社会人芸大生2年目の振り返り|京都芸術大学 通信 空間演出デザイン
こんにちは。
京都芸術大学 通信教育部 空間演出デザインコースに在籍するひじきです。
入学してから早くも2年が経ち、いよいよ来年は卒業制作に着手します。
ということは、順調にいけばあと1年で卒業。
今年の卒業制作展で同年入学した学友の作品を目にしたこともあり、『卒業』の2文字がだんだんと現実味を帯びてきました。
仕事と課題とプライベートに追われて駆け抜けてきた2023年度を、ここで一度振り返っておこうと思います。
2022年度終了時点での履修状況
1年目終了時点での単位取得状況はこのような感じでした。
3年次のスクーリング科目を受けるためには2年次のTW科目「空間ドリル」と「すまいのリノベーション」の単位取得が必須となっているため、1年目になんとかそこまで取り切った形です。
3年次編入学で3年卒業を目指す場合は割と平均的な進捗かと思います。
一方で、文章を書くことに対する苦手意識から、TR科目は「マーケティング概論」と「ブランディングデザイン論」のみにとどまっています。
3年次スクーリング科目
3年次スクーリング科目は10個の科目から6つ選択する形になっています。
空デでは「空間」「モノ」「コト」のいずれかに焦点を当てて卒業制作をすることになるので、自分の興味や今後やりたい内容に合わせてここで大まかに方向性を探るという感じでしょうか。
自分が選んだ6科目はこちら。
エキシビションデザイン(空間 / 東京)
ショップデザイン(空間 / 東京)
デザインマネジメント(コト / 遠隔)
すまいの空間構想(空間 / 遠隔)
伝統とプロダクトデザイン(モノ / 京都)
コンパクトデザイン(モノ / 京都)
選定基準は
卒業制作ではプロダクト系をしたい
自分の仕事と関係がある「伝統とプロダクトデザイン」はマスト
せっかく空デに入ったので空間もやりたい
東京と京都のどちらでも授業を受けたい
秋以降はできるだけTWに専念したい
という感じで興味がありそうな科目を中心に、時期・開催地・テーマをまんべんなく選んでいます。
参考になるかはわかりませんが、それぞれの科目を受けた感想も書いていこうと思います。
エキシビションデザイン(空間 / 東京)
期間限定の展示空間を計画、模型の制作をする科目。
福岡県の太宰府天満宮の参道で販売されている「うその餅」という和菓子の展示会出展ブースをテーマに制作をしました。
鷽(うそ)という鳥をモチーフにした郷土玩具が入っているこの和菓子の遊び心をいかに表現するかというところで試行錯誤。
期間限定の空間ということで、いままの課題とは少し違ったデザインのアプローチが必要で新鮮でした。
ちなみに、展示会ブースのデザインの考え方に関してはこちらのサイトがとても参考になります↓
時間が足りずに完成度としてはそこそこでしたが、やりたかったことはほぼできたので満足です。
ショップデザイン(空間 / 東京)
「東京のど真ん中にコンセプトショップをつくる」という科目。
あらかじめ立地が設定されており、土地のリサーチから客層に合わせたテーマとコンセプトの設定、図面と模型制作まで、店舗空間づくりにおいてかなり現実的なデザインプロセスを体験できる授業でした。
このあたりの経験はTW科目「ローカルデザイン」と「ちいさなショップ」にも活かされたような気がします。
最終的には世界観の表現のために建築基準法を無視した建築物が出来上がりましたが、評価はそれほど低くなくて一安心。
この日はちょうど1年次スクーリングと日程がかぶっていたため、講義後に新入学生も交えて関東組の学友と盃を交わしたのはいい思い出です。
デザインマネジメント(コト / 遠隔)
この科目は既存のおみやげの新しいパッケージをデザインし、リブランディングするというもの。
TR科目「ブランディングデザイン論」の実践といった感じで、競合や産地のリサーチ、コンセプト立案から実際にパッケージとしてデザインにどう落とし込むかまで、「商品をより魅力的に見せるためには?」ということを徹底的に考え抜きます。
過去の課題の中でも一番といっていいくらい満足いくの出来に仕上がり、ブランディングデザインの楽しさを再認識しました。
遠隔授業はたっぷりと制作に時間を使える反面、自分以外の作品を直接見られないというもどかしさがあります。
デザインするうえで意識したことなどをInstagramにも載せています ↓
すまいの空間構想(空間 / 遠隔)
「土間のある家」をテーマに2階建て住宅の平・立・断面図、矩計図、パースを描くというまさに建築系科目の総仕上げともいえる内容で、おそらくいままでの科目の中で最もボリュームの多い科目でした。
そもそも空間系に進む予定はなかったのですが、「せっかく空デに入ったし」という部分と、「いつか土間のある一軒家に住みたい」という願望があったので軽い気持ちで受けてみた感じです。
結果的には建築に関する圧倒的な引き出しのなさゆえに3年次スクーリングの中で最低点を叩きだすのですが、自分では思いつかないような完成されたアイデアを拝見できたことや、2年次TW科目以降は触れる予定がない建築系科目を(自分なりに)やり切ったぞという満足感はありました。
(お見せできるレベルではないので作品写真は割愛…笑)
伝統とプロダクトデザイン(モノ / 京都)
後継者不足、需要の減少など多くの問題を抱える伝統産業をデザイン的な視点で新たにとらえ直そうという科目。
自分が伝統工芸の世界で仕事をしているので、入学当初からこの科目は絶対に受けたいと思っていました。
歴史も技術もすでに確立されている物を新しくするということは想像以上に難しく、事前課題の時点でかなり悩まされた記憶があります。
大阪府堺市の『堺打刃物』を題材に、「刃物と暮らしの接点をつくる」をコンセプトとして女性が使いたくなるような刃物を目指して制作しました。
「実際に自分で作るなら…」ということを想像しながらデザインしたのですが、製造工程まで考えてデザインしているという部分を評価していただけたのはとてもうれしかったです。
ちなみにこのときに考えたアイデアをもとに、後日、実際に作品として制作しています ↓
コンパクトデザイン(モノ / 京都)
「おでかけのデザイン」をテーマにコンパクトなプロダクトを制作する科目です。
「コンパクトなモノ」というテーマが非常に幅が広く、かつ「〇〇をコンパクトにした便利グッズ」はだいたい世の中に出回っているので、コンセプト立案とアイデア出しに最も苦労した科目です。
結果的に事前に考えていた案をすべて捨て、当日にぶっつけで制作するという暴挙に出たのですがそれが逆に功を奏したのか、最終的には自分がめちゃくちゃ欲しいプロダクトになりました。
パーツが多く複雑なプロダクトだったのですが、なんとか2日で完成できたのは2年間必死に課題をこなしてきた努力の賜物だと思いたいです。
3年次スクーリングの感想
3年次スクーリングを受けて良かったことは、東京と京都のどちらも受けたことで関東・関西の学友どちらにもたくさんの刺激と学びをもらえたことと、空間・モノ・コトすべてに取り組んだことで自分の向き不向きが再確認できたということです。
自分的にはなかなかいいチョイスだったかなと思います。
ちなみに学友の話を聞くと「空間体験のデザイン」や「あかりのデザイン」なども評判が良かったようです。
1・2年次のスクーリングは基礎固めの印象が強かったのですが、3年次スクーリングはいままで身に着けたスキルの応用力を試されるので大変でありながらもすごく楽しい科目ばかりでした。
TW科目
2023年度に取り組んだTW科目は「ローカルデザイン」と「小さなショップ」のふたつです。
ローカルデザイン
ある地域の農産物を設定し、産地のリサーチ、コンセプト立案、ロゴの作成、パッケージデザイン、販促企画までトータルでデザインする課題です。
3年次スクーリングのデザインマネジメントと近しい内容ですが、パッケージデザインで終わらない、+αの要素はいくらでも膨らませることができるのでどんなアイデアを詰め込むかというのがこの科目の醍醐味かなと感じました。
題材にはデザインマネジメントと同じく小豆島を選び、醤油の搾りかすを肥料としてつくられる『醤(ひしお)トマト』のブランディングを考えました。
トマトをきっかけに、400年という歴史を持つ小豆島の醤油の魅力発信や伝統的な木桶を使った製法の存続が危ういという小豆島が抱える課題まで伝えられるようなデザインを制作しました。
結果的には非常に高く評価していただいたものの、デザインマネジメントと似た「シンプルオシャレ」なデザインに逃げ過ぎかなというところは自分の中で反省点でもあります。
デザインの幅を増やしていくというのが今後の課題になりそうです。
小さなショップ
とあるオーナーからの依頼を受けた想定で小さな書店を計画するという課題。
2.5㎡という店舗面積は構造的な考慮をしなくてもいい分、想像よりもかなり狭く、できることが限られてきます。
限られたスペースでいかに書店としての魅力を表現するかというのがポイントのように感じました。
リアルな書店とオンラインショップの違いを考えたとき、「意図しない本との出会い」がリアル店舗の大きな魅力だなと感じたので、『月替わりで誰かの本棚の本をそっくりそのまま持ってくる』というコンセプトで書店を計画しました。
この課題では縮尺1/20という詳細な図面を描く必要があるのですが、「そもそも木造建築ってどうやって建てるの?」というところからはじまり、図面にもなにをどこまで描けばいいのかが全く分からず、とにかく図面に関する本を片っ端から読み漁っては頭を悩ます日々が続きました。
おかげで木造建築をどう建てるかというところから屋根や外壁の仕上げの種類まで包括的に学ぶことができたので、とてもいい課題だったように思います。
この課題をもって空間系の科目はすべて終了。
制作過程の苦労も相まって、とても思い入れの深い作品です。
TWの感想
実はふたつとも前年度の3月ごろから取りかかってはいたのですが、アイデアからコンセプトにするプロセスで一進一退し、3年次スクーリングの事前課題に時間を取られたというのもあって、結局提出できたのは秋でした。
時間をかけるほどにいいアイデアが浮かび、スクーリングで得た知識を応用することもできたので結果的にはよかったのですが、それに伴って3年次TWが追いやられる形になってしまったので今後の自分の頑張りに期待したいところです。
また、ローカルデザインの制作にあたって「空間体験のデザイン」でも講師をされている松倉早星先生の『課題をクリエイティブで解決する企画術』というセミナー動画を購入して取り組んだのですが、リサーチからデザイン、プレゼンシートの作成にいたるまで非常に充実した内容で、課題を通して確実にレベルアップを実感しました。
クーポンを使えばスクーリング1回分程度の金額なので十分購入する価値はあると思います。
TR科目
2023年度に取り組んだTR科目は「インテリア計画論1」「インテリア計画論2」「空間構成材料」「生活空間デザイン史」です。
「インテリア計画論2」と「空間構成材料」は実際に自分の目で調査したものをレポートにするという内容だったので、スクーリングやプライベートの旅行の際に題材になりそうな空間を探しながら、秋ごろまでかけてじっくり取り組みました。
基本的には自分の気に入った空間について書くのでそれほど苦労することなく取り組めたと思います。
一方で、テキストに書かれた建築家の作品について考察する「生活空間デザイン史」は建築に関する苦手意識もあって冬季までずれ込んでしまいました。
これは卒制着手するために必須の科目なのでかなりギリギリの戦いでした…。
なんとか単位はもらえましたが他のTR科目に比べて辛口の印象なので、これから取り組む人はできるだけ早めの着手を強くおすすめします。
2023年度のまとめ
冬季以降は予定をあけておくべし
これは卒制に着手できそうだという段階になってやっと感じたことですが、年明けから新年度まで一瞬で時間が経ちます。
4月に入ったらすぐに卒制テーマのプレゼンがあるので3月までにはある程度の方向性は決めておきたいです。それと同時並行で課題作品集の制作と残した課題の制作も入ってくるので、はっきり言ってめちゃくちゃ余裕がないです。
TW、TRは夏季提出まで猶予はあるとはいえ、再提出のことを考えると可能であれば春季までには終わらせたいので、卒制着手前に3年次TWをひとつでも片づけられたらかなり楽になると思います。
学びの深さとスケジュールの兼ね合いは永遠の課題ですが、冬季に余裕をもって計画を組んでおくほうが絶対にいいです。
スクーリングは対面が絶対におすすめ
これは3年次スクーリングに限ったことではないですが、スクーリングは対面が絶対におすすめです。
まわりの作品を直接見られるというのもありますが、およそ仕事や自分の生活の範囲では出会わないような様々な年代・バックグラウンドをもつ人たちと会えるということ自体が対面授業の大きな魅力だと感じています。
自分自身、同じ目標に向かって切磋琢磨する仲間と過ごす時間は何物にも代えがたい財産になっています。
お住いの場所によっては対面が難しい方もいるかとは思いますが、可能であれば1度だけでもぜひ東京か京都でスクーリングを受けてほしいです。
とにかくインプットしまくる
入学する前はほとんど本を読む習慣がなく、年に4冊も読めればいいほうでした。(でも本自体は好き)
TW科目の「デザインファイル」をきっかけに、意識して本を読むようになり、だいたい月10~20冊くらいのペースで読んでいます。
毎月読んだ本をこちらにまとめてます ↓
本に限らず、自分が見たものや経験したこと、好きなことや気になって調べたことがふとしたときに課題につながるという経験は何度もありました。
本でも映画でも美術館でも、学割を最大限に活用しながら来るべきひらめきの瞬間に備えてガンガンインプットしていきましょう!
さいごに
1年目に比べれば課題の数は少ないながらも、一つ一つのボリュームが大きく、とにかく必死に頭と手を動かし続けた1年でした。
その分やりがいもあるし、得られるものも大きかったように感じます。
一方で、やることの多さに追われ、次へ次へと流されていってしまいがちだったので、課題に取り組んだあとに一度立ち止まり、得られた学びを振り返る時間が取れるとよかったなといまになってちょっと反省しています。
ともあれ、自分の好きを全力でぶつけながら成長できる機会があることは本当にありがたいことだなと改めて実感しています。
すべては、こちらのペースに合わせて根気強くサポートしてくださる先生方や多くの刺激と楽しい時間を与えてくれる学友たち、見えないところで支えてくれる家族のおかげです。
この感謝の気持ちはいつかなにかの形で返したいと思います。
順調にいけば卒業まであと1年。
想像しただけですでに空デロスになりかけていますが、残された時間を精一杯楽しんでいきたいですね。
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