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いつだってインスピレーションは流れてくる
毎週水曜日の夜7時ごろには、テレビのチャンネルをフジテレビに合わせ、アニメ「ドラゴンボール」と「るろうに剣心」を見ながら夕飯を済ませていた。
やがて8時あたりで「鬼平犯科帳」という時代劇が始まると、目に触れることもなく弟と自室に戻っては、二人で何かしらの遊びを繰り広げていた。
その当時はまだ幼かったこともあり、時代劇自体に興味を示すこともなければ、どのように物語が展開していくのかすら関心を寄せることもない。
けれど9時に差し掛かる前になると、そのエンディングを観たいあるいは聴きたいがためにリビングに戻るのである。
鮮やかかつ軽やかにに奏でるギターの音に乗せ、春夏秋冬の一部を映し出す映像に釘付けになり、言葉を一つも発することもなく見惚れていた。
夜空に花火が打ち上がる最中、手持ち花火を持って遊ぶ子供達。
雪が降り頻る寒空の下で、そばをひたすら食べ続ける男性の姿。
その2つのシーンは少なくとも、今でも心に惹かれるものがあった。
そこに外伝的なストーリーが進行していくわけでもないのに、リビング越しにテレビから流れ出すアコギの音が耳に触れた瞬間、わずか2分と限られたエンディングに吸い込まれていくのである。
たまに半ば強制的に親と一緒に本編リアルタイムで観ることもあったが、20年以上経った今でもどのシーンが印象的だったかはほとんど憶えていない。
それでも、エンディングの題名が「Inspiration」であることだけ、唯一自分の記憶に残っていた。
久々に聴いてみて特有の哀愁が漂ってくるのを感じているものの、素直に言葉に表せない。もしかしたら当時もこうして、無心のままに聴いていたかもしれない。
無理に「これはとてつもなくいい曲なんですよ」などと、取ってつけたかのようなコメントじゃ、返って味気すらなくなってしまいそうだ。
だからこそ、この曲の前では深いところまで何も考えず感じるままに、流し聴きする程度でも丁度いいと思うのである。
他に一つ驚いたことがあるなら、後々に調べてわかったことだが、エンディングの「Inspiration」を演奏しているフランスのバンド「Gispy Kings」を起用した当時の番組スタッフの恐るべき神がかったセンスだろう。
おかげで、今も自分が思い描いている時代劇の音楽といえば、もの悲しさがほのかに漂うギターというイメージが結びついてしまったままなのだから。
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