古賀志山──宇都宮市森林公園逍遥
12月後半、冬至が近くなるころは、明るい時間が短い。朝5時前に家を出て、東北自動車道路を宇都宮まで走って、やっと空が明るくなってきた。
関東平野から見ると、日光連山や高原山を背負って、のこぎりの歯のようなギザギザのチャートの岩を冬の空に突き立てているのが古賀志山だ。チャートとは、海洋微生物の殻が深海に降り積もってできた石で、風化、浸食に強く、やたらと硬い。
ここのチャートはジュラ紀やそれ以前にできたものが、プレート運動で陸上にせりあがってきたものだ。以前はこの岩の上に大谷石などの柔らかい岩の層がのっていたのだろうが、削れてしまい、硬いチャートだけが山となってそびえている。
もともとは海にいた放散虫(造形の多様性、美しさで驚かされるプランクトン)などの骨格だったものだから、チャートはほとんどシリカでできている。硬くて丈夫なはずである。
宇都宮市民にとっての古賀志山は、東京でいえば、八王子市民にとっての高尾山のような存在なのだろうか。近隣からの登山者が、慣れた様子で、ダム堤横に車を停めて、長倉山、鞍掛山に続く北尾根を登っていく。
小さなピークを拾いながら山域を1周すると、約10km、8時間ほどの行程だろうか。稜線に立つと、ゴーっと音を立てて風が吹き抜ける。北方には、大きな山容の男体山をはじめとした日光火山群の向こうに、白く尖った皇海(すかい)山まで望むことができる。関東平野の方向には筑波山が浮かんでいる。
最高峰の古賀志山でも標高582mの低山だが、眺望がいいのは、絶壁が多いからだ。稜線上には鎖場やはしごがかかっているところがあり、また、山域には縦横にハイキング道が通じているので、小ピークから急な崖をやっとの思いで降りたら、目指すルートと違った道だったということもあり気が抜けない。暮れから正月にかけて歩くには、うってつけの名低山である。
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