東京外国語大学2020年度第1問・問9についてのメモ

設問の要求を確認する
主題:日本とアメリカにはアジア・太平洋戦争を正当化するどのような見方があったのか
条件:人種・民族問題への双方の対処の仕方をふまえる
   波線部Aに注目する
   5つの指定語句を必ず使用する(自存自衛,大東亜会議,ファシズム,日系人,カイロ宣言)


指定語句について
自存自衛:宣戦の詔書にも出てくるが,史料Aのなかに「帝国は帝国および東亜の自存自衛のために立った」と出てくる。
大東亜会議:脚注⑹に注目する。史料Aの筆者である重光葵外相が主導したもので,「日本軍占領下にある大東亜共栄圏内の各国の自立性を高めようとする政策」の一環として開催されたことが分かる。
ファシズム:問4で大西洋憲章が問われており,そこから使い方を考える。
日系人:史料Bのなかでライシャワーが言及している。ライシャワーの見方を説明するなかで使えばよい。
カイロ宣言:問5をヒントとして使い方を考える。


解答例
日本は,日中戦争が長期化するなかで自存自衛を掲げてアジア・太平洋戦争を始め,東南アジア各地を占領した。そのなかで重光葵外相は,アメリカ・イギリスから経済制裁をうける日本と欧米諸国の植民地支配をうける東南アジアを重ね合わせ,アジアが欧米の支配から解放される戦争として正当化し,大東亜会議の開催を主導することで,各民族が自立性をもった独立国家をつくり平等互恵の原則のもとで提携して大東亜共栄圏を建設することを戦争の理念として示そうとした。一方,アメリカは,ファシズムを排し,人種に関係なくよりよい世界を樹立するための戦争として正当化し,カイロ宣言では日本の植民地であった朝鮮の将来的独立などを掲げて日本の戦争理念に対抗した。そのなかでライシャワーは,アジアの覇権をめぐる人種戦争という性格を否定するためにも,日本人移民や日系人を強制収容する政策を修正し,日系人を積極的に軍隊に動員すべきだと主張した。
※太字が下線部

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