマンド・デリバリーの最大手。いろいろなローカル店舗をリスティングして、自らのアプリ(プラットフォーム)上で商品をカタログ化している。つまり、インスタカートのアプリ上で商品を閲覧し、オーダーを入れ、インスタカートと契約している個人のデリバリー・ドライバー(ショッパー)さんに届けてもらう。グローサリー(主に食品や日用品をスーパーからデリバリーする)からスタートしたが、今では化粧品の店(セフォラ)や、電化製品(ベスト・バイ)や、ドラッグストア(CVS)など、いろいろな商品カテゴリーのお店をネットワーク化している。デリバリー・サービスのショッピング・モール(マーケットプレイス)のような感覚。ここを通して僕が利用したことがあるのは、スマート・アンド・ファイナル(食品や日用品を大きめのパッケージで売ってるホールセール・クラブ)、イータリー(イタリア系高級食材のお店、日本にもある)、セフォラ(化粧品)など。
〇イーズ(eaze.com):過去に一度使っただけだけど特記しておく。マリファナ製品のオンデマンド・デリバリー・サービス。普通に吸うものから、エディブル(食べ物に仕込んであるもの)、CBDオイルを含むローション系のものなどさまざま。立ち上げ当初に一回、好奇心で使ってみたが、僕はどうもマリファナのありがたみがわからない体質なのでそれ以来使っていない。カリフォルニアではマリファナが合法化されているのでお店でも買えるけれども、こういうものを店舗で買うことに抵抗がある人もまだまだ多いと思う。また、(コロナで今はないだろうけど)パーティなどで人が集まってワイワイやっている最中に、ノリでオーダーするというシチュエーションも考えられる。個人的には今後成長株のサービスだと思う。
まあ、ざっとこのくらいで僕の生活はカバーできるのだが、今日、なぜ、デリバリー・サービスについて書きたくなったかというと、発端はウーバーだ。
コロナ以降、言うまでもないことだが、ウーバーの基幹ビジネスは大打撃を受けた。「人」を運ぶライドシェア・ビジネスは、コロナ禍ではどう考えたってはやらない。
なので、もともと「ライドシェア・ビジネス」として始まったウーバーは、最近では、「モノ」のデリバリーのほうに力を注いでいる。日本でも、「ウーバーイーツ」が人気だというのは知り合いに聞いた。
もっとも、「モノ」のデリバリーに力を入れる、ということ自体は、今に始まったことではなくて、前任CEOのカラニックの時代から方向性としては打ち出していた。(ウーバーイーツだけではなく、ローカルの店舗からオンデマンドで商品をデリバリーするサービスも地域限定で展開していたはずだ。)
しかしパンデミック以降の、ウーバーの「デリバリー・ビジネス」へのピヴォット(方向転換)の熱量とスピードは尋常ではない。それもそのはず。ウーバーとしては、「オンデマンド・デリバリー」のリーディング・プレイヤーとして自らを確立できるか否かが死活問題だからだ。
米国時間の昨日(2021年2月2日)、ウーバーは、酒類のオンデマンド・デリバリー会社、ドリズリーを約11億ドル(1,150億円)で買収すると発表した。買収完了後は、ドリズリーの機能がウーバーイーツのアプリの中に統合されるらしい(ドリズリーの既存のアプリはそのまま独立した形で運営するらしい)。
ドリズリーは2012年にマサチューセッツ州ボストンで設立されて、現在米国内1,400都市で運営している。
酒類のオンデマンド・デリバリーはパンデミック以降上昇している。ひとつの理由は、ロックダウンによって打撃を受けたレストラン・ビジネスを考慮して、アメリカの州政府がアルコールのデリバリーに関する規制緩和を行ったからだ。かつては、レストランからお酒をデリバリーすることは違法だったが、今では、州によってはそれが合法になっている。2019年にアメリカにおける酒類のネット販売は26億ドル(2,700億円)規模だったが、それが2024年には5倍近くの134億ドル(1.4兆円)になると予測されている。
さっきも書いたけれども、昨年のロックダウン以降、ウーバーは「オンデマンド・デリバリー」サービスの拡張については極めてアグレッシブだ。2020年8月には提携を通して処方箋薬のデリバリーも始めた。12月には、オンデマンド・デリバリー大手で競合のポストメイツを買収した。また、レストラン・デリバリー会社としてはアメリカで最大のグラブハブにも買収提案をかけたが、それは失敗に終わっている。現在、アメリカのレストラン・デリバリー市場でウーバー・イーツが占めるシェアは22%、パンデミックのさなかに、人々が「デリバリー」に依存している間に地固めをしておこうというのは悪い戦略ではない。
デリバリー事業に専念する一方で、これまで投資してきた自動操縦の開発系事業に見切りをつけているのも朗報だ。2020年の12月には、自動操縦車の開発事業と「空飛ぶタクシー」の開発事業の両方を売却している。
コロナ禍で「人」の運輸ビジネスが振るわない中で、ウーバーは「モノ」のデリバリー・ビジネスに助けられているといえる。2020年の第三四半期、基幹ビジネスである「人」の運輸事業からの売上は52%減少し13.7億ドル(1,430億円)を計上した。同じ期間に、「モノ」のデリバリー・ビジネスは前年比190%増加し、11.4億ドル(1,200億円)になっている。
僕は個人的には、「ウーバー」はカラニック時代の名残であまり好きではないのだが、「デリバリー・ビジネス」全体として興味があるので、彼らの動きには大いに関心をもっている。ただ、レストラン・デリバリーはそんなに単価が高くないうえ、「商圏」の問題もあり、果たしてコスト・モデルとして理にかなっているのかというと、それは疑わしいところがある。
以前に、行きつけのスーパーの店員さんで懇意になった人から聞いた話だが(彼女はスーパーでの仕事とオンデマンド・デリバリーの仕事を兼任している)、少なくとも、ロサンゼルスでは、ファースト・フード系のレストランに対する需要が意外に多いのと(つまり、単価が安い)、場合によっては、広大なロサンゼルス市の西の端から東の端まで(20キロとか)運転しなくてはならないこともある・・・と聞いたので、それで果たして採算が合うのかというと疑わしいところだ。
ともあれ、ウーバーに限らず、インスタカートやその他のデリバリー・サービスの動向にも目を光らせつつ、お伝えしていきたい。