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「かしわ」の誤解。 その後

前回の記事はこちら。

私の記憶の中にある「次郎物語」では、鶏肉のことを「かしわ」と呼んでいたはず。コレを検証したいがためだけに、母へ連絡をとりました。

「ねえ、次郎物語って本、まだ家にある?」
「あるわよ。あの本はお父さん(私の祖父)からもらった物だから」
「そうだったの!?」

初めて知った新事実。あの本は母が中学校へ上がったときに、祖父が買ってくれたものだそうです。それは今(2024年)からざっと65年前のはなし。

そして母から送られてきた写メを読んだら、やはり「鶏」ではなく「かしわ」だった! よかった、耄碌したわけじゃなかった(笑

そして青空文庫と読み比べてみると、文章表現がかなり変更されていることに気づきました。

少年少女日本文学全集 第17巻 下村湖人集(昭和36年発行 ㈱講談社)

次郎も、一緒になって、しばらくそれを見ていたが、ふと彼は、母が毎日飲む肉汁(すうぷ)の事を思い起した。「鶏の肉汁にはもうあきあきした。何か変ったものはないかしら。」……そう言って眉根をよせながら、肉汁を啜(すす)っている母の顔が眼に浮かんで来た。

青空文庫 次郎物語 第一部 34.牛肉
https://www.aozora.gr.jp/cards/001097/files/42692_21002.html

――これ「かしわ」どころじゃないですね。かなり改変されてることに気づきました。何なら古い方に書かれていないことまで追記してあるじゃん……。

別の部分も確認してみます。

少年少女日本文学全集 第17巻 下村湖人集(昭和36年発行 ㈱講談社)

「お金は?」
「僕持っていたんだい。」
「お前のお小遣い?」
「そう。」
「何で牛肉なんか買って来たんだえ。」
「母さんが、鶏のスープはもう飽いたって言っていたからさ。」

青空文庫 次郎物語 第一部 34.牛肉
https://www.aozora.gr.jp/cards/001097/files/42692_21002.html

この部分も相当変わってますね。というか端折りすぎじゃない?
いやあ、かなり驚きました。これじゃ「かしわ」なんて吹っ飛んでても全然不思議じゃない(苦笑

実家にある「次郎物語」は、著者の下村湖人が亡くなって間もない時代の本です。なので恐らく、こちらの方が正しいのでしょう。
自分の作品がこんなふうに改稿されてたらちょっと悲しくなるかも。一次創作をしている身としては、少しもやもやする結果になりました。

ちなみに今回参考にした本の奥付は、判明したら後で追記したいと思います。

【追記】
奥付画像が届きました。
昭和36年発行。母が中学1年のときと同年なので、発行されたてだったのですね。

ハードカバーが380円!


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