(小説)心のまま…5
「これは…1人のようでいて、2人が重なって写っているね…」
「視える」タイプの理穂が、集合写真の「和馬」を眺めてそう言った。
私から見た、写真の中で笑っている「和馬」は、例のホクロもあるし、右端の歯が1本、外を向いている。
絶対に和馬でしか無い。
しかし、主催者であるマキが言うには、
和馬の代わりに会費だけ持ってきた弟・優馬君が、集合写真に参加しているだけなのだそう。
この世に心霊写真など あり得ないと信じずにいたけど、今回ばかりはそうは言っていられなくなった。
写真の和馬をよく見ると、輪郭が二重になっている。これは、理穂が言うには、優馬君に和馬が乗っかっている、と言う。
あれは夢だったのだろうか…
私は誰とホテルのラウンジで時間を忘れるほど語り合い、抱きしめあったのだろう。
ファミレスの片隅で2人で話していたら、
理穂がアイスカフェラテをストローで
くるくる混ぜながらこう言った。
「マナミに会いたかったんじゃない?
多分、和馬君はもうこの世にはいない。
でね、、、何か伝えに来たというより、
ただ会いたかった…んじゃないかな」
そんな、、、と、返事をするのが精一杯だった。
どこまで信じたら良いか分からない話だ。
「マナミ、これ以上視なきゃならないなら、
お代をいただくよ。
ミックスフライのセットとグラタンね」
そんな事を言うから、
私は財布の中身を確認していたらスマホが鳴った。
知らない番号だ。いやな予感しかしない。
おそるおそる出てみたら、優馬君だった。
今から会って話したいと言う。
私も聞きたい事だらけだ。
待ち合わせの場所を聞いて、私はファミレスを走るように出た。