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生まれる前からマイペース

ボクにとって10月8日は待望の日だった。
この日を目指して色々と準備をしてきたからだ。

息子の出産予定日。
初めて息子と会えるはずだった日は通常の妊婦健診の日に変わった。
産科の先生から息子に会えるのはもう少し先になりそうだと告げられた。

その日もいつもの通い慣れた病院に車で妻を送っていく。
異様に天井が低い立体駐車場に着く。
車はいつも最上階の4階にとめるのだ。
大きな病院だから混み合っていて、下の階は常時満車だ。

午後の早い時間の通院だった。
いつもは午前中なので、ちょっと違和感。
先生いわく午後のほうがゆっくり話せるということだった。
あまり待たされることもなく診察室に呼ばれる。

先生:「今日が予定日でしたが、まだ生まれないですね。今週中に陣痛が来なければ、来週入院することにしましょう。」

息子に会えるのは、お預けになった。

その日の夕方、妻との散歩中にボクは言った。
「ボクのマイペースな性格が遺伝したんだよ」

ボクは子どもの頃、母親から「マイペースだねぇ」と言われ続けて育った。
当時はマイペースって何なのかいまいちピンと来ていなかった。

大人になると、周りの人に合わせて行動しなければいけないことが増えた。そういうことが続くと、いつもボクは疲れ果てる。
「マイペースってこういうことか」としっくり来たのを思い出す。

だから息子が出産予定日を過ぎても生まれてこないのは、ボクに似たんだろうと考えたのだ。

妻は検診のことをその日のうちに、お母さんに電話で連絡したそうだ。
次の日の朝食時にその内容をボクに教えてくれた。

妻:「出産予定日を過ぎても、生まれてくる気配がないんだよね。」
妻の母:「そうなるだろうと思ってたよ。あなたの兄弟で予定日より前に生まれてきた子なんていないからね。」

息子が出産予定日を過ぎてもゆっくりしているのは、ボクに似たわけではなく、妻の家族の伝統だったらしい。

出産予定日って周りの大人の都合で勝手に決めたものなんだよな。
生まれてくる当人にとっては知るよしもない。

息子は自分のタイミングで生まれてくれれば良いと思ってる。
母子ともに健康でありさえすれば、だけれど。
大きくなれば、イヤでも周りの人に合わせなければならなくなるのだから。今ぐらいゆっくりしていてもいいだろう。

今日はここまで。

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