明治時代以前の言葉について
大分前にTwitterに、
>明治以前の出典の引用例を書いていたら字数が足りないのでいずれnoteにまとめます。
と書いていたのですが投稿したつもりで忘れてました。
漢字の熟語は中国から来たものが多いので大体明治以前からあります。
愛情(万葉集:8世紀)、時代(9世紀)、世界(竹取物語:9世紀末)、社会(18世紀後半:江戸時代)など。
むしろ無かったものを書いた方が早いです。
可能 " 性 " の「性」や、基本 " 的 " の「的」などの用法は明治以後です。
ネタ、トーシローなどの逆さ言葉は江戸時代からだそうです。
ネタ=種、トーシロー=素人です。
以下、コトバンクからの引用です。
コトバンク [ 辞書・百科事典・各種データベースを一度に検索 ] (kotobank.jp)
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ば・れる(バレる):③ 秘密・悪事・陰謀などが発覚する。隠していたことがおもてざたになる。
※雑俳・篗纑輪(1707)四「墨ぬりの紋が顕(バ)れたる横しぶき」
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きつい(キツい):③ こらえたり、なしとげたりするのが大変である。たえがたくつらい。
※土井本周易抄(1477)四「家を治めはきつからうぞ」
④ 人の気性がはげしく勝気である。また、そのように感じさせる様子である。
※史記抄(1477)一九「言は性がきりきざむ様にきつうて遠慮がないぞ」
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ぐる(グル):しめし合わせてたくらみをなす仲間。共謀者。一味。多く、悪事をたくらむ仲間をさしていう。
※浄瑠璃・鑓の権三重帷子(1717)上「目代になる此の乳母はぐる也」
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ぐれる(グレる):③生活態度が地道でなくなる。不良化する。
※滑稽本・浮世床(1813‐23)三「イヤ全体かたいお方でございましたが、どうして又ぐれさしったか」
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でかい(デカい):大きい。いかめしい。また、すばらしい。はなはだしい。でっかい。※驢鞍橋(1660)下「扨扨でかひ敵を持たる人哉」
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マズい(不味=まず・い・まづ・い):② ぐあいが悪い。不都合である。
※人情本・英対暖語(1838)四「付合の女郎買ぐらゐをしたと言って、かならず麁情(マヅク)思はねへがいいヨ」
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シャレ(洒落):③ その場に興を添えるために言う滑稽な文句。ある文句をもじって言う地口(じぐち)。だじゃれ。警句。冗談。
※洒落本・遊子方言(1770)「こっちへ木のめ田楽木のめ田楽と、しゃれをいふ」
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オシャレ(御洒落):① みなりや化粧などを、洗練された、気のきいたものにしようと心を配ること。また、その人や、そのさま。おめかし。おしゃらく。「おしゃれをする」「おしゃれな人」 ※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)三「お初どんがあんなにお洒落(シャレ)だよ」
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シャレた(洒落る):① 服装・動作・言語などすべてが当世ふうで気がきく。あかぬけしたふるまいをする。もまれて洗練される。
※評判記・野郎虫(1660)竹中小太夫「しゃれたる所は、雪のうちのもうそうのおもひ入あり」
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以下は二字熟語で明治時代に作られたと思われていそうだけれど、実際はそれ以前からあったものです。
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愛情:①相手をいとしく思う気持。人や物に対するあたたかい心。
※貞享版沙石集(1283)八「若し愛情なくは生死断絶せん」
※万葉(8C後)四・五三五・左注「安貴王娶二因幡八上采女一。係念極甚愛情尤盛」
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世界:※竹取(9C末‐10C初)「世界の男、あてなるも賤(いや)しきも、いかで此かぐや姫を得てしがな、見てしがなと、音に聞きめでてまどふ」
※曾我物語(南北朝頃)一「疑ひ事わりなれども、せかいをせばめられ、耻辱にかへて助かるなり」
※宇津保(970‐999頃)楼上下「しらぬせかいに、とし若うしていきつたはり給つつ、悲しきめの限りを見給て」
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生活:※徒然草・七五「生活・人事・伎能・学問等の諸縁を止めよとこそ、摩訶止観にも侍れ」
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人間:※今昔物語集「天人は目不瞬かず、人間は目瞬く」
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冗談:たわむれにすること。また、そのさま。いたずら。「冗談が過ぎる」
※「―な女どもだ。みんな着物をかぶってくるは」〈滑・膝栗毛・六〉
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軽口:① (形動) 口が軽く、軽率に何でもしゃべってしまうこと。また、そのさま。おしゃべり。
※日葡辞書(1603‐04)「Carucuchina(カルクチナ) ヒト」
② (形動) 語調が軽快で、滑稽めいて面白みのあること。また、そうしたことばや話。
※評判記・吉原讚嘲記時之大鞁(1667か)ときのたいこ「竹こまのかる口たたけど」
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意味:※随筆・麓の色(1768)四「所詮家暮(やぼ)なる内にはやく遊を止て、〈略〉されば此里に来ぬが通者なりといひけん金言を意味すべし」
※黄表紙・鸚鵡返文武二道(1789)「人を木馬にしてのればたがいにそのいみをのみこむ事はやしとて」
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助言:※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四「おれが助言して、勝べい書せたア」
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社会:※日本詩史(1771)三「以レ故社会綿綿二十有余年」
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時代:※徒然草(1331頃)八八「四条大納言撰ばれたる物を、道風書かん事、時代や違侍らん。覚束なくこそ」
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自由、友達なども明治以前からです。
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やば(ヤバい)[形動ナリ]法に触れたり危険であったりして、不都合なさま。けしからぬさま。
「おどれら、―なことはたらきくさるな」〈滑・膝栗毛・六〉
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マジ:※洒落本・にゃんの事だ(1781)「気の毒そふなかほ付にてまじになり」
カナ表記は基本的に和語です。漢字が無いものは平がなかカタカナの二択ですが、助詞の後に平がなが続くと区切りが分かりづらかったりするので私はカナ表記使うことが多いです。
あとササゲ豆のササゲのように漢字は機種依存文字で「?」になってしまって漢字表記出来ない場合もカナ表記しています。
時代物を書く時にいちいちコトバンクで明治以前からあった言葉か調べていましたが、大体の言葉はあったのと、現代人が現代文で現代人向けに書いている小説なので明治以前にはない言葉も使っています。
追記:前述のように現代人向けに現代語で書いているものはあまり細かいことを気にする必要はないと思いますが、引用例を見ると分かるように江戸時代にはあったけど、平安時代にはなかったものは結構あります。
気にする方は初出の時代を見た方が良いと思います。
ちなみに新しい言葉は意外と和語に多くて、漢字の熟語は古いものが多いです。
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