「自殺の名所」からの客 【ザ・医療犯罪】⑤
ミステリー作家らしく、ミステリーぽい記事を1つ。
医学論文は、簡単にネット検索できる。
当該病院名をググって出てきた論文を見ると、ファーストオーサーと言われる一番はじめに名前がある医師はほぼ全員がアルバイト。
その病院に1日もいたことはないのに、
「当院における○○について」のタイトルに笑える。
埼玉の病院にいる医師が、堂々と大分の「当院」について述べている。
ある時――今年の夏だが、非常に奇妙なことに気づいた。
【医師の名前が違う……!!】
それも1人や2人ではない。見つけただけで3人。
しかも、男性が女性名に変わっている。例えば、
「明」→「明美」
というふうに。
他にも、
「正志」→「正」
といった感じで、読みは同じだが下の名前が微妙に違う医師が、論文のオーサーの中に3人いる。
医師の名前は厚労省が公表している名簿があるから、間違いはないはずだ(旧姓の場合は違うが今回はなかった)
『清書した人がうっかり書き間違えた?』
と普通は思う。私も思った。
学術論文を扱う出版社は校閲しないのかもしれない。病院が提出するものに間違いがあるはずがない、という雰囲気だけの「性善説」。
興味本位で、名前を間違えられた医師の、前の職場をググった。
全員が同じ大学病院だった。
そして、同じ整形外科の医局に、同じ時期にいた。
そこまでは特に不思議もない。当該病院はその大学の関連病院だろうから普通のこと。
その大学の新聞記事などをググる。
そこで、ハッと息を飲んだ。
恐ろしい記事を見つけた。
整形外科でまったく同じ時期に、3人が自殺していたのだ!!
2人が患者。1人は研修医のようだ。
さらにその地区のネット掲示板を見ると、もう1人、患者以外の関係者が自殺していた。
同時期に同病棟で4人の自殺。
全員が同じ病棟からの飛び降り自殺。
ゆえにその病棟は『自殺の名所』と呼ばれていた。
そして下の名前を替えた――『偽名の医師』3人が、4人が自殺した時に、そこにいた、というのは紛れもない事実。ここまではノンフィクションだ。
大学病院の病棟では、自殺は珍しいことではない。
大分大学病院に入院中、学生が上の階から飛び降りたのを、2階の整形外科病棟から見た。
近年もアカハラが原因で自殺があった。
しかしながら、整形外科の患者が同時期に何人も飛び降り自殺する、というのはかなり珍しいのではないだろうか?
内科などの不治の病ならわからなくもないが、死に至る病気の少ない整形外科となると……。
そしてその時いた医師3人は翌年か翌々年に揃って、同じ病院に転属している。
そう、私のnoteにしばしば登場する大分市内の整形外科病院に。
しばらく下の名前を替えて潜伏?(その間むろん診療している)した後、皆さん立派に各地で開業なさっていた。
なんと素晴らしい医学の世界!!
………というしかない。
【リピーター医師シンジケート】
なんてハードボイルドタッチなタイトルを思わず付けたくなる。
4人が自殺した大学病院では特に警察の捜査などはおこなわれていないようだ。事件性がないからだろう。
偶然に4つの事件が重なっただけ、かもしれない。
しかし。
単純にそう考える人はあまりいないと思う。
実際この私に対しても、死の縁まで追い込んだ医者たちだ。自分で言うのも何だか、私はそれほど繊細ではない。父親から「気が強いだけの女」と言われる程度の太さはある。
その私を死の縁に追い込むことができる連中……
くわえて、病人は病気というだけでとても気が弱くなる。ちょっとした一言で崖っ縁にいる人の「背中を押す」ことは簡単だ。病棟の屋上から背中を押さなくとも、言葉一つでできる。
もしも「偽名」の医師たちがそれをやったとしたら……??
そして、患者の自殺が原因で「偽名」を使ったとしたら???
あえて言うが、これはあくまでもミステリー作家の一推論であり〈フィクション〉である。実際はどうかわからない。
ただ、充分にありえる推論、として書いておく。
万が一「言葉」で「背中を押した」としても「証拠」がない。死人に口なし。そして残念ながら「言葉」は「凶器」としては認められない。録音がなければまったくダメだし、自死者が録音などしているはずもない。最近は、セクハラ、パワハラ等の様々なハラスメントで有罪判決が出ているが、今現在【ドクターハラスメント】が認められた判例はない。
医師の患者に対するハラスメントが認められるのは、おもに性暴力、セクハラだそうだ。セクハラすら10年前には認められなかった。今も表面に出ている数はごく少ないに違いない。
教師と同じく、医師は【聖職】であるという世間の認識は根強く、批判すればしたほうが逆に猛烈な誹謗中傷に晒される。
そして周囲から誰もいなくなる。
医事紛争は孤立無援。
〈敵〉はそのことも承知の上で仕掛けてくる。
……気弱な卑怯者。
(つづく)
ここ数年で書きためた小説その他を、順次発表していきます。ほぼすべて無料公開の予定ですので、ご支援よろしくお願いいたします。