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「シンプルなものは、ごまかしが効かない」という発言から、得られるかも知れない哲学。
料理や食レポの番組などを見ていると、この発言をよく耳にする。よく使用される表現だが、ここでもやはり一度疑った方が良い。
聞き流す、という行為は人間の知能の大いなる遺産である。しかし、その機能の凄さとは別に、脳は自分をも騙してくる。良く言えば、脳はあなたに非常に優しい。
優しすぎるが故に、あなた自身の思考の変化を恐れている。なぜ、変化を恐れるかというと、未踏の地は危ないから。これも本能だ。
その地は、現実の地上にあるかも知れないし、思考の領域にあるかも知れない。
だから、なるべく安定しておきましょう、変化しない方が良いですよ、というのが本能の主張である。
まぁ、確かにありがたくはあるが、これが行き過ぎると「動物として生きていく」という色合いが濃くなる。
僕たちは、動物であることには違いないが、「動物です」というには知能がありすぎる。つまり、文化と無駄が盛り沢山だ。
それを、「豊かさ」「美しさ」と捉えることができるのも、人間の知性だ。僕はどちらかと言うと、「人間らしく」生きたい。少なくとも、その両方を自覚して、自分で選択していきたい方だ。
ところで、この「ごまかしが効かない」という発言、天邪鬼な僕はどうしても「え?誤魔化そうとしていたの?」と捉えてしまうのだが、いかがか。
料理人は、僕たちの舌を誤魔化すために、わざわざ複雑な料理を作り出したのだろうか。
もちろん、そんなわけはない。
たぶん、シンプルな工程の料理は素材の味が前に出るから、基本的なところが成ってないとうまくいきませんよ、的な意味だとは思う。
それにしても、この発言、一流の企業や料理人でさえ使う。この間は、「ゴディバ」の企画部の偉い人が使っていた。
はっきり言って、料理に関する場所で働いている人はこの表現をやめた方が良いと思う。少なくとも、美味しいもの、たくさん売れるもの、美食的な観点を意識している人は絶対にやめた方が良い。
「誤魔化す」という言葉は、人を欺くための言葉だ。
例えば、1万円札と1円硬貨10000枚の価値は同じである。
しかし、1円硬貨10000枚を数えるのは、非常に大変だ。仮に、両替するときに「今、1円硬貨しかないので、これで良いですか」と言われても、1枚1枚数えているうちに、「もういいや。まぁ、騙したりはしないでしょ」と面倒になって数えるのをやめてしまうかもしれない。(数える機械があるだろう、というご指摘は尤もである)
ただ、即座に1万円の価格の物を現金で買う、というわけでもなければ、9999枚でも構わないという人はいるだろう。
美味しさの話とは少し違うかもしれないが、「ごまかしが効かない」という話を聞いて僕が連想するのは、このお金の話だ。たぶん、感覚的に似たものを感じるのだと思う。騙そうなんて気は無いと思うけれど、その判断は僕たちがするわけではない。まず、物を作る際の誠実さの問題なのである。
物作りにごまかしは無い。
そういう感覚、考え方をする人の創作物など、絶対に面白くないし、美味しくもない。美味しいとしても、「これじゃなきゃダメだ」とまで思えるほどの価値はそこには無いと思う。少なくとも、僕はそうだ。
つまり、「思想がないな」ということが伝わってしまうのだ。僕は、そういうことを敏感に感じ取ってしまうので、他の人にとってはそうではないかも知れないけれど。
昨今のハイブランドのラインナップを見ていても、同じことを感じる。ストリート文化にかこつけて、コピーペーストの悪いところが出ているように思う。ウォーホルが警鐘を鳴らしたのは、こういうことを言うのだろう。
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