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宿泊業の未来を考える ー LDL対談で見えた課題と可能性

LDL(Locally Driven Labs)とは、継続的なオンラインコミュニティを作り、アウトプットまで持っていくことを目的にしたラボです。LDL恒例のバディ対談、今回のお相手はアソシエイトの小谷奈穂さんと実施させて頂きました。
小谷さんは私と同じ宿泊業という事で、 宿泊業における様々な課題や可能性を共有する中で、小谷さんの言葉に触れて、自分自身の考えを整理する機会となりました。この記事では、その対話から得た気づきを掘り下げてみたいと思います。

対談前に小谷さんの事を少し調べておりましたところ、驚いたのが、小谷さんが経営されている店舗の多さでした。

○一般社団法人KYOTANGO THREAD CARAVAN
「企業版ふるさと納税活用型地域活性化推進事業」
〇【戸建て旅館】 水屋敷 https://mizuyashiki.jp/
〇【旅館】 レイクサイド琴引 https://www.kotobiki.com/
〇【海まで30秒 旅館】 澄海 https://sky.kyoto.jp/
〇【飲食店】 丹後ひもの屋 (お土産処・お食事処)
 https://www.tango-himonoya.com/
〇【飲食店】 Dining琴引  https://dining-kotobiki.com/

それぞれが異なる価格帯とコンセプトで運営されております。その中でも特に印象的だったのが、「水屋敷」における医療機関との連携の取り組みです。水屋敷は、医療的なケアが必要な児童対応できる宿泊施設で、地域の医療機関との連携を活用し、滞在中に往診も可能との事でした。(※プランにより異なります)
「癒し」や「観光」の場を超え、社会課題に応える場として進化していることが本当に素晴らしいと感じました。
これは宿泊業の「機能的価値」を再定義する取り組みではないでしょうか。 宿泊業が地域医療と手を組むことで、一時的な休息の場ではなく、顧客にとって深い意味を持つ「価値ある滞在」を生み出していると感じました。
是非、こちらの小谷さんの取組記事をご覧頂ください!

小谷さんのユニバーサルツーリズムの取組の背景には、課題を見つけるための「感性」と、それを解決に導くための「経験値」が複雑に絡み合っていると感じました。
課題を見つけるためには、非常に高い感性が必要です。この感覚とは、現状の中に潜む「違和感」や「まだ見えていない可能性」を観察する能力です。
小谷さんの感性の高さは、幼少期の持病、家族との旅行における不安、そして末期がんの義母との思い出という、複数の経験が重なって生まれたものだと推察されます。
経験は、誰にもあるものです。しかし、それを「課題」として認識できるかどうかは別問題です。経験を流すのではなく、そこに「何かの兆し」を見る力が重要なのです。
課題を見つけるだけでは十分ではありません。次に必要なのは、それを解決に導くための構造を作ることです。
小谷さんの本当のすごさは、それを具体的な施設行動につなげている点にあります。
多くの人は、課題を見つけたとしても、行動を起こす段階で中断してしまうことがしばしば起きてしまうのではないでしょうか。しかし、小谷さんは自分の経験を起点にしつつ、地域社会と連携し、行動を積み重ねることで課題に真正面から向き合っています。
課題を行動するためには、感性の高さだけでなく、実践への強い意志が必要です。小谷さんの取り組みは、幼少期からの経験や家族との旅行の記憶が根本にあり、それは「誰もが安心して泊まれる宿を作りたい」という小谷さんの決意を支えているように感じました。
そして何よりも、経験が感性と行動力を磨くのだと再認識しました。

Zoom越しではありましたが、小谷さんの表情からは、強い自信と、それを裏付けて言葉実体験に基づいた自信が滲み出ていました。 家族の事情や地域への思いから旅館業へと転身された背景は、並大抵の決断ではなかったはずです。その転身は、大きなリスクを伴うものでありながらも、「地域に必要とされる宿を作りたい」という信念が小谷さんを突き動かしたのだと思います。

その言葉の一つには、挑戦してきた人だけが持つ重みと説得力があり、概念的理論ではなく、公務員の経験と、旅館業という異分野で培われた真実が宿っているように思いました。

対談の中でもう一つの重要なテーマは「後継者問題」でした。 宿泊業において、事業を次世代に引き継ぐという課題は多くの事業者が決断する問題です。 小谷さんの話から見えてきたのは、後継者不足の悩みではなく、その先にある深い問いかけでした。

小谷さんは、自分の子どもたちに宿泊業を無理に継がせないと仰っておりました。その理由には、宿泊業の大変さを知っているが故に、継ぐ側の意思を尊重するという価値観が強く反映されています。「家業を引き継ぐことが家族の義務である」という伝統的な考え方を見直し、個人の自由を重視する姿勢です。

私も子供がいるので、事業継承については常々考えています。
私自身、以前は事業継承について「自分の子どもでなくても良いのではないか」と考えていました。 しかし、10年ほど前に参加した「100年企業研究会」で、京都の老舗企業長い歴史を持つ家族経営の企業が、代々引き継いでいけるイズムや地域への責任感、そして時代に合わせて進化し続ける姿勢に感銘を受けました。家業を継ぐことは、単なる経営の引き継ぎではなく、地域や住民との交わる関係を守りながら、その価値を次の世代に伝える行為だと気づいたのです。

宿泊業は地域社会と密接に関わる仕事です。そのため、家業を継ぐことは完全ビジネスの継承ではなく、地域への責任や貢献を引き継ぐこともあります。そのやりがいを子どもたちに知ってもらって、「やってみたい」をどうやって作れるかが今まさに私の取り組んでいる挑戦でもあります。。

星野リゾートの星野代表の同族経営継承における考え方に私はとても共感しています。

星野さん曰く、家業の精神や価値観を次世代に引き継ぐだけでなく、それを時代に合わせて進化させることが重要だと仰られています。同族経営は、ただ同じことを続けるのではなく、次世代が新たな価値を加えて進む余白を残すことを意識しなければならないのです。

我々、ホテル八木は創業140年の歴史の中で、数々の困難を乗り越えてきました。 私たち兄弟が事業を継承する際には、両親とその間で激しい議論を交わし、改革を進めてきました。

その過程で到達した理念の一つが、「私たち挑戦者である」というものです。 変化を恐れない、変化しないことを恐れ、できない理由を並べるためにはなく、可能性を探り続ける。顧客のニーズや時代の変化を正確に捉え、常に順応していく。

小谷さんの取組は、この挑戦者の姿勢をリアルに体現しており、地域は異なれど、同じ志を持つ仲間がいたことに大きな喜びを感じました。

改めて、今回の対談ありがとうございました。
今後の小谷さんの活躍を楽しみにしております!

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