技術士(経営工学・情報工学)が教えるDX(デジタルトランスフォーメーション)講座18 デジタイゼーション(デジタル化)の実践-古い工場でもスマート工場化ができるIoT-
デジタイゼーション実践の最後に、IoT(Internet of Things)を取り上げたいと思います。IoTはセンサーから収集したデータをクラウド上で加工集計した情報をアプリやAI連携したり、機械に制御信号を送って自動運転するといったことまで可能になるため、単なるデジタル化にとどまるものではありませんが、自動でデジタルデータを収集できるという点において、デジタイゼーションとしての意義も非常に大きいです。
工場では機械設備にセンサーなどのIoT機器をつなげることによって、工場の稼働状況を遠隔地からでも監視することができるようになります。農業においても、日照センサーと土壌センサーから収集したデータをクラウド上で分析し、全自動で水と肥料を供給するというスマートアグリにも注目が集まっています。
一般的に工場でのIoTはスマートファクトリーと呼ばれ、最新設備を備える新工場において導入されるイメージがありますが、今回ご紹介する工場向けのIoTソリューションであるi Smart Technologies社のIoT製品であるiXacs(アイザックス)では、「センサーなどが埋め込まれていない『昭和時代の古い生産機械』のIoT化を支援すること」をめざしており、古い工場でも既存の設備機器にマグネットや光センサーなどを設置してクラウドに接続することによって、古い機械から生産個数や機械の停止時間、サイクルタイムなどのデータを取得できるようになっています。
IoTで集めた実績データはクラウド上で集計・加工することで、故障原因や稼働傾向を分析することも可能になります。外観検査で収集した画像データをAIによって合否判別させ、検査工程を自動化するという事例も出てきています。また、機械設備のエネルギー消費量をセンサーからデータ収集して可視化し、省エネルギーにつなげるという取り組みも始まっています。
工場では長期的な稼働停止は大きな損失を生み出してしまします。SDGsの広がりでは省エネルギーへの取り組みに遅れている工場は顧客から低評価を受けてしまうことでしょう。AIによる自動制御までは実現できなくても、まずIoTによって工場の見える化を進めるだけでも、生産性や品質向上に結びつけることができれば、顧客信頼の向上につながるはずです。大がかりなIoTを考えるのではなく、まずは機械設備の稼働状況を見える化できる小さなIoTから始めてみてはどうでしょうか。
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