数年ぶりの「Välkommen」と「Hej」
「ねえ見てこれ、すごく安いよ!」「わあ、本当だ!」
私の前方には2人の女性客が、破格となっている特価品に指差して大層驚いている。その商品の値札には、ホームセンターはおろか百均でさえ絶対に目にすることのない金額が書かれてあった。
先日、私はIKEAを訪れていた。特に、急を要する用事があるわけでもなければ、これといって欲しいものがあるわけではない。
たぶん今のうちに行けば、なにか目ぼしい物や掘り出し物に巡り合えるかもしれない…という当てずっぽうな理由で、車で一時間以上かけてそこに向かっていた。
しかしながら私自身、現在自由を謳歌している身とはいえ、散財したりするような無駄遣いを、極力控えなければいけない状態においている。
一度IKEAを訪れるだけで、他のお店では体験できない魅力に取り憑かれてしまうのだ。なにより、よく見かける店舗ではお目にかかることがない大規模なショールームや商品が、どでかく構えられた店内に満ち溢れている。それも、ほぼ倉庫と言っても過言ではないくらいの規模に。
相変わらず薄暗い駐車場に車を止めて店内に入り、最初に向かったのは食事する場所だった。到着した時間帯が既にお昼をまわっていたため、まずは腹ごしらえするべく、レストランのあるエリアへと足を運んでいく。
もう一つIKEAに特徴があるものといえば、家具や雑貨などが多く立ち並ぶ中、レストランやビストロといった食事できる場所が提供されていることだろう。これは、全国区で展開されている某家具店などでは、まず見られない空間であることに違いない。
数年ぶりに足を運んだ会場内では、かなりの解放感に溢れ、まるで某サービスエリアのフードコートみたいな光景が映し出されている。
平日とはいえ、家族連れやカップルなどでほぼほぼ埋め尽くされている。そんな中でも、私のように単身でこられている姿も見受けられた。人によってPCを開いて作業していたり、読書に入り浸っている姿も何人か散見されている。
そこで私は野菜入りカレーを食した。他のレストランと比べ、かなり安価だったために試しに選んでみた。思った以上に辛さが利いており、気づけば一食を終えるまで2、3回ドリンクをおかわりしていた。
昼食を終え、運動がてら手始めにショールームから見て回った。ショールームの中はとてつもなく広いため、中を抜けるまでにおよそ30分はかかる。
一時期、いやというほどに模様替えを頻繁におこなっていたことのある身としては、どれも参考になるものばかりであった。一通り見終わると、再びその熱が入りそうなほど、充実という意味で刺激を得ていた。
あちらこちらで新しさや安さに目がついたり、あるいは今後部屋を模様替えするのに興味を惹かれる家具や、是が非でも真似してみたい配置などと。
実際に見て回った中で、個人的にはいくつか目ぼしい家具があった。特にベッドやデスクについては、そろそろ買い替えた方が良いのかもしれない。そう検討する段階に入っているほど、今のところ購入意欲が湧いてきている。
ちなみに、それぞれ自宅に置いてあるものは、いずれも私が上京したての頃から現在もなお使っている代物である。ちなみにベッドにおいては、一部分でガタが生じ始めてきているため、早めに変えておかないと不都合が生じてしまうかもしれない。
もし本格的に替えるのであれば、再び社会に復帰してからの話になるかもしれない。それでなくとも数年以内には、ベッドやデスクを除いた家電を含む買い替えしなくてはならない物がいくつか有る。
またふとしたことで、再び向かうことになるかもしれない。だがその時は、予め買うあるいは買い換える物を決めてからの方がいい。といっても、思いがけない掘り出し物に再び飛びつき、感情が思いっきり揺らいでカゴの中に入れてしまうことになるだろう。
数年ぶりに訪れたIKEAであったが、色んな意味で自分の凝り固まった思考が研ぎ澄まされたと思う。定期的に訪れたいという願望が生まれてきたが、少なくとも今はその時ではない。
いずれ事が過ぎたら、自分にとっての一つの日常として是非取り入れておきたいものである。