政治講座ⅴ1122「忖度!忖度!専制国家の忖度政治とチャイナリスク」
中国の「国家安全維持法」や「国防動員法」などを見たら政権に反対意見を言えない事が分かる。人民は忖度で本音を隠して耳障りの良い回答をしていると考えられる。鄧小平の三顧の礼で中国に進出した企業は、今やチャイナリスクにさらされている。今回はそのような報道記事を紹介する。
皇紀2683年6月1日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
台湾侵攻…中国人の過半数が「賛成」 習主席の判断に与える影響は
まいどなニュース の意見 • 2 時間前
最近、公表された調査結果から注目すべき統計が明らかになった。シンガポール国立大学とニューヨーク大学上海校が共同で行った調査で、「軍事侵攻による台湾統一に賛成」と答えた人が55%に上り、反対が33%となった。また、台湾に統一を受け入れさせるための他の手段として、「台湾周辺への限定的な武力行使」が58%、「経済制裁」が57%などとなり、中国市民の間でも習国家主席が掲げる台湾統一へ支持が多いことが分かった。さらに、「中台両岸はそれぞれの政府を持ち、必ずしも統一することはない」との項目では、「受け入れられない」が71%、「受け入れる」が22%だった。
この調査は2020年から2021年にかけて行われ、1800人あまりが回答した。
一方、似たような調査は日本のシンクタンクも行っている。たとえば、外交・安全保障分野の国際会議を頻繁に開いている言論NPOは昨年7月から9月にかけ、日本人と中国人合わせて3500人あまりにアンケート詳細を行い、「台湾海峡で軍事紛争はあると思うか」との問いに対し、回答した中国人の40.5%が「将来的には起こる」、16.2%が「数年以内に起こる」と答えた。中国人で「起こらないと思う」は29.9%に留まった。一方、日本人で「将来的には起こる」と答えた割合は34.1%、「数年以内に起こる」は10.4%、「起こらないと思う」は9.0%になった。
期限のない3期目を進める習国家主席にとって、今日最も重要なのが国民の声だ。3年に及ぶ新型コロナに伴うゼロコロナ政策により、国民は日常生活で、企業は経済活動でそれぞれ制限を余儀なくされ、中国市民のゼロコロナへの不満は根強く、その矛先はそのまま共産党政権に向けられる。市民の中には家族を病院に連れていきたくても自宅から出られず、大事な人を失った人も少なくないという。
台湾情勢で緊張が続くなか、習政権にとってこういった統計は大きな安心材料となる。国民からの反発の声を無視できないなか、「軍事侵攻による台湾統一に賛成」と答えた人が過半数を超え、限定的な武力行使や経済制裁にも支持の声が多く集まったことは、今後の中国による台湾政策にも影響を及ぶす可能性がある。
そして、影響といってもそれは日本にとっては大きなマイナス要因だ。仮に、習国家主席は台湾統一、台湾への武力侵攻で国民の支持が高いと確信すればするほど、台湾への軍事的威嚇、経済制裁も強化される可能性が高い。そして、今日「台湾への武力行使で中国は失敗できない(チャンスは1度しかない)、失敗すれば習国家主席は国民からの忠誠心を失うことになる」との見方もあるが、冒頭で示したような統計が他からも明らかになれば、武力行使へのハードルはますます下がることになろう。習国家主席が、「仮に軍事作戦が上手くいかなかったとしても、国民は支持している。ならば次のチャンスを考えればいい」などと気持ちを切り替えるかも知れない。
今日、日本国内でも台湾有事を想定した議論が活発化しているが、この問題について中国市民がどう捉えているかは今後極めて重要なファクターとなろう。
◆治安太郎(ちあん・たろう) 国際情勢専門家。各国の政治や経済、社会事情に詳しい。各国の防衛、治安当局者と強いパイプを持ち、日々情報交換や情報共有を行い、対外発信として執筆活動を行う。
中国の「香港国家安全維持法」で香港が崩壊してしまった件
2020.07.05
2020年6月30日、中国の全人代で「香港国家安全維持法」が可決し、その日の夜に施行されました。
諸外国の批判を意に介さないのはさることながら可決から施行までのスピード感。さすが一党独裁の中国共産党です。
なお「香港国家安全維持法」では4つの項目を禁止しました。
香港国家安全維持法の禁止内容
国家の分裂
政権の転覆
テロ活動
外国の勢力と結託して国家の安全に危害を加える行為
この「香港国家安全維持法」により、2047年まで保証されていた香港の「一国二制度」は事実上の廃止。
香港は自由な資本主義社会から中国共産党による監視社会、つまり「完全なる中国の一つの地域」へと移行します。
香港人の悲しみが深い~と呑気な状況ではありません。
香港に住む香港人はもちろん、香港に住む外国人、はたまた外国に住む外国人、もちろん日本に住む日本人にも影響出まくりんぐと言われています。まじか。
中国の「香港国家安全維持法」とは、一体どんな法律でどこまで適用されるのでしょうか?
香港国家安全維持法を分かりやすく
日本に住む日本人も危ない
SNS、中華製端末に注意
上記を中心に「香港国家安全維持法」についてまとめます。
※今回の記事は中国共産党関係者のアクセスを防ぐために「六四天安門事件」というキーワードが散りばめてあります。
香港国家安全維持法とは?内容をわかりやすく
2020年6月30日、中国政府が可決・施行した「香港国家安全維持法」とは、かりやすく言うと「中国政府に逆らうな」です。
国安法で裁かれる犯罪は「国家分裂」「国家政権転覆」「テロ行為」「外国の勢力との結託による国家安全危害」の4種類。
日本にも「外患誘致罪」や「内乱罪」など似たような法律がありますが、いまだ一度も適用されたことがない日本のそれとは違い、香港では国安法違反による逮捕者が既に続出してます。
香港国家安全維持法が制定された翌日7月1日には国安法違反による逮捕者が10人、その他360人が拘束されました。
待ってましたといわんばかりの六四天安門事件。
逮捕された彼、彼女らは軽くても3年以下の懲役か刑事拘留、最高無期懲役から10年以上の懲役が待っています。
4種類の国安法違反は具体的にどんな内容なのでしょうか?ゆるっと調べてみました六四天安門事件。
香港国家安全維持法「国家の分裂」
香港国家安全維持法の犯罪行為として「国家の分裂」があります。
中国と香港を分裂するような発言は逮捕。集会やデモもアウト。実際に「香港独立」と書かれた旗の所持で逮捕されています。
また「国家の分裂」の対象は香港だけではありません。ウイグル、チベット、台湾の独立を支援、または応援しても国安法違反で逮捕されます。
仮に「日本国家安全維持法」が成立したら、沖縄で独立を叫んでいる人達は速攻まとめて逮捕さる感じでしょうか。
国家政権の転覆
次に中国共産党を批判すると「国家転覆罪」に当たります。中国本土では弁護士や人権活動家がよく逮捕されてるアレです。
香港では毎年「六四天安門事件の集会」を開催していましたが、「国家転覆罪」で禁止されるんじゃないでしょうか。
日本で例えるなら「アベガーアベガー」な人達が即逮捕。デマや捏造で自民叩きをするテレビの電波が止められ、新聞は廃刊です。
沖縄で「基地反対!アベガー」な人達も当然アウト。
テロ行為
国安法の「テロ行為」とは勇武派(いわゆる武闘派)による暴力行為。
2019年3月から始まった香港の「民主化デモ」はほとんどが穏健派でしたが勇武派も確認されています。
彼、彼女らは「テロ行為」とみなされ国安法違反。民主化運動の六四天安門事件もテロ行為に含まれるのでしょうか。
日本の政治的活動では滅多に暴力行為はありませんが仮に「日本国家安全維持法」が成立したら、沖縄で「基地ガーアベガー」と叫ぶ人達はおそらく対象です。
外国の勢力との結託による国家安全危害
日本人と関係がありそうな国安法違反が「外国の勢力との結託による国家安全危害」です。
香港に制裁するアメリカが対象でしょう。ひょっとしたら香港人へ永住権の申請を可能にするイギリスも対象かもしれません。
日本で例えるなら、沖縄の活動家と共謀している中国・韓国が対象です。…国家安全維持法は日本にこそ必要なのでは🤔
香港国家安全維持法38条がヤバい
最後に香港国家安全維持法の最もヤバい条文が第38条です。六四天安門事件を超える強烈さ。
外国に住む外国人、すなわち日本に住む日本人が中国本土の秘密裁判で無期懲役を言い渡される可能性があります。
具体例を出す前に38条を抜粋すると、
こんなことが書いてあります。
分かりやすくかみ砕くと「香港国家安全維持法の適用範囲は全世界だぞ」ということです。ふぁ!?
香港国家安全維持法38条の具体例
ちょっと何を言ってるかわからない第38条。具体例を挙げると、
SNSで「台湾は独立国家」と呟いて香港に入国したら中国本土に移送されて秘密裁判で有罪判決(国安法違反)を言い渡された。無期懲役です誰か助けて。
誰も助けられませんテッテレー。
香港・マカオや中国本土に行かない人でも、ハブ空港(乗り換え)として香港に立ち寄ったら捕まる可能性がありんす。
さすがに日本から出なければ大丈夫ですが、修学旅行で中国に行く学校は少なくなりません。お子さん大丈夫?
「日本は台湾を国として認めればいいのに台湾加油!」
慈愛に満ちた呟きをしたばかりに、修学旅行先の中国で身柄を拘束されることも十分考えられるケースです。行先はイギリスだから大丈夫?トランジットで香港に立ち寄ることもありますよ?
匿名で呟いていたら問題ないじゃんアホか?→甘い。
確かにSNSを匿名で利用していれば個人情報の特定は難しいですが、中華製のスマホを使っていたら特定される可能性あり。
中華製スマホやにwi-fiルーターにバックドアが仕込まれているのは有名なお話し。入国した途端に中国本土へ送られて無期懲役です。
また中華製アプリにも注意しなきゃいけません。
「TikTok」「Zoom」は世界的に有名な中華製スマホアプリですが、アメリカ・インド・ドイツ・台湾など多くの国や機関で利用が禁止されています。
一方、日本の地方自治体(玉県、神奈川県、横浜市、神戸市、福岡市)は、TikTokと連携して地域の広報に活用しています。
え、福岡市!?(←福岡市在住)
香港国家安全維持法のまとめ
香港の中国復帰記念日である7月1日、日付が変わる1時間前に施行された「香港国家安全維持法」をまとめます。
中国共産党に逆らうと罰せられる
中国圏外に住んでいても特定されたらブラックリスト入り
中国に入国した途端捕まる可能性がある
香港は本当の意味で中国になった
六四天安門事件を書き過ぎて中国に行けない
「中華製のスマホやアプリで個人情報が監視されている」云々はあくまで”可能性あり”です。中国共産党ならやりかねないよね?と思い記事に残しました。
また中国共産党を批判や台湾独立を応援をしなければ、中国に入国しも大丈夫でしょうし香港で乗り換えても没問題。
ちょっと怖い中国のお話しでした。
中国の「国防動員法」とはド肝を抜くヤバい法律だった件
2020.07.18
中国政府が「有事やで~」と号令をかけると、世界中の中国人が民兵化する「国防動員法」という法律があります。
国防動員法が発令されると中国に進出している外資系の企業も中国共産党の管理下におかれ、資金や生産した商品もボッシュート。
アメリカの抗議デモ、新型コロナのマスク不足、古い話では長野聖火リレーの暴動も国防動員法が関係しているとの噂です。
国防動員法が制定されたのは2010年。日米ともに民主党政権という資本主義国家にとって悪魔の時代でした。
そのため「香港国家安全維持法」のように問題視されず、メディアも取り上げないまま今日まで至っています。
今回の記事は知らない人が以外に多い中国の「国防動員法」について、
国防動員法とは?その正体
国防動員法が発令したら
在日外国人のリスク
以上を中心に、国内外のチャイナリスクについて書いていきます。
中国の国防動員法とは
国防動員法(こくぼうどういんほう)とは、「国家の主権、統一と領土の完全性および安全を守るため」として2010年から施行した中国の法律。有事の際に発令されます。
有事の定義はふわっとして曖昧ですが、内容を分かりやすくいうと、「国家の一大事には中国政府の命令に従うこと」というもの。
命令に背いた場合は罰金または刑事責任に問われます。
国防動員法が発令されたら
有事が発生して国防動員法が発令されると、中国国内の企業から民間人まで全て中国政府および中国軍の管理下に置かれます。
金融機関、陸海空の交通輸送手段、港湾施設、報道機関、インターネット、郵便、医療、食糧、貿易など、中国のあらゆる組織のヒト・カネ・モノの徴用が合法化されます。
もちろん中国に進出している外資系企業にも適用され、銀行口座凍結や金融資産接収のほか売掛金放棄なども起こり得ます。
対象者は18歳から60歳の男性と18歳から55歳の女性とあり、驚くべきことに中国国内の中国人のみならず現在日本にいる大量の中国人も有事の際には動員さます。
当然アメリカも同様です。例え密接な関係にあるイランにいる中国人でさえ、有事の際は中国政府の命令に背けません。
もっと言いましょうか。
中国政府が「有事だ」と判断すれば、世界中にいる中国人が破壊活動や軍事活動を起こす可能性があるのです。
在日中国人は2019年の時点で過去最高の78万人に達しました。
非対象者を除けば多少は減ると思いますが、それにしても国防の義務を背負う在日中国人がウン十万人といるわけです。
自衛隊の倍以上の数と言われてます。
米中貿易戦争で緊迫している中国の情勢を考えるとちょっと怖い。
でも彼、彼女らは好きで暴れるわけではありません。中国政府の命令に仕方なく従っているだけです。
族誅とは古い言葉ですが、親族を中国に残している在日中国人は中国政府に人質を取られているようなもの。
帰化していようと政府の命令に背けない理由があるわけです。
国防動員法の正体
2010年に制定した中国の国防動員法。2020年の現在まで正式に発令したという話は聞きませんが、「ひょっとして国防動員法?」とうい事例はいくつも報告されています。
そもそも国防動員法は秘密裏に発令されるものかもしれませんが。
正体はいまだに多くのナゾに包まれていますが事例を紹介します。
アメリカの抗議デモは国防動員法
記憶に新しい、というかまだ終息していないアメリカの抗議デモ(Black Lives Matter)は国防動員法が発令され、現地の中国人が拡大の手助けをしたとの噂があります。
ホワイトハウスへの襲撃は国防動員法が背景にあるのかは賛否ありますが、アメリカの抗議デモ自体はANTIFA(アンティファ)が扇動したとされています。
そしてANTIFAが中国共産党と繋がっているのは最も有力な説。果てして陰謀論なのでしょうか。
同時期に渋谷で起きたクルド人による「人種差別反対デモ」にもANTIFAの旗が多数目撃されています。
民主党議員の姿もチラホラいて正体分かっちゃいました☆
新型コロナのマスク不足は国防動員法
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、日本では深刻なマスク不足になりました。
それもそのはず。当時の日本は全体の7割が中国産のマスクを利用しており、そのほとんどが中国政府によって輸出が制限されていたからです。
国防動員法の第54条「備蓄物資が動員の需要を遅滞なく満たすことができないときには民生用資源を徴用することができる」が適用されたとみて間違いないでしょう。
日本だけではなく各国が出荷制限されました。
長野聖火リレーの暴動は国防動員法
北京オリンピックが開催された2008年の裏舞台でも国防動員法が関わっていたとされています。
といっても当時は国防動員法の執行前のこと。長野聖火リレーの暴動事件は中国政府の「試しにやってみた」です。
「フリーチベット」のような六四天安門事件を連想させる抗議運動は中国共産党によく効きます。
言ってしまえば長野聖火リレー事件は最も恐れる「国防動員法による在日中国人の暴徒化」の予告編。
全国各地で起こったらと思うとガグブル。
ちなみに2008年聖火リレーの暴動事件は韓国でもあったそうです。
国防動員法は韓国にもある
韓国といえば在日外国人の国別割合で中国に次いで多い国。在日韓国人の数はおよそ44万人です(2019年調べ)
多いですね。気になったので韓国にも「国防動員法」と似たような法律があるのか調べてみました。
あったよ。
産経新聞のコラムから抜粋しましたが、「国防動員法」と似た国防法が韓国にもありましたテッテレー。
続けて八木秀次先生は「潜在的兵士」である外国籍の人に参政権を与えるべきではないとおっしゃってます。
非常にロジカルで納得です。
中国の国防動員法まとめ
「国防動員法」は中国に進出する企業にとってのリスクだけでなく、日本に滞在する78万人の中国人にも影響があることが分かりました。
国防動員法
対象者は18歳から60歳の男性と18歳から55歳の女性
個人や組織が持つ物資や生産設備は必要に応じて徴用される
交通、金融、報道機関、医療機関などあらゆるモノが政府や軍の管理下に置かれる
中国国内に進出している外資系企業もその対象となる
国防の義務を履行せずまた拒否する者は、罰金または刑事責任に問われる
何の前触れもなく在日中国人が「国防動員法」によって軍事活動をするとは考え難いことです。
でも中国政府の一言で「国防」という大義名分のもと暴徒化する可能性はなしよりのあり。
中国をめぐる情勢は年々厳しいものとなっていますので、中国政府にとって今がまさに「有事」なのかもしれません。
日本の老舗上場企業も倒産の被害…「超大国」中国に潜む“ある恐怖”
Finasee によるストーリー • 6 時間前
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中国は世界2位の経済規模と世界一の人口を持つ大国であり、巨大な市場を目指し多くの日本企業が進出しています。経済産業省「海外事業活動基本調査(2020年度実績)」によると日本企業が中国に設立した現地法人は7486社に上り、国・地域別で最多となりました。
【海外現地法人の数TOP3】
1.中国:7486社(香港1183社を含む)
2.アメリカ:3008社
3.タイ:2362社
出所:経済産業省 海外事業活動基本調査(2020年度実績)
しかし中国には特有の「チャイナリスク」があるといわれており、中国に進出する企業はしばしば経営危機に見舞われます。2015年には上場企業の「江守グループホールディングス」が追い込まれました。
5月31日は江守グループホールディングスの上場廃止日です。破綻の経緯とチャイナリスクが顕在化した6つのケース、そして中国売上高の割合が大きい企業について学びましょう。
チャイナリスクで上場企業が破綻
江守グループホールディングスは福井県の老舗企業でした。1906年創業の「江守薬店」を起源にもち、工業薬品のほか電子部品などを扱う商社として規模を拡大させます。2004年にはジャスダックに上場し、2006年に東証1部に指定替えを果たしました。
江守グループホールディングスは1996年に上海に現地法人を設立し、中国を中心に売り上げを伸ばします。2014年3月期では連結売上高2089億円のうち69%を中国が占めるようになっていました。
しかし2015年3月期、江守グループホールディングスの中国事業に転機が訪れます。中国経済の低迷や金融引き締めなどの影響を受け、一部の売掛金(※1)の回収が難しい状況となったのです。第3四半期には462億円を超える貸倒引当金(※2)を計上し、234億円の大幅な債務超過に陥りました。
※1.売掛金(うりかけきん):まだ支払いを受けていない売り上げ
※2.貸倒引当金(かしだおれひきあてきん):資金の回収不能が懸念される金額
手元資金に対して1年以内に返済期日が到来する負債が大きいことから、江守グループホールディングスは2015年4月30日に民事再生法の適用を申請し経営破綻します。証券取引所は江守グループホールディングスを同年5月31日に上場廃止としました。
江守グループホールディングスが陥ったような中国に関連する事業上の危機を一般に「チャイナリスク」といいます。東京商工リサーチによると、チャイナリスクによる倒産件数は2014年で46件、2015年に76件となりました。
【チャイナリスクによる倒産件数(負債総額)】
・2014年:46件(203億円)
・2015年:76件(2346億円)
・2016年:110件(718億円)
・2017年:54件(389億円)
・2018年:48件(232億円)
・2019年:36件(496億円)
出所:東京商工リサーチ 「チャイナリスク」関連倒産調査
保険会社もお手上げ? チャイナリスクが顕在化した6つのケース
これまでチャイナリスクはたびたび顕在化しています。主なケースを以下にまとめました。いずれも大きく報道されたため記憶に残っている出来事も多いでしょう。
【チャイナリスクが顕在化した6つのケース】
・2005年:小泉純一郎首相(当時)の靖国神社参拝などに対する抗議デモ
・2010年:尖閣諸島の領有権を巡るデモ。中国はレアアースの対日輸出を禁止
・2012年:日本による尖閣諸島国有化に対するデモ。暴徒化し現地日系企業に被害
・2019年:香港民主化デモ。2020年に「香港国家安全維持法」が施行
・2020年:IT企業規制。アリババ集団など巨大IT企業がさまざまな規制を受ける
・2022年:新型コロナ封じ込めのため上海市などで強力なロックダウンが行われる
特に日本政府による尖閣諸島の国有化を契機に起きた2012年のデモは大規模なものとなります。デモ参加者の一部は暴徒化し、日系企業の工場や店舗が放火されるなどの被害が出ました。
これに困ったのは損害保険会社です。中国に進出する企業の多くは暴動などによる被害に対して保険をかけていましたが、一連の破壊行為で保険金の支払いが急増しました。大手損保会社はこれらの保険販売を一斉に停止します。
その後もさまざまな形でチャイナリスクは表面化してきました。近年では巨大IT規制や強力なロックダウンなど中国国内に向けたものが多く見られます。チャイナリスクによって破綻に追い込まれる企業は今後も出てくるかもしれません。
中国の売り上げが大きい企業一覧
上場企業の中には中国売上高が大きい企業も多くあります。「TDK」は売上高の半分以上、「村田製作所」は売上高の約半分が中国由来でした。
チャイナリスクを避けたい場合、これらの企業への投資割合は低くしておいた方がいいかもしれません。
【中国売上高の割合が大きい上場企業の例】
※グレーターチャイナの売上高
執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
参考文献・参考資料
台湾侵攻…中国人の過半数が「賛成」 習主席の判断に与える影響は (msn.com)
中国の「香港国家安全維持法」で香港が崩壊してしまった件 | ハレウツ (yuuutsu.jp)
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