政治講座ⅴ611「虚に見せて実、実に見せて虚、ロシア軍の戦略」
孫子の兵法「実を避けて虚を撃つ 兵に常勢なく、水に常形なし」
「手厚い場所を避けて、守りの弱い部分を攻めよ。水に形がないのと同じく、戦い方にも決まった形はないのである」と言っている。
トロイアの木馬という戦法がある。ヘルソン奪還した住民の中にロシア兵(民間の服)が氾濫を起こしウクライナ兵を滅亡させる戦法とも取れる。
悩ましい勝利である。どの様な展開を迎えるのであろうか?
皇紀2682年11月21日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
「民間人の服に着替えた敵を発見する」ヘルソン奪還…歓喜する住民の横で起きていること【報道1930】
TBS NEWS DIG - 2 時間前
ロシアのウクライナ侵攻からおよそ9カ月。ヘルソン州の州都をウクライナが奪還した。ゼレンスキー大統領が、市の中心部に入り住民から歓喜の声で迎えられた。しかし喜びだけではない。ゼレンスキー大統領は「長く困難な道のりが待ち受けている」と全土の解放を目指す決意と、まだロシア軍への脅威が消えていないことを口にした。果たしてヘルソンの今後、そして全土の奪還は叶うのはできるのだろうか。
ヘルソンの兵士、ウクライナ軍の南部防衛司令部の大佐、そして英国王立防衛安全保障研究所RUSIの研究員に戦況を聞いた。
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■「民間人の服に着替えた敵を発見できるように…」
今月12日、街の中央広場に住民たちの歓喜の輪ができていた。その中心にはウクライナ軍の空中偵察部隊兵士マジャル氏。我々が彼と接触したのは2か月前。その時には、詳しい場所は言えないが、ヘルソン市からまだはるかに遠い塹壕の中だった。
しかし、いま、彼はヘルソン市の中心部にいて、ドニプロ川を背負っていた。その手にはなぜかスイカ。ヘルソンはスイカの名産地で、解放のため街に入った時に住民からプレゼントされたものなのだという。
ウクライナ軍空中偵察部隊 マジャル氏
「どのくらい保管できるか分からないがいずれは切って食べますよ。敵はドニプロ川の向こう岸に撤退しました。ここ数日で東岸では140以上の市町村が解放されました」
ウクライナ軍の攻勢は確かにあった。しかし、ロシア軍は逃げ去ったというよりは、作戦としてヘルソン市を解放“させた”という見方もできる。
ウクライナ軍空中偵察部隊 マジャル氏
「私たちとて心配事にウクライナ最大の川であるドニプロ川がありますがすべての橋が破壊され川を渡ることができません。向こう岸では敵は良質な防衛体制と攻撃態勢を構築したのでそれを使って攻撃してくると思う。一時的に住民には安全な場所に移動するように伝えています」
ロシア軍の反撃を心配するマジャル氏。しかし問題は外からの攻撃だけではないという。
ウクライナ軍空中偵察部隊 マジャル氏
「ヘルソン市に残って紛れている敵を発見しないといけません。民間人の服に着替えた敵を発見できるように検問所の態勢を強化しました。ウクライナ軍や住民を狙った攻撃を行う予定の破壊工作員がいる可能性があるのです。」
ウクライナの進撃の理由にパルチザンとして、ロシア軍の情報をウクライナ軍に伝えたり、破壊活動に協力したりするパルチザンの存在があったことが伝えられているが、今度はその住民になりすました“逆パルチザン”にウクライナは気を配らなければならない。
■畑にも地雷が…
ヘルソン市の平和はいつもたらされるのか…。解放したからすべてがうまく行くというものではない。ロシア軍がこの地を去る際にインフラを壊し、ウクライナ軍の進攻を阻むものを残しているからだと南部防衛司令部のナタリヤ・グメニュク大佐は言う。
ウクライナ軍南部防衛司令部のナタリヤ・グメニュク大佐
「電力供給が不可能になり、今も問題が続いています。水道や暖房も同様です。通信インフラは破壊され、電話通信の施設には地雷が設置された可能性があります。畑にも地雷がたくさん仕掛けられています」
仮にヘルソン州全体が解放され、住民に平和が戻ったとしても、住民が名産のスイカ畑に入ったとたん地雷が…ヘルソン、いや、ウクライナの住民はそんな恐怖とも今後戦わなければならないのである。
■「ロシア軍の質は一般に言われているほどひどくない」
ヘルソン市の奪還で、ウクライナの攻勢が伝えられる中、現地の状況を1カ月間にわたり調査をしている人物がいる。イギリス王立防衛安全保障研究所=RUSIの研究員レイノルズ氏。彼はロシアの侵攻以来、2か月ごとに被害地を長期にわたり検証、ロシアの攻撃力などを分析している。RUSIはレイノルズ氏の調査をもとに、11月7日、ウクライナへの防空支援を強化しないと、今後、ウクライナ軍の勝利の可能性が低くなるという趣旨の報告書を出した。
英国王立防衛安全保障研究所 レイノルズ研究員
「現時点でウクライナは戦場では優勢ですが、今後もウクライナが生き残り、優勢を保つために何を必要としているのか、国際社会は楽観視すべきではありません」
レイノルズ氏は現地調査する中で、メディアなどでは伝えられていないロシアの防衛力の強さに気づいたという。
英国王立防衛安全保障研究所 レイノルズ研究員
「ロシア軍は占拠した地域で防衛体制を広く強化し素早く塹壕を掘っています。さらに航空システムと通信用のケーブルを敷いています。汚れて散らかったロシアの占拠地の写真が多く出回っていますが、ロシア軍は選挙地域で塹壕を掘り、防衛体制を整えているという事実を覆い隠すべきではありません。ロシア軍の質は高くありませんが、一般に言われているほどひどくはないのです」
そして今後、最もウクライナが注意すべきなのはロシアの空軍力だという。
英国王立防衛安全保障研究所 レイノルズ研究員
「ロシア陸軍は著しい損失を受けましたが、空軍にはまだ多くの能力が残っています。ロシア空軍はかなり有能です。ウクライナが今保有している装備では領空を守るのは技術的に不可能です。」
レイノルズ氏の今後のウクライナの戦況の見立ては一貫して楽観的なものではなかった。その理由はいま西側諸国がウクライナに送っている兵器は、自分たちが渡せるもの、渡したいもので、ウクライナに必要なものという観点が少ないからだという。
英国王立防衛安全保障研究所 レイノルズ研究員
「国際社会は、ウクライナ軍には地対空ミサイルの弾薬など軍事補給面で危機的な脆弱性があることを認識しなければなりません。ロシアが防空ネットワークを撃ち破ることができれば、にわかにウクライナはシリアで行われたような爆撃のリスクに初めてさらされることになります。ロシアがそうした戦略を使うことを躊躇するようには見えません」
(BS-TBS 『報道1930』 11月14日放送より)
参考文献・参考資料
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