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政治講座ⅴ1933「まだ燃え続ける中露の火種」

「金持ち喧嘩せず」の反対語としては、「貧すれば鈍する」という言葉がある。今のロシアはウクライナ侵攻に対する経済制裁を受けており財政的に逼迫していると言われる。方や中国は不動産バブル崩壊と地方政府の過剰債務による財政破綻が囁かれている。国内の失政時に、失政の注意を外国に向けることが為政者の常套手段である。
今回はその導火線となる歴史的事実を紹介する。

     皇紀2684年9月19日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

「なぜ中国はロシア占領の土地を取り戻さない」 台湾総統の発言に露ハッカーが「報復」

【台北=西見由章】ロシア系のハッカー集団が9月上旬以降、台湾の官公庁や企業にサイバー攻撃を仕掛けている。台湾の頼清徳総統は今月初め、「領土回復」を旗印に台湾統一を掲げる中国が、帝政ロシアに占領された土地は取り戻そうとしていないとして中国側の「二重基準」(台湾メディア)を指摘。露ハッカー集団が頼氏の発言への報復を宣言する一方、中国側は沈黙している。

「中国が台湾を併呑しようとしているのは領土保全のためではない。もしそうなら、なぜ愛琿(あいぐん)条約でロシアに占有された土地を取り戻さないのか」。頼氏は台湾のテレビ局のインタビューで「中国は世界秩序を改変し自らの覇権を実現しようとしている」と訴えた。

米欧に対抗するため戦略的な協力を深めている中露にとって、領土紛争の歴史はデリケートな問題だ。帝政ロシアは清朝が第二次アヘン戦争で英仏に敗北を重ねたのに乗じ、1858年の愛琿条約でアムール川(黒竜江)以北の60万平方キロ余りを割譲させ、2年後の北京条約ではウスリー川以東の40万平方キロ超を得た。現在も中国ではロシアから領土を「不法に奪われた」との認識が一般的だ。

頼氏の発言に敏感に反応したのはロシアだった。露外務省報道官は3日の声明で「台湾当局のトップは北京(中国政府)に代わって発言できる立場にない」と頼氏を批判。2001年に締結した「中露善隣友好協力条約」などに言及し、両国の国境問題は完全解決されたとの立場を強調した。

さらにロシア系ハッカー集団がSNSで「台湾の総統は中国が極東の領土をロシアから奪い取ることを提案した」と非難し報復を宣言。「北京が台湾を統治するのは時間の問題だ」と中国の台湾併呑を支持した。

台湾のデジタル発展部(デジタル省に相当)によると10~14日、複数のロシア系ハッカー集団が台湾の官公庁や空港などのサイトを標的に、大量のデータを送り付けてシステム障害を起こすDDoS(ディードス)攻撃を計45件強行。台湾メディアによると、海軍や証券取引所のサイトでも一時的に障害が発生した。

一方、頼氏の発言に中国側は口をつぐんでいる。愛琿条約などによってロシアに割譲された領土の多くが取り戻せていないことに中国内の愛国主義者は不満を抱く。ネット上には「ウクライナ戦争で弱ったロシアから領土を取り戻せ」といった声もあり、中国当局は反露感情に火がつくことを警戒しているとみられる。

アイグン条約(璦琿条約)

 ロシア帝国と中国の清帝国が、1858年5月28日に中国東北部、アムール川中流のアイグン(現黒竜江省黒河市)において結んだ条約。

条約によって、1689年のネルチンスク条約以来、清国領とされてきたアムール川左岸をロシアが獲得し、ウスリー川以東の外満洲(現在の沿海州)は両国の共同管理地とされた。また、清はロシアにアムール川の航行権を認めた。

19世紀から20世紀初頭にかけて、清が列強と結ぶことを余儀なくされた不平等条約の一つである。

1851年に起こった太平天国の乱や1856年から1860年にかけてのアロー戦争など、アヘン戦争(1840年 - 1842年)以降の清国内の混乱に乗じたロシア帝国の東シベリア総督ニコライ・ムラヴィヨフ=アムールスキーが、停泊中のロシア軍艦から銃砲を乱射して、調印しなければ武力をもって黒竜江左岸の満洲人を追い払うと脅迫し、清国全権・奕山(中国語版、英語版)に認めさせた。

のち清は条約を否認したが、1860年の北京条約で確認され、ネルチンスク条約の効果は完全に失われた。

現在のロシア連邦と中国の極東部での国境線は、このアイグン(璦琿)条約と北京条約で確定されたものが基本となっているが、その後の河川の流路の変化により、中ソ国境紛争など両国の対立の原因の一つとなっていた。しかし、2004年にようやく国境全部の画定が完了した。


参考文献・参考資料

「なぜ中国はロシア占領の土地を取り戻さない」 台湾総統の発言に露ハッカーが「報復」 (msn.com)

アイグン条約 - Wikipedia

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