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小説「ゾンビA」(幻の奇書短篇作)

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 この土地の足元には厚さ一〇〇キロメートルの大岩盤が沈んであった。誰かがわざわざ外から持ってきて莫大な費用を掛けて埋めた、というわけではなかった。そんな馬鹿げたことは誰もしない。そもそも人間が直接見られるような代物ではなく、地表付近に浮き出てくるような予定もなかった。土地にとってそれは胸にあるしこりのようなもので、彼をひどく神経質にさせていた。
 しこりはもうひとつ埋まっており、一方がもう片方の真下に深く挿し込んであった。僅かずつではあるが確かに移動しているのを土地は知っていた。それはまるで育ち盛りの子供が母親の作ってくれた豚カツを飲み込むのによく似ていた。子供が急いで口に掻き入れるものだから、狙ったように噎せこみ、母親は呆れながら子供の背中を摩ったり叩いたりする。従ってこの地は大小関わらず地震の多い土地柄であった。

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