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すて(きな)ねこたちのゆくえ
以前の会社に勤めていた時のことである。私は昼食を済ませるとひとり会社の外に出て、昼休みが終わるまで近くにある公園へと散歩するために足を運んでいた。
そこは海浜公園と属されている場所で、近くに羽田空港があることから上空から滑走路へと舞い降りるところを、間近で見られることで有名な場所である。
さらには、某番組収録かあるいは写真集か撮影するなどのロケーションには絶好の場所としても知られているらしく、稀にそこで芸能人か著名人にお目にかかることもあるという。
残念ながら私はその場面に遭遇したことは一度もなく、仮に運が良くてもロケバスか周りにいるスタッフらしき人たちを見かける程度であった。
それでも憂うことなく、人気のいない平日かつ人気のない散歩道をひたすら歩きまわったものである。
平日といってもまったく人がいないわけではなく、ピクニックをしに来る家族連れがいれば、単独で釣りをしに来る方もいらっしゃる。
それに海に近い公園でありながら、奥地まで進めば子供の遊び場になりそうな遊具なるものは充実していた。
土日になると、前述の他にもランニングやドッグランをする人やBBQをしに大人数で訪れたりと、当然ながらより一層の賑わいを見せている。
その一方で雑木林などを中心に、捨てられたと思われる猫の住処にもなっているのも事実であった。そこを訪れたら必ず一匹以上は見かけるというほどに、
そもそも、公園や会社等が構えられているその土地自体が埋立地であることから、わざわざこのような僻地へと自然に住み着いたものとはさすがに考えにくい。
無論、放し飼いにされていると託つけるのも無理があるだろう。おそらく飼い主の理不尽な都合によって、この場所に捨てられてしまったのだと思われる。
普通の野良猫なら人間が通りかかったところで、走って逃げるかどこか隠れるなどと、すぐさま逃避行へと行動に移すことだろう。
だがそこにいる大半の猫たちは人の気配を察しても逃げる素振りをせず、逆にこちらがベンチで休憩しているところを、そろりそろりと近くまで寄ってくるのだ。
ただ「寄り添えないのに側にいる」みたいな絶妙な距離感を保ったまま、すぐそばまでこようとはしなかった。
もしかしたらその猫たちも、元飼い主以外の人のそばに向かおうとしても、また似た形で裏切られてしまうのではないかと。そんな傷心を抱いたまま、近づかなかったのかもしれない。
退職して以来そこにいる猫たちに再会することはおろか、公園自体に一度も足を運んでいない。
あの時あの茂みで戯れあっていた猫たちは、今頃何をしているのだろうか…。あれから数年も経っていてずっとそこにいる確証はないのに、今さらになって気掛かりになっている。
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