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【010】「間口を広げる」ってどういうこと?『コア』と『マス』の話

今はテレビ屋ですが、もともとは舞台演出・プロデュース出身ということもあって、時折、伝統芸能や舞踊・演劇などの公演の相談を受ける事もあります。

僕に相談してくれるということは、現状に何かしらの「行き詰まり」を感じていて、どうにかして「新たなフェーズ」に移行したいと思っているということなのですが。さて、どこに向かいますか?というお話です。

◆ まず「間口」を広げないと始まらない

伝統芸能を例に挙げてみると、演目も知らないし、出演者も知らない、何より楽しみ方が分からない。だから、多くの人はチラシやポスターが貼られていたとしても、自分に関係ないと思っているので目にも入らない。

なので、少数の固定ファンと、その芸能を嗜むアマチュアからプロまでのプレイヤーとその友人・知人・親兄弟までに客層が限定されてしまっている。この状態を「間口が狭い」と言います。

バレエやフラメンコ・日舞などの、一定数の「習い事」人口を獲得しているジャンルは、一見成り立っているように見えますが、常連客と関係者で賑わう「会員制バー」みたいなことなので、そこには『コア』しか存在しない状態だと言えます。

◆『コア』×『コア』のコラボもいいけれど・・

「会員制バー」で運営が成り立っていればいい、という考え方もあると思いますが、それではスケールしない。もっと広く、多くの人に楽しんで欲しいと願う人々もいます。

そんな人々が最初に考えるのがコラボ。劇団同士がコラボしてみたり、伝統芸能とダンスがコラボしてみたり―—。素敵な試みだとは思いますが、それぞれの良さが半減して、どっちつかずになっていることも多く、固定ファンが倍増・・どころか、双方のマイナスプロモーションになっているのではないか?と思うこともあったりします。

◆ ヒントはユーロビート!?

話は一気に変わりますが、90年代に爆発的に流行った「ユーロビート」という音楽ジャンルがあります。とっつきにくい・マニアックと思われていたヨーロッパのダンスビートが何故、日本で『マス』の市民権を得たのか?

もちろん、ディスコブームなどの時代の流れにマッチしたこともありますが、入口は「みんなが知ってる曲」を徹底的に「カバー」して、しかもオリジナルを超える「すげー、カッコイイ!」アレンジをしたから、なんですよね。

「あ~知ってる」「聞いたことある」って、間口を広げる上では最強なんです。それをカバーして、知らなかったジャンルの表現が「なんかカッコイイ」「面白そう」と思わせられたら・・・

今はYouTubeで予告編も出せるので『マス』な人々の目を向かせることって、その1点にガッツリ狙いを定めれば出来ると思いますよ。

◆ 既成概念を取り払って、やり切る

今まさに、リアルタイムで相談を受けているので、具体例は書きませんが(笑) 極論を言えば、能で「アンパンマン」をやっちゃいけないって誰が決めたんですか?って話です (極論ですよ?w)。

「間口を広げる」とは、
 言わば「目線を合わせる」こと。

仮に「子供たちに伝統芸能を好きになってもらいたい」というミッションであれば、自分たちの基準ではなく、子供たちが大好きなものに自分たちの目線を合わせる。

その中で、自分たちの表現を余すところなく見せつける!(変に別ジャンルの表現に寄せない)

最初から「高尚な演目」を見せたい気持ちはよーく分かりますが、それが「会員制バー」の高い敷居を作っていることを肝に銘じて『マス』に向けて「間口を広げる」ことをお薦めします。

【余談】バレエ版『忠臣蔵』の話

余談ですが、かつてモーリス・ベジャールという有名なバレエの振付家が忠臣蔵」をバレエ化したことがありました。素晴らしい着眼点だと思います・・・が、

個人的には、コアなバレエファンに向けた「高尚版」と、バレエを見たことがないマス向けの「大衆版」を作ればいいのに、と思いました。

「大衆版」は、みんなが知ってる「忠臣蔵」名場面をハイライト的に短く、価格設定も下げて。(なんなら「初めて割」とかも作って)

海外だと、全編やらないハイライト版をプレビュー公演として安く提供することもありますし、そういうところからジワジワとファンを形成(育成)し続けてきた結果として、大勢のコアファンを擁しているのではないでしょうか?(文化・芸術は大人の嗜みな国民性もありますが・・)

「間口を広げて、マスからコアへ」観客育成ロードマップを作りましょう。という<入口の話>でした。

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