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牛の親子に気付かされたこと
カリフォルニア・セントラルコーストに住んでいた時については、こちらの投稿で書かせていただいた。
商業施設が充実している隣町に行く道すがら、よく見かけたのは、なだらかな丘陵に広がる牧草地で、放牧されている牛たちの姿だった。
黒い牛たちだったので、食肉用のアンガス牛だったと思われる。
以前、長距離ドライブをしていた時、大規模な牛の飼育施設の側を通ったことがあった。
柵に囲まれて、たくさんの牛たちが狭い場所で飼われていて、その施設と道路はだいぶ離れていたはずなのに、とてつもなく強烈な臭いにおそわれた。
そこで飼われている牛たちは、さぞかしストレスを感じてるんじゃないかな、と思ったのをおぼえている。
飼育環境で肉や卵の品質が変わるということで、こちらでは牛肉の場合grass-fed (牧草飼育)とか、卵の場合はfree range (放し飼いで飼われている鶏)といったような表示がされていて、無表示の普通の穀物飼料の牛肉や、ケージの中で産んだ卵と比べて値段は高い。
私も、ダイエットをしていた時などはgrass-fed表示の肉や乳製品をなるべく買っていた。成分が普通の牛肉、乳製品に比べてダイエットに効果的だとのことだったからだった。
そして、実際こうして、飼育環境を目の当たりにした後は、ストレスいっぱいの環境で育ったものを、自分の口に入れるということに対し、いろいろ考えられさせるところがあった。
乳牛や、卵を産む鶏たちは別として、食肉用の牛や鶏にとっては、しかし、どんなに環境がよかろうが、悪かろうが、所詮は殺されてしまう身であることは変わりない。
なので、飼育環境について、最近よく言われる倫理観を持ち出して、どうこういうのも、ベジタリアンでもなく、命をいただいている身としては、どうなのかな、とも思ってしまう。
ものすごい臭いがした飼育施設と対照的に、牧草地で放牧されている牛たちはとても、平和でのびのびしているようにみえた。
その中で、親子が仲良く草を食んでいる姿が目にとまった。
子牛はとてもかわいくて、母牛とともに、青い空のもと美味しそうに草を食べていて、とても幸せそうだった。
その光景に、ふいに心を衝かれ、涙ぐんでしまった。
彼らはそのうち殺されてしまうのに…。
もちろん知ってはいないはずだけど、でも万が一、映画「ベイブ」のように知っていたとしても、それでも、この瞬間、めいいっぱい生きて、幸せにしている…
走る車窓から見えた、一瞬の光景だった。
だが、よくスピリチュアルの類で言われる、「今この瞬間を生きる」ということって、こういうことなのか、と思わされた瞬間だった。