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旅立ちの夜を前に

「はぁ…結局最後の最後も、消化不足になってしまったなぁ」

『しょうがないよ。何事においても、うまくいくようにできていないからね』

「けど、最後だけは何がなんでも、有終の美を飾りたかった」

『その気持ちだけで十分だよ。むしろ、ここまで付き合ってくれてありがとう』


「なぁ、本当にこれでよかったのか?」

『何が?』

「今までだって、満足の得られる結果が出てこなかったのに。それでもおまえは、満足してるのか?」

『もちろん…って言いたいところだけど、正直なところ、もっといろんなことを目指したかったよ。君とどこまでも』

「そうだよな。だったら、今ここで撤回してもいいんだぞ?」

『できれば、どうしたいところさ。でも、いつかはけじめをつけなくちゃいけない。ううん、つけなきゃいけなくなってきたんだ。じゃなきゃ…』

「じゃなきゃ?」

『…じゃなきゃ、お互いに納得のいく道に進められないから』



「…そうか」

『うん、だからー』

「わかってる。おまえは昔からずっと、自分の意思を曲げないヤツだから」

『すまない。これがわがままだってことは、自分でも理解しているよ』

「気にするなって。こっちは全力でおまえのことを応援するって、心に決めたからな」

『ああ。君がいてくれたこと、本当に感謝してるよ』

「何言ってんだ、お礼を言うのはむしろこっちの方さ。おまえといて、本当に楽しかったよ」


『じゃ、そろそろいくね』

「ああ。体、気をつけろよ」

『うん。君も元気で』

「ああ、おまえもな」








これはいつか、どこかで決着をつけるように、お互いがお互いの道を進み始める…という話である。

そして、このシーンの行く末は誰も知らず、それぞれの思い描く場所で続いていく。


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タダノツカサ
最後までお読みいただきありがとうございました。 またお会いできる日を楽しみにしています!