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あわら市観光まちづくりビジョン④

相対的に時間をかけるだけでは、良いアイデアは生まれません。 最も重要なのは、自分の考えを自由に発言できる場と雰囲気を作ることです。 なぜなら、人間は、心理的安全性を感じられない場では、その創造性を発揮することが難しいからです。 最初は、皆ぎこちなく、発言も少なかったのですが、各メンバーのこれまでの悩みや経験を話す機会を設けたことで、少しずつ彼らの考えやビジョンを表明するようになっていったのです。

そのあとは、まるで空気が変わったかのように、自発的に議論を進め始め、より深い対話が生まれていきました。真剣な議論の中で「愛」や「笑顔」といった感情的なフレーズが飛び交うようになったのです。これは非常に印象的で、自分の価値観や感情を素直に表現し、本当の意味での創造的な議論が瞬間的に生まれたと感じました。

そんな熱い議論を何度も行い、形成されたビジョンの全体像が下の図になります。

Misson:地域が果たすべき使命・社会に示す存在意義
「来たい、住みたい、おすすめしたい、そして世界に愛されるまち“AWARA”」を目指す。

Vision:地域がありたい姿、実現を目指す姿
「私たちも、訪れる人も笑顔が巡るまち」を目指し、地域の価値を高め続けること。

このビジョンの核心は、「幸福の循環」です。私たちがまちに誇りを持ち、訪れる人々に、あわらでしか体験できない価値を提供することで、地域住民と観光客が共に幸福を感じられる仕組みを築く。そして、環境に配慮した持続可能な地域経済の成長を目指します。

MissonとVisionを作るのに全体の8割近く時間を割きました。
でも、この過程こそが最も重要なことだったと言えるでしょう。
メンバーの価値観を共有できたからこそ、具体的な行動計画に納得し、一体となって取り組むことができたと思っています。

北陸新幹線開業前後での 観光による住民幸福度に関するアンケートより 福井県観光連盟

上の図をご覧ください。
こちらは、福井県観光連盟さんが取り組んでいる観光DX事業の一環として、観光客に接点をもっている人の幸福度をアンケートで分析した結果です。

観光客がお住まいの地域に来ることで、自分が住んでいる地域に愛着や誇りを感じる機会がありますか?

この質問に対して、観光客と接点がある人とない人での幸福度の比較をしたものです。

見ての通り、観光客と接点を持つ人々の幸福度が高いという結果が示されています。これは、観光客との交流が、地域への誇りや愛着を高め、一人一人の幸福感に良い影響を与えていることを示唆しています。

この結果を踏まえると、観光客との接点が、観光産業の収益を生むだけでなく、地域住民の満足度や幸福感にもつながっていることがわかります。 「稼ぐ力」を引き出すことが目的であるだけでなく、ここに暮らす人々の生活の質を高め、結果として地域全体の活性化にも繋がるという点が非常に重要だということです。

観光を地域活性化の柱として考えると、住民と観光客との接点を増やす努力は、観光客にとっての価値を生み出すだけでなく、住民自身が自分の暮らしでいる場所を再評価し、誇りと愛着これにより、住民が「主体的に動く力」を持ち、結果的に地域が持続可能な形で発展していく道筋が見えてきます。

とは言え、観光客と接点を持つことは、そう簡単には実現できません。それを可能にするために、戦略的に考えたまちづくりの設計が必要です。

ただ、ここで重要なのは、物事を複雑にしすぎず、シンプルに考えることです。私たちが目指すべきは「どうすれば笑顔が生まれるか」という点です。笑顔は、人と人とのつながりから自然に生まれますが、その前提として、地域が自主的に稼ぎ、経済的に自立していなければ、長期的な継続は難しいのです。地域が自立して冷静な状態を作るために、持たなければならない重要なポイントを言語化して以下の4つに絞りました。

【長期的な視点】
短期的な利益にとらわれず、将来を見据えた計画を立てることが重要です。地域の発展には持続可能なビジョンが求められ、これを踏まえて行動することが大切です。

【論理的思考】
感情に流されず、データや事実に基づいて論理的に考えることが必要です。計画を立て、実行するためには、しっかりとした分析に基づいた意思決定が求められます。これが地域を支える強固な基盤となります。

【事業性】
活動が終わるイベントや趣味で終わらず、しっかりとした事業として取り組むことが大事です。楽しいことだけでは持続できません。経済的に地域に利益をもたらす形にすることで、発展へ道が見えます。

【リスクを負う覚悟】
新しい挑戦には必ずリスクが伴いますが、それを恐れては改善はありません。リスクを適切に管理し、覚悟を持って挑戦することで地域の成長は実現できます。

今後のスケジュール

ビジョンは作って終わりではありません。 ビジョンは存在しても、実行しなければ、何も変わらないのです。

繰り返しになりますが、【自立した個人の市民がまちを変える】ということが大前提です。従来の「作れば使う」という受け身の発想を捨て、なぜこのビジョンが必要なのかを何度も何度も問い直し、先程言語化した4つの視点で冷静に考え続けていかなければなりません。ビジョンは形にするためにあるのではなく、その根底にある「意図」を考え、行動を起こすために存在します。

すべてが思い通りに進むわけではないことは百も承知です。 きっと、多くの障害や予期しない困難が待ち構えているでしょう。

ただ、行動に移さなければ、ビジョンはただの言葉に過ぎず、意味を持たなくなります。行動こそが、その価値を証明するのです。

最後になりますが、今一度今回のビジョン策定に込めた思いをお伝させて下さい。

まちづくりは、長距離の駅伝のようなものです。一人ひとりが全力で走り、次の走者にタスキを渡すことで、全体として前進していきます。先人たちが築いてきた基盤を、私たちの現在のやり方で発展させていくことが重要です。

地域の再生にスーパーマンは現れません。市民ひとりひとりが主人公です。地域の再生には地元住民の力が不可欠であり、一人ひとりの市民が主体的に関与することが鍵となります。

私たちが今取り組むべきことは、あわらの未来のために必要なことを確実に行うことです。今回策定した【ビジョン】は、そのタスキそのものです。このビジョンを手に、次の世代へと繋げていくことで、持続可能なまちづくりを実現していくのです。

私が所属する芦原温泉旅館協同組合では、1年前に「OUR LOVE」というキャッチコピーを作りました。
この地で大切にされてきたものを、私たちは誇りを持って「OUR LOVE」と呼んでいます。
このあわらを、皆が愛しているのです。先人たちが築き上げてきた「あわら愛」をリスペクトしながら、このビジョンに愛を込めさせて頂きました。

今回のビジョン策定はゴールではなく、むしろスタートに立ったにすぎません。これからが本当の挑戦です。
熱い想いを持った市民と共に、このビジョンを実現させ、世界に愛されるまちAWARAを目指していきます。

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