変えるものと変えないものの線引き(2)
こんにちは。現場作業や作業指示に追われ、リーダーのやるべき仕事をする時間が取れない、とお悩みの経営者やリーダーを支援しています。自動操縦経営コンサルタントの小野司です。
前回は、変えるものと変えないものの線引き(変えるものの定義)、そして、1つ目の要件について紹介しました。
今回は2つめの要件について、紹介します。
まず、定義を再度掲載します。
変えるものの定義は以下です。
要件1:変えた場合のメリットとデメリットを比較し、メリットの方が大きいと思われること
要件2:変えないでいることが、”いやだな”、
”悩ましいなあ”、”困ったな”と感じること
では、要件2について、説明いたします。
事例もおさらいします。
取り組んだこと:
下の階にある、1年に数回しか使わない古い台を作業室に持ってきて、作業スペースの横に置いた。
カイゼン活動で、これを試しました。
そして、振り返りをします。
振り返りでは、リーダーは以下のように聞きます。
「元に戻したいですか」
この時、リーダーは感情を表す言葉に耳を傾けます。
メンバーからは、以下のような回答が考えられます。
回答1:下の階の作業は台がなくなり、少しめんどくさくなる。でも、元に戻したくない
→感情を表す言葉:めんどくさくなる
回答2:下の階の台がなくなれば、作業が不自由なので困る。
→感情を表す言葉:困る
リーダーは、原則以下のように判断します。
回答1の声が多ければ、カイゼンをします。
(台を作業室に置いたままにしておきます)
回答2の声が多ければ、カイゼンをしません。
(台を下の階に戻します)
ここで、違和感を持たれる方もいると思います。
「カイゼン活動なのだから、定量的に考えるべき。」
「感情を表す言葉に耳を傾ける必要はあるの?」
ということです。
つまり、要件1(変えたことのメリットとデメリットの差)を定量的に評価して明確にすれば、要件2は不要という考え方です。
例えば、台を移動したことによる効果を、
・1時間あたりの生産性が10%上がる
・経済効果で年間1000万円増える
のように定量化して判断すべき、という声です。
確かに、定量化して説明すれば、メンバーも納得します。
そして、一度はカイゼンはできると思います。
私も可能な限り、定量化しています。
一方で、一度はカイゼンしても、
それが”続かない”という経験を何度もしました。
経済効果1000万円と伝えると、
最初はカイゼンされるのですが、
数ヶ月から1年もすると元に戻るのです。
これは、
社長の指示だからやりましょうと伝えても、
最初はカイゼンされるのですが、続かないのと似ています。
一方、変えないでいることが、”いやだな”、
”悩ましいなあ”、”困ったな”と感じること
であれば、続きます。
この事例でいえば、メンバーに
「元に(台を下の階に)戻したいですか」と聞いて、
「元にもどれません。腰がつらいので」
という、感情の声があれば、続くのです。
例えば、下の階の作業台がなくなり少し不自由になっても続きます。
若きカイゼンリーダーさんへ
カイゼン活動では、メンバーからアイデアが出されれば、まず行動してもらいます。
そして、メリットとデメリットを比較して、
メリットの方が大きいかを確認します。
さらに、「元に戻したいですか」と問いかけ、
メンバーの感情の言葉に耳を傾けます。
「戻したくない」「今のままの方がいい」という言葉が多ければ、カイゼンは続きます。
「大変だ」「めんどくさい」という言葉が多ければ、または、沈黙が起これば、元に戻る確率が高いと思います。
みなさまのヒントになりましたら、とてもうれしいです。
追伸:「よかったこと」「大変だったこと」の振り返りについては、
拙著『ちっちゃな「不」の解消から始めるカイゼン活動』(p186)
ご参照ください。