0227
春が来る気配がした
なんとなく、うすうす感じていた冬がいなくなっていた感覚
正直まだもう少し寒さに身を縮こめるのを楽しんでいたかったし、本当の一年の終わりを迎えたくなかったから気づかないふりをしていただけだった気がするけど
黄色くて細い光、蕾もまだつけてない若い葉っぱ、まっすぐ前を向いてられないほど眩しい始まりの輝き
街が浮かれ始めてる、認めるしかない、春が来るんだ
生き物たちが冬眠から少しずつ目覚めてくる、少し前の地球よりもほんの少しだけ命の動きが見えやすくなる
寒くて縮こまりながら歩いていた冬と、暖かさと変化に少しだけ顔を上げて歩く春
春の空を青いと思うのは、私たちが空を見上げて空気を吸い込む回数が多いからかもしれない
花が咲いている時間は本当に短い
前を見て歩かなくては
一瞬で過ぎてしまう今年の命の始まりを覚えておかなくては
春の風を受けるたびに、この春の光の中で溶けるように消えられたらと思う
私も春の一部になって、きらきらしたまま知らない街に吹き下りて誰かの始まりを予感させたい
きっと幻想なんだろうな
光も風も、私が思ってるほど楽しくないかもしれない
知らないから勝手に美しいものだと決めつけているだけだ
理想を押し付けるのが得意だから、期待しすぎてしまう
知らないままだから勝手なことが言えるんだ、見たこともない世界を人々が夢見たのはいつだってそんな理由だったのかもしれない
ずっと新境地の方が幸せなら誰も過去にとらわれたりしない
でも、死ぬなら春がいい
まだ始まりかけの春のくせに、なぜかもう終わりを考える
春が散ったら真っ白な夏がきて、曖昧な秋と、そしてまた静かな冬が来る、一年が完成する
この変化の中で私はどうなれるだろうか
ここ最近で私は少し理屈っぽくなった気がする、本当はもっと水のように生きていたいけど、固まったものはいつかまた溶けて柔らかくなったりするだろうか、雪解けのように透き通ったものでいられるだろうか
なんて、そういうとこだよ
知らない土地を知って自分の無知を笑えるから歩くことを楽しめる人間でよかったと思う、頭を空にして感覚に敏感でいられるから歩くのが遅くてよかったと思う、昨日はかかっていなかった洗濯物を見て人の生活に思いを馳せる人間で、少し楽しいなと思う
結局は私は自分が好きだよ
春が来る気配がする
230227
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