映画『しあわせの絵の具 愛を描く人モード・ルイス』私にはあなたが必要
二つの大きな幸せを描いた作品です。ひとつは、他人からどう思われても、本当にお互いを必要としあう人と共に生きる幸せ、もうひとつは自分の大切な作品が外の世界からも認められる幸せ。
映画はカナダの実在の画家モード・ルイスを描いたものです。彼女の絵は明るく素朴なタッチですが、絵からは想像もつかないような半生でした。公開時に映画館で、2回目はAmazonプライムビデオで鑑賞しました。カナダ・アイルランド合作。2016年製作。
ストーリー
エベレットを演じたイーサン・ホークが良いです。エベレットは孤児院で育ち、十分な教育もうけておらず、気にいらないことがあればモードを殴るような人。気持ちを言葉で伝えることが本当に苦手です。
住んでいる小屋には電気も引かれず、身に着けている服もぼろぼろですが、魚の行商は真面目にこなしています。
モードを演じたサリー・ホーキンスはリウマチにより身体が不自由であるという役どころですが、か細い中にどこか生きる力を感じました。
家政婦として働くモードのたった一つの楽しみは絵を描くこと。エベレットの古い小屋の壁に、捨ててある木の板に、ひたすら描き続けます。まるで、生きることとは絵を描くこと、と言わんばかりに。
エベレットはメモを書くことが苦手で、客と行き違いがあり、モードがメモを作り助けました。その時初めて、モードの描いた絵が客の目に留まり、お金になります。
「絵が売れた」
どんなに、嬉しいことか。
何よりも大切にしていて、彼女にとっては魂みたいなものが認められ、その対価を得るという幸せ。
彼女の絵が欲しいといわれた時、無料で渡すのではなく、絵に値段をつけたのはエベレットの方でした。生活のためですが、値をつけて本当に良かった。
二人は互いに信頼し、無くてはならない関係となり正式に結婚します。
若くもない、お金もない、教養もない、町の人達にも好かれていない、そんな二人でしたが、結婚式の夜に二人がお互いを靴下にたとえるシーンが心温まります。
人は誰でも本当に求められて、また与えることができる時、どんな事にも代えられない幸せを感じる生き物だと思います。その代役のいない相手を見つけ、共に生きた二人は凄い。
絵が売れるようになっても、エベレットの小屋には電気を引かず、建て替える事もしないで、二人は生活を変えなかったそうです。