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政治講座ⅴ2014「トランプ次期政権の要職の座は誰になる?」

 政権奪還ごの政権運用はやはり適材適所の「人事」に限るのである。今、盛んにその情報が報道されている。
第二次世界大戦への導火線は、米国のモンロー主義とABCD包囲網に起因する。モンロー主義は米国第一主義に繋がり、貿易関税などの保護貿易は、第三次世界大戦の導火線になる可能性も危惧される。
今回はそのような世界情勢が危惧される中での米国のトランプ政権の閣僚のメンバーに関する報道記事を紹介する。

     皇紀2684年11月10日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

報道記事紹介

「裏方好む」ワイルズ氏、女性初の首席補佐官に-動じない人物との評

Nancy Cook、Michael Smith によるストーリー

(ブルームバーグ): 2024年米大統領選で勝利を収めたトランプ陣営を取り仕切ったのは、スージー・ワイルズ氏だった。「裏方に徹するのが好きだ」と語る同氏は来年1月、女性として初めて大統領首席補佐官に就く。
  トランプ次期政権の要職の座を巡るレースが始まる中、ワイルズ氏が最初に重要なポストに抜てきされたことは、同氏が果たしてきた役割への敬意に映る。16年と20年の選挙戦では不安定だったトランプ陣営に安定と秩序、財務規律をもたらした。 

Republican Presidential Nominee Donald Trump Holds Election Night Party© Photographer: Eva Marie Uzcategui/Bloomberg


  トランプ陣営の幹部クリス・ラシビタ氏は「素晴らしいマネジャーであり、謙虚さと細部への配慮、そして揺るぎない忠誠心を備えた偉大なリーダーだ。スージー・ワイルズ以上の人物はいない」と賛辞を惜しまない。
  ワイルズ氏は今後、政権移行を監督し、トランプ氏による閣僚選出を手伝い、次期政権発足後100日間の戦略を練ることになるとみられる。
  トランプ氏の他の顧問や盟友よりもイデオロギーが目立たないワイルズ氏は、さまざまな政策論議で中立的な立場を維持する公算が大きい。トランプ陣営の他の重鎮や献金者からだけでなく、トランプ氏の家族からの信頼も厚い。

「動じない」

  2011年からトランプ陣営で世論調査担当を務めているジョン・マクローリン氏は「ワイルズ氏は動じない。非常に落ち着いていて集中力があり、やるべきことを黙々とやり遂げる」と話す。
  「ワイルズ氏はトランプ氏と独特の関係を築いており、トランプ氏は同氏を信頼している。ワイルズ氏はトランプ氏が自身の最大の利益になることに集中できるようにしている」という。
  ワイルズ氏(67)は米プロフットボールNFLの著名アナウンサー、パット・サマーオール氏の娘。トランプ氏はその血筋を「優れた遺伝子」と称賛している。
  ワイルズ氏はレーガン元大統領の選挙活動に携わった1980年から政界入りした。その家系と経歴により、トランプ氏は相談相手として同氏を信頼しており、自身の思想が行き過ぎそうな際には同氏からの警告に耳を傾けるとみられる。

トランプ次期米大統領、選挙参謀ワイルズ氏を首席補佐官に起用

Justin Sink

2024年11月8日 8:18 JST 更新日時 2024年11月8日 11:24 JST

  • 米大統領首席補佐官に女性が起用されるのは初めて

  • トランプ陣営に秩序と規律もたらしたことで評価される

トランプ次期米大統領は、2024年大統領選挙キャンペーンの主要な参謀の1人であるスージー・ワイルズ氏を首席補佐官に起用すると発表した。大統領首席補佐官を女性が務めるのは史上初となる。

  トランプ氏は発表文で「スージー・ワイルズ氏は、私が米史上最大級の政治的勝利を成し遂げるのに尽力してくれた」と評価。「スージーはタフで賢く、革新的であり、誰からも称賛され尊敬されている。スージーは『米国を再び偉大に』するため、今後も精力的に働き続けるだろう」と述べた。

  共和党のベテラン政治スタッフであるワイルズ氏は、トランプ氏が頻繁につくり出す混沌(こんとん)に秩序と規律をもたらしたことで広く評価されている。大統領選とそれに先立つ共和党候補指名のための予備選の両方でトランプ氏の選挙戦のかじ取りを助けてきた。また、2018年のフロリダ州知事選でロン・デサンティス氏の当選にも貢献。1980年に政治の世界に入り、レーガン元大統領の選挙陣営で働いた経歴も持つ。

  ただ、トランプ政権での首席補佐官の職務遂行は過去を振り返ると困難を伴う可能性もある。トランプ氏は1期目に、首席補佐官とたびたび衝突した。最初に首席補佐官を務めたラインス・プリーバス氏は就任からわずか192日で辞任。2人目のジョン・ケリー氏は、トランプ氏が大統領にふさわしくなく、非公式の会話の中でナチス・ドイツの独裁者ヒトラーを称賛したと発言し、ここ数週間に話題となった人物。トランプ氏はケリー氏の主張を否定した。

  ケリー氏の後任となったミック・マルバニー氏は、正式に指名されたことは一度もなく、1年以上にわたって首席補佐官代行を務めた。

原題:Trump Names Susie Wiles as White House Chief of Staff(抜粋)


トランプ氏、気候変動対策「パリ協定」からの脱退に向けて準備か 米メディア

ABEMA TIMES (Microsoft) によるストーリー

トランプ氏、気候変動対策「パリ協定」からの脱退に向けて準備か 米メディア© ABEMA TIMES (Microsoft)


アメリカ大統領選挙で勝利したトランプ氏は、気候変動対策の国際的な枠組み「パリ協定」からの脱退に向けて準備を進めているとアメリカメディアが報じました。
ニューヨーク・タイムズによりますと、トランプ氏の政権移行チームは早速、気候変動やエネルギー政策に関する大統領令の草案準備などに取りかかっているということです。この中には「パリ協定」からの脱退も含まれているとしています。トランプ氏は選挙期間中、「掘って、掘って、掘りまくれ」を合言葉に化石燃料の採掘を積極的に推し進めることを公約に掲げていました。
こうした準備が着々と進む中、トランプ氏が起訴された議会乱入事件を担当する特別検察官は、刑事手続きの延期を要請し認められました。現職大統領は起訴できないとする司法省の指針に基づく判断で、特別検察官と司法省との間で起訴の取り下げを協議しているとも報じられています。(ANNニュース)
【映像】トランプ氏 「パリ協定」脱退に着手
【映像】トランプ氏 「車のドア連続空振り」&「よろめき」の瞬間

トランプ氏、総得票数も勝利なら20年ぶり 強硬派ライトハイザー氏に通商代表打診と報道

6日、米南部フロリダ州ウエストパームビーチで勝利演説に臨むトランプ前大統領(AP)© 産経新聞

【ワシントン=坂本一之】開票作業が続く米大統領選で、勝利を決めた共和党のトランプ前大統領(78)は8日、西部ネバダ州も制し、接戦7州のうち6つを押さえた。トランプ氏は全米の総得票数でも民主党候補のハリス副大統領に差を付けており、共和党候補が総得票数で民主党候補を上回れば20年ぶりとなる。

トランプ氏の閣僚人事を巡っては、1期目の政権で通商代表部(USTR)代表を務めたロバート・ライトハイザー氏(77)に復帰を打診したと報じられた。

接戦州で結果が出ていないのは西部アリゾナ州のみで、同州でもトランプ氏がリードしている。

全米の総得票数は米CNNテレビの集計で、8日午後10時(日本時間9日正午)現在、トランプ氏が約7414万票、ハリス氏が約7023万票を得た。トランプ氏は約391万票の差を付けている。

2004年の大統領選で共和党のブッシュ氏(子)が勝利して以来、20年ぶりに共和党候補が民主党候補の総得票数を上回る見通しだ。トランプ氏の完勝の様相を呈している。

大統領選と同時実施された連邦議会の上下両院選では、共和党が上院の多数派を4年ぶりに奪還。定数435の下院は8日午後10時現在で共和党が213議席、民主党が204議席を確保し、過半数の218議席を巡る戦いが続いている。

閣僚人事を巡り、英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)は8日、トランプ氏が対外強硬派で知られるライトハイザー氏にUSTR代表への復帰を要請したと報じた。

また、複数の米メディアによると、トランプ氏がウクライナのゼレンスキー大統領と6日に電話会談した際、実業家のイーロン・マスク氏も参加していた。マスク氏は大統領選でトランプ氏を強く支援した経緯があり、次期政権で要職に起用されるとみられている。

ライトハイザー氏、トランプ政権でUSTR代表に復帰か…自由貿易を問題視・日本製鉄のUSスチール買収に反対姿勢

読売新聞 によるストーリー

ライトハイザー氏(ロイター)© 読売新聞


 【ワシントン=田中宏幸】英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は8日、米国のトランプ次期大統領が、前政権で米通商代表部(USTR)代表を務めたロバート・ライトハイザー氏に、同職への復帰を要請したと報じた。対中強硬派で、自由貿易や貿易赤字を問題視する同氏が就任すれば、日本を含む同盟国にとっても脅威となりそうだ。
 事情に詳しい関係者の話として伝えた。FTによると、ライトハイザー氏は次期政権で商務長官や財務長官への就任に関心を示していたが、トランプ氏はUSTR代表への復帰を依頼した。引き受けるかどうかは不明としている。
 ライトハイザー氏は前政権時代に対中制裁関税の発動を指揮し、日本には対米貿易黒字の是正を迫った。トランプ氏は輸入品に一律10~20%、中国からの輸入品に一律60%の関税を課すとしており、新政権でも通商政策で主要な役割を担う見通し。日本製鉄の米鉄鋼大手USスチール買収計画には反対する姿勢を示しているという。
 1980年代のレーガン政権ではUSTR次席代表を務め、担当した日米鉄鋼協議で日本に輸出の自主規制を認めさせた。


2024/11/08

No.534米国第2次トランプ政権で予想される閣僚の顔ぶれ

木村誠
(一財)国際貿易投資研究所 客員研究員

 2024年11月の大統領選挙でドナルド・トランプ候補の勝利が確定した。事前の世論調査での接戦の予想に反して、激戦州や民主党地盤の州でも圧勝したほか、共和党は上院選挙でも過半数の議席を奪還した。
 トランプ氏は25年1月20日に第47代合衆国大統領に就任することになるが、一度再選に失敗した大統領が復活を果たすのは第22代大統領のスティーブン・クリーブランド以来132年振りとなる。
 カマラ・ハリス氏の敗因については、ジョー・バイデン政権のインフレ対策や国境管理の失策、そこにおけるハリス氏の連帯責任をトランプ氏が巧妙についたこと、ハリス候補が民主党の正式の予備選を経ずに大統領候補に選出されていて、民主党の選対本部内でも反発があったためとみられる(注1)。

 トランプ次期大統領とその政権移行チームは、25年1 月 20 日の政権発足を目指し、今後閣僚の選任、ホワイトハウスや各省庁の政治任用職(1,200 人 以上の上院承認人事を含む)の人選、各省庁との引継ぎ協議を行う。
 政権移行を円滑に行うため、米国では1963 年大統領政権移行法(PTA)で、現政権と次期政権が行うべき様々な手続きが定められている。
 現在、政権移行作業は、金融サービス会社のキャンター・フィッツジェラルド最高経営責任者(CEO)ハワード・ラトニック氏と第一次トランプ政権で閣僚級の中小企業庁長官を務めたリンダ・マクマホン氏が指揮している。

第二次トランプ政権の政策の方向性をみる上で重要なのは、政権の主要閣僚に誰を据えるかである。
 大統領選挙と同時に行われた上院議員選挙では共和党が多数派を奪還したため、上院の承認が必要となる閣僚の任命に当たっては、トランプ次期大統領の意向がスムーズに反映されることになろう。
 しかし、課題も多い。バイデン政権では、閣僚の交代はほとんどなかったが、第一次トランプ政権では閣僚の交代が相次いだ
 このためトランプ次期大統領は安定した政権をどう作っていくかが課題となる。
 また閣内での大統領権限継承順位は、国務長官、財務長官、国防長官、司法長官などであるが、バイデン政権では史上初めて女性を副大統領に据え、財務長官にもジャネット・イエレン氏を迎えるなど重要閣僚に女性を登用し多様性を重視する閣僚人事を行っている。
 第二次トランプ政権の閣僚候補と上級スタッフは主に白人、男性、ポピュリスト、そして当然のことながらトランプ氏に忠実な人物になるとみられているが、こうした点でもトランプ氏は閣僚人事でどのような新規性を発揮するのかも注目される。以下、米国のメディアでとりざたされている主要閣僚候補を追ってみよう。

国務長官

 トランプ次期大統領は、第一次政権時に国務長官に当時エクソンモービルの会長兼CEOのレックス・ティラーソンを指名したものの、徐々に関係が悪化し、後任に中央情報局(CIA)長官のマイク・ポンペオを横滑りさせている。 
ティラーソンを国務長官に推薦したのは、ブッシュ政権で国務長官を務めたコンドリーザ・ライス氏ロバート・ゲイツ国防長官の二人だ。
 狙いはトランプ氏の「米国第一主義」を不安視する世界の政治・経済界のリーダー達に、ビジネス経験豊富なティラーソンを通じて安心感をもたせることだった。しかし結果的には政権運営でトランプ氏の個性が強く出すぎて、ティラーソン氏の足が掬われた形となった。

これに対して、カンザス州選出の連邦下院議員を経てトランプ政権入りしたポンペオ氏は閣僚任期中、忠実にトランプ大統領に尽くしており、第二次トランプ政権で再び国務長官に復帰する可能性もある
 同氏はウクライナ擁護者のひとりで、現在保守系のシンクタンクであるハドソン研究所に属し、これまでトランプ氏再選に向けての選挙活動も行ってきた
 USスチール買収を目指す日本製鉄は、ポンペオ氏をアドバイザーに迎えている

このほか、国務長官候補として名前が挙がっているのは駐ドイツ大使、国家情報長官代行をつとめたリック・グレネル氏、国家安全保障担当の大統領補佐官としてトランプ氏を支えたロバート・オブライエン氏、元駐日大使で上院議員(テネシー州選出)のビル・ハガティ氏である。このうちグレネル氏は職業外交官として国務省に長く勤務した共和党員で熱烈なトランプ支持者だ。しかし駐ドイツ大使時代は現地の極右勢力との密接な関係で孤立し『シュピーゲル』誌などで「米国大使には友人がいない」と批判されている。また国家情報長官代行ポストも長官にジョン・リー・ラトクリフ下院議員(テキサス州選出)が任命されるまでの僅か3か月足らずで終わった。グレネル氏は24年9月トランプ氏がウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談した際に同席しており、上院の承認が不要の国家安全保障担当大統領補佐官になる可能性も取り沙汰されている。一方、オブライエン氏はNATOの枠組みやウクライナ支援に熱心だが、ハガティ氏はウクライナ支援には慎重だ。いずれにせよ、誰を国務長官に指名するかで、トランプ第二次政権の外交方針が透けて見えてくることになる。

国防長官

第一次トランプ政権の国防長官は、代行も含め7人と目まぐるしく変わった。最初国防長官に就任したのは、海兵隊出身のジェームス・マティス大将で、統合戦略軍司令官、NATO変革連合軍最高司令官、中央軍司令官などを歴任した。国防長官就任後はNATOとの同盟関係を重視する立場をとったが、同盟国にも応分の負担を求めるトランプ大統領との関係が徐々に悪化し、辞任に追い込まれた。後任には、パトリック・シャナハン(ボーイング副社長、国防副長官)、マーク・エスパー(軍需部品企業レイセオン副社長、陸軍長官)、リチャード・スペンサー(海軍長官)の3人の長官代行を経て、マーク・エスパー氏が正式に国防長官に就任した。しかし2020年ジョージ・フロイド事件に端を発したブラック・ライブズ・マターのデモ鎮圧でトランプ大統領と対立し、エスパー氏は2020年11月の大統領選挙直後に解任された。その後国防長官代行となったのがクリストファー・ミラー氏(国家テロ対策センター所長)である。

現在国防長官候補にあがっているのは、ティム・コットン上院議員(アーカンソー州)とマイケル・ウォルツ下院議員(フロリダ州)で、2人とも陸軍に勤務経験がある(注2)。コットン氏は2020年、ジョージ・フロイド氏殺害後の抗議活動を鎮圧するために軍隊を派遣すべきだと主張し、批判をあびた。またウォルツ下院議員は、対中強硬派の一人として知られている。このほか、トランプ次期大統領はウェストポイント卒業生で、中央情報局長官や国務長官としてトランプ政権を支えたポンペオ氏、第一期政権末期に国防長官代行を務めたミラー氏も候補に挙げている。

財務長官

閣僚の交代が頻繁に行われるなかで、スティーブン・ムニューシン氏は4年間財務長官としてトランプ氏に仕えた。このため、安定性のあるムニューシン氏の再登場に期待する向きもあるが、現在新財務長官として有力視されているのは、ヘッジファンドマネージャーのジョン・ポールソン氏とスコット・ベセント氏で、2人ともトランプ氏の資金調達に貢献している。実はムニューシン氏も就任当時トランプ氏の最大の資金調達者で、ワシントンでの経験がほとんどないゴールドマン・サックスのパートナーだった。このため、今回の財務長官も資金調達に貢献したビジネスマンから選ばれる可能性が高いとみられている。このほか、第一次トランプ政権の関税政策を推進し、中国、カナダ、メキシコとの通商交渉に尽力した元米通商代表のロバート・ライトハイザー氏も財務長官候補として名前が挙がっている。
同氏は現在ワシントンのシンクタンク、アメリカ第一政策研究所(以下、AFPI)のアメリカ貿易センター長をつとめている法律家であり弁護士だ。ライトハイザー氏はトランプ氏と同様、貿易懐疑論者であり、関税政策を強く支持しており、通商代表に復帰する可能性もある。

新財務長官の課題は、2025年末で期限切れを迎える17年共和党税制(法人減税、個人所得税の減税)の扱い、バイデン政権時代に拡大した財政赤字への対応だ。バイデン政権で国家経済会議(NEC)の議長を務めるラエル・ブレイナード氏は、すでに17年共和党税制の撤廃を表明している。またトランプ次期大統領が、大統領選挙期間中に言及した大衆迎合的な高関税政策に、新政権が実際どこまで踏み込むのかも注目されている。産業界は新政権による規制撤廃や法人税減税に期待をかける一方で、高関税政策には反対している。

司法長官

トランプ次期大統領の最大の関心人事のひとつは、司法長官に誰を据えるかである。不法移民の取り締まり、自身が抱える刑事訴訟の扱いなどで、トランプ次期大統領の意向を組んで動いてくれる司法長官を指名することになる。
トランプ次期大統領は選挙期間中、政権復帰後最初の日にジャック・スミス特別検察官を解任すると明らかにしている。スミス特別検察官は、退任後のトランプ次期大統領を2回起訴している。ひとつは2020年大統領選の結果を覆そうとした事件、もう一つは機密文書の持出しに関する違法行為である。トランプ次期大統領はこの二つの連邦刑事訴訟を中止することができる。2020年ジョージア州での大統領選挙結果への介入と16年ニューヨーク州での口止め料詐欺の隠ぺい事件での訴追については、トランプ次期大統領の弁護団は判事に対し凍結するよう求めるとみられる。

次期司法長官として名前が挙がっているのは、ミズーリ州の司法長官を務めたエリック・シュミット上院議員(共和党、ミズーリ州)、テキサス州のケン・パクストン司法長官、元司法省次官補のジェフリー・クラーク、マイク・リー上院議員(共和党、ユタ州)、ジョン・ラトクリフ元国家情報長官などだ。このうち、クラーク氏は、トランプ次期大統領による2020年大統領選挙の覆しの試みを支援し、コロンビア特別区で弁護士資格2年間の停止勧告を受けている。また、マイク・リー上院議員もトランプ次期大統領に対する刑事訴追を声高に批判してきたひとりで、トランプ氏の評価が高い。

商務長官

商務省は、産業振興、経済安全保障、貿易振興、標準化や知的財産、国勢調査など幅広い分野を所管しているが、次期トランプ政権下で商務省は「アメリカ第一主義」の中心的な役割を担うことになる。第一次トランプ政権では、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)からの離脱、経済安全保障の観点から鉄鋼とアルミニウムへの関税引き上げなど保護主義的な措置が相次いだ。第二次トランプ政権でも関税政策を積極的に活用していくものとみられるが、その商務長官候補に挙がっているのは、第一次トランプ政権で通商代表を務めたロバート・ライトハイザー氏や、現在は政権移行を指揮しているマクマホン氏などがいる。このほか、上院議員のハガティ氏や、バージニア州知事グレン・ヤンキン氏(共和党)、第一次トランプ政権で経済成長・エネルギー・環境担当国務次官を務めた実業家のキース・クラック氏なども候補に挙がっている。このうちハガティ氏は、トランプ大統領の信頼が厚く、一時期、副大統領候補として名前があがったこともある。同氏は商務省、通商代表部、国務省、財務省など多くの閣僚候補として名前を連ねている。ハガティ氏は2017年8月から約2年間駐日大使を務めていて、日本の政財界に知己が多く、日本にとっては第二次トランプ政権にアプローチしていく際には、大きな橋渡し役となると期待されている。

大統領首席補佐官

ホワイトハウスの要となる首席補佐官は、上院の承認を必要としない閣僚級のポストである。第一次政権では、ラインス・プリーバス、ジョン・ケリー、ミック・マルバニー、マーク・メドウズの4人が務め、国防長官ポスト同様、目まぐるしく変わっており、第一次トランプ政権内の混乱を象徴していた。
今回トランプ次期大統領は、スージー・ワイルズ氏を次期政権の大統領首席補佐官に指名した。女性の首席補佐官起用は初めてとなる。ワイルズ氏はレーガン大統領のスケジュール担当秘書からのたたき上げで、前回トランプ大統領が退任した後も、フロリダ州の私邸マール・ア・ラーゴを拠点に事実上の選対本部長として活動してきており、共和党内からの人望が厚い。11月7日大統領選の大勢が決まった時点でフロリダ州の集会でトランプ次期大統領が行った「勝利宣言」で、トランプ次期大統領はJ・D・ヴァンス次期副大統領の次に「今回の大統領選挙戦の最大の貢献者」としてワイルズ氏を紹介している。トランプ次期大統領は2016年の大統領選挙勝利後、共和党全国委員会のプリーバス委員長を首席補佐官に、また選挙対策最高責任者のスティーブ・バノン氏を首席戦略官に任命するなど、大統領選勝利に貢献した人々に報いる傾向がある。今回ワイルズ氏の首席補佐官起用も同様の意向が働いたものとみられる。ワイルズ氏はトランプ政権一期目に欠けていた秩序と規律を取り戻してくれると期待する向きもある。
(本稿は2024年11月7日時点の情報をもとに作成した)

アメリカ・トランプ次期大統領 ニッキー・ヘイリー元国連大使とマイク・ポンぺオ前国務長官は閣僚などに起用しない方針 SNSで表明

TBS NEWS DIG_Microsoft によるストーリー

アメリカ・トランプ次期大統領 ニッキー・ヘイリー元国連大使とマイク・ポンぺオ前国務長官は閣僚などに起用しない方針 SNSで表明© TBS NEWS DIG_Microsoft

アメリカのトランプ次期大統領は9日、「ニッキー・ヘイリー元国連大使とマイク・ポンぺオ前国務長官を次期トランプ政権に招聘するつもりはない」とSNSに投稿し、閣僚などに起用しない方針を明らかにしました。

第一次トランプ政権でCIA=中央情報局長官と国務長官という要職を歴任したポンペオ氏は、次の国防長官候補としてアメリカメディアの中で名前が挙がっていました

一方、大統領選挙でトランプ氏と共和党候補の指名を最後まで争ったヘイリー氏は2028年の大統領選をにらみ、トランプ氏と距離を置くものとみられています。

財務長官、金融界から登用か=マスク氏処遇、ライトハイザー氏復帰も―トランプ次期政権

21 時間 • 読み終わるまで 1 分

 【ワシントン時事】トランプ次期米大統領が経済閣僚の人選に着手した。経済・財政政策の要となる財務長官は、金融界からの登用が取り沙汰されている。関税政策や輸出規制を担う通商代表や商務長官も焦点。トランプ氏は選挙戦で、行政の効率化を図る新組織を立ち上げ、米実業家のイーロン・マスク氏をトップに起用する考えを示している。

 英紙フィナンシャル・タイムズによるとトランプ氏は、前政権で米通商代表部(USTR)代表を務めたロバート・ライトハイザー氏に同職への復帰を打診した。政権入りすれば、10~20%の一律関税や、60%の対中追加関税導入などの通商政策に関わる。

 ライトハイザー氏は、自由貿易が米国の製造業を衰退させ、雇用を奪ったと批判。貿易不均衡の是正を重視する対中強硬派だ。前政権では対日貿易赤字を問題視し、日本に市場開放を迫った。鉄鋼業界に近いことでも知られる。

 米メディアによると、対中半導体規制や製造業再生などの産業政策を取り仕切る商務長官には、政権移行チームの共同議長を務める元中小企業局長官のリンダ・マクマホン氏の名前が挙がる。

 財務長官には、著名投資家ジョージ・ソロス氏の側近だったスコット・ベッセント氏や、政権移行チーム共同議長の資産家ハワード・ラトニック氏らが浮上。信用力の低い借り手向けのサブプライムローン問題を予言し、大金を稼いだ著名投資家ジョン・ポールソン氏も有力視されている。ライトハイザー氏が財務長官のポストに関心を寄せているとの報道もある。

 トランプ氏は前政権時に政権幹部の人材不足に苦しんだ。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、今回は多くの実業界の有力者が幹部に手を挙げているという。 

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