商談は平行線のまま見送りが続き
唐突な話だが、車の耐用年数において自分の個人的な感覚で云ったら、少なくとも10年以上持てばいい方だと思っている。ただその中には、20年や30年以上などと長きにわたって、唯一無二の愛車を維持し続けているオーナーも数多くいらっしゃる。
とはいえ10年も乗り続けていると、ゴムや鉄製などといった何かしらの構成されている部品が劣化したり、摩耗の影響を受けて交換しなければならない事態に直面してしまうのが現実である。しかも、それらの部品は物や保管状態にもよるが、決して安いものばかりとは云えない。
こうした一連の事情を把握できているのも、私自身、以前にそうした業界に勤めていた時期があったからである。その今となってはムダ知識でしかない経歴もあって、国産の乗用車に装着されている部品のうちの一項目ついて、大抵の情報は熟知しているつもりでいた。
話は変わって、今から1、2年ほど前、私は都内の自宅から最寄りにあるディーラーへと愛車の点検のために足を運んでいた。そこで一通り見てもらっている間、担当であるUさんと熾烈な抗争(?)を繰り広げるように、車の買い替えに関する商談が続いていた。
これまで試乗も含めて何度か提示してもらったが、思ったよりも交渉が進まない。元から、世界シェアを誇る某メーカーと比べて選べる車種は限られているが、それについては承知の上であった。
その中でUさんからは、様々なプランなる見積もりを取ってもらっていたが「これでいこう」という決断までにたどり着くことはできなかった。言わずもがな、自分の中で一番ネックになっている値段が、頭の片隅にチラついていたからである。
まず車自体、決して安い買い物ではない。無論、購入するにも様々な手続きや書類を提出する必要があるうえ、平均して5年前後ぐらいの見通しでもってクレジットローンを組むことが大抵である。
昔から、芸能人をはじめとした著名人などがメディアなどを中心に、次から次へと一括で購入している映像などをちらほら見かけることがある。だが、私たちのような一般庶民にとっては、そうした一連の行動へとすぐさま移せるほど裕福ではない。
ゆえに最近となっては、わざわざ装着する必要のない多くの電子部品が装着されている他に、原材料高騰の煽りもかなり受けている。その関係もあって、以前のような良心的な価格で提供されている環境であるとは、決して言い難いものとなってきている。
「うーん、やっぱり今の状態だと厳しいですかねぇ…」
そのうえで、私が免許取立ての頃に購入した愛車より倍近くの値段に目を移した時には、腕組みしながら天を仰ぐように思わず唸ってしまったのである。
年々、購入することのハードルが上がってきている実感は、少なからず湧いてきているつもりであった。しかしながら、一番ネックとなっている値段の他にも、当時勤めていた職場の環境などの不安定要素が相まって、即決即断には至らなかったのだった。
多種多様という、勢いのあった見積もりを提案してもらったUさんには申し訳ないと思いながらも、この日もまた先送りとなってしまったのであった。
最後までお読みいただきありがとうございました。 またお会いできる日を楽しみにしています!