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政治(防衛)講座ⅴ732「ドローンを軍用に有効活用」

AI搭載の自爆ドローンの兵器化の方が、費用対効果のパフォーマンスが良い。米軍に対する規制があるなら規制改革しないと日本は負ける。政治家は何をしているのだろうか?兵器があっても飛ばせないとは情けない。ロシアのウクライナ侵攻での戦闘で活躍しているのは無人ドローンである。勝敗の行方はそこにある。

      皇紀2682年12月29日
      さいたま市桜区
      政治研究者 田村 司

自衛隊がドローンを本格導入、なのに「有事でも自由に飛ばせない」理由

部谷直亮 - 3 時間前

ロシア・ウクライナ戦争でのドローン運用に刺激を受けた日本の防衛省・自衛隊は、防衛費増額の潮流に乗って、ドローンの本格的導入へとかじを切り始めた。北東アジアでは武装ドローンを保有していないのは自衛隊とモンゴル軍という状況だったが、防衛力整備計画では5年間で1兆円を投じることが決定された。しかし、このままではその1兆円も無意味なものになりかねない。ドローン本体を調達したとしても、運用に関する制度や体制が整っていないからだ。(安全保障アナリスト/慶應義塾大学SFC研究所上席所員 部谷直亮)


Photo:Tomohiro Ohsumi/gettyimages© ダイヤモンド・オンライン

北東アジアで武装ドローンを保有しないのは自衛隊とモンゴル軍だけだった

 これまで防衛省・自衛隊は、ドローンを玩具扱いしてきた。その結果、北東アジアで武装ドローンを保有しないのは、現状では自衛隊とモンゴル軍だけという情けない状態だった。ある防衛省幹部は「自衛隊は、民生技術は民間が研究するものと決めつけ、自分たちはほとんど研究せず、その結果、宇宙、サイバー、特にドローンを軽視してきた」と解説する。

 しかし、ロシア・ウクライナ戦争で両軍がドローンによる“新しい戦い方”を展開し、かくかくたる戦果を上げていく中、ようやく来年度の概算要求で「ドローンはゲームチェンジャー」と防衛省は認め、ミサイル防衛に続く優先度の高いテーマだとした。策定された国家防衛戦略では7項目中3番目の重点項目としてドローンが特筆され、防衛力整備計画では5年で1兆円の予算があてがわれた。この豹変には、特に与党の国防族らの尽力が大きいとされる。文民統制の成功例と評するべきだ。

 政府は重い腰を上げ、防衛費増の指針を示した。その潮流に乗って、ウクライナにおけるドローン運用に刺激を受けた防衛省・自衛隊は、自分たちもドローンを本格的に導入してみようとなったが、あくまでも「ドローンを買えばいい」というこれまでの“お買い物”重視の防衛力整備であり、法制度やドローン周辺の物的・知的インフラ整備が現時点では進んでいない。公開された三文書では電波に関する規制では前進できそうな兆候もあるが、本稿で指摘する規制には触れていない。

 このため有事でもすぐにドローンを政府中枢、原発、空港、多くの在日米軍基地や自衛隊施設などで飛ばせない不可解な規制がある。

自衛官が有事の際に重要施設でドローンを飛ばすときも48時間前に警察へ通報が必要

 ウクライナ戦争を機に急速にドローン導入へとかじを切り始めた自衛隊だが、実は運用できる体制になっていない。その深刻な問題の一つが有事の際でも大型の機体も含めてドローンを小型無人機等飛行禁止法が指定する重要施設周辺で飛ばす際には48時間前までに警察への通報が必要となっていることだ。防衛省、警察はダイヤモンド編集部からの取材でこれを認めた。

 この不可解な規制が最前線の自衛隊駐屯地や米軍基地から東京の皇居や官邸までなされており、災害派遣時にドローンを飛ばすことを断念した事例も実際にあるという。

 つまり中国軍が与那国や対馬に上陸してきた際にも、自衛隊は警察に48時間前に通報しなければドローンを飛ばせないのだ。中国軍は情け無用で自由に飛行できるのに、だ。

 これは新たに電気自動車を導入しようとする途上国が、電気自動車だけを大量に買い込んで、発電所も、電気スタンドも、整備工場も、技術者の育成も、まともな道路も用意していないのにガソリン車を廃止しようとするのと同じだ。もしくは子供に参考書だけを大量に与えれば東大に合格すると信じる両親のように。

 このため自衛隊のドローンは、ロクに機能しない状態になっているのが実態だ。例えば自衛隊が採用している小型ドローン「Anafi」のような民生品のドローンについて、中国の工作員は日本国内で数キロメートル先まで飛ばせる。対して自衛隊は貧弱な周波数と無意味な国内規制によって数百メートル先までしか飛ばせない。こうした問題は数多くあり、その中でも深刻な規制の一つが、この小型無人機等飛行禁止法だ。

自衛隊は在日米軍基地の警備でドローンを事実上、使用できない

 この法律は皇居、官邸、自衛隊と米軍の指定された関係施設、原発、空港などの重要施設においてドローンの飛行を禁じるもので、“これら施設に対するドローンの接近や攻撃”を防止する目的の法律だ。

 自衛隊と米軍の施設では最前線の沖縄県の那覇駐屯地、宮古島駐屯地、与那国駐屯地、日米両主力艦隊の拠点である横須賀基地、佐世保基地、弾薬が眠る各地の弾薬庫、米軍の主力である沖縄の米軍基地などがその対象に指定されている。

 この法律は自衛隊にまで適用され、これら施設管理者の同意を得て、警察に対し48時間前までに飛行について通報をしなければならないのだ。この点について警察庁は取材に対し、「『何人も、対象施設周辺地域の上空において、小型無人機等の飛行を行ってはならない』とされています。自衛官も例外ではありません。また飛行させる場合は都道府県公安委員会等に事前に通報しなければなりません」と即座に回答をした。防衛省報道室も即座に、陸幕報道室は1週間後の回答で、これを認めた。

 つまり48時間前に事前通報しなければ、自衛隊はドローンの飛行ができない。現在、陸自は自爆ドローンの調達を進めつつあるが、このままでは重要施設周辺では自爆ドローンを発射する48時間前に警察に連絡、それ以前に施設管理者の同意を得てからでなければ発射できないことになる

 そのため、在日米軍基地の警備に出動した自衛隊はドローンが事実上、使用できないことになる。日本に有事が迫り、緊急出動した自衛隊が、ドローンを豊富に使う米軍から「どうしてドローンを使わないのか? 平和安全法制で定められたアセット防護をやる気がないのか?」と批判されることは目に見えている。

 このままでは、日米同盟すら危機になりかねない。

禁止の対象に無人偵察機スキャンイーグルも

 また陸幕および防衛省報道室は、こうした禁止の対象には固定翼で比較的大型の無人偵察機スキャンイーグルなども含まれると示唆した。これは複数の自衛隊幹部も証言している。

 これが何を意味するのか? たとえば台湾情勢が悪化しつつある際に陸自が日本最西端の与那国駐屯地からスキャンイーグルで偵察させようとしても2日前に通報をしていなければ事実上は不可能ということだ。いくら自衛隊が大型固定翼ドローン「シーガーディアン」などの高価なドローンを買い込んでも、臨機応変な飛行が最前線からできなくては無意味だ。

 他方、防衛省報道室は「災害その他緊急やむを得ない場合においては、飛行開始の直前までに口頭での通報を行うことで足りるとされています」とする。実は彼らはそれまで“です”と断言していたにもかかわらず、ここでは“されています”と急に伝聞調になっている。

例外規定はあるも事実上は機能せず、災害派遣でも飛行を断念した事例が複数

 実際、筆者が20人近くの自衛官に確認したところ、彼らはそうした緊急処置で飛行したことは皆無ではないがほとんどなく、警察との具体的な飛行に関する取り決めもないと証言した。あまつさえ、災害時に事前通報ができないとしてドローンの飛行を断念した場合も複数あるとも語った。

 手続き上は可能と言い張っても、それが使用者に負担を強いることで機能しないのならば、その制度設計そのものに無理があり、見直すべきなのだ。

 また陸自がドローンを使って先述の重要な日米両軍の基地や弾薬庫を警備しようにも48時間前に通報しなければならず、事実上、ドローンは使えない。大量に買い込んだドローンを保管庫でほこりをかぶらせたまま、自衛官が目視で出動することになりかねない。

事前通報書には機微な情報を満載してFAXで送信

 しかも、この通報書自体も問題だ。この警察への事前通報では、操縦者の氏名、生年月日、住所および電話番号を記載しなければならない。これは駐屯地の警備部隊や特殊作戦群といった機微な部隊のドローン担当者の氏名・住所・電話番号が外部に流出するリスクを増やしているとある幹部は危惧する。

 確かに日本の警察が世界屈指の優秀さであっても、こうした機微な情報を自衛官が警察に持ち込んだり、FAXやメールで送信したりすることはハッキングなどによる流出のリスクを高めている。もしも中国やロシアなどの工作員が入手した場合、大変なことになりかねない。

 さらに深刻なのは、このように施設管理者の事前同意と警察への48時間前までの事前通報が自衛隊に強制される一方で、工作員は自衛隊施設へドローンを飛ばし放題になっているということだ。

48時間前に申請して認められれば“工作員”も自衛隊施設にドローンを飛ばし放題

 複数の自衛官によれば、小型無人機等飛行禁止法の対象の自衛隊駐屯地に対する“民間人”からの自衛隊施設への飛行申請も特段の理由がなければ自衛隊側は認めるようになっており、原則禁止となっていないという。

 小型無人機等飛行禁止法では、ドローンを重要施設周辺で飛ばす場合は、当該施設管理者――自衛隊施設であれば駐屯地もしくは基地司令――の事前承認と警察への48時間前の通報を義務付けている。これらを満たせば飛ばせてしまうのだ。

 自衛隊駐屯地としては“民間人”からの申請があれば、「国籍や思想で差別している」や「市民の権利を侵害している」というクレームを恐れてこれを事実上は拒否できないという構造なのだ。自衛隊施設での民間人のドローン飛行は、原則禁止にすべきだ。

小型無人機等飛行禁止法の自衛官への適用除外もしくは包括許可すべきだ

 このような理不尽な規制を自衛隊に強いている小型無人機等飛行禁止法だが、これは何を意味するのか。それは自衛隊がドローンを運用する前提の組織になっておらず、根本的にドローンを重視していないということだ。

 実はこれ以外にも電波法や無意味な規則によって、自衛隊のドローンは性能劣化と機能不全を起こしている。例えば、ドローンのバッテリーも自動的に性能劣化が分かるのに、わざわざノートに充電回数等を記録し管理している。こんな軍隊は地球上に存在しない。

 重要施設以外の演習場などでは事前通報は不要だが、それ以外ではまともにドローンを使えないのが自衛隊の現状であり、基本的には日本の演習場で戦うことが前提の軍隊という格好だ。

制度の抜本的改革をしなければ装備を調達しても宝の持ち腐れになる

 一部の兵器評論家は「ドローンは自衛隊でもすでに運用されている」などと自衛隊はドローンで遅れていないなど必死に強弁するが、これが兵器単体しか見ていない空論なのは明白だ。

 本来、ドローンは人間に代わってリスクをとれる存在だ。それが本当に必要な重要施設で事実上使えず、自衛官という人間がドローンの代わりにリスクを引き受けねばならない現状は論外だ。

 自衛隊の構造的な問題については、本稿でみたように、一応は例外規定らしきものもある。しかしそれは、実際には機能していない。こうしたことが自衛隊では日常茶飯事だ。上層部は「規則上はできないことはないのだから、やっていない現場の責任」とうそぶき、マスメディアや国会で問題になれば「周知徹底します」とし、その結果、現場では無駄な手続きが増えることになり、ますます手続きはしなくなる。

 こうした悪循環も、これを契機に打ち止めにすべきだ。

 以上を踏まえ、防衛省・自衛隊は、今後調達するドローンによって“新しい戦い方”ができるような制度に抜本的な改革や整備を行うべきだ。少なくとも小型無人機等飛行禁止法から自衛官を適用除外とするなり、包括的な飛行許可を与え、自衛官が積極的にドローンを活用できるような仕組みづくりが必要だ。このままでは今後の5年間で調達していく1兆円のドローンも宝の持ち腐れになりかねない。

参考文献・参考資料

自衛隊がドローンを本格導入、なのに「有事でも自由に飛ばせない」理由 (msn.com)

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