政治講座ⅴ813「中国包囲網と軍事作戦における日本のお寒い現状」
2025年の米中戦争に向けて、世界は動き出している。今回はその動きの報道記事を紹介する。激動する世界の2大パワーは台湾を舞台に今衝突しようとしている。
皇紀2683年2月3日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
フィリピンの米軍拠点、4か所増で合意…対中抑止力強化
読売新聞 - 昨日 19:04
【マニラ=安田信介、ワシントン=田島大志】米国のオースティン国防長官とフィリピンのカリート・ガルベス国防相が2日、マニラ近郊で会談し、比国内で米軍が使用できる拠点を4か所増やすことで合意した。現状の5か所と合わせて9か所となる。インド太平洋地域で強権的な支配を強める中国に対し、抑止力を強化する。
オースティン氏は会談後の共同記者会見で「非常に大きな決定だ」と述べた。4か所の具体的な場所には言及しなかった。
米比は2016年、「防衛協力強化協定(EDCA)」に基づき、米軍が使用できる拠点5か所を指定した。昨年6月にフェルディナンド・マルコス比政権が発足した後、拠点の施設整備や増加に向けた交渉が進んだ。
米国が拠点を増やすのは、台湾有事の懸念が高まる中、軍事面でフィリピンの地政学的な重要性が増しているためだ。拠点が整備されれば、米軍はフィリピン各地で装備の備蓄などができ、機動的な部隊展開が可能になる。
これに対し、中国外務省の毛寧(マオニン)副報道局長は2日の記者会見で、米比の合意について「米国は自分だけの利益のため、絶えずこの地域で軍事展開を強め、緊張を高めている」と反発した。
「台湾に一番近い島」で今起きている驚くべき事態 ミサイル配備なのに、住民避難先は「公民館」
清水 克彦 -
1月26日、衆議院の本会議場。日本維新の会・馬場伸幸代表の声が響き渡った。「台湾に近い先島諸島の住民およそ10万人の避難対策は最優先の課題だ。地下シェルターは国民保護の重要な手段だが、先島諸島には1つもない。いつまでに整備する方針か」。
【グラフ】1人あたりGDP、日本と韓国を比べると?1月23日の通常国会召集以降、国会では衆参の本会議や予算委員会などを舞台に、政府が昨年末に決定した防衛費の増額問題で与野党の論戦が続いている。全国紙や在京メディアの多くは、2027年度以降、増額分の財源を確保するため増税が想定されている点に焦点を当てている。それは当然としても、台湾に近い沖縄県下の島を取材すれば、馬場氏が指摘したとおり、いち早く解決すべき課題が見えてくる。
反撃能力保持で揺れる与那国島
「政府が昨年末に決定した防衛3文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)で反撃能力の保持を盛り込んだことは、これからの安全保障を考えるうえで大きなステップになったと思います」
こう語るのは、元自衛隊統合幕僚長の河野克俊氏である。河野氏はさらに続けた。
「これまで日本には、守るという『盾』の役割しかなかったわけですが、『矛』という攻撃の役割も担うことになりました。こちらも反撃しますよ、ということになれば、相手国はひるみ、何よりの抑止力になります。良い方向に進んだと思います」
筆者もこの考え方に異論はない。ただ、敵基地を攻撃できる中長距離ミサイルが配備される可能性がある自治体にとっては、「はい、そうですか」とはならない。
その代表格が沖縄県与那国町だ。
一般的に与那国島として知られる与那国町は、馬場代表が懸念を示した先島諸島(沖縄県の宮古列島と八重山列島の総称)の1つだ。人口は約1700人で日本の最西端に位置する。台湾とは110キロ程度しか離れておらず、時折、台湾軍による演習の砲撃音も聞こえてくる「台湾に一番近い島」である。
政府が防衛3文書の改定と防衛費増額を決めたのを受け、筆者は住民への取材を始めた。そこで聞かれたのは困惑の声ばかりであった。
「2016年に陸上自衛隊の駐屯地ができたときは、反対ではありませんでした。しかし、敵基地を攻撃できるミサイル部隊まで設けるとなると、話は別です」(50代男性)
「中国の動きを見ていますと、やむをえないことかもしれません。でも、中長距離ミサイルを配備する前に納得がいく説明がほしいです」(30代女性)
与那国島にミサイル部隊などの配備計画が伝達されたのは、1月10日のことだ。説明に訪れたのは、沖縄防衛局の小野功雄局長らだ。
これに対応したのは糸数健一町長と町議8人で、そのうちの1人によれば、町側からはミサイル部隊の配備に懸念の声が相次ぎ、住民に説明する機会を設けるよう求める声も上がったという。
「反撃能力は相手国領土にあるミサイル基地を叩くためのものですよね? だとすれば、同盟関係にあるアメリカ軍が標的にするものと同じになります。台湾をめぐって中国とアメリカが軍事衝突した場合、日本もそのお先棒を担ぐことになれば、中国側は当然、日本にあるミサイル基地、つまり与那国島も攻撃の対象にしますよね?」(ある町議)
沖縄県石垣市が所管する尖閣諸島も、「台湾の一部」と見なしてきた中国である。台湾統一に動けば、尖閣諸島も侵攻の対象に含み、その近くに位置する与那国島の自衛隊基地を叩くことは容易に想像できる。
与那国島で主力産業である漁業を営み、与那国町漁業協同組合の組合長を務めてきた町議会議員、嵩西(たけにし)茂則氏に話を聞いた。
「新たに基地が設けられる場所は、今の自衛隊駐屯地の近くの私有地なんです。そうなると町側は手が出せません。まず、沖縄防衛局と糸数町長には住民説明会を開いてもらいたいと思います。町民の意見は真っ二つに割れてますよ。賛否を問う住民投票を実施したところで、有権者の15%が自衛隊員ですから止められません。反対しても意味がない気がします」
地域振興を名目に自衛隊を誘致
歴史をひもとけば、与那国島に自衛隊基地誘致の話が浮上したのは、2005年の町長選挙で保守系の外間守吉(ほかま・しゅきち)が当選して以降である。
その背景には、1978年以降、中国が当時の最高指導者、鄧小平によって進められた改革開放路線によって経済成長し、資源の確保が急務となり、海洋進出に活路を見出そうとしたことがある。
資源を海洋に求めた中国は、1994年にフィリピンの海域であるミスチーフ礁に建造物を設けて占拠。翌年の1995年には台湾をミサイル発射で威嚇し、アメリカとの間で緊張が高まる事態も引き起こしている。
こうした動きを受け、与那国島では与那国防衛協会を設置し、2008年9月の町議会で自衛隊基地の誘致を次のように決議した。
過疎化が進み、国や県から見放される前に、私たち町民は心を1つにして、諸課題を早期に一挙に解決する必要がある。周辺に忍び寄る国際紛争にも国家の防衛力で身を守りながら国家予算を獲得する方策は、自衛隊誘致しかない(筆者要約)
外間はその後3回、町長選挙で再選を果たしたが、自衛隊基地ができれば隊員とその家族で人口が増え、過疎化に歯止めがかかるとの論法を用いた。つまり、国に向けては安全保障、町内の有権者に向けては地域振興と、その理由を使い分けることで自衛隊基地を誘致したのである。
その結果、与那国島の人口は基地誘致前の1500人から1700人に増えた。ミサイル部隊が配備されれば、さらに40人から50人程度増加することになる。とはいえ、そのことが「中国のエスカレーションを招き、島全体が標的にされるかもしれない」というツケとなって回ってきている点も無視できない。
「いつ攻撃されるかわからない島で生活しようと考えたり投資しようと思ったりする人がいますか? いませんよね。今はまったく将来像が描けない状態です」
住民説明会すら開かれていない与那国島。前述した嵩西氏の言葉は、島に暮らす人々の率直な思いを代弁しているかのようである。
この思いは、今年春、大規模な自衛隊駐屯施設が完成し、地対艦ミサイル部隊や地対空ミサイル部隊が配備される石垣島(沖縄県石垣市)の住民にも共通するものであろう。
防衛体制の強化前に急がれる住民避難対策
与那国島など先島諸島をめぐるもう1つの懸念は、馬場氏が指摘した住民避難の問題である。
与那国島では昨年11月30日、弾道ミサイルを想定した初めての避難訓練が実施された。ただ、避難先が特に防衛設備もない公民館であったこと、島外へ避難させるには4日から5日もかかる試算が示されたことなど、多くの課題を残した。
何せ、町役場で住民避難を取り仕切っているのは防災担当の課長1人である。町が主体では多くのことは望めない。糸数町長は、筆者の問いにこのような懸念を口にする。
「ロシアに対するウクライナとは違い、与那国島の場合、避難ルートは海路と空路しかありません。海路は石垣島までフェリーで4時間かかり、空路も飛行機が小さくて1つの便に50人しか乗せられません。国には大型船が入れる港湾と大型旅客機が離発着できる空港の整備をお願いしたいです」
ウクライナでは、地下シェルターが多くの市民の命を守った。中国の侵攻に備える台湾も、シェルターを全土で10万カ所以上設置している。
町側は台湾有事に備え、町民に「島内避難と島外避難のどちらを希望するか」を聞き、政府に対してはシェルターの設置を求める方針だ。政府も、先島諸島の自治体で有事を想定した図上訓練を行う予定だが、ミサイル部隊を配備するのであれば、何よりも早く、与那国島をはじめとする先島諸島の人々に、どのようなミサイルを配備するのか(沖縄防衛局は反撃能力を持つミサイルではないと説明)を正確に説明することが必要だ。
そして住民の避難対策、さらには台湾から避難してくるであろう人々(約2万人いる在留邦人も含む)の退避ルートや、避難場所を確保することも急務になる。
防衛装備産業衰退も深刻な課題
先頃、アメリカが、地上発射型中距離ミサイルの在日アメリカ軍への配備を見送ったと報道された。これは、日本が、アメリカ製のトマホークを約500発購入してくれるのに加え、現在は約200キロという「12式地対艦ミサイル」を改良し、射程距離を1000キロ程度まで伸ばして1000発保有することを踏まえたものだ。日本はそれらを沖縄本島を始め、先島諸島に配備すると踏んでのことである。
与那国島では町民の意見が2つに割れ、石垣島では市議会が「長距離ミサイル配備は認めない」とする意見書を可決しているが、数年先には配備される可能性がある。
仮に配備されるとすれば、巨額の税金を投入したり住民を不安に駆り立てたりする犠牲に見合うものを配備する必要があるが、想定される「12式地対艦ミサイル」1つとっても、性能向上は容易ではない。
日本には、紛争地域への武器輸出などを禁じた「武器輸出禁止三原則」という縛りがあるため、防衛産業の衰退が深刻化している。過去5年間で完成品を輸出できたのは、三菱電機の管制警戒レーダー1件(フィリピンへ技術移転)のみで、自衛隊しか顧客がいない防衛産業は、アメリカなどの最新鋭の装備品との過酷な性能競争や価格競争にさらされているのだ。
元自衛隊陸将、渡部悦和氏はこう嘆く。
「例えば、隣の韓国は国を挙げて防衛産業を後押しし、巨額の補助金も出しています。しかし、日本には国を挙げての成長戦略がまったくないのです。企業にとっては、技術開発費がかさみ利益率が低いので、撤退するのは仕方がないことです」
事実、コマツや住友重機械工業といった大手メーカーが、近年、相次いで防衛装備品の製造を打ち切っている。政府は財政支援に乗り出す方針だが、復活は簡単ではない。
反撃能力保持のため、アメリカ製のトマホークを大量購入するのはいいが、潤うのはアメリカだけで、日本の防衛装備品メーカーには何のプラスにもならない。ウクライナがロシアの侵攻を食い止めるため、アメリカやドイツなどから戦車をはじめ武器の供与を受けるのとは訳が違うのだ。
こうして考えると、防衛費増額については2027年度以降の増税の是非を問う前に、もっと早く議論し解決すべき課題があると言わざるをえない。
幸い、中国の習近平指導部は「ゼロコロナ政策」への不満解消や経済成長率の鈍化といった国内問題を優先させなければならない事態に直面している。ウクライナ戦争の成り行きや、来年に迫った台湾総統選挙、アメリカ大統領選挙の行方も見極める必要があるため、ここ1年から2年は台湾統一には動き出せない。この間に、政府は増税以外の課題にできる限り改善を加えておく必要があるだろう。
スパイ風船?米国の上空に監視用気球 国防総省「中国のものと確信」
朝日新聞社 - 47 分前
米国防総省は2日、監視用の気球が米国上空を飛行していると明らかにした。民間の航空路より高い高高度を飛行しており、「地上の住民に軍事的、物理的な危険はない」と判断しているという。同省高官は「気球は中国のものだという強い確信がある」と語った。
ライダー報道官は「こうした気球の活動は、過去数年にわたって観測されている。今回の気球を発見後、米政府は機密情報の収集を防ぐため直ちに行動した」と話した。気球の特徴や見つかった時期などの詳細は明らかにしていない。米メディアは「スパイ風船」などと報じている。
高官は、撃墜した場合に破片で危害が予想されるほどの大きさだと説明。2日には、モンタナ州の人口の少ない地域の上空で撃墜できるかどうか検討したが、リスクを考慮して実行しなかったという。「破片が飛散する可能性があり、地上の人々の安全を害するリスクがあるため、(軍事的な)行動を避けるようミリー統合参謀本部議長らの強い勧告があった」と明らかにした。
[深層NEWS]尖閣周辺で領海侵入、中国海警船は海軍並み装備…「軍事行動まで取れるのでは」
読売新聞 - 8 時間前
海上保安庁の奥島高弘・前長官と笹川平和財団の小原凡司・上席研究員が2日、BS日テレの「深層NEWS」に出演し、沖縄県・尖閣諸島周辺で領海侵入を繰り返す中国海警局の動向や海保の役割などを議論した。
小原氏は、海警船が海軍並みの76ミリ砲を搭載していることに触れ、「海警局がシームレスに軍事行動まで取れるようになっているのでは」との見方を示した。奥島氏は海保と自衛隊の連携について、「軍事と非軍事をきちんと分け、得意分野の融合が重要だ」と指摘した。
中国・習近平がたくらむ台湾侵攻「恐ろしいシナリオ」で、日本経済は「大打撃」を受ける
長谷川 幸洋 - 3 時間前
中国による「ノルマンディ上陸作戦」
中国の台湾侵攻をめぐって、米国のシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のシミュレーションが話題になった。だが、実は、まったく別のシナリオもある。海上封鎖とサイバー攻撃の組み合わせで、台湾を屈服させる作戦だ。こちらの方が、現実的かもしれない。
私は1月13日公開コラムで、CSISの台湾侵攻シミュレーションを紹介した。一言で言えば、第2次世界大戦での米国のノルマンディ上陸作戦を彷彿とさせるシナリオだった。
それによれば、中国人民解放軍は大量の上陸揚陸艦や民間船などを使って、台湾への上陸を目指し、妨害する米軍の艦船を陸海空からミサイルで撃沈し、大規模戦闘を繰り広げる。その結果、米空母は2隻が撃沈されるが、中国側も大損害を被って、結局、米軍の支援なしに台湾だけが孤軍奮闘するケースを除いて「侵攻は成功しない」という結果になっている。
だが、実は、これ以外にも、さまざまなシナリオがある。CSISのシミュレーションはあえて、ノルマンディ型以外のシナリオを検討しなかったが、それは自ら記しているように「このプロジェクトは中国の軍事侵攻の可能性を評価する」ことが目的だったからだ。
米軍の空母が2隻も撃沈されれば、それだけで1万人近い死傷者が出かねない。そんな犠牲が事前に予想されても、米国が中国と直接、戦火を交えるだろうか。私は疑問だ。一方、中国側も米軍との直接対決を覚悟してでも、軍事侵攻に踏み切るかどうか。
昨年9月23日公開コラムで指摘したが、私は「ウクライナ戦争の結末と、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の運命を見極めるまで、中国は動かない」とみている。なぜなら、戦争に敗北し、プーチン氏が失脚した後のロシアは民主化に動いて、親米に舵を切る可能性もあるからだ。
そうなったら、中国は米欧日にロシアも加わった対中包囲網に直面する事態になってしまう。
ノルマンディ型侵攻の軍事的失敗リスクに加えて、こうした外交的リスクも考えると、習近平総書記(国家主席)が、よりソフトな台湾奪取シナリオを選ぶケースは十分、ありうるのではないか。それが、台湾に対する「海上封鎖とサイバー攻撃」のミックス・シナリオだ。
もう一つの「侵攻シナリオ」
米メディア、グリッドは1月27日、中国が海上封鎖によって、双方に大量の死傷者を生じることなく、台湾を奪取するシナリオを紹介した。筆者のジョシュア・キーティング氏は安全保障問題を専門にするベテラン記者だ。
それによれば、中国は潜水艦を含む大量の艦船と航空機を動員して、海と空から台湾を封鎖する。それによって、台湾は軍事物資はもちろん、輸入の9割を占める食料と原油を調達する道を閉ざされ、「1人の兵士を島に送ることもなく」主権をめぐって、中国側との交渉を迫られる、という展開になっている。
米欧の軍事専門家の間では、台湾とロシアに侵攻されたウクライナとの最大の違いは「台湾にポーランドはない」という認識で一致している。つまり、台湾には頼りになる友好国が近くにないのだ。日本は台湾に友好的だが、海上封鎖している中国軍との戦闘を覚悟してでも、断固として支援するとは、言い切れない。
結局、米軍が戦闘覚悟で封鎖を突破しない限り、台湾は中国との交渉で「事実上の敗北=主権放棄」を迫られる、という厳しい立場に立たされてしまう。
以上のような海上封鎖シナリオは、これまでも指摘されてきた。
たとえば、昨年8月25日付のニューヨーク・タイムズは「いかに中国は台湾の首を締めるか」という大型解説記事で、海上封鎖シナリオを紹介した。それによれば、台湾は人口と産業、港が中国に近い西側に集中しており、中国軍はいざとなれば、主要な港に軍艦を送るだけで封鎖が可能になる。
実際、ナンシー・ペロシ下院議長(当時)が昨年8月、台湾を訪問した後、中国は日本の排他的経済水域(EEZ)を含む台湾周辺の5カ所の海上にミサイルを撃ち込み、空には戦闘機を飛ばした。これは、海上封鎖シナリオを強くうかがわせる軍事演習だった。
このとき、中国は同時に初歩的なサイバー攻撃も敢行した。
高雄の新津営駅に設置された大型の電子掲示板がハッキングされたのである。ディスプレイには「魔女(ペロシ氏を指す)の卑劣な台湾訪問は、祖国の主権に対する深刻な挑戦だ」という文字が浮かび上がった。本物の戦闘になれば、この程度では、とてもすまないだろう。
それ以上に懸念されているのは、中国と台湾を結ぶ海底ケーブルを切断される事態である。島国の台湾は世界との通信の9割を海底ケーブルに依存している。これが切断されると、台湾が事実上、世界から孤立するだけでなく、相互接続されている日本や韓国にも大きな影響が及ぶ。
ウクライナ戦争では、ロシアがウクライナの穀物輸出を阻止して大問題になったが、台湾の場合は半導体が焦点になる。いまやスマートフォンや自動車など、あらゆる製品に台湾製の半導体チップが使われている。中国が台湾を封鎖すれば、たちまち世界中の半導体供給がストップしかねないのだ。
グリッドの記事は「第1週から混乱が始まり、4週から8週目までには、あらゆる種類の製品に実質的な混乱が広がるだろう」という専門家の声を紹介している。
持久戦になる可能性も…
もちろん、海上封鎖シナリオでも米中が激突する可能性はある。米軍艦船が封鎖を突破しようとした瞬間に銃撃戦、あるいはミサイル戦が始まるかもしれない。その場合、米軍を護衛している自衛隊が援護に回れば、自衛隊が戦闘に巻き込まれる可能性も十分にある。
そうだとしても、ノルマンディ型上陸作戦に比べれば、大規模戦闘に発展する可能性は、ずっと低い。少なくとも、当初は米中台(日本も)のにらみ合いが続くのではないか。数週間、あるいは数カ月単位の持久戦になるかもしれない。
その間に、中国はサイバー攻撃で台湾のインフラを破壊し、世界との通信を断つ。死傷者を出さずに、徐々に攻撃の強度を上げていき、台湾が音を上げるのを待つ作戦だ。
台湾侵攻と言えば、ノルマンディ上陸のような大作戦を連想しがちだが、実は、以上のような持久戦で、中国は目的を達成できるかもしれない。日本はどうかといえば、こうした展開になった場合、自国領土が攻撃されるか、あるいは米軍が攻撃されなければ、動けない。
自国領土も米軍も攻撃されず、結局、日米は事態を傍観するしか手がない状態に追い込まれるのだろうか。その場合でも、日本は事実上、中国に原油供給ルートを抑えられてしまう。そうなれば、台湾が奪取された場合と同じ形になる。
そんななか、米NBCは1月28日、米空軍のマイク・ミニハン大将が「米国は2025年に台湾有事で中国と戦うことになる。準備を急げ」と指示した内部メモの存在を報じた。台湾有事は迫っている。日本はソフトな海上封鎖シナリオを含めて、対応策を検討すべきだ。
参考文献・参考資料
フィリピンの米軍拠点、4か所増で合意…対中抑止力強化 (msn.com)
「台湾に一番近い島」で今起きている驚くべき事態 ミサイル配備なのに、住民避難先は「公民館」 (msn.com)
スパイ風船?米国の上空に監視用気球 国防総省「中国のものと確信」 (msn.com)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?