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政治(経済)講座ⅴ1984「中国発の世界恐慌・金融恐慌を考察」

 十数年前から中国経済はバブル崩壊でデフレ経済に入ったと噂されている。
 そして、中国経済のGDPの統計数字は眉唾ものと言われている。10数年前から異変を感じた海外企業は中国から脱出している。しかも、中国企業も米国の関税回避の為にベトナムやメキシコに企業の移転して中国には企業や産業の空洞化が進行している。
 中国に進出した企業は中国の企業と合弁会社として運営される。そのことから考えても中国の世界の工場としてのGDPは不動産投資(全体の3割)を除いた半分(3割5分)は海外企業が稼いだGDPである。
2023年度の実際の公表されたGDPは、19,243,974(単位10億USドル)×0.35=6,735,539となる。
これが中国のGDP 6,735,539 であると推測される。
日本のGDPは、2023年度実質※558.2兆円、名目596.5兆円 ドルベース3,728,125(単位10億USドルレート160円)となる。
 日本の経済規模とほぼ変わらない程度であり、すでに、日本企業や海外企業は中国から撤退しており、中国から逃げ遅れている企業もあるが、中国の経済が駄目になったとしても世界に与えるダメージは限られる。「一帯一路」などと大風呂敷を広げた発展途上国への過剰設備投資は回収不能の焦げ付きとなり、債務の罠などと悪評を醸し出している。
 さらに、過剰投資と過剰債務の不採算投資は中国のGDPは低下させて、自らの国力を疲弊させること間違いなし。すでに、海外投資資金は撤退し出している。日本がバブルだと言う意見があるが、PBR(株価純資産倍率)が1より小さいのであり、逆にデフレ経済からまだ脱却できていないと読み取ることが出来ると吾輩は考える。
今回は中国経済が世界に与える影響についての各方面の専門家の意見の報道記事を紹介する。

     皇紀2684年10月23日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

《バブル崩壊、中国だけでは止まらない》「空前の値上がり」で世界経済は破綻寸前…!各国のゼロ金利政策が招いた「エブリシング・バブル」の危機

永濱 利廣、エミン・ユルマズ によるストーリー

2024年7月10日、日経平均株価は史上最高値の4万2224円2銭を記録した。その一方で、8月には過去最大の暴落幅を記録し、株価乱高下の時代に突入している。インフレ時代の今、自分の資産を守り抜いていくために私たちはどのような対策をすべきなのか。NVIDIA急成長の背景や新NISAとの向き合い方を見直しながら、日本経済の未来について考えていかなくてはならない。

「エブリシング・バブル崩壊」が始まっている

エミン・ユルマズ

エコノミスト・グローバルストラテジスト。レディーバードキャピタル代表トルコ、イスタンブール出身。1996年に国際生物学オリンピック優勝。1997年に日本に留学し東京大学理科一類合格、工学部卒業。同大学院にて生命工学修士取得。2006年野村證券に入社し、M&Aアドバイザリー業務に携わった。2024年レディーバードキャピタルを設立。現在各種メディアに出演しているほか、全国のセミナーに登壇。文筆活動、SNSでの情報発信を積極的に行っている。

日銀が利上げすると、世界のマーケットは暴落するかもしれない。私は最近その可能性を危惧しています(編集部註:日本銀行は2024年7月の政策決定会合で政策金利の0.25パーセント引き上げを決定)。

私は『エブリシング・バブルの崩壊』(集英社)という本を出しているのですが、「世界経済は『エブリシング・バブル』だ」と以前から警告してきました。

Photo by gettyimages© 現代ビジネス

近年、各国の中央銀行が金利をゼロ近辺に設定したことで、企業の借り入れコストが低下し、企業活動が活発化しました。それとともにマネーの一部が株や不動産の購入に回り、世界中で資産バブルが発生しています。

日銀やアメリカFRB(連邦準備制度理事会)などは「量的緩和政策」も実施していました。中央銀行が金融機関から国債を購入した結果、中央銀行のバランスシートが激増しています。中央銀行のバランスシートとは、供給されているマネーの量そのもの。つまり世界の中央銀行はこれまで無制限に札束を刷り、市場にバラまいていたのです。その結果、株や金、不動産といったリスク資産はかつてないほど値上がりしました。

不動産・暗号通貨・EVバブル

しかしながら、こうした異常な金融政策が長続きするわけがありません。私はずっと「エブリシング・バブルはいずれ崩壊する」と言ってきましたが、足元の世界経済の動きは、まさにそれが現実になってきたと示しています。

中国の不動産バブルはすでに崩壊しています。恒大集団や碧桂園といった大手不動産デベロッパーは債務超過に陥り、会社清算の危機に瀕している。中国株も低迷していて、香港ハンセン指数は2018年の最高値以降は下落が続き、2022年には高値から約半分にまで暴落しました。

バブル崩壊は何も中国に限った話ではありません。アメリカでもさまざまなバブルが発生しては、すでに崩壊しています。

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そのうちの一つが「暗号通貨バブル」。ビットコインやイーサリアムといった主要な暗号通貨はまだしも、その他のマイナーなコインは暴落しており、中には完全に価値を失ったものもあります。こうしたコインに投資していたら、資産がゼロになってしまった、ということです。

その上、2024年に入って「EVバブル」の崩壊も伝えられました。これまで右肩上がりで成長していたEV(電気自動車)市場ですが、価格が高いわりに、航続距離が短いなど、顧客満足度が低いため、成長に急ブレーキがかかりました。

代表的なEVメーカーであるテスラの株価も最高値から大きく下げています。

お金は知っている 習近平主席の「大型財政出動」が口先だけの理由 中国で続く外貨難、共産党が支配する米ドル本位の金融システムが行き詰まり


お金は知っている 習近平主席の「大型財政出動」が口先だけの理由 中国で続く外貨難、共産党が支配する米ドル本位の金融システムが行き詰まり

中国の習近平政権は底が見えない不動産バブル崩壊不況に対し、大型財政出動を今月12日に示唆したが、口先だけにとどまりそうである。
なぜか。西側のメディアや市場アナリストは首をかしげているが、理由ははっきりしている。
共産党が支配する米ドル本位の金融システムの行き詰まりが原因なのだ。 グラフは中国人民銀行の保有外貨資産と人民元資金発行高(マネタリーベース)の前年同期比増減率の推移である。一目瞭然、人民銀行は外貨資産の増減に合わせて資金発行している。外貨の大半は無論、基軸通貨米ドルである。人民銀行は人民元を発行して流入する外貨を全面的に買い上げる。言い換えると、ドルがふんだんに流入すれば金融を大幅に緩和でき、流入が縮小すると引き締めることになる。
ドルの裏付けのない人民元は中国国民に信用されない恐れがある。従って共産党中央は国債発行に応じて人民元資金を創出することに極めて慎重だ。
西側の中央銀行は日銀、米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行がそうであるように、通貨を発行する場合、外貨ではなく、主として国債を市場から購入する。ところが人民銀行の場合は、これまでの20年間、総資産に占める国債など政府金融負債はわずかに4%前後にとどまっている。対照的に、人民銀行の外貨資産比率は最近で約5割である。
2008年9月のリーマン・ショックの際には、人民銀行が巨額の資金発行を行い、国有商業銀行などに資金供給し、地方政府や国有企業向け融資を一挙に増やした。
金融の量的拡大のもとで北京の中央政府は大型財政出動に踏み切った。この離れ業は、米FRBが大量発行したドル資金が国際金融市場経由で中国に流入したからこそ可能だった。 中国への外貨流入源は貿易など経常収支の黒字と外国からの対中投融資だが、中国は資本の流出が激しく経常収支黒字だけでは外貨が底を突く恐れがつきまとう。特に15年から16年には金融危機が発生し、中国の投資家が資金を一斉に海外に持ち出す資本逃避ラッシュとなった
習政権がそこで頼りにするのが、外国企業による直接投資海外の金融機関や投資家による証券投資だが、不動産バブル崩壊とともに、2022年以降、対中投融資が激減している。習政権は資本の流出を厳重に取り締まることで、かろうじて外貨資産の減少を食い止めているが、外貨難は続いている。 中国財政省は12日に「財政支出を大幅に増加する用意がある」と表明したものの、具体的な金額については触れなかった。景気テコ入れのために必要な国債発行は日本円換算で約200兆円に上ると推定されるが、市場で消化するためには人民銀行の資金発行が欠かせない。すると、人民元の価値が失われ、一党独裁制の根底が揺らぐ。習氏はそんな悪夢に悩んでいるだろう。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

<社説>中国若者就職難 情報隠しても解決せぬ

<社説>中国若者就職難 情報隠しても解決せぬ

 中国で若者の就職難が深刻化している。大学卒業生数は近年、年1000万人の大台を突破しているのに、不動産バブル崩壊など経済減速に有効な手が打てておらず、雇用の受け皿が十分増えていない事情が背景にある。中国政府は「雇用安定」を重点政策に掲げるが、特に国の将来を支える若者の就業対策は焦眉の急である。

 都市部の16~24歳の若者の失業率は昨年6月に21.3%と、過去最悪を更新した。国家統計局はその直後に失業率の公表を取りやめた。若年層の失業率基準を改め、学生を調査対象から除外したデータの公開を今年1月から再開したが、それでも14.9%と、若者の厳しい就職状況の傾向に大きな変化はうかがえなかった。

 若者の就職難の大きな要因の一つは大学卒業者の増加だ。大学新卒者数は2022年に初めて1000万人の大台に乗り、今年は推計で1170万人超と23年の1158万人をさらに上回る。中国政府は24年予算に雇用助成金として667億元(約1兆4000億円)を計上するなど対策を講じてはいるが、学生を対象外とした失業率公表への変更は、事態の深刻さを覆い隠そうとする所為にしか見えない。実態に真摯(しんし)に向き合う姿勢に欠けていると言わざるを得まい。

 中国の大学、専門学校などへの進学率は一昨年59.6%に上り、仕事はあっても、大卒に見合った就職先が見つからない「雇用のミスマッチ」が常態化しているといわれる。また、学部卒より大学院修了生を優先する中国企業の採用の傾向も影響が大きい。コロナ禍による就職難で増えた大学院進学者が今年から就職戦線に加わって競争激化に拍車をかけている。

 さらに、9月に発表された政府職員や会社員の段階的な定年退職年齢引き上げ(男性は60歳から63歳、管理職女性は55歳から58歳)の「副作用」も懸念される。急速な少子高齢化で12年以降、生産年齢人口は減り続けており、定年延長が「これ以上先送りできない」(中国紙記者)ことは確かだが、その分、新規採用枠が縮小されれば、若者の就職難を一層、深刻化させかねない。

 中国政府に、若年層の就業や起業の支援制度充実などの対応が求められるのは当然だが、問題の根っこは不都合な統計を廃し、ことの深刻さを国民の目から隠そうとするような姿勢にこそあろう。

中国国家統計局が声高らかに「GDP4・6%成長」を発表するも、これだけの不安材料

近藤 大介(『現代ビジネス』編集次長) によるストーリー

「人気の花形職場」国家統計局

北京の西側を南北に縦断する西二環路は、東西に走る12車線の長安街と交差する復興門を北上すると、右手(東側)に「北京のウォール街」こと金融街が見える。かつては栄華を誇ったものだが、経済が失速したいまは、往年の輝きはない。多くの金融系企業が高層オフィスビルから退散し、付近のレストランは閑古鳥が鳴き、高級ホテルは割引合戦に余念がない。

その反対側、二環路の左手(西側)に広がるのが、主に経済関連の官庁街である。中国経済運営の司令塔である国家発展改革委員会、予算を司る財政部、市場のお目付け役の国家市場監督管理総局などが鎮座している。

Photo by Gettyimages© 現代ビジネス

そうした一角で、月壇南街に面した巨大な新華ビルにオフィスを構えるのが、国家統計局である。かつては「データだけをもらって歩く三流官庁」などと揶揄(やゆ)されたものだが、いまや絶大な存在感を誇る。

その証拠を一つ示そう。昨年11月26日、中国で年に一度の国家公務員試験が実施された。総定員数の3万9600人に対し、受験応募総数は何と、約303万3000人! 単純計算すると、倍率は75倍に上った。中国の世は「超」がつく不景気だけに、国家公務員は学生たちにとって一番人気なのだ。

ちなみに、日本の国家公務員試験は、今年5月に人事院が発表したところによれば、受験者数が1万3599人で、合格者数が1953人。倍率は約7倍と、中国の10分の1以下の「緩き門」である。しかも「東大生の公務員離れ」や「早期退職者の増加」などが指摘されて久しい。

これは、民間に希望ある多様な職場があふれているということだ。まさに日中は、対照的である。

中国の国家公務員試験というのは、それぞれの官公庁が職場ごとに募集人数を公開し、受験者は希望する職場を指定して試験に臨む。そうした中、昨年11月の試験で最高倍率となったのが、国家統計局だったのだ。

具体的には、国家統計局傘下の「国家統計局寧夏調査総隊業務処室一級主任科員及び科員以下」という職種である。ただ1名の募集に対して、応募者は何と3572人! 他にも国家統計局の募集ポストは、軒並み高倍率が並んだ。まさに「人気ナンバー1の花形職場」なのだ。

なぜ国家統計局が人気なのか? そこは、諸説あって不明だ。「国家の全体的な骨格を把握できるから」「責任がなく仕事が楽だから」……。前任の胡錦濤政権までは、「給与外所得(賄賂)が一番多い官公庁」ほど人気が高かったものだが、泣く子も黙る習近平政権にあっては、「八項規定」(贅沢禁止令)が全官公庁に沁み渡っていて、「給与外所得」そのものが消えた。

成長率が4・6%まで落ちても自信満々

すっかり前置きが長くなったが、そんな国家統計局が、3ヵ月に一度、中国だけでなく世界の脚光を浴びる日がある。それは、4半期ごとの経済統計の発表日だ。まさに先週金曜日(10月18日)が、その日にあたった。

午前10時、国家統計局の記者会見場に、盛来運副局長が厳めしい表情で姿を現し、大勢の記者たちの前で、第3四半期(7月~9月)の経済統計の発表を始めた。まずは、恒例となっている「枕詞」(まくらことば)を朗々と述べた――。

「第1四半期から第3四半期まで、複雑で峻厳な外部環境と国内経済の運行の中、新たな状況や新たな問題に直面しながらも、習近平同志を核心とする中国共産党中央委員会の堅強な指導のもとで、各地域各部門が党中央と国務院の政策決定と手配を深く貫徹実行し、安定した中に前進を求める活動の総合的な基調を堅持し、マクロコントロールのパワーを強化し、改革開放の深化と国内需要の拡大に着手し、経済構造を改善し、積み上がった政策を効果的に実行し、新たに増した政策を強力に推し進め、国民経済の運行を総体的に平穏にし、安定した中に前進があり、生産の需要を平穏に増長させ、就業と物価を総体的に安定させ、民生の保障にしっかり尽力し、新たな生産力を一歩一歩発展させ、ハイレベルの発展をしっかり推進し、9月の多数の生産需要指標を好転させ、市場の予測を改善し、経済を好転させる積極的な要素を積み上げて増進させた」

毎度のことだが、何とも長い「前口上」である。特に、「習近平同志を核心とする中国共産党中央委員会の堅強な指導のもとで」という「枕詞」が最も重要で、万一これをすっ飛ばすと、3ヵ月後に盛副局長は消えているだろう。

その上で、肝心の経済データを発表した。

「初歩的な概算によれば、第1四半期から第3四半期までのGDPは94兆9746億元で、物価を加味しないと、4・8%増加した。産業別には、第1次産業(農林水産業)の増加値は5兆7733億元で3・4%増。第2次産業(製造業)の増加値は36兆1362億元で5・4%増。第3次産業(サービス業)の増加値は53兆651億元で4・7%増だった。

四半期別には、第1四半期が5・3%増、第2四半期が4・7%増、第3四半期が4・6%増だ。前期比では0・9%増加した」

「国家統計局が中国に都合のよいデータを出してくれる」

世界が注目した第3四半期のGDP成長率は、4・6%だった。私はこれまでの各種データから、4・5%だろうと予測していたが、0・1ポイント高かった。

それにしても、中国の今年の経済成長の年間目標は、「5・0%前後」である。これをクリアするには、第4四半期(10月~12月)で、5・4%程度の経済成長が必要で、かなりハードルは高い。

おそらく、もしも通年で5・0%に到達できなかった場合には、「年間目標は『5・0%前後』であって『5・0%』ではなかった」と言い訳するに違いない。そのため、たとえ通年のGDP成長率が4・8%だったとしても、「年間目標は達成した」と強弁するわけだ。これは以前、李克強前首相が説いていたレトリックだ。

もしくは、「えいやっ!」と「神の手」によって引き上げてしまい、「通年で5・0%だったので目標を達成」と胸を張るとか? 実際、過去に少なからぬ地方政府で、「GDPでっち上げ事件」が発覚している。だが中央政府では、さすがに発覚した前例はない。

ただ、国家統計局を巡るアネクドート(庶民がひそひそと語る政治小噺)というのはいくつもあって、例えばこんな調子だ。

<中国経済が悪化の一途をたどり、国家発展改革委員会、財政部、中国人民銀行……と、次々にさじを投げた。だが、14億中国人民は諦めなかった。「何と言っても、われわれには最後、国家統計局がついているのだから」>

<国家統計局が、複雑な統計整理作業の迅速化のため、世界最先端のコンピューターを導入した。そのコンピューターは優れたAI機能付きで、中国政府に都合のよいデータは2倍にして出し、逆に都合の悪いデータは半減して出してくれる。それによって、作業は非常にはかどるようになった>

実際、この日の盛副局長は強気だった。発表の最後は、「努力して通年の経済社会発展目標の任務を完成させる」と締めくくった。

習近平主席も10月16日、かつて(1985年から)赴任していた福建省アモイを視察し、現地の幹部たちを集めた重要講話で、こう力説した。

「党中央の決定、差配を、真摯に貫徹実行し、全力で第4四半期の経済活動をうまく掴み、通年の経済社会発展目標を努力して実現させるのだ」

中国経済の低迷、最大の原因

国家統計局がこの日に発表したデータを中心に、主な中国経済の最新データをまとめると、下記の通りである。

中国国家統計局が声高らかに「GDP4・6%成長」を発表するも、これだけの不安材料© 現代ビジネス
中国国家統計局が声高らかに「GDP4・6%成長」を発表するも、これだけの不安材料© 現代ビジネス

青色がやや改善された部分で、黄色が依然として低迷が続く部分である。これを見ると一目瞭然だが、コロナ禍の前にGDPの約3割を占めていた不動産の景気が回復しないことが、中国経済の低迷が続く最大の要因である。不動産の主要11統計のうち、プラスなのは「家屋・住宅の売れ残り面積」だけという有り様だ。

中国は、2020年から2022年まで3年にわたり、習近平主席の絶対命令によって、「ゼロコロナ政策」を貫いた。それによって全国の経済が悪化し、14億人の生活がおしなべて悪化した。

2022年末から、さすがに通常の生活に戻したが、翌2023年3月に3期目に入った習近平政権は、経済のV字回復を優先させるべきところを、「総体国家安全観」というガチガチの社会主義政策を前面に掲げた。これによって中国経済は、「V字」どころか「I字」と言われるほど、さらに悪化していった。

次々に経済回復策を打ち出すも…

ようやく経済回復優先に方向転換したのは、今年3月の全国人民代表大会が終わってからだ。5月に「4つの新政策」(5・17楼市新政)を出し、経済悪化の根本原因である不動産を立て直そうとした。

〇販売契約を結んだマンションの建設と引き渡しを円滑に行う。

〇商業銀行は不動産への融資をしっかり行う。

〇地方の国有企業がマンション在庫の一部を買い取り、低所得者向け住居とする。

〇ゴーストタウンを政府が買い取って転売する。

これに付随して、中国人民銀行(中央銀行)は買い取りを支えるため、3000億元(約6・3兆円)の資金枠を設けた。かつ、住宅ローン金利の下限を撤廃した。

だが、これは弥縫(びほう)策に過ぎなかった。しかも、現場の各地方政府(地方自治体)が、どう対応してよいか分からず、混乱を招いた。ある中国の経済学者は、私にこう吐露した。

「巨大な山火事が起こっている時に、消防車を4台出してきただけで、どうやって火を消せるのだ?」

私も似たような印象を持った。1978年に鄧小平副首相は、中国社会を根本から変える改革開放政策を断行した。その20年後の1998年、朱鎔基首相も、やはり中国社会を根本から変える国有企業改革を行った。それから10年後の2008年、温家宝首相もまた、世界的金融危機(リーマン・ショック)から中国を守るべく、4兆元(当時のレートで約58兆円)の緊急財政出動を決めた。

これら「3つの改革」に共通しているのは、時の政府が本気で改革を目指したことだ。実際、改革には痛みが伴い、一時は混乱に陥ったが、混乱期を過ぎると経済は急速にV字回復していった。いまから振り返ると、時の為政者たちが、確固とした信念のもとに大胆な改革を断行していった様は見事だった。

習近平政権には、こうした過去の政権のような「本気度」が見られない。前述の経済学者はこう述べた。

「それは習近平主席本人が、誰よりも緊縮財政派だからだ。世界が度肝を抜くような財政出動や金融緩和には、そもそも反対なのだ。中国人民は、一家が何とか暮らしていけるだけの収入と住む家だけがあり、『小康社会』(そこそこの暮らしができる社会)でよいではないかというのが、習主席の発想なのだ。

トップがそういう考えなので、大胆な政策など出るはずもない。結果、官僚たちは、なるべく無難に諸政策を小出しにして、習近平主席に向けて『やってる感』をアピールしているのだ」

「やってる感」だけの政策たち

5月に続いて、そうした「やってる感」が現れたのは、国慶節(建国記念日)の7連休(10月1日~7日)前に、政府が立て続けに出した「3つの政策」だ。具体的には、10月8日にアップした本コラムで記した通りだ。

国慶節に中国政府が景気「爆上げ」政策を実施! その効果は???

https://gendai.media/articles/-/138783

国慶節の連休明けにも、10月12日、藍佛安財政部長(財務相)が緊急記者会見を開き、「6つの措置」を発表した。具体的には、以下の通りだ。

1ー財政支出規模の拡大……2024年の財政赤字を、昨年の予算よりも1800億元増加させる。新規発行の地方政府の専項債(収益性のあるインフラ整備用債券)の限度額を、昨年より1000億元増やして3・9兆元とする。1兆元の超長期特別国債を発行する。2024年の公共予算の支出規模を28・55兆元まで増やす。

2ー税金・経費優遇政策の緩和……構造的な減税・経費節減政策、研究開発費の税引き前控除、先端製造業企業の増値税低減、科学技術の成果に対する減免税、製造業企業の技術革新に対する税優遇政策などを実行する。1月~8月、これらの措置で1・8兆元を減税・経費削減した。

3ー国内の有効な需要の積極的拡大……地方の国債資金増発などを促す。1月~9月に3・6兆元の新規専項債を発行し、3万以上のプロジェクトを支持し、使用した資金は2600億元を超える。

4ー庶民への「三保」(民生・収入・資金循環の保障)と重点分野の保障強化……2024年、中央政府は地方政府に対し、10兆元以上の交付金を設定する。1770億元の農村振興補助資金の設定を推進し、651億元の汚染防止対策費を下達した。

5ー基本的な民生のさらなる支持……2024年、中央政府が667億元の就業補助資金を下達。1月~9月の全国教育支出は3兆元。退職者の基本年金水準を、全国で総体的に3%引き上げる。

6ー地方政府の債務危機の着実な防止……中国政府は2023年に設定した2・2兆元を超える地方政府債務限度額を基礎として、2024年にさらに1・2兆元の限度額を設定する。

続いて、10月17日、住宅都市農村建設部の倪虹(げい・こう)部長(建設相)が、記者会見を行った。倪部長が説いた改革方針は、「4つの取り消し、4つの引き下げ、2つの増加」だった。それぞれ以下の通りだ。

〇4つの取り消し……購買制限の取り消し、販売制限の取り消し、価格制限の取り消し、一般住宅と非一般住宅の基準の取り消し

〇4つの引き下げ……住宅積立基金のローン金利の0・25ポイント引き下げ、住宅購入時の頭金の最低比率を1軒目、2軒目とも15%に引き下げ、既存の住宅ローン金利の引き下げ、買い換え住宅の税負担の引き下げ

〇2つの増加……都市部民間格安集合住宅と老朽化した住宅の改修を100万戸新規増加、年末までに「ホワイトリスト」項目(優良住宅開発案件)への融資枠を4兆元(約84兆円)に増加(10月16日時点で2兆2300億元)

前述のように、習近平主席や盛来運国家統計局副局長らは、「ここまでやっているのだから、好転していくのだ」と、自信を覗かせている。

これも、「小出し感」の枠を出ていない。だが前述のように、習近平主席や盛来運国家統計局副局長らは、「ここまでやっているのだから、好転していくのだ」と、自信を覗かせている。前出の経済学者が続ける。

「この先、地方政府や地方銀行の財政がさらに悪化していけば、不動産危機だけにとどまらず、全体的かつ長期的な危機となるだろう。加えて、来月5日に行われるアメリカ大統領選で、トランプ候補が勝利した場合、中国のGDP成長率は最大で2%程度下がるという試算も内部で示されている。

こうしたことを勘案すると、いまの対策を打ったからといって、とても楽観視してはいられない」

国家統計局の盛副局長は、「来運」という素敵な名前の持ち主だ。その名のように、「運が来た」ことを、来年1月の記者会見で、14億国民に向かって示せるだろうか? (第752回)

中国経済が失速しても世界経済の底は抜けない

河東哲夫 外交官の万華鏡 によるストーリー

中国経済が失速しても世界経済の底は抜けない© ニューズウィーク日本版

中国・浙江省に大量に放棄されたライドシェア用の電気自動車 COSTFOTOーNURPHOTOーREUTERS

<中国は巨大市場と言われるが民間消費はアメリカの半分以下。経済タカ派もハト派も皆、中国を買い被りすぎている>

「スタグフレーション」がやって来る、と言う人が増えている。不況で雇用が減り、賃金が下がれば、物価は下がるのが普通。しかし原油高騰などの外部要因でインフレが起こり、国民はダブルパンチ。これがスタグフレーションだ。

産業革命以降、「資本主義の危機」(要するにモノを作りすぎて売れず、不況になる)は何度も叫ばれてきた。そのたびに経済を救ってきたのは実は植民地拡大であり、戦争だった。

最近のスタグフレーションは1970年代のアメリカで起きた。この頃のアメリカは、日本、西独からの輸出にさらされて製造業が空洞化し、経済が後退する一方、73年の「石油危機」で原油価格が跳ね上がり、インフレが起きたのだ。

これを境に夫婦共稼ぎが一般化し、おうようだったアメリカ人は一気に世知辛くなる。生活の悪化は、カーター大統領が80年、1期だけでレーガンに敗れる主因となった。

しかし90年代にはインターネットが急速に発達し、ITが経済に新たな次元をもたらす。それに、世界経済への中国の参入が重なった。先進諸国は戦争なしに、新しい市場を手に入れた。以後30年間、世界は中国を軸にGDPを膨らませ合う、「皆で一緒にドーピング」の現象を呈する。

米欧日は中国に機械・部品を輸出して、低賃金労働を使って製品に仕立て、世界に輸出した。中国へは2004~08年の貿易黒字だけでも、8740億ドルの外貨が流入する。中国の銀行はそれを土地開発・インフラ建設に回す。土地は国有・公有で原価がゼロに等しいから、開発は空前の付加価値を生み、中国の高度成長を演出した。

中国がなくても世界の底は抜けない

「ドーピング」はアメリカも同じで、膨らむ財政・貿易赤字を、国債の大量発行でごまかして成長を維持した。00~20年、中国のGDPは12.3倍、アメリカは2.1倍、ドイツは1.9倍に膨らんだ。日本は1.8%増という惨めな数字だが、00年までに達成した高い生活水準は維持した。

日本はバブル崩壊のトラウマでドーピングをためらううちに、中国や米欧の成長に周回遅れ、さらにアベノミクスの円安で二周遅れとなる。今や日本は、価格体系も別世界。ホテルは外国人観光客であふれ、企業はM&Aで買いたたかれるありさまだ。

中国は、外国資本と技術で築いた経済力に舞い上がってアメリカに挑戦。自国企業に助成金をばらまき、過剰生産に陥った企業は押し込み輸出に走って、世界から対抗措置を招く。外資の対中投資は減少し、米欧は中国産品の関税を引き上げた。今や世界のタカ派は「中国抜きの世界経済」を語り、ハト派は「中国経済を破綻させれば世界は共倒れ」と戦々恐々だ。
しかし皆、中国を買いかぶりすぎている。中国市場は巨大といわれるが、民間消費総額はアメリカの半分以下。西側は「世界の工場」として利用してきたが、それは別の場所に移せばいい中国に輸出してきた機械、部品はそちらに輸出されるから、例えば日本の輸出総額はさして変わらない。

中国という「ドーピング成長の相棒」がいなくなるのは寂しい。しかし、これからの世界は日本のように筋肉質の堅実な成長を追求し、低成長に順応すればいい。株主の利益より、社会全体の利益を考えるいい機会ではないか。

少子化、労働力減少に対抗して生産性を維持・向上させる投資はこれから増える一方だ。宇宙関連事業、ロボットなど、時代を引っ張る「夢」は次々に出てくる。日本はそのいくつかの分野でトップグループにいる。スタグフレーションは怖くない。

中国経済の減速 先行き不透明感が一層増した

2024/10/22 05:00

 中国経済の減速が続き先行きの不透明感が増している。世界経済のリスクともなりかねず、警戒が必要だ。
 中国の2024年7~9月期の国内総生産(GDP)は、実質で前年同期比4・6%増だった。2四半期連続で伸び率を縮小した。
 先進国が主要な指標としている前期比の年率換算では、3・6%前後だった。中国政府は、24年通年の成長率について「5・0%前後」の目標を掲げているが、達成できるかどうか微妙な情勢だ。
 GDPの4分の1を占めるとされる、不動産市場及び関連産業の深刻な不況が主な要因である。
 新築住宅の在庫がだぶつき、不動産開発投資は減少している。中国では、家計資産に占める不動産の割合が欧米と比べて際立って高く、不動産価格の下落が消費を落ち込ませることも懸念材料だ。
 中国経済は22年、厳格な行動制限で感染拡大を抑え込むゼロコロナ政策により不振だった。その政策を終えた23年の回復が鈍かった上、24年も低迷が続いている。

 景気減速を受け、中国政府は財政出動と金融の緩和策を相次いで打ち出した。当面の景気を、ある程度支える効果は見込めよう。

 だが、中国経済の問題は、不動産や投資、輸出への依存から脱却出来ていないことにある。

 消費主導の経済へと転換を図ることが求められるが、習近平政権は、質の高い発展や製造強国の推進に注力するばかりだ。これでは安定的な成長は難しいだろう。

 国内市場の縮小を受け、中国が国民生活の向上よりも、今後、補助金による過剰な生産を増やし、輸出への傾斜を一層強めれば、日米欧など主要先進国との摩擦の激化は避けられない。

 海外からの投資の減少も景気に悪影響を及ぼしている。

 中国は今夏、邦人社員をスパイ罪で起訴した。先月には10歳の日本人男児が中国人の男に刺され、亡くなった。中国当局が詳細を明かさず、日本側の不安は強い。

 法治国家とは言えぬ中国の姿勢が、投資意欲を冷え込ませることも直視すべきである。

 加えて、中国市場が高い成長を見込みにくくなる中、中国勢との競争が激化し、ホンダや日産自動車などの日本企業が、工場の閉鎖に動く事例が目立っている。

 日本にとっては、生産体制の見直しのほか、経済安全保障上の観点から、サプライチェーン(供給網)の再構築を進めていくことも重要な課題になろう。

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