政治講座ⅴ1558「中央経済工作会議の正体」
中国国営の新華社の報道を真に受けて経済分析すると大変なことになる。中央経済工作会議は統計の偽造、国家安全部も絡み、情報戦の一端として、中国経済を良く見せる報道を指示している。嘘の経済指標で国民を騙し、中国共産党の正統性(裕福な国家運営)を言うためである。正しい経済指標でも中国共産党に都合の悪いことの報道は刑罰を科せられるのである。とうとう嘘を信じ込まされる恐怖政治の世界である。今回はその中央経済工作会議の報道記事を紹介するが、経済を良くする政策ではなく、悪い経済を良く見せる情報工作を指示していると会議と酷評されていることを念頭に記事を読まれたい。
皇紀2683年12月22日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
来年の中国経済は課題より機会が多い、当局が見解=新華社
Reuters によるストーリー •
[北京 18日 ロイター] - 中国国営の新華社は18日、中央財政当局の発表を引用して2024年の中国経済は課題よりも機会の方が多く、プラス要因がマイナス要因を上回るとの見解を伝えた。
中国指導部は11─12日に翌年の経済運営方針を議論し、経済目標を設定する中央経済工作会議を開いた。新華社は同会議に関する文書で、マクロ経済政策が引き続き景気回復の下支えになると伝えた。
中国の11月歳入、前年比4.3%増 前月から伸び加速
Reuters によるストーリー • 21 時間
[北京 15日 ロイター] - 11月の中国の歳入は前年同月比4.3%増と、10月の2.6%増から伸びが加速した。財政省が15日公表したデータを基にロイターが算出した。
1─11月の歳入は前年同期比7.9%増で、1―10月の8.1%増から伸びが鈍化した。
1─11月の歳出は前年同期比4.9%増。1―10月は4.6%増だった。
11月の歳出は8.6%増で、10月は11.9%増だった。
中国経済は国内外で需要が低迷する中、ディスインフレ圧力の上昇や地方政府の債務増加、不動産市場の悪化といった逆風に苦しんでいる。
中国指導部は今月開いた会議で、政策調整の強化を通じて来年の景気回復を支えると表明した。その後、ゴールドマン・サックスは「財政政策が来年の成長支援で重い役割を担う」との見方を示した。
中国の郵便事業、1~11月の取扱件数は15.8%増
新華社 によるストーリー •
中国郵政集団の湖南省衡陽市の中央郵便局で荷物を仕分ける職員。(11月12日撮影、衡陽=新華社配信)
【新華社北京12月18日】中国国家郵政局が15日に発表した1~11の郵便配達サービスの取扱件数は、前年同期比15.8%増の1463億1千万件だった。うち宅配便サービスは18.6%増の1188億2千万件で、同一都市内が4.8%増の122億4千万件、他地域向けが19.7%増の1038億3千万件、国際および香港・マカオ・台湾地区向けが54.1%増の27億5千万件となった。
郵便事業売上高(中国郵政儲蓄銀行の経常収益除く)は12.7%増の1兆3844億2千万元(1元=約20円)、うち宅配便サービスは13.7%増の1兆885億2千万元だった。
宅配便サービス取扱件数に占める割合を地域別にみると、東部は1.6ポイント低下の75.3%、中部は1.0ポイント上昇の16.7%、西部は0.6ポイント上昇の8.0%だった。売上高に占める割合は東部が1.4ポイント低下の76.2%、中部が0.7ポイント上昇の14.1%、西部が0.7ポイント上昇の9.7%だった。
11月の郵便配達サービスの取扱件数は前年同月比29.7%増の165億8千万件、うち宅配便サービスは31.9%増の136億4千万件だった。売上高は24.4%増の1492億7千万元で、うち宅配便サービスは26.9%増の1241億4千万元となった。
中国海南省の貿易額、1~11月は15.5%増
新華社 によるストーリー • 10 時間
海南省洋浦経済開発区にある洋浦国際コンテナ埠頭(ふとう)。(11月27日、小型無人機から、海口=新華社記者/蒲暁旭)
【新華社海口12月18日】中国海南省の海口税関は、同省の1~11月のモノの貿易額が前年同期比15.5%増の2101億4千万元(1元=約20円)となり、すでに前年の通年を上回ったと発表した。うち輸出は4.3%増の668億3千万元、輸入は21.6%増の1433億1千万元。貿易相手国・地域上位3位は東南アジア諸国連合(ASEAN)、オーストラリア、欧州連合(EU)だった。
17日、海南省洋浦経済開発区の洋浦保税港区。(小型無人機から、海口=新華社記者/蒲暁旭)
海南省海口市にある海口港コンテナ埠頭。(9月12日、小型無人機から、海口=新華社記者/蒲暁旭)
8日、海南省東方市にある八所港。(小型無人機から、海口=新華社記者/蒲暁旭)
17日、海南省洋浦経済開発区にある洋浦港埠頭。(小型無人機から、海口=新華社記者/蒲暁旭)
海南省洋浦経済開発区の洋浦国際コンテナ埠頭で行われていた荷役作業。(10月24日撮影、海口=新華社記者/蒲暁旭)
17日、海南省洋浦経済開発区にある洋浦国際コンテナ埠頭。(海口=新華社記者/蒲暁旭)
中国の「隠れ債務」問題が日本のバブル崩壊より危うい理由、中国格付け見通し“ネガティブ”に
真壁昭夫 によるストーリー •
12月5日に信用格付け大手ムーディーズが中国の国債格付けの引き下げを発表すると、中国本土株市場は下落し、外国為替市場では人民元が売られた。当面、中国からの資金流出が加速しそうだ。今後は地方政府の財政破綻リスクが上昇し、雇用・所得環境の厳しさは高まり、個人消費も伸び悩むだろう。企業の業績悪化やデフレ経済も懸念されるが、それだけではない。中国は、わが国すらバブル崩壊後に経験しなかった事態に直面する恐れを抱える。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
中国地方政府の“隠れ債務”が深刻
12月5日、大手信用格付けの米ムーディーズは、中国国債の信用格付けの見通しを「安定的」から「ネガティブ」(弱含み)に引き下げた。中国の不動産バブルが崩壊し公的債務の増加が懸念されることに加えて、地方政府の財政が悪化していることは見逃せない。特に、地方政府の資金調達の組織である融資平台の“隠れ債務”の問題は深刻さを増している。
振り返れば2020年8月、中国政府は不動産バブルの拡大を止めるため、不動産関連企業に対する融資規制を強化した。その措置によって、多くの不動産関連企業の資金繰りが悪化し、不動産バブルはもろくも崩れた。それに伴い地方政府の歳入は減少し、融資平台の業績および財務内容は悪化しデフォルト懸念も上昇した。これが、いわゆる地方政府の隠れ債務問題だ。
直近の話に戻ると23年12月6日、ムーディーズは地方融資平台26社を「格下げ方向で見直す」と発表。「問題解決に中央政府の財政出動は不可避」とも指摘している。
中国全体で地方融資平台や不動産企業の不良債権処理が遅れると、財政破綻に陥る地方政府が増えることが懸念される。中国経済全体に信用不安が広がり、海外への資金流出は増大する可能性もある。中国経済の先行き懸念の高まりは避けられそうにない。
高まる中国地方政府の信用不安
ムーディーズは中国経済全体で下振れのリスクが高まったと判断し、国債の格付け見通しを引き下げた。さらに近い将来、中国の格付けをA1(シングルA+に相当)から引き下げる可能性もある。
懸念されるのは、中央政府よりも、むしろ地方政府の財政状態だろう。リーマンショック後、中国政府は4兆元(当時の邦貨換算額で約57兆円)の経済対策を打ち出したが、財源の確保を担ったのは主に地方政府だった。
地方政府は、税収に加え土地を碧桂園(カントリー・ガーデン)や恒大集団(エバーグランデ・グループ)など不動産デベロッパーに売却してきた。政府が投資促進を呼びかけマンション建設などを支援する中、デベロッパーは需要を上回る勢いで住宅を建設した。政府の支援や、高い成長期待を背景に、住宅価格の上昇は間違いないといった過度な楽観がまん延した。
価格上昇により、地方政府の土地譲渡益は増えていた。そして、道路の建設や鉄道の延伸などインフラ投資に資金を再配分することによって、雇用を生み出した。また、半導体やEVなどの産業補助金政策も強化した。
銀行からの借り入れが規制された地方政府は、より多くの投資資金を獲得するために、融資平台と呼ばれる企業を増やした。地方融資平台は、債券発行や投資ファンドから資金を調達することで、不動産やインフラ投資を増やした。こうして不動産バブルの熱狂に浸り、中国経済は投資に依存した経済成長メカニズムを確立した。
しかし20年8月、事態は一変。中国政府は不動産融資規制を強化した。不動産デベロッパーの資金繰りは枯渇し、建設が停止し、未完成のまま放置される物件も急増した。新築・中古の住宅価格は下落。土地需要は減少し、地方政府の主要財源である土地譲渡益も落ち込んだ。不動産バブルは崩壊し、地方融資平台の信用不安が顕在化した。
不良債権増加“負の連鎖”が鮮明
地方融資平台の債務は、地方政府の予算に含まれない。公式統計にも計上されないため、隠れ債務と呼ばれている。国際通貨基金(IMF)によると23年、地方融資平台の債務残高は中国のGDP比53%、66兆元(約1320兆円)に達する見込みだ。地方政府の手に負えない水準に隠れ債務が膨張している。
中国では、地方融資平台の債務に“暗黙の政府保証”が付く、との見方が多い。元利金の返済の遅延、不履行(デフォルト)が起きた場合、政府が返済を保証するはず、と国民は妄信しているのだ。
23年夏、中国政府は隠れ債務問題への懸念を抑えるために、地方政府の債券発行枠を拡大した。報道では1.5兆元(30兆円)程度の債券発行が指示された。中国政府は地方政府に目先の元利金返済の一部を肩代わりさせようとしているが、財政悪化により地方政府が隠れ債務問題を解決するのは難しい。
懸念されるのは、地方政府の隠れ債務問題が、家計のバランスシート調整を激化させる恐れだ。地方融資平台は、いわゆる“シャドーバンク”(預金を受け入れずに資金調達を行う投資ファンド)から資金を借り入れた。それは高利回りの投資商品である信託商品に組み入れられ、中国の個人にとって重要な資金運用手段になった。
ところが11月、シャドーバンク大手である中植企業集団の債務超過が判明した。不動産バブル崩壊による地方政府の隠れ債務問題は、不動産分野の不良債権増加とともにシャドーバンク業界を侵食し始めた。シャドーバンクのバランスシートの劣化によって、信託商品のデフォルトリスクは上昇している。
不動産バブル膨張に伴う先行きの楽観、暗黙の政府保証の思い込みに浸り、信託商品を購入した個人の一部は、中国の金融当局に事態解決に向け介入するよう要請した。不動産市況の悪化に端を発する地方政府の財政悪化、隠れ債務問題の深刻化、経済全体での不良債権増加という負の連鎖が鮮明だ。
中国からの資金流出は増加の恐れ
経済環境の悪化を食い止めるために、中国政府は公的資金を用いて不動産や地方融資平台の不良債権処理を進めなければならない。しかし、中国政府はその考えを示していない。むしろ、新規の融資増加など銀行の負担で不動産や地方融資平台の不良債権問題を解決するよう圧力を強めた。
わが国の教訓に基づくと、その政策では景気が底打ちに向かうことは難しい。約30年前、日本では住専問題が表面化した。政府は公的資金を用いた金融機関への資本注入に消極的だった。不良債権処理は遅れ、デフレ圧力は高まり景気は長期停滞に陥った。
今後の中国もそうした状況に直面する可能性は高い。地方政府の財政破綻リスクが上昇し、経済対策としてのインフラ投資の実行も難しくなるはずだ。若年層を中心に雇用・所得環境の厳しさは高まり、個人消費も伸び悩むだろう。需要が減少することで企業の業績懸念も高まり、経済のデフレ傾向も鮮明となるだろう。
それだけではない。中国は、わが国が経験しなかった事態に直面する恐れもある。社会保障制度への不安上昇だ。中国では、農村戸籍と都市戸籍によって、市民が享受できる社会保障制度(医療や年金など)に差がある。財政悪化によって、年金支給額の削減などを行う地方政府は増える可能性が高い。相対的に経済基盤が健全な都市と地方の経済格差は拡大し、住民の不満は増大するだろう。
12月5日にムーディーズが国債格付けの引き下げを発表すると、中国本土株市場は下落した。外国為替市場ではドルが軟調であるにもかかわらず、人民元が売られた。中国の不動産市況は下げ止まりの兆しが出ていない。地方融資平台や不動産デベロッパー、過剰生産能力を抱える鉄鋼メーカーなどの連鎖的なデフォルトや経営破綻が増加するだろう。
そうした懸念から、中国関連の株や債券を売り、人民元を手放す投資家は増えた。当面、中国からの資金流出が加速し、景気下押し圧力が強まる展開は避けられないだろう。
習近平の経済政策を世界中が酷評…!米中関係が落ちた、絶望の「トウキデイデスの罠」と「捨て身の台湾有事」のヤバすぎる関係
藤 和彦 によるストーリー •
中国大崩壊のインパクト
中国・習近平国家主席は、もはや今の中国経済を立て直すことは難しいだろう。
、中国は「バブル崩壊」「人口減」「バブル経済突入」の三重苦にさらされている。
12月11日と12日に行われた「中央経済工作会議」で、習氏は実態にそぐわない政策ばかりを講和したと酷評されている。そればかりか、現状認識からずれた習氏の講和を、200人の幹部たちが神妙に聞き入る異様な姿はもはや中国政府は経済再生への道をあきらめたかのようにもみえる。
これが確信犯だったとしたら、なお恐ろしい。
日本が経験した「失われた30年」という長期低迷が、人口10億人を超える大国で起こるのだから、世界へのインパクトは計り知れない。
世界の知性は、その現実に早くから気づき、警鐘を鳴らしている。筆者がもっとも説得力を持って受け入れているのが、アメリカの二人の教授の論文だ。
米中関係と「トウキデイデスの罠」
2021年9月24日付米外交専門誌フォリーン・ポリシーは「衰退する中国、それが問題だ」と題する論文を掲載した。執筆したのはジョンズ・ホプキンズ大学のハル・ブランズ特別教授とタフツ大学のマイケル・ベックリー准教授だ。
ハーバード大学の政治学者グレアム・アリソン氏が「トウキデイデスの罠」を指摘して以来、米中関係はしばしば、紀元前5世紀のギリシャの覇権国スパルタと新興大国アテネの間で繰り広げられたペロポネソス戦争に例えられてきた。
古代ギリシャの歴史家であるトウキデイデスは、「アテネの力が徐々に強大となったことに驚いたスパルタが戦争に踏み切った」ことが戦争の原因と書いたが、ブランズ氏らによれば、「国力で劣勢に立たされ始めたアテネが勝利の機会を失う前に開戦に踏み切ったことが戦争の本当の原因だ」という。
台湾有事という「中国の軽率な行動」
新興大国はパワーが拡張し続ける間はできる限り目立たずに行動し、覇権国との対決を遅らせるが、これ以上の発展を期待できなくなると「挑戦の窓」が閉ざされる前に果敢に行動し始めるというわけだ。
現在の中国は当時のアテネと同じだとするブランズ氏らは、2年前に「中国は今後10年間、より大胆かつ軽率に行動する」と警告を発していたが、その「予言」が現実になりつつある。
米国は再三にわたって中国に対して軍事対話の再開を呼びかけているが、中国側の対応は「暖簾に腕押し」の感が否めない。
気になるのは、台湾を統一するために中国が武力を行使するリスクの高まりだ。
南シナ海の異変がもたらす「日本経済へのダメージ」
中国はこのところ、フィリピンが実効支配する南シナ海の2つの島に対する軍事的圧力を強めているが、背景には台湾問題があると言われている。
地理的に台湾に近く、米国との軍事協力を強化しているフィリピンの存在が、中国が武力で台湾を統一する際、大きな障害になりかねないからだ。
南シナ海は国際的な海上物流網において重要な役割を果たしており、両国間の緊張状態がエスカレートすれば、日本経済も深刻なダメージを受けることになるだろう。
日本も中国の攻撃対象に入っている可能性がある。
中国将校が語った「不気味な発言」
中国軍の現役中将は、12月に入って「台湾への武力侵攻時に尖閣諸島も作戦対象となる可能性がある」との異例の発言を行っている(12月9日付共同通信)。
「台湾有事は日本有事」なのだ。衰退期に入った中国が、日本を巡るアジアの地政学リスクを高めないことを祈るばかりだ。
中央経済工作会議から習近平が「逃亡」! 李強も「責任逃れ」 林愛華「中南海ディープスロート」第13回
林 愛華 によるストーリー •
重要会議を欠席してベトナムへ
「中央経済工作会議」(2024年の中国のマクロ経済政策を決める会議)が12月11日から12日まで、北京で開かれた。この経済に関する最も重要な会議に、習近平主席を含む7名の党中央政治局常務委員が全員出席し、習主席が重要講話を述べたと、新華社は報じた。
同じ12日の正午、習主席は夫人を伴いベトナムのハノイ市に到着したとも新華社は報じている。ベトナムに到着した習主席は熱烈歓迎を受け、午後にはベトナム共産党の最高指導者のグエン・フー・チョン書記長と会談したという。
以上の日程から、不思議なことがひとつ浮き彫りなる。つまり、習主席はベトナム訪問のために、「中央経済工作会議」を一日欠席したのだ。これほど重要な会議を途中から抜け出すとは、極めて異例の出来事だ。
いまの中国で、習主席に逆らえる幹部はいない。「中央経済工作会議」の日程も、習主席の鶴の一声で決められたはずだ。2日間とも出席すべきなのに、初日だけ参加し、2日目はベトナムへ飛び立った。
ベトナムを重視するためにとった行動とも思えるだろうが、実際に習主席がベトナムで受けた待遇はそれほどではなかった。熱烈歓迎が報じられたが、中国とベトナムの亀裂が透けて見えた。
中国のCCTVの放送では見られない画面が、ベトナムのVNewsなどの放送では流れている。ベトナムが主催した歓迎宴会では、習主席は自ら立ち上がってチョン書記長に乾杯を求めた。チョン書記長は乾杯には応じたが、立ち上がりもせずに座ったまま。すぐ背中を習主席に向けた。
習近平がベトナムに向かった理由
習主席のこの動きは、中国では「敬酒」という。つまり相手に乾杯を捧げて、敬意を示すために行われる。中国の最高指導者が他人から「敬酒」される画面はよく目につくが、習氏が自ら他国の指導者に「敬酒」したことはあまりない。
11月の米国訪問(サンフランシスコAPEC)の際には、中国から米国に格式や形式に対する注文が、かなり多かった。中国外交部(外務省)は首脳会談に応じる代わりに、米国が習主席に敬意を示すよう要求した。もちろん拒否されたものもあるが、習氏のメンツはある程度は保たれた。
中国は、大国である米国に対しても、ここまでうるさかった。ベトナムでも当然、大国の首脳としてふるまいたがっていたことだろう。しかし、そうはできなかった。
習主席がべトナムに向かったのは、中国経済が危いからだ。また「中国経済工作会議」を途中から抜け出したのは、経済に関して責任逃れをしたいからと見える。会議の最後の決議の時に不在ならば、決定した政策に責任が生じにくくなる。もし来年の中国経済がボロボロなら、決議を行った李強首相に責任になすりつけようと考えているのだろう。
今回の「中央経済工作会議」終了後、長文の経済対策を公表し、全国民が「中央経済工作会議」の精神を学び、深く理解するよう呼び掛けた。また、民営企業の発展のためにさらなる政策を打ち出し、それらを確実に実行することや、一層の外資の誘致、不動産業の再構築などを強調した。
同時に、「経済宣伝と世論の指導を強めて、中国経済の光明(明るい見通し)論を歌い、響かせよう」と要求している(中国政府網12月12日付)。つまり、経済問題の指摘や批判はやめろと言っているようなものだ。
共産党内で渦巻く経済への不安
その一方で、国務院傘下の新聞『経済日報』は12月17日、「中央経済工作会議の精神を貫徹せよ」との社説を掲載した。李強首相がこの新聞の最高責任者だ。
この社説の全文を読むと、気になる箇所が目に入った。
「成果が上がっているときこそ、薄い氷の上を歩くような慎重さを持ち、安全な時こそ悩みと危険に対する意識を持つべきた。(中略)『ブラックスワン』(事前にほとんど予想できず、起こったときの衝撃が大きい事象)を大いに警戒し、『灰色のサイ』(将来大きな問題を引き起こす可能性が高いにもかかわらず、現時点で軽視されがちな潜在的リスク)は常に避けるべきだ。地方の債務リスクを統一して管理し、(リスクを)無くすようにしながら発展しよう」
「ブラックスワン」と「灰色のサイ」に言及した『経済日報』の社説は、今後の中国経済に多くの問題と困難があると断言しているように読める。これは、「中央経済工作会議」の公式見解に反対の意見を唱えているではないだろうか? 言論が厳格に統制されている中国では異例の社説だ。
李強首相は習主席の忠犬的な存在だが、責任をなすりつけられないよう「逃げ道を残している」のではないだろうか。
もう一つ見逃せない重要な動きがあった。12月13日、中国人民政治協商会議の胡春華副主席が習主席の特使に任命され、16日にマダガスカルを訪問すると中国外交部は発表した。窓際族になっていた中国共産主義青年団派(団派)を代表する人物が、再び政治の表舞台にでてくる予兆なのだろうか? 要注目だ。
習近平政権の経済危機対策の柱は「中国経済の未来は明るい」キャンペーンだ!~数字は捏造、懐疑的言論には秘密警察の取り締まり
石 平 によるストーリー • 3 時間
習近平、自信を失ったのか
12月11日、12日の両日間、中国共産党政権が年に一度の「中央経済工作会議」を開いた。毎年の年末に開かれる恒例の会議として、翌年の経済運営の方針を打ち出す重要会議として位置付けられているが、今年の場合、中国経済が崩壊最中の状況であるから、どのような「救命措置」が打ち出されるのかは当初ら大変注目された。
その中で、大きな注目を集めたのは、会議に対する習近平主席の姿勢である。会議開幕の11日、習主席は最高指導部メンバー全員を率いて出席し、恒例の「重要講話」を行なったが、12日の会議には完全に欠席したことは判明されている。
12日、習主席はベトナムへの国事訪問を始めたわけだが、新華社通信の報道によると、彼がハノイに到着したのはその日の正午頃であるという。この到着時間から逆算すれば習主席が出発したのは12日の朝であるはず、2日目の「中央経済工作会議」を完全に欠席していることが分かる。
2012年11月に習近平政権成立以来、毎年恒例の「中央経済工作会議」に習氏自身が途中から欠席するのは初めてのこと、最高指導者が中央の重要会議を途中欠席するのもやはり異例なことである。今回の場合、「ベトナム訪問出発のために会議を途中欠席」と解釈することもできようが、それなら習氏自身の一存で会議を1日早めに開くこともできるから、「ベトナム訪問」は途中欠席の必然な理由にならない。
結局、習氏は、党総書記・中央財経委員会主任として中国経済運営の司令塔でありながら、会議が来年の政策方針・経済救済措置を最終的に打ち出す場面を意図的に回避することで、自らの責任回避を図ったのであろう。そしてそれはまた、習氏自身が来年の経済運営に自信を失っていることの証拠であると見て良い。
当然、株価は下落
最高指導者はこのようないい加減な姿勢であれば、民間と経済界は当然、「中央経済工作会議」の結果に完全に失望している。それは、会議閉幕翌日の13日の株市場の反応を見れば分かる。
12日、上海総合指数は依然として3000ポイントの大台を維持していだか、13日、取引開始の時点からいきなり3000ポイントを割ってしまい、前日比34.68ポイント(1.15%)安の2968.76ポイントで取引を終える。同じ日の深圳市場でも、深圳総合指数は1.21%安となった。そして14日、15日の両日とも上海株が下がり続け、15日には2942.55ポイントの終値で今週の取引を終えた。
来年の経済運営の方針を大々的に示したはずの中央経済工作会議はこのようにして、株市場には完全に見放されたのである。
こうなったことの最大の理由は、「中央経済工作会議」が来年の経済運営の方針に関しては、空疎なスローガンの羅列や今までの常套文句を並べる以外に、内実の伴った政策措置はほとんど打ち出せなかったことにある。だからこそ習近平自身も途中欠席という異例な対応を取ったのだが、民間の反応はやはり失望の一色である。
注目の「中国経済光明論」
こうした中で、会議が打ち出した来年の経済運営の方針、あるいは「経済救助策」のうち、一つ大変注目されるものがあった。それは、「経済宣伝を強化し世論を導き、中国経済光明論(楽観論)を高らかに唱えよう」、というものである。このような「経済運営の方針」が中央会議によって打ち出されたのは前代未聞のことだから、中国国内では大変な注目を集め、一部のメディアはそれを関連ニュースのタイトルにもしている。
今まで、隠蔽や粉飾を常套手段とする「宣伝工作」というのは、中国共産党政権が慣用する「伝家の宝刀」であるが、それが「経済措置」として使われるのは初めてのこと。しかしそれは裏返しで言えば要するに、今の習近平政権が「宣伝工作」「世論工作」を展開していく以外に、中国経済を救助するための有効なる措置をもはや何も打ち出せない。それこそは中国経済が救いのない絶望的な状況に陥っていることの証拠である。
上述の前代未聞の「経済方針」に従って、中国の国内メデイアは早速、「中国経済光明論を唱えよう」との宣伝キャンーペンを開始、ネット上でも「光明論一色」の世界が出現しているが、彼らは今後おそらく、「経済宣伝=粉飾工作」を行い、深刻な経済状況を覆い隠して嘘八百の「中国経済楽観論」を唱えていくこととなろうが、経済の実態と国民の実感からあまりにもかけ離れる「経済宣伝」は経済状況の改善にどれほどつながるのかが全く疑問。
国家統計局が「数字の解釈良くする」?
こうした中で、12月13日、国家統計局は康義局長の主宰下で、「中央経済工作会議の精神を伝達・学習する会議」を開いた。その中で康局長は「全局員が思想・行動の両面において習近平総書記と党中央との高度なる一致を保たなければならない」と訓示した上で、「数字の公布と解釈を良くし、社会の予測と期待を正しく導く」ことを、統計局の今後の「工作方針」として発表した。
そしてそれはまた、国内では大変注目を集めて一部のネットニュースのタイトルにもなっているが、よく考えてみれば、本来、経済運営の職能担当部門ではなく、数字の統計を専門とする統計局が、経済救助策を打ち出した「中央経済工作会議の精神を学習する」こと自体はそもそもおかしい話であろう。その上で、局長によって示された「数字の公布と解読を良くし、社会の予測と期待を正しく導く」はさらに怪しい。
「数字の公布と解釈を良くする」というのは、要するに統計局が肝心の「数字の統計」よりも「数字の公布と解釈」に主眼を置き、それらを「良くする」ことによって、中国経済に対する「社会の予測と期待を正しく導く」としている。だが、ここでの「正しく導く」は今の中国では要するに、政権あるいは政府の望む方向へと導くとの意味であり、まさに「中央経済工作会議」が打ち出した、「経済宣伝を強化し世論を導き、中国経済光明論を称えよう」との方針に合致しているのである。
つまり国家統計局はここで、今後は中央の「経済宣伝」に呼応して、国内世論を「経済光明論」へと導くための「数字の公布と解読」を行っていくことを宣言している。それは理解するようによってはまさに「嘘の数字の偽造宣言」そのものであろう。「世論」を「中国経済光明論」へと「正しく導く」ためには、国家統計局は今後、嘘の数字でも平気で発表していくことを自ら示唆しているのである。
中国の国家統計局今まではずっと「数字偽造の常習犯」ではあるが、今回のように、遠回しの言い方でありながらも堂々と「数字捏造宣言」を出したのは初めてのこと。今後、その数字偽造はおそらく、より一層のやりたい放題となるのであろう。
「中国衰退」と言えば秘密警察が取り締まられる
そして統計局と並んで、本来、国家の経済運営とは全く無関係の国家安全部(秘密警察組織)も動いた。12月15日、国家安全部はその公式アカウントで「経済安全を守る壁を築こう」という論評を掲載。「中央経済工作会議の精神」を受けて、国家安全部としては「全力をあげて中国経済の安全を守る」ことを誓った。
その中で国家安全部は、「中国経済をおとしめるさまざまな常とう句が後を絶たない。その本質は『中国衰退』という虚偽の言説を作り上げ、中国の特色ある社会主義体制を攻撃し続けることにある」として、国家安全部としては今後、こうした論調を「国家の経済安全を危害するもの」として徹底的に取り締まることを宣言している。
つまり国家安全部はここで、「経済宣伝を強化し世論を導き、中国経済光明論を称えよう」という中央経済工作会議の方針に従って、それに反する「中国経済衰退論」を秘密警察の力で封じ込めていくことを宣しているが、今後、中国国内ではおそらく、中国の経済状況に対して否定的意見を呈する全ての言論はその取締りの対象となり、「中国経済光明論」だけは許されるのであろう。
こうしてみると、習近平政権が考えている今後の「中国経済救助策」の全容が何となく分かってくるのである。つまり、宣伝部門を総動員して「中国経済光明論」を唱えながら、統計局を動員して「光明論」を支持する嘘の数字を乱発する。その一方においては、秘密警察を動員して「光明論」に反する声を徹底的に封じ込める。これで中国経済はまさに「前途光明」であって薔薇色の一色となっていくのである。
つまり今後、中国経済の成長を背負って「支える」のはまさに習近平政権ならではの「三種の神器」、中央宣伝部、国家統計局、そして国家安全部なのであるが、このような「経済振興策」の下では、中国経済は崩壊しない方がおかしいであろう。
参考文献・参考資料
来年の中国経済は課題より機会が多い、当局が見解=新華社 (msn.com)
中国の11月歳入、前年比4.3%増 前月から伸び加速 (msn.com)
中国の郵便事業、1~11月の取扱件数は15.8%増 (msn.com)
中国海南省の貿易額、1~11月は15.5%増 (msn.com)
中国の「隠れ債務」問題が日本のバブル崩壊より危うい理由、中国格付け見通し“ネガティブ”に (msn.com)
習近平の経済政策を世界中が酷評…!米中関係が落ちた、絶望の「トウキデイデスの罠」と「捨て身の台湾有事」のヤバすぎる関係 (msn.com)
習近平政権の経済危機対策の柱は「中国経済の未来は明るい」キャンペーンだ!~数字は捏造、懐疑的言論には秘密警察の取り締まり (msn.com)
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