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身体から粘液出まくりながら自分の無力さを突き付けられた日[復路の初体験]

健康と体力には自信がある。
インフルエンザに罹ったこともないし、風邪で学校や仕事を休んだ記憶もほとんどない。

だから健康診断とか、中年になってからの人間ドックなんて、
受けなさいって会社が言うから仕方なく受けるけど、
結果が出たって
いやいやどこも悪いところないでしょ、って思って放置してたり。

とにかく私は健康なのだ、と信じてる。

でも去年ふと気付いてしまった、
母が昔、ピロリ菌除去の治療をしてたこと。
あれピロリ菌て親から子どもに感染するんじゃなかったっけ?
ましてや40年以上前、そんな事実は発見されてない時代、感染してそう。

そういえば、脂っこいもの食べると胃もたれして、消化するのに時間かかる感じなんだよなー
とか、
たくさん食べられなくなったよなー
とか、
私の胃は不健康な気がしてくる。

病は気からの典型例

だから決めたのだ、次の人間ドックでは初胃カメラを受けようと。
胃カメラは辛いって話よく聞くけど、私なら全然余裕な気がしてた。
だって、痛いって聞いてて長い間躊躇してたマンモグラフィーは、やってみたら余裕だったし。


そして人間ドック当日。
問診で先生が聞いてくる
「胃の内視鏡、初めてなんですね?」
私「はい」
先生「口から入れるのと、鼻から入れるのどちらがいいですか?」

おーっと!鼻から入れるパターンがあるって初耳だし、今聞かれても予備知識ないから決められない。

私「口と鼻、何が違うんですか?」
先生「鼻の方が楽っておっしゃる方が多いかもしれません。でも鼻は形状によっては入らないので、その場合は口に変更するか取りやめになります」
私「…」
先生「?」

どうしよう、こういう時エイヤ!って決められるのに、私。迷ってる、いや迷うんじゃなくて知識なさ過ぎて決められないし!
でもいい大人がここまできて迷ってる場合じゃないんだし。
今の説明だと、口が無理で鼻に変更ってパターンはないってこと?
ってか、この間があったその後で
口から鼻パターンありますか?って聞くのカッコ悪いってこと?

私「鼻にします!鼻で!!!」

いくつかの健診を受けて、遂に胃の内視鏡。胃カメラならぬ鼻から入れる胃カメラ。

椅子がほぼほぼスペースを占める個室に連れて行かれる。
そこで注意事項を聞かされて、鼻に麻酔を受ける。
麻酔の液体なのか鼻水なのかわからない粘液っぼいものが喉の奥に押し寄せて、もうオエッとなってくる。

やっぱ、嫌かも!

でももう後に引ける訳もなく、通りやすそうな左から入れましょうってことになる。
鼻にカメラ入れるとか、やっぱ、おかしくない?

嫌かも!
かも、じゃなくて嫌!

でもここで嫌と言える無邪気さを失った大人は、促されるままにベッドのある部屋へ。
横になる場所を細かく指定されて、穴の空いたマスクを装着したら、
よだれが出たら出しっぱなしにする
というさっきも聞かされた注意事項をまた聞かされる。

そんなに出るの?よだれ?
そりゃ出るか。

先生「それでは左の鼻にカメラ入れますね、リラックスするのがコツです」

いや、この状況でリラックスできなくない?

と思った3秒後、左の鼻に激痛。
なんで?麻酔の意味なくない?

しゃべっちゃいけないってことなので、全身で痛い!をアピールする。

この後数回の挑戦と失敗を経て

先生「鼻の形状的に難しいですね。どうしますか?口から入れますか?やめますか?」

えー、ここまできてやめるとかありえなくない?
と自分を奮い立たせ

私「口から!入れてください!」
(いやー、本当はもうやめたいよ)

ということで、穴の位置が違うマスクを装着されれ再開。
そう、マスクは「装着した」んじゃなくて「装着された」の、横になって頬を枕に付けたその体勢を保つために。
まな板の上の鯉ってこういうこと?
いや、介護されてる気分を味わってる???

そこからはひたすら恐怖と込み上げるオエッとの闘い。
リラックスしてください〜、って言われて、しまいには背中をさすられている。

介護!

理解してますよ、その日本語もその背中をさする意味も。
でもね、オエッてするのよ。どうにもなんないのよ。

出るままに流し続けてください、って言われたよだれと、麻酔の作用かわからないけど鼻水と、涙が溢れ出してる。

背後から背中をさする謎の役割の人「はい〜、鼻から吸って〜、はい〜、ゆ〜っくり口からため息つくみたいに、は〜」
ひたすら『〜』だらけの台詞を何度も聞かされる。

あれ?このデジャヴ感なに?

マタニティヨガのインストラクター養成講座だ。
陣痛にうまく対応するため、横になって自分が楽な体勢を探しながら呼吸する、
そのガイドの練習したなー。

人に教えるどころか、自分できてないじゃん。
オエッと闘いながらそんなことを考えている。
そんな場合じゃないのに。

そしてまだまだ溢れ出す
よだれ
鼻水

よだれ
よだれ

鼻水
よだれ

どれも粘度が高そうだ、と思ってる。
水分、って言うより粘液だなー、とか。

大人になって、背中をさすられながら、指示されたことすら上手にできなくて、粘液出しまくってる私ってホント無力だ。
笑えてきて少し楽になる。
でも背中をさする手は止まらない。

いやー、この歳になってこんなにも無力な自分感じるって凄いな。


鼻の形状から見て、今後も口から入れるしかないですねって言われた。
ちょっと残念な表情作ってみせたけど、
悪くないかもと思ってもいる。

年に一回自分の無力さ感じるのも悪くないかーって。


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