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#18 ライフセービング競技
ライフセービングに競技ってあるん?
ライフセービングの推薦入学で、大学進学を決めた同級生に、失礼ながら投げ掛けた言葉。
彼女がその道を進まなければ、僕は未だに存在を知らなかっただろう。
僕の知らないところで、話は進んでいた。
高1のクラスメイトたちと、久々の再会を果たす予定だった。
場所は静岡…静岡!?
うち1人は、ライフセービング競技出身。
知り合いの大会を観に行きたいようだった。
時刻は20時30分。
今日の夜に出発できる?
そのLINEと共に服を脱ぎ、足早に風呂を終わらせた。
翌日がオフだったため、許容範囲は広め。
まあ気心の知れた仲だし、この人たちのためなら許容できる。
車を走らせ、次々に仲間を拾い上げる。
道中は思い出話で花を咲かせ、眠気なんて気にならなかった。
目的地の下田には、朝方の到着だった。
みんなで朝日を見つめて、遅れてやってきた青春の1ページ。
あの頃の忘れ物を、やっと取りにきたみたいな。
競技開始まで爆睡をかまして、競技が開始しても爆睡をかました。
ライフセービング競技は、大きく分けて2種類あるそう。
海でやるのと、プールでやるの。
今回観に行った海競技の中でも、海を泳ぐ種目や、砂浜を走る種目だってある。
睡魔に勝ち切れなかった男たちは、最終種目付近から競技を観戦した。
会場の熱気は、少し離れた駐車場からも伝わってきた。
屈強でアスリート体型の男たちが、波打ち際を走る。
バックボーンには陸上があるに違いない。
足の回転数、ストライドが段違い。
沿道を囲むのは応援団。
メガホンと拍手で音を作り、聞き馴染みのある「雨上がりの夜空に」が聞こえてきた。
愛してるぜ、We Are 〇〇のあれ。
予想と反する盛り上がりを見せる会場。
ルールが複雑でなくて、応援しやすい。
最終種目のビーチフラッグ。
とにかくこれが面白かった。
雰囲気は陸上の短距離。
On your marks…set…パンッ
みたいな流れ。
8人からスタートして、1人ずつ脱落していく。
対面にあるフラッグらしきポールは、人数-1で推移していくシステム。
スタート前の静寂。
波のざわめきが良い味を出していて、異世界にすら思えた。
スタートはうつ伏せ。ゴール方向に足を向けたところから。
振り返り、起き上がる動作がある。
効率且つ円滑にゴールするために、各々の準備過程があるように伺えた。
自分の周りを整地したり、固めてみたり、予備動作を確認したり。
男女それぞれの特徴も垣間見えた。
僕が見た感じ、女子の動作はしなやか。
力強さよりかは、身体の機能そのものの使い方が上手い。
対する男子は、ゴリゴリのアスリート能力。
程良いとは言えぬ筋肉を身に纏い、瞬発と筋力での勝負に伺えた。
どちらにも共通して言えるのは、コース取りや走り方。
どの轍を利用するのかなど、繊細な研究の賜物だろう。
聞くところによると、全トレーニングを撮影し、フォームなどを見直すそうだ。
知らないだけで、まだまだ熱い世界があるんだろうな。
こうして他の競技に触れることで、新たな知見や刺激をもらえる。
普通に生きていたら、迎えることができなかった世界線で、はみ出しもんとして君臨していて良かったと思った。
何より、誰と行くかというのも大事だった。
僕が信頼する仲間であれば、流れに身を任せて付いて行っても後悔しない。
渡邉 宰