政治講座ⅴ2030「権力・経済の膨張は崩壊を招くことは歴史が示す通りである。」
後で思えばあの時が全盛期という期間が或る。
歴史を俯瞰するとそれが分る。「盛者必衰の理」とはよく言ったものである。秦の始皇帝も中国統一後15年で滅びた。
世界の大陸の四分の一を征服した英国もその地位を米国に奪われた。破竹の勢いの共産主義国のソビエト連邦も70年で滅びた。中国共産党の支配する中華人民共和国は一時欧州や発展途上国の国々に対して「札束で頬を張る」ような覇権国の顔を見せた。それが「一帯一路」であるが、これは返済能力の無い国に金を貸し付けて、担保としての融資物件を巻き上げる手口であり「債務の罠」と悪評であった。そして、過剰債務を気にしないで、過剰投資・過剰設備をしてGDPに貢献した共産党員は出世した。
需要と供給を無視したマンション建築ラッシュでついには不動産バブルの崩壊となった。そして、完成していないマンションへの住宅ローンで苦しむ住民へは権力で隠蔽・封殺している。過剰債務の融資平台・銀行の収益悪化、失業の蔓延、人民の閉塞感など悪い雰囲気になっている。暴動・動乱が起きそうである。もう、その兆候が表れており、「報復社会」・「閉塞感」から、自動車で通行人に無差別にひき殺すなどの民衆の行動が事件として多発している。
今回はそのような中国の外交と社会情勢の報道を紹介する。
皇紀2684年11月19日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
中国・習近平国家主席「アジア太平洋の協力は試練に直面」保護主義台頭に懸念 トランプ新政権をけん制か
TBS NEWS DIG_Microsoft によるストーリー
中国の習近平国家主席は、APEC=アジア太平洋経済協力会議の首脳会議で演説を行い、「アジア太平洋の協力は試練に直面している」と指摘し、アメリカのトランプ次期大統領を念頭に保護主義の台頭に懸念を示しました。
中国外務省によりますと、習近平国家主席は16日、APEC首脳会議の演説で「アジア太平洋の協力は地政学的な対立や単独主義、保護主義の台頭などで試練に直面している」と指摘。「貿易や投資、技術やサービスの流れを分断する壁を取り除き、安定的かつ円滑なサプライチェーンを守り、アジア太平洋と世界の経済の循環を促進すべきだ」と訴えました。また、習主席は自国の産業を保護する政策ではなく「開放型の経済を堅持すべきだ」として、WTO=世界貿易機関を中心とした多国間の貿易体制を維持しなければならないと強調しました。中国製品に高い関税を課すと言及しているアメリカのトランプ次期大統領による保護主義的な政策をけん制する狙いがあるものとみられます。
習近平が中国をどんどん縮小させていく…不動産バブル崩壊の後遺症でついに「中国の重要インフラ」が沈み始めた…!
真壁 昭夫(多摩大学特別招聘教授) によるストーリー
稼げなくなった中国の銀行
近年、不動産業者の救済などで中国の銀行の収益性の低下が鮮明化している。
これまで、中国政府は不動産市況の悪化を食い止めるため、市中銀行に対し資金供給を増やすよう要請を強めてきた。
具体的に、不動産デベロッパーに対する融資や、地方政府がマンション在庫を買い取り、リノベーションを実施する資金提供を政策的に促進した。
中国の不動産市場では、6,000万戸ものマンション在庫が存在するとの見方もある。
国際通貨基金(IMF)は、今後4年間で未完成物件の工事完了など不動産問題の解決に、少なくとも約7兆元(約140兆円)の財政資金投入が必要と試算した。
需要を上回るマンション供給で、今のところ不動産価格下げ止まりの兆候は見られない。
中国の金融緩和(利下げ、資金供給の増加など)は国債流通利回りの低下につながり、結果的に銀行の貸し出し金利を下押しする。
財政支出の増加(国債の増発や地方政府の債務上限の引き上げなど)は、過剰な生産能力、鉄道や道路などの過剰投資に使われ、社会インフラでもある銀行の収益性を下押しているとみられる。
これまでのところ、規制緩和などによる需要創出策が進む兆しは見られない。
需要の不足が長引けば、景気回復の期待は高まらず、消費者、投資家、企業経営者のリスク許容度は低下する。
不動産業界、地方政府と傘下の地方融資平台などの不良債権残高は増え、商業銀行の金融仲介機能は低下するだろう。 来年1月20日以降、トランプ政権の中国締め付け策が本格化する可能性も高い。
中国の景気は一層の低迷に向かう懸念は高まっている。
これまでの成長プロセスが限界を迎えた
9月下旬以降、中国政府は総合的な経済対策を拡充した。
10月、政府は国債の増発を発表。
中央銀行である中国人民銀行は、期間1年の新たな資金供給オペも設定した。
11月4日から8日の全国人民代表大会の常務委員会は、地方政府に債券の発行増加を容認した。
地方債の発行で調達した資金は、インフラ投資や地方融資平台の資金繰り確保、マンション在庫の買入などに使われるようだ。
また、9月下旬の利下げや財政出動により、一時的に北京や上海などの大都市で一部の不動産価格が反発する兆しは出たようだった。それでも価格が本格的に持ち直す状況になっていない。
さらに10月、ドル建ての輸入は前年同月比2.3%減少した。自動車の部品や化粧品が減少し、個人消費にかつての勢いはない。価格の影響もあったが、原油、鉄鉱石などの輸入も減少している。
不動産投資で高成長を実現する中国の経済成長のプロセスは限界を迎え、消費などの需要の不足は深刻だ。
過去、不動産投資の過熱によって大規模なバブルが発生し、マンション建設(投資)や基礎資材の生産も増えた。
それに伴い、土地需要も増え、地方政府はデベロッパーに土地利用権を譲渡して歳入を確保し、産業補助金やインフラ投資に再配分した。
こうした熱狂は商業銀行などの利ザヤの厚さを支えた。
2019年1~3月期、大手商業銀行の純金利マージンは2.12%だった。純金利マージンとは、資金調達の金利と、貸し出しなどによる資金運用の利回りの差をいう。2021年まで中国商業銀行は純金利マージン2%台を維持していた。
しかし、2020年8月の不動産融資規制の実施で、中国の不動産バブルは崩壊した。
芳しくない銀行の収益性
家計の貯蓄の7割程度が不動産投資に向かったとみられるが、住宅など資産価格下落は鮮明化。不動産市況の悪化から住宅の価値は下落し、雇用・所得環境の先行き不安も高まった。個人や企業は先行きのリスクに備え、債務返済を優先せざるを得ない状況だ。
土地利用権の需要減少で地方政府の財政も悪化した。地方政府の隠れ債務である地方融資平台の債務問題も深刻だ。鉄鋼、太陽光パネル、リチウムイオンバッテリー、エアコン、電気自動車(EV)、建機などの過剰生産能力の膨張にも歯止めがかからない。
その結果、経済全体で資金需要は伸び悩み、商業銀行の純金利マージンは低下した。
2022年1~3月期、純金利マージンは1.97%まで低下した。2023年1~3月期は1.74%に低下し、健全な銀行経営の維持に必要とされる、利ザヤの水準(1.8%)を下回った。さらに2023年10~12月期の純金利マージンは1.69%に低下した。
そして2024年7~9月期、四大国有銀行の一つである中国銀行の純金利マージンは1.41%、前期から0.03ポイントの低下だ。
10月、中国政府は地方政府による住宅在庫の買い取り資金規模を4兆元(80兆円)規模に拡充し、不動産市況の悪化を食い止めようとした。政府は、銀行に買い取り資金の融資を増やすよう指示した。これも銀行の利ザヤ圧縮の要因だろう。
すう勢として中国商業銀行セクターの収益性は低下傾向だ。
アメリカ大統領選の結果に「中国の銀行」が大慌て…帰ってきたトランプが低迷中国に加える「トドメの一撃」
企業の業績も悪化傾向に
不動産投資で高成長を実現する中国の経済成長のプロセスは限界を迎えている。2020年8月の不動産融資規制の実施で家計貯蓄の7割程度が向かったとされる不動産バブルが崩壊。住宅など資産価格の下落が止まらない。
中国の不動産市場では、6,000万戸ものマンション在庫が存在するとの見方もある。国際通貨基金(IMF)は、今後4年間で未完成物件の工事完了など不動産問題の解決に、少なくとも約7兆元(約140兆円)の財政資金投入が必要と試算している。
不動産セクターだけでなく、バブルのおかげで稼げていた銀行セクターへの反動も大きい。2023年10~12月期は商業銀行の純金利マージン(資金調達の金利と貸し出しなどによる資金運用の利回りの差)は1.69%まで低下。
さらに2024年7~9月期は、四大国有銀行の一つである中国銀行の純金利マージンも1.41%だった。いずれも健全な銀行経営の維持に必要とされる利ザヤの水準(1.8%)を下回っている。
不動産バブル崩壊や過剰生産能力の影響などで、今後は企業の業績も悪化傾向が続く可能性がある。
債務の焦げつきリスクが高まった
2024年1~8月の中国新車市場では値下げ率が17.4%に達した。中国自動車流通協会(CADA)は、自動車ディーラー全体で1,380億元(2兆7,600億円)の損失が発生したと発表した。
業績悪化で企業の財務内容は悪化し、信用リスクは上昇する。債務の焦げ付きリスクも高まる。将来的な不良債権の増加に備え、銀行は貸倒引当金を積み増さなければならない。中国でも貸し渋りや、貸しはがしも増えているとの見方もある。2024年7月、19年ぶりに人民元建ての融資残高は減少した。
中国商業銀行による金融仲介機能は低下傾向にあるとみられる。
事態の悪化を食い止めるため、本来であれば、中国政府は需要の創出を急ぐべきだ。しかし、今のところ、政府は国有企業などへの投資を増やして、供給力を増やす政策方針を堅持している。中国人民銀行は期間1年の資金供給制度も開始し、銀行セクターへの資金供給を増やす方針を示した。
政府から融資増加の要請が高まる中、政府の後ろ盾がある国有企業などへの融資選好度は高まりやすくなっているだろう。
それと対照的に、多くの銀行は、信用力の低いスタートアップや中小企業向けの貸し出しには慎重にならざるを得ない。
中国の金融情報企業の試算によると、2018年、中国で5万1302社の新興企業が設立された。IT先端分野に対する政府の締め付け、銀行の融資能力の低下などを要因に、2023年の企業設立件数は2018年から98%減だったようだ。
景気低迷は一段と深刻化
中国政府が需要の創出を重視する政策に方針を転換しないと、経済環境の厳しさは増すだろう。本来、スタートアップ企業の増加は、在来分野から先端分野への経営資源(ヒト、モノ、カネ)の再配分の促進に必要だ。
しかし、銀行の金融仲介機能の低下に加え、政府は富裕層に対する課税を強化している。共同富裕策も民間企業の創業経営者の成長志向を阻害し、起業件数は伸び悩む恐れがある。
現在、中国政府は海外企業に直接投資を増やすよう呼びかけているが、その効果は期待しづらい。最近、英医薬品大手アストラゼネカの中国法人トップが当局に拘束された。
中国事業の先行き懸念から同社の株価は下落した。幹部数名が保険金詐欺に関与した可能性があるとの報道もあったが、その理由ははっきりしていない。本件をきっかけに、海外企業は反スパイ法など中国の政策リスクの高さを再認識したといえる。
11月5日の米大統領選挙では、半導体、人工知能(AI)など先端分野を中心に対中締め付け策の徹底を重視するトランプ氏が勝利した。
トランプ政権発足後は…
来年1月20のトランプ政権発足後、米国政府がファーウェイや半導体受託製造企業(ファウンドリー)大手のSMICのドル資金調達、日米欧の企業が製造する工作機械などの調達を全面的に禁止する可能性もある。
いずれも中国経済の成長を下押しする要因になるだろう。
銀行の収益性は、追加的に低下し成長分野への資金融通も停滞するだろう。融資先企業の業況悪化から貸倒引当金が増え、資金繰りに行き詰まる中小の銀行が増える恐れもある。それをきっかけに部分的に中国の金融システムの不安定性が高まることもあるかもしれない。
当面、中国の景気低迷の懸念はさらに上昇する可能性が高そうだ。
「報復社会」と「閉塞感」…無差別殺傷事件が相次ぐ中国でいま起きていること
FNNプライムオンライン によるストーリー
「私憤を社会にぶつけ事件を起こした」
中国でまた無差別殺傷事件が発生した。
上海の隣、江蘇省の学校内で11月16日、21歳の男が刃物で人々を次々と切りつけ8人が死亡、17人が負傷した。
警察発表によると、男は事件があった職業技術を教える学校の元学生で、試験に不合格で卒業証書をもらえなかったことと実習先の報酬に不満があり事件を起こしたという。
11月11日には、広東省で男が車を暴走させ35人が死亡した凄惨な事件が起きたばかりだ。男は離婚に際しての財産分与に不満があったという。中国で相次ぐ無差別殺傷事件に背景に何があるのか。
中国でいまよく見聞きする言葉に「報復社会」がある。日本語にすると「社会への報復」だ。ネット上では広東省と江蘇省に関連しても多く使われている。「私憤を社会にぶつけ事件を起こした」との書き込みがみられるがそれだけだろうか。
低迷続く経済と中国社会の「閉塞感」
もう一つのキーワードは「閉塞感」だ。ある中国の知人によると経済の低迷が続き若者の失業率が高いままなどから中国社会には「閉塞感」が漂っているという。その「閉塞感」が相次ぐ事件に関係しているという説明だ。
共産党政権はこれまで好調な経済を背景に庶民の求心力を維持し、庶民は良い生活が送れることで締め付けなどはある程度やり過ごしてきた面があった。
無差別殺傷事件が相次ぐ中でも国営メディアは習近平国家主席の外遊や広州での航空ショー、経済指標が好調であることなどを中心に伝えている。事件の動機や背景の掘り下げ、遺族被害者に寄り添った報道はいまのところみられない。大きく伝えることで批判の矛先が共産党政権に向かうことに危機感を抱いていて、当局は情報統制に神経を尖らせているとみられる。
習近平氏は、広東省の暴走無差別殺傷事件翌日の11月12日、「関係部門は真剣に教訓をくみ取り人民の生命安全と社会の安定を全力で保障する必要がある」との異例の指示を出した。
その指示から4日後にまた起きた無差別殺傷事件。香港メディアは当局が相次ぐ無差別殺傷事件を受け住民を管理する末端組織に「犯罪を起こしそうな人物を洗い出すよう指示した」と伝えている。しかしネット上には「力による押さえ込みは、対処療法だけで問題の根本解決にはならない」という指摘がみられる。
中国はこれから来年3月の全人代=全国人民代表大会に向けて政治的に敏感な時期を迎える。習氏は先の指示の中で社会の安定を保障することと同時に「リスク源の管理強化」も求めている。習氏にとっては共産党政権の維持が最重要だ。「問題の根本解決」とは逆に、社会統制がさらに強まる方向に進んでいるように思える。(執筆:FNN北京支局長 垣田友彦)
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