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目には目を、歯には歯を、そして…
午後イチになり、出荷作業に取り掛かる前の準備をしていたところ、今私が勤めている会社の営業所に、東京にかまえている本社からK氏が尋ねてきた。
新人が使うためのPCを設置するために用意してきたそうだ。ただ、その機種は新品ではなく、側から見ても随分と年季の入ったPCであった。
普通なら入社してから最低でも半月ぐらいまで、会社側はPCを用意するのが普通ではないかと私は考えている。むしろ一定の方々にとっては、遅い方なのかもしれない。
現に私も今の会社に入社して半年ほど経過してから、ようやくPCを用意してもらった立場である。
ちなみに自分自身恥ずかしながら、今の職場に至るまでいくつか転々としている身であるが、あのような経験は正直に言って初めてのことであった。
それなのに新人が入社してから2ヶ月半もかかって、ようやくこのタイミングで設置することになったかと思いきや、会社が用意してきたのはおそらく購入してから少なくとも5年以上は経過しているであろう、とにかく古い機種だった。
それに目もくれずに私は大体の準備が整ったあと、事務所から一目散に逃げるようにして倉庫へと向かっていった。その日は月初ということもあって、出荷する件数はいつもより多めであった。
今の私は、K氏が新人に用意したPC自体を気にしている場合ではなかったのである。
夕方に差し掛かり、出荷はあと残すところ2、3件となっていた。そしてその内の一件に着手しようとした矢先、K氏は忽然と私の前に姿を現した。
それも両手にポケットを突っ込んだまま。
「調子はどうだい?」
私はこの時、正直に云ってその姿に振り向くどころか挨拶を返す余裕さえなければその姿勢もまったくなかった。
あっけらかんとしているK氏を前に、まるで死んだ魚の目で見るようにして黙々と作業を続けながら一言を口にした。
「普通ですが…」
あちらは私の身を案じているつもりなのだろう。だが私にとってその行為自体がたとえ本音だろうと建前であろうと、これまでのことを踏まえたうえで余計なお世話としか捉えようがなかった。
それと同時に、目の前に一刻も早く取り組むべき作業を終わらせたい一心でいっぱいであった。
しかしK氏はこちらが醸し出している空気をまったく読もうとせず、いったい何を思い立ったのか、はしたなく言葉をこちらにぶつけてきた。
「これから君はどうしていきたい?」
その一言に私は思わず硬直状態になり、手を止めてしまった。
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