最初にして最後のセッション
7年前の今頃、私は新木場STUDIO・COASTに足を運んでいた。
この日に行われる、私が敬愛してやまないアーティストであるBOOM BOOM SATELLITESの、最後のライブを観にいくためである。
実はこの日に至るまで恥ずかしながら、彼らをはじめとしたアーティストのライブに参加した経験があまりない。
元からコンサートやライブを観にいくことに関して、あまり興味を持っていなかった私は、それらの模様をDVDなどの媒体に収録された映像を通して観ることで、現地に足を運ばずとも一つの満足感に浸っていたのであった。
川島氏は、バンド活動を終了した年に、長きに渡って患っていた脳腫瘍により逝去している。もう一度あの姿を、あの歌声を聴きたいとどんなに願っても、表舞台に彼が現れることはない。
やがて「FRONT CHAPTER -THE FINAL SESSION-」と題したライブが開催されるという情報を、彼らの最後の作品となったベストアルバムを手に取って知った日には、是が非でも観にいかなければならないと決めていた。
これが最初にして最後の…一度きりのライブになるとしても。短い間ながら彼らの音楽を追ってきた一ファンとして、自らそこに参加しないわけにはいかなかった。
ライブが始まると、バンド最後の作品となった「LAY YOUR HANDS ON ME」から始まり、私が初めて彼らの音楽に触れるきっかけとなった「BACK ON MY FEET」、そして代表曲の一つでもある「KICK IT OUT」などと、川島氏本人不在のまま演奏は次々と披露されていく。
けれど、前方のステージに川島氏がマイクスタンドの前に立ち、トレードマークである赤いフライングVを弾きながら、観客席の前にいる私たちにむけて、全身全霊をかけて歌っているような感覚を覚えた。
まるで、すぐ隣にいる中野氏との熱いセッションを、過去現在という時間を関係なく、もろとも繰り広げているかのように。
やがてライブは終盤に入り「FLARE」「NARCOSIS」が披露されていく。そこで彼らの過去の映像が紗幕に映し出され、会場にいる誰もが静かに見守る中、おそらく錯覚していたことかもしれない。
長年寄り添って過ごしてきた彼らの音楽との旅路が、今ここで終わるのだと。笑っても泣いても、これが最後であると。
「BACK ON MY FEET」をきっかけに彼らの音楽を追い続けるようになった私は、長年追いかけ続けていたファンからにしてみれば、まだまだ日は浅い方だったかもしれない。
もう少し早く出会えていれば、何度もライブに足を運んでいれば…。シングルを除く、アルバムやライブDVDのほぼすべての作品を手に取って聴いたり映像を観たりするたびに、そうした後悔をしなかったわけではない。
そういった自責の念は、どこか彼方に消えていった。出会うタイミングが遅かれ早かれ、BOOM BOOM SATELLITESの音楽に出逢い、そしてこの場所に立ち会い、バンドの最後の姿をこの目に焼き付けることができた。
形にならない財産を、あれから7年経った今も、そしてこれからも。この誇りを胸に、大事にして生きていたい。
演奏が終わり、満員の会場内で大勢の拍手が鳴り止まない中、私は大声で「ありがとう」と叫んでいた。