商品説明に苦戦するあなたへ①
「あなた」はとても器用な人です。作品は唯一無二で本当に素敵。接客では作品に込めたこだわりを伝えようと一生懸命会話を繋いでいます。だけどなかなか売れないあなたに向けて、今日は売れるって何なのかをテーマにお手紙を書きます。
このnoteは10年前の私である「あなた」に向けて書いています。
「あなた」は売れないハンドメイド作家。
「わたし」はワークショップ歴10年のプロ講師です。
こだわりの世界観でイベント出展
個性あるハンドメイド作家さんには、その人らしい世界観がありますよね。あなたの場合は「お菓子の国」ですね🍓
創作活動のいちばん最初は絵を描く仕事がしたくて漫画を描いていたあなたですが、友人に誘われスイーツテーマの展示へ参加したのをきっかけに立体作品を作るようになりました。
処女作「お菓子の城」は夢のある作品です。窓を覗くと中には広間があって、天井にはストロベリーのシャンデリアが輝き、中央にはスポンジケーキの玉座が据えられています。ちゃんとお城としての機能が想像でき、絵本を読んだ時のようにワクワクします。
お菓子の城は大人にも好評で、イベントで展示するといつもたくさんの方が立ち止まってくれました。子どもからの反応は特に鮮烈で、イベントで展示すると10分以上熱心に見続けたり、何度も何度もブースに戻って来る子が毎回たくさんいました。子どもの反応には嘘が無い分、素直な憧れを抱いてもらえることは作品に込めた情熱が伝わった証のようでした。
お菓子の城と同じように全身全霊を注いで、あなたは販売用の作品も大切に作ってきましたね。アイスクリーム、チョコレート、フロランタン、苺などのフルーツもモチーフにしてアクセサリーや雑貨を制作しました。リアルさと可愛さのバランス、それから実用品としての強度も考えて長く使えるようにデザインを工夫して。丁寧に作られたあなたの作品は、わたしから見てもかなりの高品質です。
そうして大切に仕上げたお菓子の城と販売作品を持って、あなたはイベント出展を続けてきました。
お菓子の城は、キャッチ―なディスプレイとして足を止めてもらう役割で展示。お客様が止まってくれたら中を覗いたり写真を撮ってもらったりしながら会話を繋げ、販売作品を手に取ってもらう。そんな接客の流れをあなたなりに意識していますよね。
どんな人が買ってくれているか
あなたの作品を購入してくれる人は、ざっくり2つのタイプです。
①スイーツモチーフが好きで可愛さでお迎えして下さるタイプと、②ハンドメイド品が好きで完成度の高さ(を生み出す技術)を気に入って下さるタイプ。
でもこれは、今だから冷静に分析できるのです。売れていなくて必死のあなたにとってはブースに足を止めてくれる人全員がチャンスで、購入の可能性を上げるため全員に商品を説明しようと一生懸命ですよね。皮肉なものでその必死さが かえってお客様を引かせてしまっていたことに、わたしは後々になって気が付きました。
イベントの客層はどうだったか
ところで、あなたは1日にイベントに訪れるお客様の数を考えたことがありますか?
大きなイベントでは運営から統計が出ていることもありますが、小さな手作り市などの場合は出展中に5分間でブース前を何人の人が通るか数えてみるといいかもしれません。全体を考えることは、自分を客観視するのに役立ちます。ちなみに、アジア最大級のアートイベントであるデザインフェスタの来場者数は約6万人(2018年11月開催)だそうです。
イベントの規模やテイストも色々とあるでしょうが、あなたの作品を購入してくれる2タイプのお客様は、来場者数のうちどのくらいの割合いたでしょうか?
前者①、ガーリーな好みのお客様は全体から見ると少数派でしたね。デザインフェスタなど個性の強い作風が好まれるイベントでは割合も少し増えますが、ショッピングモールなど客層が主婦層になってくると興味を持って下さる人は減りました。
後者②のタイプにあたるのは、一般のお客様というより友人の友人やブースが隣になった作家さんなどが多くありませんか?創作を始めたきっかけや作り方などまで、リラックスした雑談交じりでじっくりお話しできた後で、自然と購入していただける流れになることが多いですよね。
全体の割合で考えてみると、イベント来場者が多くてもお客様のほとんどは作品を購入しないという厳しい現実があなたを待ち構えています。
お菓子の城に感動して写真を撮ってくれる人はたくさんいても、作品をほめるだけで購入には至らない。丁寧に丁寧に情熱を込めて作った作品をお手頃価格で販売しても、購入の決め手にはなっていない。作品を買ってもらえる出会いは奇跡的です。
売れるって何だろう
あなたはいずれ、ハンドメイドで稼いだお金で生計を立てるつもりです。
そのために「売れたい」と思っていますよね。
売れるって、どういう状態でしょうか?
売れるにはたくさんの人に購入してもらう必要がありますよね。売上の考え方として、よく単価×個数とか言いますけど、少なくとも生活しているだけの個数は毎月販売しなくてはならない。いったい作品をいくつ売ればいいのか………果てしなく感じますか?
では逆に、例えばデザフェスなら6万人も人が来るのに、今のあなたは奇跡的な確率でしか作品を買ってもらえないのは何故でしょうか?
もし、お菓子の城を見てブースに立ち止まる たくさんの人たちが高確率で購入にまで至ったら。あんなに目をキラキラさせて食いついていた子供たちが もし作品を買えるだけのお金を持っていたら。あなたも「売れてる作家」になれる道が見えてくるのではないでしょうか。
今のあなたを整理すると、こんな感じです。
世界観に興味を持って集まってくれる人は多いけれど、その人たちにとって商品を実際に使用するイメージがわきにくいみたいです。
お菓子の城の造形に感動してくれる男性がいても、その人はヘアゴムを買ってくれません。何度もブースに来てくれる子がいても、子どもには高価だと親は買ってくれません。
実際に購入してくれるお客様は大人の女性に限られ、そういう好みがぴったり合う女性は、割合でいうとほんのわずかになってしまいます。
集まってくれる人と商品がマッチしていないから、あなたはチャンスを逃している=”売れていない”のです。逆を言えば、たくさんの人の足を止めることはもう出来ているのだから世界観(魅力)を伝える方法を工夫すれば”売れる”可能性があるということです。
「売れてる」とは、自分の提供する商品が多くのお客様とマッチしている状態のこと。あなたらしい世界観を大切にしながら、お客様の買いやすさや使いやすさに寄り添って歩み寄ることが大切だとわたしは感じています。
商品説明に一生懸命のあなたへ
作品をお迎えしていただく確率(=購買率)を上げたくて必死のあなたは、作品の材質や作り方、こだわりポイントを説明してこれまで”接客”してきましたね。
同じ説明を何度してきたでしょうか。一部は定型文になるくらい、言葉も滑らかに出てきますよね。定型文ができるくらい接客しているのに売れていなかったら、一度立ち止まる時かもしれません。
想像してみてください。今のままの作品をお客様が気持ちよく使ってくださる未来が見えるますか?
もしうまくイメージできなかったら、何かを変えて調整してみましょう。
あなたの場合、興味を持ってくれた男性が使えるアイテムがないなら、造形の良さをそのまま活かしてフィギュア感覚で飾れるような物を提案をするのもありかもしれません。アクセサリーでは子どもに合わないなら、お菓子の城の写真をポストカードにして買ってもらうのもありかもしれません。
勝手なアイディアを書きましたが、あなたの作品を否定する気は全くありません。無理に作品を変えろとも言いません。わたしはあなたの作品が唯一無二で、素晴らしいものばかりだということを誰よりも知っていますし、あなたの作品が大好きです。
でもあなたが「売れたい」と願うなら、1人では売れないことを頭の片隅で意識していてくださいね。お客様がお金を払ってくれて初めて「売れる」という現象が成立するのです。
お客様が気持ちよくお金を払いたくなるかどうかに、作品制作と同じくらい徹底的にこだわってください。喜んでくれるお客様が増えることは、世界にあなたが作り出した幸せが増えるということです。
あなたが成長して売れていき、たくさんのお客様を笑顔にできますように。そのために大切なことをまた今度お手紙に書きますね。
応援しています。
わたしより