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政治講座ⅴ2040「兵庫県知事選後、再選後、問題にすり替えで混乱は収まらず、温故知新」

以前にブログの掲載している。こちらもご覧あれ!
政治講座ⅴ2037「兵庫県知事選挙、米国大統領選はSNSで真実拡散の効果。事実は小説より奇なり!」|tsukasa_tamura

最近、大泉洋主演 楡周平プラチナタウン』を視聴した。
 高齢化社会と地方の過疎化をテーマに、破綻寸前の故郷の町の町長に就任した元エリート商社マンの山崎鉄郎が町の財政再建を目指す姿を描いた社会派エンターテイメント作品である。
  まさに、現在、起こっている兵庫県知事の斎藤元彦氏に対しての知事解任騒動とそっくりである。既得権益者からの嫌がらせや町長解任劇などは、今回の知事解任劇は『プラチナタウン』に酷似している。「事実は小説より奇なり」である。
知事再選後に、今度は「公職選挙法違反」で再度引きずりおろそうとしている。町長に対して『プラチナタウン』に登場する既得権益者などのような抵抗勢力があったと思えるのである。
 百条委員会の結論を待たずに、悪徳知事のイメージを作り、知事の不信任決議で解任したことも、問題点のすり替えが為されていると県民が判断して、再選に繋がったと捉えることが出来るのである。
 これは、過去の西山事件(沖縄密約事件)のような事件のすり替えのようである。この事件で東京地検が出した起訴状で「(女性事務官と)ひそかに情を通じ、これを利用して」と書かれたことから、世論の関心は男女関係のスキャンダルという面に誘導し世論を転換させた。
 週刊誌を中心としたスキャンダル報道に誘導された結果、その不倫騒動が過熱して密約自体の追及は色褪せた。
そして、称賛されるべき毎日新聞はマスメデアの偏向報道により倫理的非難を浴びた。
 しかし、本質はその密約であるが、その密約が民主党政権時代の岡田外務大臣によって30年ぶりに白日の下に公表された。これが、政権交代の成果(隠蔽が暴かれた)である。
 これらの過去・現在の事件からの教訓であるが、我々国民が国の不正政治家の不正を監視しなければ、既得権益者の闇は暴けないのである。翻って報道機関は西山事件の判例のときから物事の幹という本質を追求せずに枝葉を論じるようになるほどに体たらくしたのである。
今回はそのような報道記事を紹介する。

     皇紀2684年11月24日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

報道記事紹介

斎藤知事 TV出演 メディアの疑惑報道「全てがおねだりとか、違うな」 告発文書問題は「告発したから処分したのではない」と

デイリースポーツ によるストーリー

斎藤元彦氏© (C)デイリースポーツ


 兵庫県知事選で再選を果たした斎藤元彦知事が23日、日本テレビ系「ウェークアップ」に出演。制作局の読売テレビ中谷しのぶアナウンサーのインタビュー(収録21日)に答えた様子が放送された。
 斎藤知事は県議会で不信任決議案が全会一致で可決された直後の9月21日にも同番組に生出演していた。
 「改めまして、斎藤です」と中谷アナに名刺を渡し、前回出演後に選んだ失職、出直し選挙を「ひとりからのスタートでしたから、かなり厳しい選挙戦であることは間違いないなと思ってました」と述べた。
 当初は有権者から「辞めたらいい」「どういうつもりだ」と厳しい声もあったと振り返り「厳しいご指摘も県民の皆さんの声ですから、真摯に受け止めなくてはならないと思ってやってました」と語った。
 中谷アナが、メディアの疑惑の報じ方について聞くと、「当時、自分自身のハラスメントに関しても業務でしっかりやってほしい思いでやったということとか、県産品のPRのために県の食べ物であったり、そういうものを頂くことがあった中で、全てがおねだりとかですね、そういう形で伝えられているのを見たときに自分の思いと違うなと感じるところはありました」と述べた。
 告発文書問題に対する対応について聞かれると「今回の文書問題については、私がかねてより言っているスタンスに変わりはないですね。告発をしたから処分したのではなくて、公務員として良くない行為をされたということで懲戒処分をしたというのが実情ですから」と語った。

斎藤元彦氏が再選、兵庫県知事選は歴史の転換点か… 泉房穂さんは『長篠の戦い』になぞらえ分析 「鉄砲伝来から30年で」


泉房穂さん

 前明石市長で弁護士の泉房穂さんが23日、X(旧ツイッター)を更新。戦国時代の「長篠の戦い」を引き合いにネットを駆使した昨今の選挙戦が歴史の転換点だとの考えを披露した。

 泉さんは、自身も出演したテレビの討論番組の動画を引用。衆院選のほか、斎藤元彦さんが再選を果たした兵庫県知事選、石丸伸二さんが大健闘した東京都知事選を例に、ショート動画と選挙運動のあり方について激論を交わした。

 泉さんは「2024年は、1575年の『長篠の戦い』と同様に、戦い方の転換点として歴史に位置づけられることになると思う」と投稿。当時最強とされる騎馬隊を誇った武田軍を、火縄銃を有効活用して織田・徳川連合軍が破った長篠の戦いを例に、歴史の分岐点に当たると分析した。

 1543年の「鉄砲伝来から30年で、鉄砲が刀ややりに置き換わったように、Windows95から30年で、ネットが新聞やテレビを凌駕(りょうが)するに至った」と時の変遷との”共通項”を指摘。「時代は戻らない」との言葉で文章を締めた。

 フォロワーからは「ネット社会を否定する事はできませんが、鉄砲も自動車もロケットも新しい技術は使い方を誤ると、大きなリスクと犠牲が伴うことも事実」「『PCを立ち上げてネットでニュースを見るより新聞を左右に開く方が早い、新聞が無くなるなんて心配した人も居たけど意外と何も変わらないね』などと話しましたがPCやインターネットの操作性、快適性が30年でここまで上がった…転換点ですね」などのコメントが寄せられた。

兵庫県知事選出馬断念の宮崎謙介氏「闇が深すぎるなと思った」「戦えない、1人では」

東スポWEB によるストーリー


元衆院議員の宮崎謙介氏が23日、ABCテレビ「教えて!ニュースライブ 正義のミカタ」に出演し、斎藤元彦氏が再選した兵庫県知事選についてコメントした。
宮崎氏は兵庫県知事選への出馬を検討したが、自身のユーチューブチャンネルで一身上の都合により出馬を断念することを報告し話題となった。
進行役の東野幸治から「本当に今回、出馬を考えていたんですか」と質問されると宮崎氏は「本気で考えていました」と回答。「最初に職員の方が亡くなっているという所から、なんだか意味深いなと思った。調べていくうちに、これはちょっとただ事じゃないので。自分の中から湧き上がるものが出てきて、これだ!と思った」と出馬を決意
しかし最終的に出馬を断念した理由について「さらにもっと深掘りで調べていったら、闇が深すぎるなと思った万が一、当選した後に戦えないなと思って、1人ではそれぐらい大変な問題が色々ありすぎる。闇深い」と説明した。
宮崎氏は「そのエネルギーは次に使おうと思う」と話すと東野から「期待しております」とエールを送られていた。

宮崎謙介氏 斎藤元彦知事の公選法疑い?に私見 真偽不明も「PR会社が入って作られ…しらけません?」

スポーツニッポン新聞社 の意見

宮崎謙介氏© (C) スポーツニッポン新聞社

 元衆院議員の宮崎謙介氏(43)が23日、ABCテレビ「教えて!ニュースライブ 正義のミカタ」(土曜前9・30)に出演し、兵庫県の斎藤元彦知事に公選法違反の疑いが指摘されていることついて自身の見解を示した。

 斎藤氏を支援したPR会社の経営者がネット上で、同氏の選挙戦でSNS戦略を提案し、「広報全般を任された」などとつづった。公選法では選挙活動で報酬を支払える対象は事務員や車上運動員、手話通訳者らに限定されており、兵庫県選挙管理委員会は「PR会社の記事は把握している。一般論として、報酬が支払われていたら公選法違反に当たる場合がある」と認識を示した。
斎藤氏は22日、報道陣の取材に「法に抵触することはしていない」と述べた
同知事の弁護士は、PR会社に依頼したのはポスターの作成だけとしている。

 斎藤氏は県議会から不信任を決議され、失職した後、駅に1人で立ち、道行く人に頭を下げている様子が報道された。選挙戦を戦っていく中で、政策の訴えや、SNSを駆使した戦略も当たり、有権者の関心を集めていった。

 宮崎氏は「まず最初に斎藤さんが今回、注目され始めたのって、1人で立ったじゃないですか?アンダードッグ効果(判官びいき)みたいなもので、かわいそうな人、いじめちゃいけないと、そこから集まっていったわけじゃないですか?」と、斎藤氏のこれまでを説明。真偽はいまだはっきりしていないが、「それが、PR会社が入って作られたものだったということを言っているようなものじゃないですか?しらけません?」と続けた。

 その上で、「だから、斎藤さんの意思ではないんじゃないかと信じたいですけど」と希望的観測も口にしていた。

斎藤氏再選が示す「ポピュリズム到来」日本にも 「大衆迎合」と片付けられない潮流、ネットと結びつく

薬師寺 克行 の意見

連日連夜、テレビや新聞で「パワハラ知事」とか「おねだり知事」などと批判され、県議会での不信任案の決議を受けて失職した兵庫県の斎藤元彦知事が、11月17日の知事選で再選されたのには驚かされた。

一昔前であれば、主要なマスコミにここまで批判されれば政治生命は確実に終わっていただろう。斎藤氏はなぜ生き残ることができたのか。

選挙結果などを分析すると、有権者の投票行動の大きな変化と、その背景にあるネット空間の影響力の増大が見えてくる。

1990年代はテレビで無党派層にアピール

国政選挙や地方自治体の首長選挙は、かつては農協や建設業界などの業界団体労働組合などの中間団体と呼ばれる組織が大きな力を持っていた。それぞれが組織やメンバーの利益を実現するために支持する政党や候補者を決め、組織に属する有権者の多くがそれに従って投票していた。

支持と見返りがリンクした「利益誘導政治」である。組織票が決定的な要素だったため、選挙結果を予想することは比較的容易だった。

1990年代に入ると、中間団体の組織力が低下し選挙のたびに投票行動を変える無党派層が増えた。政治家は組織票があてにならなくなったため、テレビなどのメディアに積極的に登場し、目立つことで支持を広げようとした。いわゆる「テレポリティクス」の時代である。

2000年代以降になると、インターネットの普及とともにテレビの視聴率は低下し、「テレポリティクス」が影を潜めた。それとともに政治と有権者の距離が広がり投票率が次第に下がっていった。

総務省の情報通信政策研究所が実施したメディアの利用時間に関する世論調査の結果を見ると、主要メディアの1日の平均利用時間(平日)は2020年に初めてネットがテレビを逆転した。以後、その差は開き続けている。

2023年の場合、テレビの利用時間が135分なのに対し、ネットは194分となった。新聞はわずか5.2分に過ぎない。

年代別にみるとさらに驚くような数字がでている。

20代から50代まではネットの利用時間がテレビを上回っているが、特に10代、20代のネットの利用時間は4時間を大きく超えている。40代、50代も約3時間となっている。

これに対しテレビの利用時間は10代、20代が1時間を割っている。テレビの利用時間がネットを上回っているのは60代以上だけだ。そして新聞の利用時間は若い世代はほとんどゼロに等しい。

つまり若い世代を中心に多くの国民が、「新聞・テレビ」という伝統メディアから情報を得ることはほとんどなくなってしまったのだ。

ネット空間を飛び交ったSNSや動画

また兵庫県知事選でNHKが実施した出口調査の結果と、上記のネットとテレビの利用時間の年代別比較の結果を見比べると、面白いことがわかる。

出口調査では、若い世代を中心に斎藤元彦氏への投票が多く、2位となった稲村和美氏が斎藤氏を上回ったのは60代以上だけだった。一方、利用時間調査の結果は、若い世代ほどネット利用時間が多く、テレビがネットを上回っているのは60代以上だけだった。

つまりネットの利用時間と斎藤氏の支持は明らかに相関関係にある。

同じような現象が7月の東京都知事選挙での石丸伸二氏の得票や、10月の総選挙での国民民主党の躍進でも起きた。

3つの選挙に共通しているのは、シンプルなメッセージの動画やSNSが政党や候補者の選挙事務所などだけでなく、支持者をはじめ多くのユーザーなどによって頻繁に発信されることだ。中には明確な誤りや真偽不明のものもあるが、そんなことはお構いなしにネット空間に広がっていく。コメントを含め拡散が加速度的に進む。

特にネット利用時間の長い若い世代を中心に広がることはいうまでもない。これまで選挙に無関心だった若い世代などの層の好奇心に火がつき、遊説を見に行くなどの行動につながっていった。その結果、投票率もあがった。今までにない選挙運動の形態である。

こうした現象を起こしたのは、ネット空間が持つ独特の機能だ。

SNSやYouTubeなどのユーザーは、すべての政党や候補者の情報を網羅的に求めるわけではない。たまたま目にした情報が面白いと思って何度かアクセスする。するとアルゴリズムが働き、以後、その候補者に関する肯定的な情報が優先的にかつ頻繁に表示されるようになる。

似たような傾向の情報に繰り返し接することで、ユーザーはその候補者を信じるようになってしまう。これがネット空間でよく言われる「フィルターバブル」と「エコーチェンバー」という機能である。

ユーザーは閉ざされたネット空間で特定の政党や候補者を支持する情報に接する一方で、批判的な情報、あるいはほかの候補者に関する情報はあまり表示されない。その結果、それが当たり前だと思い込んでいく。

アメリカ大統領選挙でトランプ氏を妄信的に支持する集団が生まれたのも、こうした機能の結果である。

プラットフォーム商法が生んだ政治的現象

Googleなどのプラットフォームがユーザーの気に入った情報を優先的に表示することを重視するのは、政治的目的からではないユーザーの関心に沿った情報を選択的に表示し利用時間をできるだけ長くすることで、広告収入を増やすためである。

ユーザーの関心を刺激して利用時間を稼ぐ、これが「アテンションエコノミー」と呼ばれるプラットフォームの商法である。この「アテンションエコノミー」商法が、兵庫県知事選などの選挙で予期せぬ政治的現象を生み出したのだ。

こうした選挙には、ほかにも共通点がある。ネット空間で支持が広がる政党や候補者は、現在の体制=エスタブリッシュメントに挑戦する正義の味方というイメージが作られている点だ。石丸氏や斎藤氏が、いつの間にか自民党や県庁職員らと戦う正義の味方となっていくのである。

もちろんネット空間では、かつてのような利益誘導は武器にならない。訴える政策の全体像は不明確だが、何か壊してくれる、新しいことをしてくれそうだという、現状破壊願望が生まれて支持につながっていくのである。

またネットの利用時間が極端に長い若い世代がひきこまれていくのも共通している。この階層はこれまで政治にも選挙にもあまり関心はなかったが、ネットがきっかけで行動するのである。

こうした現象はいわゆるポピュリズムの概念にあてはまるだろう。

ポピュリズムは一般的には、既存の政治権力やエリート層を批判し、現状の変革を人々に訴えて改革を目指す運動とされている。人気を得ることを優先する「大衆迎合主義」ともいわれるが、それほど単純で軽薄な概念ではない。

欧米諸国ではすでに大きな政治的潮流とみなされているが、日本ではこれまでは目立った動きはないとされていた。

今年、日本で行われた上記の3つの選挙は、当事者がどこまで意識しているかは別にして、ポピュリズム的運動がネット空間と結びついた初めてのケースといえるだろう。その結果、これまで政治的に軽視されていた若者はじめヘビーなネットユーザーらが大量に動員され、選挙結果を大きく動かしたのだ。

民主主義の「多様な意見や議論」はどこへ

こうした変化を手放しで歓迎することはできない。商業主義に徹するプラットフォームの作ったシステムの中で国民が踊らされていることは間違いない。

しかも、流される情報はフェイクニュースと呼ばれるような信頼性の低いものも少なくないし、アルゴリズムによって偏ったものになっている。多様な意見や議論を前提とする民主主義の観点から言えば、極めて不健全で不健康なものだ。

それはネットとポピュリズムの融合した選挙の典型例でもあるアメリカ大統領選挙を見れば明らかである。

しかし、少なくとも当分の間、この流れを止めることは難しいだろう。3つの選挙を通じて、ネット空間をうまく利用すれば成果を上げることが実証された。

今後、まねごとをする政党や候補者が増えることは間違いないだろう。特に来年の参院選は、各党、各候補がこぞってSNSやYouTubeなどを利用した選挙戦を展開するだろう。それが選挙そのもの、さらには民主主義を思わぬ方向にゆがめてしまう可能性は高い。

斎藤元彦知事「おねだり疑惑報道」など「自分の思いとはちょっと違うと感じるところあった」

日刊スポーツ新聞社 によるストーリー

11月17日投開票の出直し兵庫県知事選で再選された斎藤元彦知事(47)は、23日に放送された日本テレビ系「ウェークアップ」(土曜午前8時)で、同番組の中谷しのぶキャスターのインタビューに応じた。県議会による不信任決議で失職するきっかけになった、パワハラ疑惑やおねだり疑惑に関する報道について「自分の思いと違うと感じるところはあった」と振り返った。

斎藤氏は「当時、自分自身、ハラスメントに関しても、業務でしっかりやってほしいという思いでやったということや、県産品のPRのために食べ物だったりとかをいただくことがあった」とした上で「すべてが『おねだり』という形で伝えられているというところをみた時に、ちょっと自分の思いと違うなあと感じるところはあった」と振り返った。

パワハラ疑惑をめぐっては、同疑惑などを告発し懲戒処分を受けた元県民局長の男性が死亡した。県側は誹謗(ひぼう)中傷として、元局長を3カ月の懲戒処分としたが、中谷キャスターが「ことの発端ですよね。内部文書が出てきた時に、調査をせずに処分をした。そこについて、あらためて道義的責任はお考えは変わりはないでしょうか」と指摘したのに対し、斎藤氏は「今回の文書問題については、かねて言っているスタンスに変わりはない」と、あらためて述べた。

告発をしたから(元県民局長)処分をしたのではなく、公務員としてよくないという行為をされたということで懲戒処分としたのが実情だ」と訴えた。

インタビューは事前に収録された。

斎藤知事、業者に報酬「法に抵触することしていない」 SNSで疑惑広がり対応


17日投開票の兵庫県知事選で再選した斎藤元彦知事は22日、選挙中の広報活動に関わった企業に報酬を支払ったとして、公選法違反疑惑を指摘する声が交流サイト(SNS)などで相次いだことに対し、報道陣の取材に「法に抵触することはしていない」と述べた。斎藤氏の代理人弁護士も陣営が対価を支払ったことは認めたが、「依頼したのはポスター制作など法で認められたもの」と主張した。
一連の疑惑は企業側の代表が20日、SNSに「(知事選で斎藤氏の)広報全般を任せていただいた」「私が監修者として、選挙戦略立案などを責任を持って行い運用していた」などと投稿したことで浮上。
総務省のホームページの記載などに基づき、「業者が主体的・裁量的に選挙運動の企画立案を行う場合」は、業者への報酬が公選法の買収罪となる恐れが高いとして、SNSで情報が拡散していた。
斎藤氏はこの日、報道陣から企業との関わりを問われ、「一定のサポートをいただいた」と説明。代理人弁護士は企業にポスター代などを支払ったとした上で「広報戦略全般を任せていたとかそういう話ではない」と語った。
一方、企業側は取材に「今は対応できない」としている。

兵庫県議が告発 県最高級幹部OBが斎藤知事の「失墜を画策」とSNS投稿 2千超コメ殺到の騒ぎ 怪文書の画像も

デイリースポーツ によるストーリー

斎藤元彦氏© (C)デイリースポーツ

 兵庫県議の増山誠議員(維新)が21日付のX投稿で、知事選で再選を果たした斎藤元彦知事に対し、「県職員OBが早速、斎藤知事の失墜を画策しています」と記し、文書の写真をアップ。異例の2000件超のコメントが殺到し、騒ぎとなっている

 増山議員は斎藤知事の疑惑告発文書問題を審議する県議会の百条委員会のメンバー

 文書について県の「元最高級幹部」が関わっていると記している。「文中には『今後とも彼(斎藤知事)の失墜を目指してさて何をやったらいいかを模索したいと考えようと思っているところです。』という内容で締めくくられています」と記している。

 この投稿には、驚きや、詳細の公表を求めるなど、約2100件のコメントが投稿されている。

斎藤知事 PR会社が“SNS戦略コラム”公開→公選法違反指摘する声が続出…選挙管理委員会が示した「答え」

女性自身 によるストーリー

斎藤知事 PR会社が“SNS戦略コラム”公開→公選法違反指摘する声が続出…選挙管理委員会が示した「答え」© 女性自身


11月17日投開票の兵庫県知事選挙で再選を果たした斎藤元彦知事(47)。2期目がスタートしたばかりだが、斎藤氏の選挙に関わったというPR会社社長のコラムが波紋を呼んでいる。
110万票以上を獲得して勝利した斎藤氏。
SNSでの盛り上がりが勝利の後押しになったと言われており、読売新聞の出口調査によると、投票の際に最も参考にした情報として、「SNSや動画投稿サイト」をあげた人の9割弱が斎藤氏を支持したという。
そんななか、兵庫県西宮市にあるPR会社「株式会社merchu(メルチュ)」の代表取締役の折田楓氏が11月20日にブログサイトnoteで《兵庫県知事選挙における戦略的広報:「#さいとう元知事がんばれ」を「#さいとう元彦知事がんばれ」に》というコラムを投稿。SNS戦略の裏側を明かした。
■波紋を呼んだコラムの内容
折田氏はまず、《きっかけ》という見出しで、《とある日、株式会社merchuのオフィスに現れたのは、斎藤元彦さん。それが全ての始まりでした》と綴り、《兵庫県庁での複数の会議に広報PRの有識者として出席しているため、元々斎藤さんとは面識がありましたが、まさか本当に弊社オフィスにお越しくださるとは思っていなかったので、とても嬉しかったです》と記した。これらの記述は22日までに削除されている。
また、同社のオフィスで打ち合わせする斎藤氏と折田氏らの写真を掲載。写真の説明には当初《merchuオフィスで #さいとう元知事がんばれ 大作戦を提案中》と書かれていた。(22日夕方時点では《オフィスで「#さいとう元知事がんばれ」を説明中》に変更されている)
さらに《その時作成した資料を一部公開します》として《兵庫県知事選挙に向けた広報戦略のご提案 #さいとう元知事がんばれ 》と書かれた表紙と、提案資料とキャプションのつけられたスライドを公開。後に削除されたスライドには《SNS運用フェーズ》という見出しがあり、「《10月1日~13日》を《フェーズ1:種まき》《立ち上げ・運用体制の整備》」、「《10月14日~31日》を《フェーズ2:育成》《コンテンツ強化(質)》」、「《11月1日~17日》を《フェーズ3:収穫》《コンテンツ強化(量)》と、3段階にわけた表のようなものが示されていた。
資料の下には《ご本人は私の提案を真剣に聞いてくださり、広報全般を任せていただくことになりました》と記されている。ただし、この文言についても現在は削除されている。
また、注目を浴びたSNS運用については、《私が監修者として、運用戦略立案、アカウントの立ち上げ、プロフィール作成、コンテンツ企画、文章フォーマット設計、情報選定、校正・推敲フローの確立、ファクトチェック体制の強化、プライバシーへの配慮などを責任を持って行い、信頼できる少数精鋭のチームで協力しながら運用していました》と記していた。
そのほかにも、コピー考案やメインビジュアル作成などにおけるこだわったポイントなどを紹介。SNSの盛り上がりが話題になったことについて、《そのような仕事を、東京の大手代理店ではなく、兵庫県にある会社が手掛けたということもアピールしておきたいです》と感慨も露わにしていた。
■Xでは22日、《公職選挙法違反》《選挙違反》などの関連ワードがトレンド入り
しかし、このnoteに記載された内容について、Xを中心に波紋が広がることとなる。
総務省のWEBサイトには《参考 選挙運動用ウェブサイトや選挙運動用電子メールの企画立案を行う業者への報酬の支払い》として、《一般論としては、業者が主体的・裁量的に選挙運動の企画立案を行う場合には、当該業者は選挙運動の主体であると解されることから、当該業者への報酬の支払いは買収となるおそれが高いと考えられます》との記述がある。
投稿したコラムの内容では、斎藤氏の依頼で、同社が主体的に企画を“提案”していたと読み取れるため、報酬をもらっていた場合、“買収”になるのではないかとの指摘が寄せられたのだ。Xでは22日、《公職選挙法違反》《選挙違反》などの関連ワードがトレンド入りする自体となった。
■選挙管理委員会に問い合わせると…
本件について、兵庫県の選挙管理委員会に支払いの有無について問い合わせたところ、Xで話題になっていることは把握している様子で、次のように説明した。
今回の知事選では12月2日までに選挙にかかった費用をまとめた“収支報告書”の第1回目を提出することが決まっていますが、期限がまだ先で斎藤知事も未提出です。中身を見ていないので、支払いに対してはまだ何も把握しておらず、わかりません
また、折田氏のプロフィールには、’21年から兵庫県地方創生戦略委員を、’22年から兵庫県eスポーツ検討会委員に任命されていると記されているほか、WEBサイトの「クライアント一覧」に兵庫県 企画部のロゴが掲載されていた。(現在は非公開)
公職選挙法第199条第1項には《衆議院議員及び参議院議員の選挙に関しては国と、地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に関しては当該地方公共団体と、請負その他特別の利益を伴う契約の当事者である者は、当該選挙に関し、寄附をしてはならない》と記されている。
そのため、無償で業務を請け負っていた場合でも公職選挙法違反になるのではとの指摘もXで上がっていた。選挙管理委員会は、一般論として次のように回答した。
「“禁止された寄附”の該当者になるとすれば公職選挙法違反になるかと思います。無償の場合、公職選挙法199条1項の『請負その他特別の利益を伴う契約の当事者』に、今回の方が該当するのであれば、“禁止された寄附”に当たる可能性があると思います。ただ、現時点でのこの話だけで『じゃあこれはダメですね』という判断はできません
各メディアによると11月22日、斎藤氏の代理人弁護士は「SNS戦略の企画立案などについて依頼をしたというのは事実ではありませんあくまでポスター制作等法で認められたものであり相当な対価をお支払いしております公職選挙法に抵触する事実はございません」とコメントしたという。
折田氏と斎藤氏の認識にはズレがあるように見受けられるがーー。

高橋洋一氏 斎藤元彦知事の公選法違反?疑惑で判断材料を指摘「最後、金額の問題になると思いますよ」

スポーツニッポン新聞社 の意見

斎藤元彦氏© (C) スポーツニッポン新聞社

 元内閣官房参与で経済学者、数量政策学者、嘉悦大教授の高橋洋一氏(69)が23日、ABCテレビ「教えて!ニュースライブ 正義のミカタ」(土曜前9・30)に出演し、兵庫県の斎藤元彦知事に浮上した公選法違反の疑いについて、自身の見解を語った。

 斎藤氏を支援したPR会社の経営者がネット上で、同氏の選挙戦でSNS戦略を提案し、「広報全般を任された」などとつづった。公選法では選挙活動で報酬を支払える対象は事務員や車上運動員、手話通訳者らに限定されており、兵庫県選挙管理委員会は「PR会社の記事は把握している。一般論として、報酬が支払われていたら公選法違反に当たる場合がある」と認識を示した。斎藤氏は22日、報道陣の取材に「法に抵触することはしていない」と述べた。同知事の弁護士は、PR会社に依頼したのはポスターの作成だけとしている。

 高橋氏は「要するに最後、金額の問題になると思いますよ」とし、斎藤氏陣営からPR会社に支払われた金額次第だと指摘。「ポスターなら何百万の話だし、全部企画をやっていたら何千万の話になる。金額を見れば分かる」と、判断材料の目安を語った。

 また高橋氏は「あえて言うと、斎藤さんって総務省の役人(出身)でしょう?公選法が複雑なのを知っていますよ。知っていたのに、あのしゃべっている人、もの凄い素人ですよね。もの凄い素人に委ねるって…」と、自身の感想も盛り込みつつ、私見を語った。

斎藤元彦兵庫県知事「運動買収」か 公選法違反ならまた失職&また選挙も SNS戦略への有償依頼疑惑拡大

スポーツニッポン新聞社 の意見


PR会社にSNS戦略を有償で依頼した疑惑が浮上している斎藤元彦兵庫県知事© (C) スポーツニッポン新聞社

 斎藤元彦兵庫県知事が再選された選挙戦中、県内のPR会社に報酬を支払ってSNS戦略を依頼したとされる疑惑が拡大し続けている。公選法違反の「運動買収」に当たれば斎藤氏は失職次点が繰り上がるのではなく、18億円かかると批判された県知事選が再び行われることになる。斎藤氏は23日、日本テレビ系「ウェークアップ」に録画出演。疑惑への言及はなかった。

 疑惑はPR会社の女性社長が20日、SNS上に「斎藤陣営で広報全般を任せていただいていた立場として(選挙戦の)まとめを残しておきたい」と始まる文章、写真、図解を投稿したことから炎上。「報酬を支払ったなら公選法違反ではないか」の指摘が相次いだ。

 社長は22日までに投稿の一部を削除するなど改訂。「オフィスに現れたのは斎藤元彦さん。それが全ての始まりでした」「私の提案を真剣に聞いてくださり、広報全般を任せていただくことになりました」の文章と、投開票日の17日まで3段階に分けたSNS運用計画の図解を削除した。斎藤氏の弁護士はSNS戦略の依頼は否定し「依頼は法で認められたポスター製作などで相当な対価は支払っている」としているが、SNSは「削除が疑惑をさらに深めた」との声がやまない状況だ。

 はたして斎藤氏に捜査の手が伸びることはあるのか。元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士は「県警か地検が動くか、誰かが告発するか。このまま何もないということはないのではないか」と起訴の可能性があることを示唆。ポスター製作代としてお金を支払ったのは認めている。授受された額がポスター製作の範疇(はんちゅう)を超えたものかが問題。金額が大きければ起訴され裁判となり、禁錮刑も考えられる」と指摘した。

 買収は公選法違反の中でも悪質とされ「起訴されれば、少なくとも罰金刑にはなるのではないか。その場合、公民権停止となり、また県知事選が行われる」という。斎藤氏側が選対本部の誰かがやったと主張することも考えられるが「責任ある立場の人がお金を払っていれば、連座制で斎藤氏にも責任が及び、失職となる」という。

 斎藤氏が独りぼっちで始めたとする選挙戦。大逆転を呼んだSNSの熱狂は金で買ったものだったのか。斎藤氏再選で決着したと思われた兵庫県知事選はまだ波乱がありそうだ。

 ▼公職選挙法 

 政治家が有権者に金品を与えて投票や、選挙運動を依頼することを買収行為として禁止している。
 
選挙の有無に関係なく、食事などの提供も制限されている。買収行為はした者もされた者も3年以下の懲役か禁錮、または50万円以下の罰金に処される
 選挙の立候補者が買収した場合は4年以下の懲役か禁錮、または100万円以下の罰金となり、刑が確定すると当選無効に。また実際に支払っていなくても、約束しただけで違反となる。

 ≪“訴訟合戦”稲村氏も奥谷氏も≫兵庫県知事選を巡っては“訴訟合戦”になっている。次点だった元尼崎市長の稲村和美氏の後援会が、選挙期間中に公式X(旧ツイッター)アカウントが2回凍結されたことについて、何者かがX管理者に一斉にうその通報を行ったとして、容疑者不詳で偽計業務妨害容疑などの告訴・告発状を兵庫県警に提出した。
 また、斎藤知事の問題についての百条委員会委員長の奥谷謙一氏は、政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏にネットで「告発文書を作成した県元幹部が死亡した原因を隠した」などと虚偽の情報を投稿されたとして、名誉毀損(きそん)容疑の告訴状を県警に提出している。
立花氏も奥谷氏を提訴する意向を示している

百条委が兵庫県幹部の尋問映像公開、片山前副知事の「告発者の私的情報発言」は音声を消して対応

読売新聞 によるストーリー

SNSでは「都合の悪い部分を隠蔽」と批判

 兵庫県の斎藤元彦知事の内部告発問題を調査する県議会の百条委員会22日、10月24、25両日に非公開で行われた県幹部らへの証人尋問の録画映像ユーチューブで公開した。知事選への影響を避けるため、選挙後に公開する予定で録画されていた

 2日間の証人尋問には、計11人が出頭。このうち、片山安孝前副知事や県幹部ら計6人分、計7時間以上の映像が公開された。

兵庫県の斎藤元彦知事© 読売新聞

 10月25日の証人尋問では、告発者の男性職員(7月に死亡)が公用パソコンに保管していたとされる私的情報について、片山氏が発言を続けようとし、奥谷謙一委員長が制して一時中断する場面があった録画映像では、片山氏のこの時の証言は音声が一部消されていた

 百条委は調査と直接関係のない内容は扱わないことを決めている。証人尋問の再開後、奥谷氏は「片山氏から不規則発言があり、尋問を行うことが不可能と判断した」と発言。ほかの委員から異議は出なかった。

 知事選の期間中、この消された部分とされる音声が流出。立候補した政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏は、告発者は私的情報が漏れることを恐れて自殺した可能性が高いのに、百条委がそれを隠したと主張した。SNS上では「(百条委は)都合の悪い部分を隠している」などの投稿が相次いだ。告発者は自殺したとみられるが、その理由はわかっていない。

 奥谷氏は今月18日の記者会見で、「(片山氏が)調査に関係ないプライバシー情報を話し始めたので、プライバシーに最大限配慮する県の情報公開条例に基づき、制止した」と説明。「隠蔽(いんぺい)しているというのは、明らかなデマだ」と述べた。

 また、斎藤氏の側近だった小橋浩一前理事は10月25日の証人尋問で、斎藤氏が告発内容を「うそ八百」などと指摘した3月27日の記者会見の直後に、第三者委員会による調査を進言したと証言。「(斎藤氏は)渋い顔をされ、『どうかな』と。受け入れられなかった」と述べた。

 斎藤氏は9月の証人尋問で、小橋氏の進言について「記憶にない」と話していた。

 片山氏や県幹部の証人尋問は通常、公開で行われるが、百条委は2日間の証人尋問について、知事選に影響が出ないよう非公開で実施し、選挙後に録画映像を公開する方針をあらかじめ決めていた。

酷似事例の西山事件(沖縄密約事件)の解説

西山事件(にしやまじけん)は、1971年に外務省の女性事務官が男性の新聞記者にそそのかされ機密を漏洩した事件。事務官は国家公務員法の機密漏洩の罪で有罪が確定し、新聞記者はその教唆の罪で最高裁判所で有罪判決が確定した。しかし本質は「沖縄返還密約」であり、矮小化され、男女のスキャンダルとして偏向報道されるようになる。これは当時の政権からの圧力と思われる。

 1971年、第3次佐藤内閣リチャード・ニクソンアメリカ合衆国大統領との沖縄返還協定に際し、公式発表では地権者に対する土地原状回復費400万米ドルをアメリカ合衆国連邦政府が支払うとしていたが、実際には日本国政府が肩代わりしてアメリカ合衆国に支払うという密約をしていた
 この外交交渉を取材していた毎日新聞社政治部記者西山太吉は、外務省の女性事務官から複数の秘密電文を入手し、「アメリカ政府が払ったように見せかけて、実は日本政府が肩代わりする」などとする秘密電文があることを把握。
 取材源の保護のため新聞では明確な形で密約を報じなかったが、日本社会党議員に情報を提供した。
 1972年に議員が国会で問題を追及し、佐藤内閣の責任が問われる事態となった。

 日本国政府は密約を否定
東京地検特捜部は同年、情報源の事務官を国家公務員法(機密漏洩の罪)西山を国家公務員法(教唆の罪)で逮捕した。

記者が取材活動によって逮捕された事態に対し、報道の自由と知る権利の観点から、「国家機密とは何か」「国家公務員法を記者に適用することの正当性」「取材活動の限界」などが国会や言論界などを通じて大論争となった。
 一方で東京地検が出した起訴状で「(女性事務官と)ひそかに情を通じ、これを利用して」と書かれたことから、世論の関心は男女関係のスキャンダルという面に転換
 週刊誌を中心としたスキャンダル報道が過熱して密約自体の追及は色褪せた。そして、悲しいことに毎日新聞は倫理的非難を浴びたが、本質は、権力の濫用・情報隠蔽そして国民に知らせずに密約で国家の税金を国会承認を得ずに不正流用したことである。
 起訴理由が「国家機密の漏洩行為」であるため、審理は機密資料の入手方法に終始し、密約の真相究明は東京地検側からは行われなかった。
 
女性事務官は一審の東京地裁での有罪判決が確定。
 西山は一審では無罪となったが、二審の東京高裁で逆転有罪判決となり、最高裁で有罪が確定した。
 これらの判決はメディアの取材に関する重要判例となっている。メディア側では、女性事務官取材で得た情報を自社の報道媒体で報道する前に、国会議員に当該情報を提供し国会における政府追及材料とさせたこと情報源の秘匿が不完全だったため、情報提供者の逮捕を招いたこともジャーナリズム報道倫理上の問題として議論された。

政府が否定した密約の存在については、2000年代にアメリカ合衆国で存在を裏付ける公文書が相次いで見つかり、当時の日米交渉の日本側責任者だった外務省元アメリカ局長の吉野文六も密約があったことを証言している

また、このいわゆる「密約」についてはのちの2009年から2010年に民主党の鳩山由紀夫総理と岡田克也外務大臣の指示で調査が行われ、結果が公表された

第3次佐藤内閣の1971年、日米間で結ばれた沖縄返還協定に際し、「アメリカが地権者に支払う土地現状復旧費用400万米ドル(時価で約12億円)を日本国政府がアメリカ合衆国連邦政府に秘密裏に支払う」密約が存在するとの情報を、男女関係のあった女性事務官に依頼して外務省秘密電文の複写を受け取り、これを得た。

西山が入手した電信文は3通で、愛知揆一外相とマイヤー駐日アメリカ大使との大詰めの返還交渉の概要内容、外務省井川条約局長とスナイダー在日アメリカ公使との会談における400万ドル支払いについての米国側からの提案内容などであった。

後年、これは蔵相福田赳夫と米財務長官デヴィッド・M・ケネディとの会談内容であったと福田自身が自著に記している。

表向きの沖縄返還交渉は、外相愛知揆一と米国務長官ウィリアム・ピアース・ロジャーズ(英語版)が行ったが、細かい金銭のやりとりは、大蔵省・財務省マターとなっており、福田とケネディが交渉に当たった。人目を避けるため、福田蔵相と大蔵省財務官およびケネディ財務長官とボルガー財務次官の四人はバージニア州のフェアフィールドパークにある密談のための施設で交渉した。その結果、日本は米国の施設引き渡し費用、および終戦直後の対日経済援助への謝意として、3000万ドルを支払った。西山が知るところとなった400万ドルはその一部であった

1972年、日本社会党の横路孝弘と楢崎弥之助は西山が提供した外務省極秘電文のコピーを手に国会で追及した
 この事実は大きな反響を呼び、世論は日本政府を強く批判した。政府は外務省極秘電文コピーが本物であることを認めた上で密約を否定し、一方で情報源を内密に突き止めた。西山が機密文書をコピーする際に取材源を秘匿しなかったこと、さらにこれを提供された横路が電文のコピーをそのまま政府へ渡したため、決裁欄の印影から漏洩元が女性事務官であることはすぐに露呈した
首相佐藤榮作は西山と女性事務官の不倫関係を掴むと、「ガーンと一発やってやるか」(3月29日)と一転して強気に出た。西山と女性事務官は外務省の機密文書を漏らしたとして、4月4日に国家公務員法(守秘義務)違反の疑いで逮捕された。
 西山は1971年6月18日付の毎日新聞紙面上においてに沖縄返還において土地現状復旧費用の密約をほのめかす署名記事をしているが、外務省極秘電文や具体的な密約の中身には言及していないために機密文書そのものや具体的な密約の中身をスクープしたものではなく、外務省極秘電文や具体的な密約の中身の存在が明らかになったのは毎日新聞として報じる前に政治家に情報提供したことによるものである。

毎日新聞は、この時点で両者の関係を把握していたとされる。司法担当記者の田中浩は「検察が西山太吉記者と女性事務官との関係を切りこんでくるのは目に見えていた。低俗な倫理観で揺さぶられてはたまったものではない」として、起訴までは事実報道に徹して裁判段階で反撃に転じる方針を主張した。しかし、西山の逮捕を受けた社会部会は「西山記者の逮捕は言論の自由に対する国家権力の不当な介入だ。断固として反権力キャンペーンを展開すべきだ」とする意見が大勢を占め、慎重論は押し切られた。
毎日新聞は西山逮捕後から大規模な「知る権利キャンペーン」を展開した。
 他紙も当初は、西山を逮捕した日本政府を言論弾圧として非難して西山を擁護した。佐藤は「そういうこと(言論の自由)でくるならオレは戦うよ」「料理屋で女性と会っているというが、都合悪くないかね」(4月6日)と不倫関係を匂わせてはねつけ、4月8日に参議院予算委員会で「国家の秘密はあるのであり、機密保護法制定はぜひ必要だ。この事件の関連でいうのではないが、かねての持論である」と主張した。この頃になると各紙関係者間で両者の関係が噂伝され、当時朝日新聞社会部記者の岩垂弘は、毎日を応援する記事を書いたがデスクから「あんまり拳を高く振りかざすなよ」と釘を刺された。
 その間に『週刊新潮』が不倫関係をスクープした。4月15日に起訴された容疑者両名の起訴状で東京地検特捜部検事佐藤道夫が、「ひそかに情を通じ、これを利用して」と2人の男女関係を暴露する文言を記して状況が一変した。
 起訴状提出の当日、毎日新聞は夕刊に「本社見解とおわび」を掲載して「両者の関係をもって、知る権利の基本であるニュース取材に制限を加えたり新聞の自由を束縛するような意図があるとすればこれは問題のすりかえと考えざるを得ません。われわれは西山記者の私行についておわびするとともに、同時に、問題の本質を見失うことなく主張すべきは主張する態度にかわりのないことを重ねて申述べます」としたが、実際は以後この問題の追及を一切やめた。
4月16日に作家の川端康成が自殺して各紙の注目は遷移した。

その後、『週刊新潮』が「“機密漏洩事件…美しい日本の美しくない日本人”」と新聞批判の論調で大きく扱い、女性誌やテレビのワイドショーなどが「西山と女性事務官はともに既婚者ながら、西山は酒を飲ませて強引に肉体関係を結び、それを武器に情報を得ていた」と批判を連日展開し、世論は西山と女性事務官を非難する論調が多数となった。裁判の審理も男女関係と機密資料の入手方法に終始した。

刑事裁判

女性事務官は、求刑された罪状を全面的に認めて改悛の情を訴え、西山の有罪を目指した。社会党や市川房枝らによる無実を争う支援を断ると、検察側は論告求刑でこれは女性側の改悛の表れと主張した。

西山は、密約の重大性と報道の自由を主張し、男女関係に踏み込むことは基本的に避けた。国家公務員法は本来、性的自由や人格の尊厳を保護法益としていない。検察は直接の罪状である書類持ち出しについては触れず、女性事務官が西山にそそのかされたことの主張に専念した。

検察側証人は、密約について「記憶にありません」と述べ「守秘義務」を理由に一切答えなかった
西山が女性事務官に対して「君や外務省には絶対に迷惑をかけない」と言いながらそれを反故にしたことや、取材対象として利用価値がなくなると西山は態度を急変して関係を消滅させたことを女性事務官が証言し、西山の人間性が問題視された。西山は男女関係を積極的に争わなかったが、1973年10月12日の最終弁論で「女性事務官とは対等の男女の関係であり、西山が一方的に利用したものではない」として高木一弁護人が反論した。しかし、これについてはのちに、女性事務官が「夫がいかにも私のヒモであるかのような表現を繰り返した。夫は激怒した。そして、男のメンツにかけても離婚の決意をせざるを得なくなった」と週刊誌上で反論した。
 実際は「ヒモ」やそれに類する発言はなかったが、西山は法廷外発言を避け、女性事務官夫妻の主張のみが大きく報じられた

この間に女性事務官は毎日新聞社に対して慰謝料として3000万円を要求し、毎日新聞社は12月に1000万円を支払った

一審・二審

一審東京地裁判決で西山は無罪となり、女性事務官は懲役6か月・執行猶予1年となった。女性事務官が無罪を争わずに一審で有罪確定すると同情され、西山へ反感が高まったマスメディアは「密約の有無」を扱わずに政府責任の追及を止めた。女性事務官は一審判決後に失職し、離婚を余儀なくされた夫妻は西山の批判を週刊誌などで繰り返した。西山も一審判決後に毎日新聞を退社して郷里で家業を継いだ。

二審で検察側は、国家機関による秘密の決定と保持行政府権利及び義務であると前提付けた上で、報道の自由には制約があり、国家公務員法の守秘義務は非公務員にも適用されると主張し、報道の自由がいかなる取材方法であっても無制限に認められるかが争われた
 東京高裁では「指定秘とされる情報は国家の利益に反するとの判断により秘密にされる真正秘密時の政府の政治的利益の為に秘密にされる疑似秘密、疑似秘密の中に政府が憲法上授権されていない事項に関して行動したために秘密にされる違法秘密がある」「疑似秘密であると主観的に判断したことについて確実な資料や根拠に照らし相当の理由があると客観的にも肯認しうる場合、違法秘密であるとすると国家公務員法違反に触れる手段方法態様を用いてでも緊急に取材して報道しないと現憲法機構が瓦解又は崩壊しかねないほどに重大なものであると信じて行動したことに相応の理由があると認められる客観的にも肯認しうる場合は個別に違法性が阻却され刑事免責がなされる余地がある」とした上で、6月7日頃の要求については疑似秘密と信じた相当の理由があるとして無罪としたが、5月22日から26日にかけての要求については疑似疑惑と信じた相当の理由がないとして起訴内容の一部を有罪とし、西山に懲役4月・執行猶予1年の有罪判決が下された。

最高裁

最高裁は「原判示対米請求権問題の財源については、日米双方の交渉担当者において、円滑な交渉妥結をはかるため、それぞれの対内関係の考慮上秘匿することを必要としたもののようであるが、憲法秩序に抵触するとまでいえるような違法秘密といわれるべきものではなく、実質的に秘密として保護するに値するもの」「当初から秘密文書を入手するための手段として利用する意図で女性の公務員と肉体関係を持ち、同女が右関係のため被告人の依頼を拒み難い心理状態に陥つたことに乗じて秘密文書を持ち出させたなど取材対象者の人格を著しく蹂躪した本件取材行為は、正当な取材活動の範囲を逸脱するものである」「報道機関といえども、取材に関し他人の権利・自由を不当に侵害することのできる特権を有するものでない」と判示し、秘密の正当性及び西山の取材活動について違法性と報道の自由が無制限ではないことを認めた。

米国の公文書公開以降の動き

沖縄返還協定の密約のうち、もう片方の当事者であるアメリカ合衆国政府では、密約の存在を示す文書は既に機密解除され、アメリカ国立公文書記録管理局にて公文書として閲覧可能であるが、日本国政府(自民党政権)は2009年平成21年)まで『密約文書の存在を否定』し続けて来た

2005年4月25日に西山は「密約の存在を知りながら違法に起訴された」として国家賠償請求訴訟を提起したが、2007年3月27日の東京地方裁判所で加藤謙一裁判長は、「損害賠償請求の20年の除斥期間を過ぎ、請求の権利がない」とし訴えを棄却密約の存在には全く触れなかった

原告側は「20年経過で請求権なし」という判決に対し「2000年の米公文書公開で初めて密約が立証され、提訴可能になった25年経って公文書が公開されたのに、それ以前の20年の除斥期間で請求権消滅は不当」として控訴した。密約の存在を認めた当時の外務省アメリカ局長・吉野文六を証人申請したが、東京高等裁判所は「必要なし」と却下した。

2008年2月20日、東京高裁での控訴審(大坪丘裁判長)も「20年の除斥期間で請求権は消滅」と、一審の東京地裁判決を支持し、控訴を棄却した。ここでも密約の有無についての言及はなかった。判決後の会見で西山は、「司法が完全に行政の中に組み込まれてしまっている。日本が法治国家の基礎的要件を喪失している」と語った。

原告側は上告したが、2008年9月2日に最高裁第三小法廷(藤田宙靖裁判長)は上告を棄却し、一審・二審の判決が確定した。3日後の朝日新聞の社説は、「政府が国民にうそをつき続ける」と書いた。

2008年(平成20年)9月、西山を支持するジャーナリスト有志が外交文書の情報公開を外務省と財務省に求めたが、10月2日「不存在」とされた。これにより、西山側は提訴。2010年(平成22年)4月、東京地方裁判所は文書開示と損害賠償を命じる一審判決が下った。判決では行政機関が文書を保有していたことの立証責任は請求者側に義務があるとしたが、過去のある時点において文書が保有されたことを立証できれば、特段の事情がない限り不開示決定の時点でも文書を保有していると判断できるとした。

2011年(平成23年)9月、東京高等裁判所は外務・財務両省が徹底した調査でも文書が発見されなかったことなどを考慮し、文書が廃棄されるなどした可能性も否定できないことは、特段の事情にあたり、不開示決定の時点で文書があったとは認められないとし、文書開示と損害賠償を認めない判決を下した

2014年(平成26年)7月14日、最高裁判所第二小法廷は「特段の事情」について文書の内容や性質、作成経緯、保管体制などに応じて個別具体的に検討すべきとし、その上で密約文書については、過去に作成されたとしても、不開示決定時点まで保有されていたことまでは推認できないと結論づけ、上告を棄却し、密約文書を不開示とした政府の決定を妥当だとする判断を下した。原告側は「これでは都合の悪い情報は廃棄してしまえば公開しなくてもいいということになる。ひどい判決だ」と語り、同判決を批判した。

さらに、アメリカの公文書公開によって、400万ドルのうち300万ドルは地権者に渡らず、米軍経費などに流用されたことや、この密約以外に、日本が米国に合計1億8700万ドルを提供する密約、日本国政府が米国に西山のスクープに対する口止めを要求した記録文書などが明らかになっている

2009年(平成21年)9月16日、自公連立政権から代わった民社国連立政権の鳩山由紀夫内閣が成立した。外務大臣に就任した岡田克也は外務省に、かねて計画していた情報公開の一環として、密約関連文書を全て調査の上、公開するよう命令した。これにより設置された調査委員会が2010年(平成22年)3月、全てについて密約及び密約に類するものが存在していた事を認めた。岡田は同年5月、作成後30年を経過した外交文書については、全て開示すべき事を定めた。

その後も菅直人内閣において引き続き事件の見直しが試みられたが、11月に発生した尖閣諸島中国漁船衝突映像流出事件以降は尻すぼみとなった。

2012年(平成24年)12月16日投開票の第46回総選挙で自民党・公明党が大勝し、再び自公連立政権に戻った。2013年(平成25年)、自公による第2次安倍内閣は特定秘密保護法案を提出した。森雅子国務大臣(消費者及び食品安全、少子化対策、男女共同参画担当相)は10月22日の記者会見で、同法案で処罰の対象となる「著しく不当な取材」について質問され、「西山事件の判例に匹敵するような行為だと考えております。」と答えた。同法は、12月6日成立した。

アメリカのナショナル・パブリック・ラジオは、特定秘密保護法の論評で本事件にも触れ、「日本の裁判所は、報道の自由についての裁判で、報道機関側に有利な判決を下したことはない唯一の判例である1978年の最高裁判決は、国家安全保障を理由にジャーナリスト(=西山太吉)の有罪判決が確定された。彼(西山)が公開した情報は、アメリカ合衆国では機密指定を解除されていたのだが」と論評している。

『FRIDAY』が2013年12月13日号において「「西山事件で人生壊れた」〈外務省機密漏えい〉女性事務官の夫がスクープ告白」という記事を掲載。この中で、女性事務官の現在を報道した。それによると、(取材当時)離婚後に再婚し現在は83歳。77歳の再婚相手によると3年前に脳梗塞で倒れ、時どき意識が混濁することがあるとのことである。

2023年2月24日、当事者であった西山太吉が心不全のため、北九州市の介護施設で死去した。91歳没。

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