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観測史上最暑の夏 「命にかかわる」と言いながらテレワークをしない不思議:佃均

写真は「ないよりはマシ? 東京・西新宿の高層ビル群で:筆者写す」

 夏休みももうすぐ終わり。筆者にとってBGMのテレビはパリ五輪の後日談と甲子園(高校野球)とオオタニさん、新聞は自民党総裁選とネタは尽きることがないようです。そうしたなか、前回も書きましたが、2024年の8月、記憶に残るのは酷暑・猛暑ではないかと思っています。
 筆者の住まいは海まで直線5km、周りに緑が残っているせいもあって日中35℃超えはなかなかありません。それでも午前8時台に30℃超え、熱帯夜が続くとさすがに閉口です。7月1日から過去30年の平均と当日の最高気温を折線グラフ化してみたところ、平均を下回ったのはたった3日でした。
 南海トラフ大地震注意だろうがモンスーン・ジャイアの台風多発だろうが、相変わらず市内は外国人観光客で溢れかえり、対して浜辺は人影が少な目に見受けられます。お盆過ぎでもこの灼熱となれば、小洒落た海の家に逃げこむしかありません。

■黒潮の大蛇行で海水温が+5℃
 酷暑・猛暑は東海地方から西日本全域が顕著で、福岡県の太宰府や兵庫県の淡路市郡家では最高気温35℃超の日が1か月以上、名古屋・大阪なども1か月近く続いています。国内最高気温41.1℃を記録した浜松、熊谷、高温常連の多治見、日田、山形、甲府など、「暑い街」が全国に広がっています。
 三重大学の立花義裕教授(地球環境学/生物資源学)の説明では、この酷暑・猛暑の直接的な原因は「スーパージャイアント黒潮蛇行」だそうです。地球温暖化で温められた黒潮が北海道・襟裳岬の沖合まで北上し、列島全体を暖気団が覆う。太平洋高気圧をチベット高気圧がフタをして、熱を逃さない。大量の水蒸気を含んだ雲が線状降水帯を生み、晴れれば猛暑、いきなり豪雨、降れば洪水というわけです。
 同教授によると、黒潮は10年前は千葉県の銚子沖で東に方向を転換していたのですが、2017年ごろから三陸沖に北上するようになったとのこと。気象庁発表の「最高気温歴代ランキング」で上位18位21地点のうち14地点が2017年以後に記録しています。宜なるかなです。

■原発0で首都圏の電力は8%の余力
 メディアを通じて公表される最高気温は風通しの良い日陰に設置された百葉箱の中ですから、カンカン照りのアスファルト路面近くは50℃超かもしれません。トップに載せた冷却ミストは高層ビル群の反射熱で文字通り「焼け石に水」、ないよりマシの気休めにすぎません。
 テレビのニュースやワイドショウは「命にかかわる」「災害級」の枕詞で連日の猛暑・酷暑の諸相を伝え、「不要不急の外出は避けるように」「水分補給は忘れずに」「我慢しないでエアコンを」と訴えます。このうち「我慢しないで」の対象となっている高齢者(例えば筆者の義母:98歳)は、耐えられないほどの暑さを感じないので、我慢しているつもりはないのです。高齢者世帯の猛暑対策は、もはや公的福祉介護の範疇です。
 筆者はエアコンのスイッチ・オンを厭わないのですが、ふと気にかかるのは「電力供給は大丈夫か」です。東日本大震災(2011年3月11日)から13年、原発は関電6、四電1、九電4の計12基。東日本では1基も動いていません。
 資源エネルギー庁が今夏前(6月3日)に公表した資料には、「全エリアで安定供給に最低限必要な予備率3%を確保できる見通し」とあります。最も電力需要が大きい東京エリアの予想予備率は8.0%(昨年は4.8%)、これに北海道10.5%(同7.6%)、中部10.6%(同11.7%)が続いています。原発は要らないということになってきます。

■産業界も労働界も「命」は二の次三の次
 それと同じように「命にかかわる」+「不要不急の外出は……」で思い出すのは、2020年春先のCOVID-19(新型コロナウィルス感染症)拡大防止、そのときに喧伝されたテレワークです。朝夕の通勤電車と渋滞が緩和し、首都(大都市)集中を見直す意識が高まりました。
 わたしたち報道・評論・編集にかかわる仕事はいっぺんに「在宅」型が主流となり、人と会うことが前提とされた営業活動でもリアルとオンラインのハイブリッドで大きな支障はありませんでした。社会・経済のCPS(Cyber Physical System)/DX(Digital Transformation)の第一段階を実証したのですから、いまこそ「デジタルで命を守る」を実践すべきだと思います。
 政府や与党、霞ヶ関は「社会を動かすため」、経済界は「経済を動かすため」という理由で現状維持、「命は二の次三の次」かもしれませんが、野党や労働界が流れに竿を差すようでは困ります。真に「国民の生命・財産・生活を守る」というのなら、声を大にしてテレワークを推奨すべきでしょう。
 気象予報の「もうそろそろ」はオオカミ少年になりつつあります。ともあれあと一月ほど、「猛」「酷」ではないにしても暑い日が続くようです。皆さま、くれぐれもご自愛くださいますよう。

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