作品販売に行き詰まったあなたへ
好きを仕事にしたくて作品販売を始めた「あなた」でしたが、半年も経たないうちにやる気を無くしました。大好きなはずのハンドメイドで行き詰まった理由と、そこから10年”ものづくり”を続けている理由を、今日は書きます。
このnoteは、10年前の私である「あなた」に向けて書いています。
「あなた」は作品販売を頑張る売れないハンドメイド作家。
「わたし」はワークショップ歴10年のプロ講師です。
「あなた」の作品と販売価格
ハンドメイド販売を始めたあなたははじめ、東京都内の手づくり市を活動の場に選びました。選んだというか、それしか知らなかったんですよね。
(※2011年当時は まだminnneもBASEもありませんでした。)
△当時撮影した作品写真
販売しているのはスイーツモチーフの作品。例えばアイスクリップ(上の写真)やクッキーのブローチ、苺のバッグチャームなど 、リアルさと使えるデザインのバランスにこだわって けっこう面白い物を作ってます。
手づくり市の相場を参考につけた販売価格は数百円~2000円くらい。10コ売っても1万円ちょっとなので、とにかくたくさんイベント出展することで何とか収入を生み出そうと あなたは頑張ってますね。
経営の知識も専門的な技術も無くて、わたしから見れば恐ろしい程無知だけれど、自分にできることからまずやってみる行動力は素晴らしいと思います。
良い物を作れば売れるのか?
行動力に加えて、あなたにはものづくりのセンスがあります。
食べられそうな程リアルな表現を独学で習得しているし、販売品としての強度も凄いです。どのくらい凄いかって、その頃友人がお迎えしてくれた作品が、普段使いしてるのに10年経った今もピカピカで現役なくらいです。
わたしは勉強のために色々な作家さんの作品を見ていますが、10年綺麗に使えるフェイクスイーツ作品なんて聞いたことありません。とんでもない高品質です。あなたはものづくりに誠実で本当に良い物を作っています。そこは自信を持ってください。
でも、あなたは作り続けることに飽きてきています。商品として作品を量産するモチベーションがわかず、あまり数を作らないからイベント出展に十分な在庫を確保できていません。在庫が少ないからブースが貧相で売上も伸びません。良い物を作るだけでは続けていけないんだと気付いて悩んでいますね。
好きなのに、やる気が出ない問題
作品は良かったので、作品に感動してファンになってくれるお客さんにも出会いました。「お客様に喜んでいただけると本当に励みになります!」あなたはよくブログに書いていますし、自分の作品を購入してもらえる喜びは間違いなく本物です。
しかし同時に、あなたが半年も経たずに作品販売に飽きたのも事実です。誰かに喜んでもらうだけではあなたのモチベーションは持続しないのです。
ものづくりが大好きなはずなのに、どうしてやる気がわかないのか?あなたは自分でも不思議に思っています。自分が怠惰なんだろうか?人として何か足りないんだろうか?なんて悩んでますね。
ものづくりの「何が」好きなのか
わたしは悩み続けるうちにだんだん自分の活動を掘り下げて考えられるようになりました。それまで「ものづくり」一単語で表現していたハンドメイド作家の活動を「制作」「イベント準備」「接客」「広報」などに分解して一つずつ向き合ったのです。分解してみると、大好き一色だと思っていた「ものづくり」は、実は「好き」だけではありませんでした。
わたしは「制作」は好きだけど「接客」や「告知」はあまり興味がないんだと気付きました。そして「制作」についても、あれこれ試作しながら新しいものを開発する工程が一番好きで、量産は (達成感はあるけれど)作る事自体よりも効率的な仕組みを作る方が好きだと分かりました。
自分の性質がわかると、好きなのにやる気が出ない理由が腑に落ちます。わたしにとって、既に作り方がわかった物を量産し続けることはあまり楽しくなかったのです。けれど作品販売で稼ごうとする限り量産は避けられません。
仕組み作りや商品開発は好きだけれど、量産はしたくない。ここに手作り作品を販売するハンドメイド作家としての わたしの気持ちの面での限界がありました。
10年間ものづくりを続けてこれた理由
大好きな「ものづくり」の中にも好きな仕事と嫌いな仕事がある。これは人間ですから自然なことです。そして好き嫌いを決める性質というのは、それまでの人生で培われてきているので変えることは難しいです。
では、あなたは10年後ものづくりの仕事を諦めているでしょうか?いいえ、諦めませんでしたよ。作品販売で稼ぐ道に限界を感じたわたしは、自分が本当に好きな事で力を発揮できるワークショップに特化して生き残りました。
ワークショップの先生には「仕組みを作る能力」が必要ですが、それはあなたの得意分野です。あなたが嫌いな量産作業はゼロにはなりませんが、販売用の完成品を作るよりもワークショップの材料準備の方が労力は少なくて済みます。
「適者生存」という言葉がありますが、自分に合っている分野を見つけることができなければ無理が重なってしまいます。わたしはこの10年の間に才能ある作家さんが活動をやめるのを何度も見てきました。イベントで待機列ができていた人気作家さんも、あなたが作品に一目惚れして仲良くなった天才作家さんも、えっあの人が?!という人が作家活動を離れていきました。それだけハンドメイドを続けるのは大変なのです。
作品販売スタイルのまま方向転換していなかったら、私もきっと辞めていたと思います。だからあなたが作ることに飽き 違和感を感じて悩んでくれていること、わたしはとても感謝しています。悩んでいる時は苦しいけれど、必要だから悩みが生まれてくるんだと思います。
作品販売ばかりが「ものづくりを仕事にする」ことではありません。今の活動に行き詰まりを感じたら、自分のネガティブな気持ちに素直になって「好き」を因数分解してみることをおすすめします。
あなたならきっと向き合えますよ。
応援しています。
わたしより