固定概念を覆すための「栄養剤」?
一つの大きなワゴンに、大量に敷き詰められた栄養ドリンクを目にするたび、いったい誰が買うのだろうかと疑問に思っていた。
今の家電量販店は、主要都市にしかないところから全国展開されているところを含めて、昔よりもだいぶ迷走しているのではないかと考えざるを得ない。
地元に住んでいた学生時代の頃、それも家電量販店が続々と立ち並ぶようになってきた当時はまだ、どれもその名の通りの看板を背負っていたと思う。
冷蔵庫や洗濯機でおなじみである白物家電はもちろんのこと、テレビやオーディオそれにカメラなどのAV機器を中心に、各々店内で展示されているのが当たり前の光景であった。
やがてそこから、ゲームやおもちゃという玩具系の商品が少しずつ加わってくるのを目にするようになった。ただそれらについては、テレビに繋ぐものや電池を必要とするものが有るからこそ、許容範囲であったと思う。
ところがさらに年が経つに連れ、普段から過ごすうえでの生活に欠かせない日用品を見かけるようになった。しまいにはドラッグストアでは当たり前に有る、風邪薬を始めとした市販の薬品や化粧品だけでなく、ビールやワイン等の酒類を扱うところも出始めてきている。
「なぜこの店にこんな商品が売られているの?」と関連性を探れないまま、初見様のみならず久々に来店した顧客でも、思わず目を疑っても仕方がない有り様だ。
ひょっとしたら、そのうち生鮮品でも卸すのではないか、という勢いがあるように感じる。イチ専門店の誇りはどこへ去ってしまったのやら。
もはや売上のためなら手段を問わず、なんでもありの状態なのだろう。概念の壁ですら、遥か彼方へととっぱられてしまっているのかもしれない。
これでは聳え立つ建物からにして「家電量販店」という看板を背負ったデパートと化してきているようにしか、こちらとしてはそう見えてこないのである。
そして先日、行きつけの某家電量販店の入口あたりで目についたのは、愛情一本というキャッチフレーズでお馴染みの栄養ドリンクであった。
一つの大きなワゴンに、もしかしたら一本ぐらいはヒビが入っているものがあると思われてもおかしくないほど、大量にかつ乱雑に敷き詰められている。
まさか、取引先とのキャンペーンか何かを適用して大量に仕入れたのか、あるいは社員か誰かのミスで誤発注を起こしてしまい、何としてでも在庫数を減らすべく泣く泣く叩き売りする事態に発展したのか。
その真相にたどり着くのに、このワゴンの有り様だけでは何とも判別し難い。しかし大特価と書かれた値札の奥には、今にも溢れそうな山から「俺を買ってくれ!私を買ってほしい!」と唸り声が聞こえてきそうな気配を感じていた。
果たしてコレをいったい、誰が買うのだろうか。
そう疑問になりながらも、気づけばワゴンの中に大量に敷き詰められた栄養ドリンクの山を2本だけ手に取り、レジカウンターに足を運んでいる自分がいたのであった。
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