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迷探偵と探し物

子どものときから探し物は得意です。

探し物をしているとき、脳内にアドレナリンのような物質が出てきますので、その気になれば永遠に探し物をしています。

フェンスの向こうにかっ飛ばしてしまったテニスボールを、草むらからほいほい見つけられますし、

鍵を挿しっぱなしにして盗まれてしまった自転車を駅前で見つけ出したこともあります。

探し物をすることにそこまで抵抗がないのは、きっと父親のおかげです。

わたしはよく、ゲームのやり過ぎで、ゲーム機を没収される悪い子どもでした。

家族が寝静まった夜に隠されたゲームをいそいそと探し始めるのですが、電気をつけるとバレてしまうので捜索は難航しました。

そんなとき、わたしの机の上に一枚のメモが置いてあることに気づきます。

優秀な助手からのメッセージです。

そこには『トイレ』とだけ書かれていて、それを頼りにトイレに向かってみると、次は『キッチン』と書かれた別のメモ用紙を見つけます。

そういったやり取りを経て、母親の枕元に隠してあるゲーム機にようやくたどり着くのですが、その頃には謎の達成感に満たされています。

探し物が見つかって清々しい気持ちです。
ゲームはまた今度にしようかなと結論になります。

そのときの体験がずっと残っていて、何かを探すときの楽しさに繋がっているのだろうなと思います。

最近はからっきしです。

物をなくすたびに探しているのですが、部屋を引っ掻き回しても見つかりません。

プレゼントで頂いた大切な折りたたみ傘。どこかで落としたのでしょうか。見つからなかったので新しい傘を買いました。

運転免許証。どこかで使った後に行方不明になりました。交番に遺失物の届けを出して、個人情報を悪用されないように諸々の手続きをしました。

しばらくして、ふたつとも、ひょっこりと出てきました。

折りたたみ傘は、普段使っていないカバンのサイドポケットに。

免許証は、普段使わない自宅のコピー機に挟んでありました。

無事に見つかってとりあえずは安心しましたが、あの頃のように見つけてあげられなかったことに寂しさを覚えます。

探し物が得意であることは、裏を返せば、探し物をする機会が多いということ。 

今までは上手くバランスが保たれていたのに、少しずつ天秤が傾いてきています。このままだと、物をなくすことが得意になってしまいそう。

あのときの助手を求めてたまには実家に顔を出してみようかな。両親がわたしの記憶をなくしてしまわないうちに。

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