5月にカレンダーを買う
僕の友人は、知人に僕のことを話す時、こんなふうに言う。
「あいつは5月にカレンダーを買うような奴だけど、悪い奴じゃないんだよ。」
僕の母はお酒を飲んだ時、僕についてこう語っていたそうだ。
「あの子には幼い頃厳しくしすぎたのよ。まさか5月にカレンダーを買うなんて。」
僕は5月にカレンダーを買った。トイレに掛けるものが欲しかったのだ。そのことを周りの人に話すと、彼らはもれなく僕を軽蔑し、そして僕の周りから離れていった。僕が5月にカレンダーを買ったという噂は街中に広がり、遂には誰も僕に近づかなくなった。5月にカレンダーを買ったことで、僕は5月にカレンダーを買った人として扱われるようになってしまったのだ。仕事はクビになった。離婚もした。子供は迷うことなく妻に付いていった。街ですれ違うほとんどの人が、5月にカレンダーを買った人を対する視線を僕に向けるようになった。その視線は粘っこくて、僕をとても嫌な気持ちにさせる。
今後僕は5月にカレンダーを買った人として生きることになる。ああ、なんでこんなことになってしまったんだ。僕はただ、5月にカレンダーを買っただけなんだ。