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藤井月
2016年10月8日 23:06
「これは…1人のようでいて、2人が重なって写っているね…」 「視える」タイプの理穂が、集合写真の「和馬」を眺めてそう言った。 私から見た、写真の中で笑っている「和馬」は、例のホクロもあるし、右端の歯が1本、外を向いている。絶対に和馬でしか無い。 しかし、主催者であるマキが言うには、 和馬の代わりに会費だけ持ってきた弟・優馬君が、集合写真に参加しているだけなのだそう。 こ
2016年9月29日 22:36
「もしもし、マナミ?同窓会で途中でいなくなったでしょう〜なんで?」 同窓会主催者のマキが電話をかけてきてそう言うからドギマギした。 私はちょうど手元に、記念撮影の写真を持っていた。 「実はね、和馬と隣のホテルのラウンジで飲んでたんだ」 と言ったら、マキが黙り込んだ。そしてこう言った。 「え?は?和馬って、広田和馬?嘘。来なかったよ?」 「え?はこっちのセリフよ
2016年9月28日 14:25
「それで?したの?しなかったの?」理穂は、その小さな目を見開いて聞いてきた。 「ないない、ないない」 私は両手をブンブン振って否定した。 理穂の目は、またいつもの小さな目になる。その目はいつ見ても「彫刻刀でスッと傷をつけたかのような」細くて小さな目。彫刻刀の種類は、刃を正面から見たらVのやつだ、、、と、どうでもいいことを考えながら、コーヒーカップについた口紅を親指でぬぐった