政治講座ⅴ888「鬼城から考察。中国版サブプライムローンとリーマンショックが始まる。中国企業発行の証券にババが潜む」
温故知新。今の中国の現状を見ると古き日本のバブル崩壊の軌跡を中国も歩んでいるように見える。中国の金融機関の貸倒引当金があるというが、隠蔽体質の中国では怪しいと言わざるを得ない。そして、銀行預金などから貸出金に充当できる資金も自己資本比率から制限が生じる。そうすると、資金調達の為に貸出金を高利で証券化してそれを売却して資金調達することになる。そこで、ポートフォリオ手法で色々な融資先の貸出金を混在させて証券化することになる。その証券の売却資金がまた貸出金に回る。このようなスキームで米国のサブプライムローンを証券化して世界中の金融機関にばらまかれたのである。アメリカ合衆国で住宅市場の悪化による住宅ローン問題がきっかけとなり投資銀行であるリーマン・ブラザーズ・ホールディングスが2008年9月15日に経営破綻したことにより、連鎖的に世界規模の金融危機が発生した事象である。日本の金融機関にもサブプライムローンを証券化されたものが売られていた。
中国で起こっている不動産企業の資金調達は銀行からだけに限らずに多方面の高利貸しから調達されている。ゾンビ企業として存在しているのである。
今後を占うと、中国経済を俯瞰すると、無事で済むはずがないと思われる。米国に上場している中国企業は不正経理・粉飾のために上場廃止の傾向にある。今までのように米国株式証券市場から資金を獲得する手段はもうないのである。一帯一路で融資した資金は不良債権化しているのはご存じの通り。
そして、鬼城と呼ばれるマンションの存在を考えると、中国の企業のバランスシートはどうなっているのであろうかと企業の会計簿記の粉飾を疑わざるを得ない。今回は中国経済を俯瞰した記事を紹介する。
皇紀2683年3月1日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
どうなる混乱中国 経済失速の要因“不動産不況”の深刻度
「ゼロコロナ」政策の突然の終了が混乱を広げている中国。政策変更の背景にあるとみられるのが深刻な経済の停滞です。
1月17日に発表される2022年のGDP=国内総生産の伸び率は、中国政府が掲げたプラス5.5%前後という目標を下回ることが確実視される異例の状況です。
習近平指導部は経済の立て直しを急ぐ方針ですが、「ゼロコロナ」と並んで中国経済の失速を招いたのが不動産市場の低迷です。
ことしの世界経済のリスクともされる中国経済。その不動産市場で何が起きているのか解説します。
(中国総局 伊賀亮人 / 上海支局 道下航)
プレハブ住宅で過ごす冬…
「誰も工事をしていません」
こう話してくれた男性が暮らすのは、内陸部・河南省の鄭州にあるプレハブ住宅。
入居予定のマンションの建設が1年以上前から中断しているといいます。
人口1200万余りの鄭州は、中国の東西南北を結ぶ交通や物流の要衝ですが、国内でも不動産の問題が最も深刻な状況だと言われています。
男性はもともとマンションの建設予定地に住んでいました。部屋の提供を受けることを条件に立ち退きに応じたのに、入居のめどは立っていません。やむをえず建設現場の前に仮設の家を建てて暮らしています。
「不動産業者は工事をするお金がなく給料が払えないと聞いています。早く解決してほしい」
なぜ住宅建設は進まない?
住宅ローンを借りて買ったマイホームに住めない。中国ではそういう信じられない事態が社会を揺るがす問題に発展しています。
では、なぜマンション建設は止まったのか。大きな要因は不動産デベロッパーの資金繰りの悪化です。
中国のデベロッパーは、これまで金融機関からの借金や物件の購入者が完成前に支払った頭金を元手に次々と物件を開発して急速に事業を拡大してきました。
新型コロナウイルスの感染が最初に広まった2020年初めは打撃を受け、中国では景気を立て直すために金融緩和が実施されました。このため、大量のマネーが不動産市場に流入し、不動産の販売額は急回復。それに伴って住宅価格も高騰しました。
中国政府はこのバブルとも言える事態に断固とした対応を取りました。
同じ2020年半ばごろから「住宅は住むもので、投機のためのものではない」というかけ声のもと、不動産企業への融資や住宅ローンの融資を規制。
このため、巨額債務を抱え注目を浴びた不動産大手「恒大グループ」をはじめとして、資金不足からデフォルト=債務不履行に陥る企業が相次いだのです。
「ゼロコロナ」でも打撃
こうした状況に追い打ちをかけたのが、「ゼロコロナ」政策です。厳しい行動制限でモデルルームに足を運ぶ人が減り、先行きに不安が広がったことで買い控えが進みました。
そして建設中の物件の工事は次々と停止に追い込まれたのです。
話を聞かせてくれたデベロッパーもいます。
閑散としたモデルルームで取材に応じた販売担当の男性は「販売状況は本当に苦しいです。工事が遅れて契約違反だと怒る購入者もいて大変です」と意気消沈した面持ちで話していました。
さらに買ったのに住宅に住めないため、2022年半ばには住宅ローンの支払い拒否運動も各地で起きました。住宅を買っても手に入らないという不安で販売がさらに落ちるという悪循環につながったのです。
全国の不動産販売額は2022年1月から11月までの累計では前年同期比で実にマイナス26.6%。
中国の不動産は、関連産業も含めるとGDP全体の2割から3割程度を占めると試算されるだけに景気全体の足を大きく引っ張る形になっています。
ゼロコロナによる消費の低迷なども響き、17日に発表される2022年のGDPは、政府目標のプラス5.5%前後を大きく下回る3%前後に落ち込むという異例の事態が予想されています。
そうなれば、新型コロナの感染の影響が最初に広がった2020年以来の低い水準です。
規制から景気刺激へ転換も…
規制を強めてきた中国政府は一転して、この「不動産不況」とも言われる状況への対策を進めています。
中央銀行は2022年から住宅ローンの基準となる実質的な政策金利や、住宅を購入する際の頭金の比率を引き下げました。
デベロッパーに対しては資金繰りを支えるため融資の返済期限の延長や社債発行への支援なども打ち出しデベロッパーへの規制を一部修正する姿勢も見せています。
さらに地域によっては、頭金を現金で支払う代わりにニンニクなど農作物でも払えるといったデベロッパーのキャンペーンまで登場。まさにあの手この手で販売を上向かせようと躍起になっているのです。
中でも、政府が力を入れているのがマンション建設の再開です。地方政府の傘下にある国有企業を使って基金を設立して、そこから資金を注入して工事を完了させる対応策などが進められています。
しかし、中国で研究する専門家は肝心の住宅の引き渡しまでには時間を要すると指摘します。
西村教授
「地方政府が中心になってデベロッパーの救済に動いてはいるが、今進められているのは国有企業や金融機関からも資金を集める仕組みだ。景気も良くない中で資金も集まりにくく資金が注入されるには相当時間がかかるだろう。人々の不安を鎮めるための一時的な火消し効果はあったと思うが実際にどこまで機能するかはわからない」
不動産低迷の裏で新たなリスク 地方政府の「財政破綻はたん」
さらに「不動産不況」の裏で新たなリスクへの懸念も強まっています。
それは、地方政府の財政不安です。中国では都市部の土地は国家が所有するとされています。
地方政府は、その土地を使用して不動産開発を進める権利をデベロッパーに売却し、その収入を重要な財源としてきました。
ところが今、不動産販売が落ち込んでいることで、地方政府が土地の使用権を売って得られる「土地使用権譲渡収入」が急速に悪化しているのです。
2022年1月から11月までの累計で前年同期比で24.4%の大幅な減収です。
そして、この収入は地方政府がインフラ整備などを進める際に発行する債券の返済などに充てられることになっています。
この債券の返済期限は2022年から2024年にかけて相次いで訪れる見込みです。収入が大幅に減った地方政府が債務不履行に陥る恐れが出ているのです。そうなれば、これまでのような公共サービスを提供できなくなるなど地域の人々の生活が混乱する可能性があります。
前出の西村教授の試算によると、2024年にかけて返済期限が訪れる債券の額は全国をあわせると少なくとも1兆4000億人民元以上(27兆円規模 )にも上るということです。
西村教授
「不動産収入が減る中でこのままだと債務の返済にあてる資金が足りなくなるのは明らかで、今後この問題が顕在化するのではないか。中には事実上の財政破綻はたんに陥る地方政府が出てくる懸念もあり、地方政府の財政問題は中国経済の最大のリスクになりうる」
新指導部のアキレス腱けんに?
中国では長年、地方政府が収入を増やすためにデベロッパーに開発を促し、デベロッパーは巨額の資金を借り入れてリスクを抱えながらも事業を展開。それに伴って関連産業が育ち雇用が生まれるという循環が続いてきました。
しかし今、その「不動産依存」のひずみが表面化しているのです。
中国国内では今のところ銀行がデベロッパーなど融資先の業績悪化に備える「貸倒引当金かしだおれひきあてきん」の規模が十分にあるなどとして、すぐには金融危機につながらないという見方が根強くあります。
ただ、近く人口が減少に転じると予測される中国では不動産需要も減っていくと見込まれており、「依存」は限界を迎えているのは明らかです。リスクが膨らみ続ければ、はじけたときのショックもより大きなものになります。
今の不況をソフトランディングさせつつ過熱を防いで業界を健全化していけるか。中国の不動産市場の動向は異例の3期目に入った習近平指導部にとってのアキレス腱けんになる可能性が指摘されています。
危機が本格化すれば世界経済に与える影響も計り知れません。ことしの中国経済の動向を注視したいと思います。
2006年入局 仙台局、沖縄局、報道局経済部、ネットワーク報道部を経て
2020年から、中国総局で中国経済を担当 伊賀 亮人の記事一覧
2009年入局
仙台局、国際部、ハノイ支局を経て2022年8月から現所属
中国恒大集団が経営危機
中国恒大の格付け撤回 ムーディーズも「情報不十分」(2022年10月11日 20:37)
【北京時事】米格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスは11日、経営危機に陥っている中国不動産開発大手、中国恒大集団の格付けを撤回すると発表した。格付けに必要な情報が不十分と判断したため。フィッチ・レーティングスと、米S&Pグローバル・レーティングはすでに評価を取りやめている。
中国恒大、1090億円受け取り 土地使用権返還で払戻金(2022年08月05日 05:05)
【北京時事】経営危機に陥っている中国不動産開発大手の中国恒大集団は4日、広州市で進めていたサッカースタジアム建設事業向けなどの土地使用権を市に返還すると発表した。これに伴い、約55億2000万元(約1090億円)が返金される。資金は巨額債務の返済に充てる方針だ。
中国恒大、再編計画先送り 外貨建て債務、資産査定を継続(2022年07月30日 12:06)
【北京時事】経営危機に陥っている中国不動産開発大手の中国恒大集団は29日、外貨建て債務の再編計画について、年内の公表を目指すと発表した。同社は当初、7月中に暫定的な計画をまとめる方針だったが、資産査定が続いているなどとして、事実上先送りした。
不動産不況が深刻化 ローン支払い拒否も―中国(2022年07月28日 07:08)
中国・北京市内のマンション工事現場。作業は遅れているもようだ=27日午後
【北京時事】中国で不動産不況が深刻化している。資金難に陥った開発業者がマンションの建設工事を途中で取りやめ、購入者が住宅ローンの支払いを拒否する事態も発生。5年に1度の共産党大会を今秋に控え、習近平指導部は社会不安の高まりに警戒感を強めている。
中国恒大、CEOら解任 預金流用に関与(2022年07月23日 11:44)
【北京時事】経営危機に陥っている中国不動産開発大手の中国恒大集団は23日までに、夏海鈞最高経営責任者(CEO)らが辞任したと発表した。グループ会社の預金流用に関与しており、事実上の解任となる。
中国不動産大手が債務不履行(2022年07月05日 20:34)
【北京時事】中国の不動産大手の世茂集団が、ドル建て債の元利金について期限までの支払いができず、債務不履行(デフォルト)に陥ったことが5日までに明らかとなった。中国では、政府が不動産業界への締め付けを強化したことから、事業環境が急激に悪化。中国恒大集団など大手の経営危機が相次いで表面化している。(2022/07/05-…
中国恒大の格付け撤回 「情報得られず」―フィッチ・レーティングス(2022年06月02日 21:27)
【北京時事】格付け大手フィッチ・レーティングスは2日、巨額の債務を抱え経営危機に陥っている中国不動産開発大手、中国恒大集団の格付けを撤回すると発表した。格付けに必要な経営情報が恒大から得られなくなったためという。
中国恒大、2.4兆円債務再編案 新債券、傘下企業株と交換―ロイター報道(2022年05月27日 20:43)
【北京時事】ロイター通信は27日、経営危機に陥っている中国不動産開発大手の中国恒大集団が、190億ドル(約2兆4000億円)相当の外貨建て債務の再編を検討していると報じた。新たな債券と傘下企業の株式に交換するという。
子会社預金の強制執行で調査 2600億円―中国恒大(2022年03月30日 01:32)
【北京時事】経営危機に陥っている中国不動産開発大手の中国恒大集団は29日夜、子会社の預金134億元(約2600億円)に対する銀行の強制執行が確認されたとして、独立調査委員会を設置したと発表した。調査委は恒大の社外取締役らで構成。既に情報収集を開始したという。(2022/03/30-01:32)
中国恒大、決算発表に遅れ 監査終わらず(2022年03月22日 21:15)
【北京時事】経営危機に陥っている中国不動産開発大手の中国恒大集団は22日、2021年12月期決算の発表が4月以降にずれ込むと発表した。監査が終わっておらず、今月末の期限に間に合わないという。
中国恒大株、再び取引停止 香港市場(2022年03月21日 16:16)
【北京時事】香港証券取引所は21日、経営危機に陥っている中国不動産開発大手・中国恒大集団の株式の取引を停止した。取引停止は恒大側からの要請に基づくが、理由は明らかにされていない。停止は経営危機の表面化後、3度目となる。
不動産税、今年は見送り 住宅市場への影響回避か―中国(2022年03月16日 21:31)
【北京時事】中国財政省は16日までに、不動産税(固定資産税)の試験導入を今年は実施しないと明らかにした。国営新華社通信が伝えた。住宅市場の冷え込みが続く中、導入に伴う悪影響を回避するため、見送りを決めたとみられる。
中国経済、本当に崩壊危機の様相…失業者2億人、企業債務がGDPの2倍、デフォルト多発
2021.03.30 05:55取材・文=相馬勝/ジャーナリスト
上海, 新疆ウイグル自治区, 中国国家統計局
中国・人民大会堂(「Wikipedia」より)
新疆ウイグル自治区の人権問題をめぐって、欧米諸国が相次いで対中制裁に乗り出している。今のところは中国当局者らへの制裁にとどまっているが、今後対立がエスカレートすれば、同自治区産の綿花などの輸入禁止にとどまらず、中国製品へのボイコットや金融制裁などに拡大する可能性もある。ただでさえ中国経済の実態は思わしくないだけに、影響が深刻化することは確実だ。
中国はさきの全国人民代表大会(全人代=国会に相当)で、今年の経済成長率の目標を6%以上とする一方で、今年から始まる5カ年計画では成長目標を具体的な数字で示さなかった。これまでは必ず具体的な数値目標を明らかにしていただけに、極めて異例の対応だ。
中国政府は「成長率の高さではなく、経済の質と効率を重視しているため」と説明しているものの、先行きに不透明な要素を抱えているため数字を出したくても出せなかったとの見方が広がっている。
なぜなら、中国経済は深刻な構造問題を抱え、綱渡りの状況が続くことになりそうだからだ。最大の課題は失業問題だ。昨年来の新型コロナウイルスの感染拡大により、経営基盤の弱い中小企業が倒産し、個人事業主が職を失い、約2億人が失業状態にあるとの統計が発表されている。1年間に2億人は極めて深刻な数字だ。
際立つ中小企業の苦境ぶり
中国は米中貿易戦争で2019年に景気が大きく減速し、中小企業の苦境ぶりが際立っていたが、20年以降は新型コロナウイルスの感染拡大が追い打ちをかけた。米国ピーターソン国際経済研究所は、20年1~6月に中国全体の6%にあたる約230万社が倒産したと分析しているほどだ。
この対策として、今年の全人代では、人員削減を行わない企業への税制・金融面での支援、高度な技能をもつ人材の育成拠点の増強を打ち出すなど、雇用の維持や新たな雇用創出に懸命となっている。失業者が増えれば、共産党指導部への不満が強まりかねないからだ。
だが、中国の去年1年間の小売業の売上高は前年より3.9%も減少したほか、中国の財政収入もマイナス3.9%と官民とも回復は道半ば。中国の財政収入は前年比11.5兆円のマイナスとなっている。
その一方で、コロナ対策の巨額財政出動が不動産市場で投機的な行動を後押しし、住宅価格が高騰しており、政府の幹部も「バブルの傾向が比較的強い」と警戒感を示しているほどだ。
中国の企業債務残高も急増している。国際決済銀行(BIS)によると、中国の企業債務残高は08年末の31兆元(約480兆円)から18年末の136兆元(約2100兆円)へ4倍超に膨らんだ。企業債務残高の対国内総生産(GDP)比は98%から152%まで上昇し、その債務急膨張の様相はバブル期の日本と類似する。
ニュースサイトで読む:
https://biz-journal.jp/2021/03/post_216670.html
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鬼城は、ゴーストタウンを意味する中国語。
本来は無人化した廃墟や死の町を指し、中国語の「鬼」は幽霊や亡霊を意味する忌み言葉であり、中国語の「城」は都市も意味する。中華人民共和国では、特に投機目的の不動産投資と開発運営事業の失敗により完成しないまま放置されたり、人々が入居する前に廃れた都市や地域を指す表現として使われるようになった。
1990年代末から2000年代にかけて、改革開放後の高度経済成長を受け、中国各地で地域開発計画が発表された。鉄道駅や空港が新設され、人や経済の流れも変わり、各地の住宅地開発も急拡大した。また、地方政府は土地使用権の売買を財源にしていることから、暴力団や警察も動員した、人権侵害とも批判される強引な土地の接収を実施。時には、死傷者も出している。
従来平屋の家屋がつづく地域が次々と取り壊され、草原や空き地だった土地の都市開発も急速に進展。高層の集合住宅が続々と建てられ「史上最大のバブル」ともされた。
社会主義国家の中国では土地は公有制(国有と集団所有)であることから固定資産税(不動産税)も導入されておらず、投機的な投資対象となっている。高層住宅の各部屋は売りに出されるも、その多くは将来の値上がりと転売による利益を期待した投資目的で住宅ローンを組んで購入されるものである。実際に居住に使用しているのは、その地域の住民や購入者のごく一部に限られ、大半の部屋は空き部屋状態のままにされた。中国では内装工事は居住者が行うことが一般的なため、内壁はむき出しのままで、部屋にエアコンなども設置されない。夜になっても電灯は点灯せず、部屋は居住実態がないことが外見からもわかる。
鬼城は具体的には、内モンゴル自治区オルドス市の康巴什新区、杭州市郊外の天都城が有名だが、実際には中国各地に同様の鬼城(ゴーストタウン)があるとされる。オルドス市の新興住宅地は100万人都市として計画・開発されたものの、2011年2月の報道では実際に居住しているのは3万人程度で、それにもかかわらず平米あたりの住宅価格は、上海市並に高騰していると伝える。「世界最大のゴーストタウン」 とも呼ばれた。
2013年7月18日の広東省の週刊経済紙『時代週報』の記事は新たに問題化している鬼城として内モンゴル自治区のオルドス市、清水河県、バヤンノール市、エレンホト市、河南省の鄭州市鄭東新区、鶴壁市、信陽市、遼寧省の営口市、江蘇省の常州市と鎮江市丹徒区、湖北省の十堰市、雲南省の昆明市呈貢区を例に挙げている。
また、世界最大のショッピングセンターを目指しながら「鬼城」化した巨大ショッピングモールの例として広東省東莞市万江区の新華南モールがある。
アンゴラのキランバ新都市は中国企業によってつくられた海外の鬼城(ゴーストタウン)とされる。
もはや中国名物、空虚な高層マンション「鬼城」
洛陽にみる中国経済の行き詰まり
2016.8.10(水)川島 博之
中国河南省の都市、洛陽を訪ねるチャンスがあった。洛陽は唐の時代に都になったこともあり、その名は「洛陽の紙価を高らしむ」などのことわざになって残っている。ただ、今は昔日の面影はなく、中国に数多くある地方都市の1つに過ぎない。
閑散とした工業街
洛陽の主要な産業は工業。ガラスや農業用トラクターの生産において中国を代表する企業がそろっている。その多くは国営企業だ。
下の写真(1)を見てほしい。これは工場が集積する地域の道路を撮ったものであるが、街路樹がきれいに整備されているものの人影はまばらであり、時たま自動 車が通る程度であった。工場街であるからそれほど多くの人がいなくとも不思議でないが、それにしても閑散としていた。空地も多かった。これは新たに進出し てくる工場がなくなったためだと言う。
(*配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の写真をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47568)
いくつかの工場の広報担当者から話を聞いたが、どの工場も過剰生産問題に悩んでおり、生産を抑制していた。そのような状態で、工業が主な産業である洛陽に有力な就職先はない。若者は学校を卒業すると北京、上海、広州、深圳など沿岸部の都市に行ってしまう。市街地の人口は約140万人だが、近年、農村部からの人口の流入も止まり、その人口は減少傾向にある。
誰が住むのか、もはや中国名物の「鬼城」
写真(2)は、もはや中国名物と言ってもよい「鬼城」(住む人のいないマンション街)。これは新市街を撮ったものだが、既にできあがったマンションに住む人はいない。最初に建ったマンションは、完成から3年が経過するがまだ誰も住んでいない。
習近平もお手上げ…34億人分の在庫を抱えた「中国のマンションバブル」の行き着く先電気も水もない「鬼城」の住人が急増
未完成の物件=鬼城に住む人が増えている
中国で“鬼城(グェイチョン)”と呼ばれるゴーストタウンが急増している。武漢市にある“江南世家”と呼ばれる高層マンション群では、建設がストップして未完成のままマンションが放置された。そのうち3分の2程度が売約済みといわれる。
マンション購入者の増加には、家賃の支払いと住宅ローンの返済負担から逃れるため未完成のマンション=鬼城に住む人が増えている。鬼城の住人の生活環境はかなり厳しい。鬼城問題は、共産党政権の主導で膨張した不動産バブルが、現在、崩壊の真っただ中にあることを意味する。
西洋風の街並みが続く大連の「東方水城」(右)。ほとんどが空き部屋で、地元では「鬼城」になると懸念されている
世の東西を問わず、バブルが崩壊すると経済全体でバランスシート調整と、不良債権処理が不可避になる。今後、不動産デベロッパーの資金繰りはさらに悪化し、未完成のまま中断される不動産開発案件が増えるだろう。鬼城はこれからも増える可能性が高い。
住宅の引き渡しなどをめぐる、不動産業者と購入者のトラブルも増加するなど鬼城問題は、さらに深刻化が予想される。それは共産党政権の求心力に、無視できないマイナスの影響を与えることになるはずだ。
100万人が住める巨大マンションを建てたが…
鬼城とは、不動産開発の行き詰まりによって未完成で放置されたり、入居者が集まらずに廃れたりしたマンション群や地域を指す。実際に必要とされる以上に供給され、買い手がつかない建物群が鬼城だ。いつから鬼城が増えたかは諸説ある。2010年ごろから鬼城問題は顕在化し始めたようだ。
有名な鬼城は、モンゴル自治区オルドス市の康巴什(カンバシ)新区だ。2000年代初め豊富な石炭埋蔵を背景に経済開発が急加速し、100万人の収容能力を持つカンバシ新区が造成された。地方政府は民間デベロッパーに土地(土地の利用権)を売却し、デベロッパーは大規模な住宅建設に乗り出した。それにより、中央政府が課した経済成長率などの目標を達成した。大規模なマンションには、転売目的の投資家が殺到した。
マンションの供給量が全人口の2倍超に
一時、オルドス市の経済成長率は年率20%を超えた。高い成長が続くとの期待を根底に、“買うから上がる、上がるから買う”という強気心理が連鎖して、オルドス市の不動産バブルは膨張した。
転機となったのがリーマンショックの発生だ。共産党政権は4兆元(当時の邦貨換算額で57兆円程度)の経済対策を実施し、石炭生産が急増した。供給過剰によって石炭価格は急落し、オルドス市の不動産バブルははじけた。デベロッパーや不動産投機家は撤退し多くのマンションが未完成のまま放置された。2014年ごろ、100万人が住めるカンバシ新区の人口は10万人程度だった。
それは、中国で実際の需要を無視して過剰に不動産開発が増えた一つの例だ。カンバシ新区が鬼城化した後も、共産党政権は不動産投資を積み増して10%程度の高い成長率の実現を目指した。党の指揮の下で不動産価格は上昇し続けるという、根拠なき熱狂が経済全体を覆い、投資用マンションは過剰に供給された。2016年に国営新華社通信はマンション供給量が34億人分と、人口(約14億人)の2倍超に達したと報じた。
その後、2020年8月に“3つのレッドライン”が実施されて不動産デベロッパーの経営体力は急速に低下している。鬼城が増えるのは不可避の状況であり、不動産バブルは崩壊の真っただ中だ。
内装が施されておらず、電気がつかない部屋も
懸念されるのは、鬼城に住まざるを得ない人の増加だ。鬼城の住人は経済的にも、精神的にも窮状に陥っている。インターネットで鬼城を画像検索すると、その一端が垣間見られる。部屋は内装が施されていない。窓枠にはガラスがはめられていない。住人はコンクリートむき出しの床、壁と天井に囲まれ、無機質なコンクリート上に布団を敷いたり、テントを張ったりして生活をする。
水道や電気が引かれている鬼城もあるが、未完成の物件が多いために日常の生活を送るには困難が多いようだ。
まきや簡易コンロで暖をとって生活をする人もいる。照明は日光、もしくは懐中電灯というケースもある。衛星写真を見ると、団地と近隣の町をつなぐ道路など社会インフラが未整備な鬼城も多い。消防設備が整備されていない鬼城も多いようだ。余裕があれば家を借りて安心・安全な生活環境を確保することはできるだろう。しかし、実際には景気減速によって雇用・所得環境が悪化し、鬼城に住まざるを得ない人が増えているようだ。
中国・不動産市場は行き詰まった
2022年8月24日
中国の不動産市場は完全に行き詰まり、完全崩壊する危険性もはらんでいる模様である。上場する不動産会社のうち、7月17日までに77社が2022年上半期の業績見込みを発表しており、このうち42社が赤字の見込み、さらこのうち23社が、当初の予想は黒字だったが業績が大幅に悪化したとのことである。21年上半期より利益を伸ばすのは12社にとどまりそうである。
住宅価格は2年前に逆戻り
上半期の利益が10億元(約200億円)を超えると見ているのは、招商蛇口、金融街、雅戈爾、保利発展であり、なかでも保利発展は前年同期から4.1%伸びて107億元(約2,195億円)との予想である。
その一方、陽光城、藍光発展、金科股份、栄盛発展、中南建設、首開股份、ST泰禾、中天金融が10億元を超える赤字を計上する見込みである。このうち藍光発展は、赤字額が46億元(約942億円)に達する見込みである。
中国国家統計局が発表した、22年6月現在の中国70都市における住宅の販売価格を見ると、コロナの影響や経済の下押しによりおしなべて下落している。2年前の20年6月以下となったのは34カ所で、このうち青島、済南、ハルビン、武漢など27カ所は3年前の19年6月にもおよばない。さらに天津、鄭州、石家荘など6カ所は5年前のレベルに落ちている。
鄭州市中原区に住む馬さんによると、現地の物件の売価は2016年末には100万元(約2,000万円)であったが、今は80万元(約1,600万円)でも買い手が出ず、賃貸にも出せず半年が過ぎているという。
資金繰り困難続く
中国で不動産業界の上位100社に数えられる宝竜地産が7月26日、7月25日が期限である2129万4,000ドルの手形の元金と利息が未返還であると発表した。この1週間で100社のうち4社が同様の事態に陥っている。
宝竜地産はまた、期限が22年11月8日である22年次期分の手形およそ3,725万ドルとその利息分についても、未返還であると発表した。さまざまな融資元をあたってはいるが期日までに返還できるかは未定という。
今年4月29日に宝竜地産が発表した2021年度の業績を見ると、年間の契約金額は前年を24%も上回り、1,012億元に達している。また営業収入は前年比12%プラスの399億元であった。1,000億の大台にのってほどなく、今回の国外債務違反が告げられたわけである。
今年前半は、2021年に全事業案件の約71.8%、保有地%の67.1を占めた長江デルタ地帯で、コロナの影響からか売上高が漸落しており、1~6月の契約金額は前年比で56.2%も低い232億元であった。
中国の不動産業界では、7月19日~26日の1週間で、宝竜を筆頭に鑫苑置業、俊発地産、景瑞ホールディングスの4社が債券違約を言い渡されている。
緑地集団の上半期は利益半分減
中国の不動産大手「緑地」は、上半期の営業収入が前年同期を27.64%下回り、主な決算項目を見ても好調だった昨年から軒並み数字を落としている。
8月3日夜に発表された緑地の業績速報を見ると、上半期の営業収入は前年同期比28%減の2,047億元(約4兆870億円)で、利益は同じく49%減の42億元(約838億円)であった。1株あたりの利益は0.38元(約7.6円)であった。
事業内容別に見ると、不動産業については販売の削減や、生産、引き渡しなどの主な業務で的確な取り組みを立て続けに講じた。販売や資金の回収を急いだことで、販売金額は681億元(約1兆3,597億円)で回収額777億元、引き渡し物件の合計面積は934万㎡で振込額755億元(約1兆5,074億円)であり、ほぼ目標を達成した。また大型の建設案件も予定通りに完成している。
緑地は4月7日から株価が下がり始め、4カ月弱で48%値下がりしている。
各社は売上不振続く
中国共産党政治局は7月28日、現在の経済情勢を分析し、今年後半の活動を検討する会議を行った。このなかで、不動産市場を安定させ、住宅は住むもので投機の対象ではないということが指摘された。地域別の取り組みで政治的ツールを十分に活用し、必然的および改善的な住宅ニーズに応え、地方政府の責任を定め、物件の引き渡しで暮らしの安定を確保するようにとのことである。
不動産業界では昨年の後半から、巨額の債務を抱え資金難にあえぐ企業が出ており、債務不履行やマンションの建設中止などといった事態も起きている。中国政府は今年に入ってから、「地域別の取り組みで不動産市場を着実に成長させる」と強調しており、地方でも実情に合わせたかたちでの調整策が絶えず打ち出されている。ただ、住宅購入手当の支給、頭金割合や融資限度額、購入制限などの規制緩和といった刺激策が出ながらも、現在の売れ行きをみると効果のほどはいまひとつである。
参考文献・参考資料
どうなる混乱中国 経済失速の要因“不動産不況”の深刻度 | NHK
中国恒大集団が経営危機:時事ドットコム (jiji.com)
中国経済、本当に崩壊危機の様相…失業者2億人、企業債務がGDPの2倍、デフォルト多発 (biz-journal.jp)
もはや中国名物、空虚な高層マンション「鬼城」 洛陽にみる中国経済の行き詰まり(1/3) | JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)
習近平もお手上げ…34億人分の在庫を抱えた「中国のマンションバブル」の行き着く先 電気も水もない「鬼城」の住人が急増 | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
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